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環境技術 2020


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2020年 特集概要
      目 次 総目次-分野別-
1号 2020年環境行政展望
2号 第4回国際アナモックスシンポジウム IANAS2019報告
3号 メガソーラーの山林・山間への設置と自然保護
4号 AI・IoTの導入を進める廃棄物処理施設の開発動向
5号 水中残留農薬の中長期的リスク評価を見据えて
6号 水域環境におけるプラスチック汚染の現状と研究の到達点



1号 2020年 環境行政展望
<年頭所感> 環境大臣 小泉進次郎

 (概略)昨年、我が国は台風15・19号の激甚な自然災害に見舞われました。地球温暖化に伴い、今後、気象災害のリスクはさらに高まると予想されます。我が国はこれまで何度も激甚な災害を乗り越えて「社会変革」を実現してきました。環境省は「社会変革担当省」として、持続可能な社会への移行をリードして施策を実行してまいります。
 本年の環境行政に対する私の想いについて、気候変動、海洋プラスチックごみ対策と自然環境保全、福島の復興と原子力防災の順に紹介します(以下、省略)。今後とも、皆様の環境行政及び原子力防災への一層のご支援、ご協力をお願いします。

地球環境問題の現状と課題 環境省地球環境局 秦 康之・喜久川裕起
 気候変動による自然災害が、世界各地で起こり、地球温暖化と関係しているという見解が示されている。実効的な気候変動対策にするためには、緩和策と適応策を社会・経済と総合的に推進することが重要である。
 <地球環境問題との課題と分析> 日本の2018年度温室効果ガス(GHG)の排出量は約12億4,400万トン(2013年度比で11.8%の削減)で、5年連続で減少している。2030年度における28%削減目標に向けて、更なる排出削減に取り組むことが重要である。
 <主な国内施策> ①長期戦略、②施策・エネルギー特別会計、③フロン法の改正、④適応策などを推進している。①2050年までにGHG 80%の削減、達成のためのイノベーション、各分野ごとのGHG削減ビジョン、②ライフスタイル、技術、経済社会へ向けた技術の推進、③フロン排出抑制法改正(2020年4月1日施行)、④豪雨災害などへの回避・軽減する適応策と気候変動の予測や情報発信
 <主な海外施策> ①COP26に向けた関係国との調整や採択に向けた活動、②G20持続的可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会議・G20大阪サミットについての説明がなされている。

大気環境行政 環境省水・大気環境局 神谷洋一
-石綿飛散防止や更なる大気環境の改善に向けて-
 我が国の2017年の大気環境基準の達成率は、NO2について100%(一般大気測定局、一般局)・自動車排ガス 99.8%(自動車排ガス測定局、自排局)であり、浮遊粒子状物質について99.8% (一般局)・100%(自排局)であった。これは大気汚染防止に対する官民一体の成果である。一方で、大気環境の保全においては、石綿飛散PM2.5光化学オキシダント越境大気汚染有害大気汚染物質水銀大気排出など様々な背景とそれらの対策が多様となっている。それぞれの課題に対して、現状と対策の取組について説明している。

水環境行政 環境省水・大気環境局 筒井誠二
 <水環境保全対策> 公共水域の水質汚濁に係る環境基準は、健康項目と生活環境に分けて設定されている。この基準の直近の改正は平成28年3月に底層溶存酸素量が生活環境項目に追加設定された。排水基準は、国民の健康保護及び生活環境保護のため全国一律に設定されているが、この基準については実態を踏まえ随時見直しを行っている。また、環境水質の評価・管理に試験生物を用いる手法の検討を進めている。閉鎖性水域の環境保全に関して、①東京湾及び伊勢湾、②瀬戸内海、③有明海及び八代海及び湖沼について、水質が悪化しない環境保全の施策に加えて、再生に係る評価と対策が検討されている。
 <水質監視、放射性物質の常時監視> 公共用水域の水質常時監視結果の状況については、健康項目では全国的にぼぼ基準を達成しており、生活環境項目では河川が90%以上の達成率であるが、湖沼や海域あっては引き続き改善が必要な状況である。福島第一原発事故に係る公共水域・地下水放射性物質モニタリングでは測定結果を随時速報値として環境省ホームページで公表している。
 <海洋プラスチックごみ対策> 本課題に対して国内外で注目を集めている。同ごみ対策として、回収・適正処理、3R、イノベーション、国民運動及び科学的知見の集積等の施策の実施と、国際的な連携を推進している。
 <水分野の国際協力・水ビジネスの国際展開> 「世界の人々の水の衛生と持続的な管理」に向けて、日本の法制度・技術・人材育成をアジア諸国の水環境改善に貢献する。水環境基本計画・ウォータープロジェクト関連施策を推進する。

水道行政 厚生労働省医薬・生活衛生局 熊谷和哉
 令和元年10月1日付けで改正水道法が施行された。これは人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化、人材不足などの課題に対し水道基盤の強化図ることを目的としている。
 改正の概要は、①関係者責務の明確化、②広域連携の推進、③適切な資産管理の推進、④官民連携、⑤指定供給装置工事事業者制度の改善である。④は地方公共団体が、水道施設の運営権を民間事業者に指定できる仕組みを導入すること。⑤は資質の保持や実体との乖離の防止を図るため、給水装置工事事業者の指定に更新制(5年)を導入すること。
 これまで、水道事業は時代の課題に応じて対策が行われてきたが、今後、人口減少という新たな課題への対策が求められている。

下水道行政 国土交通省水管理・国土保全局 梶原輝昭
-下水道事業を取り巻く環境変化に対応していくために-
 平成30年には、豪雨や地震などの自然災害が多発し「防災・減災、国土強靱化3か年緊急対策」が政府全体で策定された。また、人口減少、厳しい財政状況・管理体制を踏まえた、広域化・共同化、官民連携など下水道の持続性向上、水ビジネス展開、ICT活用など成長戦略の推進を行っている。
 <台風19号による下水道施設の被害> 近年、降雨の激甚化・頻発化が起こっている。昨年は台風19号などの豪雨災害により、下水道施設への被害は17の処理場の機能停止、31ポンプ場の運転停止が発生した。国土交通省・日本下水道事業団は、これらの被害状況の調査や施設復旧に対して支援を行った。
 <老朽化対策> 全国の下水道管渠の総延長は約47万kmであり、標準耐用年数50年を越えた管渠は現在4%、今後、10年後13%、20年後32%と急速に増加する。また、約2,200の下水道施設では、機械・電気設備の標準耐用年数15年を経過した施設は全体数の82%となっている。これの膨大なストックの維持管理について、点検・調査、修繕・改修の高度化を議論している。
 <広域・共同化の取組> 処理施の統廃合や汚泥の集約処理等のハードへの取組の他、ICT活用による複数市町村施設の集中管理や維持管理等の共同発注などソフトの取組がある。また、都道府県を中心とする広域・共同化策定に対し、事例集や計画策定マニュアルを整備する。
 <官民連携の取組> 平成30年には静岡県浜松市で我が国初のコンセッション方式による事業運営開始、平成31年には高知県須崎市で優先交渉権者の選定、令和元年には宮崎県で実施方針(案)が公表された。
 <ICTの活用> 国交省では、「i-Gesuido」と称して、ICT活用による下水道事業の質・効率性の向上や情報の見える化を推進している。地方自治体のICT導入への説明会と実施例の蓄積によるガイドラインの向上に努める。

一般廃棄物行政 環境省環境再生・資源循環局 名倉良雄
 地球温暖化対策や頻発する災害廃棄物対策など様々な課題が存在している。
 <一般廃棄物の適正処理の推進> ①一般廃棄物処理計画の適正な作成及び運用の徹底、②廃棄物処理施設整備計画、③使用済み物品の適正な処理確保に対してそれぞれの措置及び促進を行っている。
 <循環型社会形成推進交付金制度> 平成17年度に「循環型社会形成推進交付金」を創設し、廃棄物3Rの総合的な推進に向け、市町村の自主性と創意工夫を活かしながら、広域的・総合的な廃棄物処理・リサイクル施設の整備を推進している。さらに、インフラ長寿命化計画を策定し、廃棄物処理施設の老朽化対策に取り組んでいる。
 <地球温暖化対策> 廃棄物分野における温室効果ガスの排出量は平成29年度3,800万トン-CO2で、平成17年度比15.8%の減少である。2022年には削減率22%を目標としている。本分野の排出量は、我が国の総排出量の3%となっている。高効率のエネルギー回収・供給が可能な施設の更新を推進している。
 <災害廃棄物対策> 近年の自然災害に対して環境省は発生翌日に職員・専門家の現地支援チームを派遣支援した。さらに、非常災害時における①災害廃棄物処理の特例措置、②自治体の災害廃棄物対策及び各種支援を実施している。②については、自治体による災害廃棄物の処理に関する計画の策定、災害時における一般廃棄物処理事業の継続性の確保、地域ブロック協議会の設置、環境省災害廃棄物処理支援ネットワークの運用などが挙げられる。



2号 第4回国際アナモックスシンポジウムIANAS2019報告
    編集:2020-01-00 京都大学 藤川陽子

 第4回アナモックスシンポジウムLANAS2019が開催された。本特集は、本シンポジュウムでの発表概要と特徴あるアナモックス技術に関する解説する。
解説略語: Sympo: シンポジウム、P: AMX: アナモックス、AOB: アンモニア酸化菌、NOB: 亜硝酸化菌、PN: 部分亜硝酸化、DO: 溶存酸素、FA: 遊離アンモニア、FNA: 遊離亜硝酸、EPS: 細胞外ポリマー、DON: 溶存態有機炭素、SBR: 逐次回分式リアクター
 AMXとは嫌気性アンモニア酸化(anaerobic ammmonium oxidation)の略号である。NO2を電子受容体とし、NH4+を嫌気的に酸化してN2へ変換する反応であり、オランダの下水処理場で初めて見出され1995年に報告された。NH4+をNO3へ酸化した後、有機物を電子受容体としてNO3をN2へ変換する硝化脱窒法と比べて、AMX法は使用電力および余剰汚泥の低減が可能となる技術である。

2020-02-01 IANAS2019での発表概要
       京都大学 藤川陽子

 本AMX-sympoは、セッションとして①PN、②AMXプロセス、③2槽式AMX、及び基調講演として「宇宙での廃水処理におけるAMXの適用」について以下の発表・報告があった。
 ①PN ゼオライト担体2件、同担体を利用したバイオリアクター1件、PN阻害の数学モデル1件
 ②AMXプロセス 3部構成で13件の発表
 ③2槽式AMX DENIMOX、下水処理場での2槽式AMXプラント、ホーチミン埋立侵出へのAMX適用、高塩分AMX、流動床AMXリアクター

2020-02-02 2020-02-02 天然ガスかん水の部分亜硝酸化-アナモックス処理実用化への歩み
       関東天然瓦斯開発(株) 横田信幸・峯島良太

 日本では、地下500~2,000mから高塩分の地下水を汲み上げ、天然ガスおよびヨウ素(世界生産量の34%)を回収している。資源回収排水には100~200mg/LのNH4+が含まれており、この処理に1槽型PN-AMX法適用への実用化に至るまでの取組について紹介した。

2020-02-03 固定床型アナモックスプロセスによる返流水の窒素除去実証
       (株)タクマ 高木啓太、熊本市上下水道局 渡邉陽一、日本下水道事業団 糸川浩紀

 下水処理場での総返流水(汚泥濃縮脱離液および消化槽汚泥脱水ろ液)には、高濃度のNH4+(当実験処理場:600~700mg/L)が含まれている。この対策として、前処理-部分亜硝酸化-AMXの各工程から構成される実証プロセスの結果(90%以上の窒素除去など)および考察(菌叢解析など)を報告した。

2020-02-04 下水の高度処理におけるアナモックス処理の適用性に関する調査
       (株)明電舎 Minh Quan LAY・福崎康博・酒井孝輔・中田昌幸・渡辺哲文

       神戸市建設局 細田菜摘・岡野内晃代・梶本 力
 電力削減および温暖化を図るため、AMXを適用した新たな下水処理施設の技術開発を実施した。本技術の特徴は、低NH4+濃度・低水温の下水にも対応できる本流処理槽と汚泥消化槽を含む各工程へAMXを導入した現場での実証実験である。

2020-02-05 高負荷上向流アナモックスリアクタに及ぼす振動の影響
       中国・東北大学 Kuo ZHANG・Yonggguang MA・Tong ZHU
       熊本大学 古川憲治

 担体を用いた上向流AMXリアクターの高率化を目的として、内部循環および担体(ナイロンひも状)振動の効果に関する研究結果を紹介した。内部循環はNH4+高濃度流入水の希釈効果があり、担体振動は担体内部のN2ガス排出効果による基質透過抵抗力の減少であり、これらの最適操作条件を示した。



3号メガソーラーの山林・山間への設置と自然保護
    編集:2020-03-00 兵庫県立大学名誉教授 河野 仁

 MSPの山林等への設置が問題となり、反対運動も起きている。2012~2017年のSPによる森林改変は1,175件、面積は9,330haに達し、増加の傾向にある。MSPに関する問題は、森林伐採による環境影響は景観、土砂災害、濁水の発生などである。SPは化石燃料使用による地球温暖化対策として有効な技術であり、建築物屋根への設置に比べて、自然環境中に設置されるMSPは規模も格段に大きく設置場所の仕分けと設置条件が必要となる。本解説では、MSP規制の現状と今後のあるべき方向について議論を行った。
解説略語:太陽光発電(SP: solar power)、メガ太陽光発電(MSP)、再生可能エネルギー固定価格買収制度(FIT、2012年創設)

2020-03-01 メガソーラーの山林・山間への設置はなぜ起こっているか
      -政策の問題と解決の方向性-
       兵庫県立大学名誉教授 河野 仁

 日本の電力量に占める再エネ(2017年)の割合(%)は、水力7.9、太陽光5.2、風力0.6、廃棄物・バイオマス2.1、地熱0.2、合計16.0で、SPが突出している。この理由は、SPは設置場所を確保すれば、高度な技術がなくとも比較的容易に発電ができ、他再エネ技術に比べて過大な優遇措置政策がなされたことである。この結果、MSP設置に係る深刻な景観問題や環境破壊が生じている。配置や設置の条件を法律や条例で設定し、また、地域住民による主体的な取組と利益が還元される仕組み作りが求められる。

2020-03-02 太陽光発電に係る林地開発許可基準の整備について
       農林水産省林野庁 小林亜希美

 FIT創設の以降、SP施設を目的とする森林開発を行う件数が増加し、周辺住民等の建設反対運動や大規模な森林改変を伴う事業が確認されるようになった。この様な状況を踏まえ、以下に示す森林開発認可基準等の整備を行い、2019年末に林野庁長官通知の一部改正を行った。今後、本通知を踏まえた都道府県による新たな森地開発の認可基準が適用され、地域との共生を図るSP施設の設置が期待される。
 ①切土量及び盛土量、②自然斜面での設置基準、③排水の技術的基準、④森林での配置基準、⑤太陽光発電に係るその他の配慮基準

2020-03-03 山間地へのメガソーラー開発における自主簡易アセスの取組から
       NPO地域づくり工房 傘木宏夫

 SPは設置が容易でFITを商機ととらえ様々な業種・業態が参入し、技術的な未熟さに加え環境・地域への理解不足などから、多くのトラブルを引き起こした。この要因は、山林・田畑が所有者(旧住民)の「お荷物」になっていることに対し、自然や景観に価値を求めて移住した人(新住民)の心理的な対立が特徴となっている。本解説では、SP事業規模が小さく制度アセスが適用できないケースでの自主簡易アセスの事例を紹介した。本アセスでは、開かれた対話と自治体における事前配慮機能の強化を述べており、持続可能な社会構築と地域環境の調和技術の進展が期待される。

2020-03-04 地域に根ざした再生可能エネルギー事業による環境保全の可能性
       一橋大学 山下英俊

 日本の基礎自治体に対する再生エネに対する苦情・トラブルについて「過去・現在・将来での発生」のアンケート調査によると、有るとの回答割合は2014年には17.9%であったが、2017年には37.9%に増加した。トラブルは景観・光害・騒音などを主とするSP起因の事例の割合が多い。
 筆者は林間でのMSP問題の3事例を挙げて、それらの歴史的背景を分析した。いずれも過疎化や産業構造の変化によって、土地所有権が外部へ流出していた。守られてきた地域資源の価値が低下し、地域の持続性が損なわれてゆく悪循環となっていた。立地規制に加え、地域再エネ事業を支援・育成するため2020年から地域活用電源の制度が導入されたが、更なる支援策が求められる。



4号 AI・IoTの導入を進める廃棄物処理施設の開発動向
    編集:2020-04-00 元川重環境エンジニアリング(株) 守岡修一

 安心安全と経済性から廃棄物処理施設の計画・建設・運営・管理を民間企業へ一括発注する自治体が多くなった。少子高齢化と労働人口減少による有能な運転員減少に加えて、合理化を目指す操業とメンテナンスコストの最適化が求められている。発電の効率化と運転の高度化のため、遠隔監視・運転支援の拡充とビッグデータの蓄積したAI・IoTの技術が必要となった。
 廃棄物処理施設は、従前より、クレーン自動化によるごみの均質化、自動燃焼制御による燃焼の安定化、ダイオキシン類やCO・NOxの生成抑制、安定した発電供給などを目指し、開発されてきた。AI・IoT技術により、これらがどのように進んでいるのか、プラントメーカー各社の取組を論じた。
 各社とも、プロセス値の瞬時値または至近平均値データで判断する自動化には操作員の微調整が必要であったが、これらのビッグデータを解析するAIによって安定で信頼性の高い自動化を図っている。また、本社にベテラン技術者を配置、ビッグデータを解析して現場にフィードバックするなど遠隔監視の充実を目指している。

2020-04-01 AI・ICTを活用したごみ処理施設の高度化に関する取組み
       (株)タクマ 藤本祐希・井藤宗親・池田広司

 ごみピットの状況を画像解析で数値化して均質に撹拌するごみクレーンの自動化および燃焼制御にAIを活用した燃焼の自動化による安定運転を実現し、またICTを使った運転データを見える化した運転改善を行い、新技術開発に役立てている。

2020-04-02 AI・ICTを活用したごみ処理施設の高度化に関する取組AIを活用したごみ焼却施設の運転支援システム
川崎重工業(株) 國政瑛大

 施設運転データ(プロセスデータ、燃焼映像、手動操作運転履歴)からAI運転支援システムを開発し実機に応用し、操作リコメンドをAI技術の指標であるROC曲線で評価している。

2020-04-03 AI・ICTを活用したごみ処理施設の高度化に関する取組AI・IoTを活用したごみ焼却施設の自動運転の高度化
       (株)神鋼環境ソリューション 小野雄基・眞野文宏・渡邉 圭・植浦大樹・江口 徹・上村祥平・浜元和久

 測距センサでごみピットの状態を3D計測し、自動クレーンによりごみを均質撹拌すること、ガス化溶融炉の排ガスO2濃度をプロセス情報から合成変数として早期にCO変化を予測して燃焼の安定化を検証している。溶融出滓口の画像解析により開口率を維持する手法で安定化も検証している。

2020-04-04 AI・ICTを活用したごみ処理施設の高度化に関する取組AI・IoTを活用した「自立型ごみ処理プラント」実現の取り組み
       日鉄エンジニアリング(株) 富岡修一

 低炭素型シャフト炉にディープラーニング手法を用いて、ボイラ蒸発量の変動を抑制し発電の効率化を実現した。設備の保全を予知するシステムの紹介と、炉内をドローンで検索、機器異常にサーモグラフィーを活用している。

2020-04-05 AI・ICTを活用したごみ処理施設の高度化に関する取組AI・ICT を活用したごみ焼却発電施設の最適運転管理システムの開発
       日立造船(株) 近藤 守

 運転支援・トラブル対応・データ解析・遠隔調整で構成される遠隔運転システムと、AI による燃焼変動予測・ごみピット3次元マップ・ごみクレーンAI 自動・AI による保全で構成される運転支援システムによる、最適運転管理システムを開発したことを報告している。



5号 水中残留農薬の中長期的リスク評価を見据えて
    編集:2019-02-00 滋賀県立大学・須戸 幹

 水中に残留する農薬濃度基準値は、現在、いくつかの対象生物に対する急性毒性値と毒性期間中(2~4日)の推定暴露濃度に基づいて設定される。最近、評価対象生物種水産業に関連する水産動植物から、陸域を含めた生活環境動植物に拡大された。さらに、短期暴露だけでなく、より中長期な暴露による生態系への影響評価を行うための手法の確立が求められている。
 短期間の暴露濃度をモニタリングすることは容易である。しかし、農地ごとの散布日や散布回数が異なること、降雨時には河川への流出量が増加することなど、排水路・河川の中長期的な農薬濃度は大きく変動する。精度の高い暴露評価を行うためには、コストと手間をかけた高い頻度のモニタリングが必要となる。また、農薬の暴露試験評価は、室内での短期間で行われる特定生物種への急性影響評価である。
 現場の状況を踏まえた農薬の中長期的なリスク評価が不可欠であるが、現状ではそれらを満足するモニタリング手法は確立されいない。本特集では、水中残留農薬の中長期的なリスク評価を見据えた現場モニタリング手法と今後の展望について紹介する。

2020-05-01 農薬取締法の改正と、農薬による長期的な生体影響への対応
       環境省 上迫大介

 農薬取締法(昭和23年法律第82号)は、農薬の登録制を設け市場に流通する前に薬効(病害虫への効果)及び薬害(農作物等への有害性)を審査するとともに、農薬の容器に適切な表示を行わせることで、品質を適性に図る目的で制定された。その後、平成14年に改正が行われ、農薬使用者に対して、使用基準に従って農薬を使用する義務を課し、安全性の向上を行った。従来の制度では、①農薬の登録制、②販売者の届出の義務化、③使用者の適切な使用法の遵守、④立入検査や行政処分を柱として、効果があり安全な農薬の製造・流通・使用を担保している。一方で、EU・米国では農薬に対して、水域・陸域の動植物の生態系保全の評価を行っている。このような国際標準や最新の科学的知見を踏まえ、平成30年農薬取締法を一部改正し、令和2年4月1日より完全施行された。本改正では、従来の水産動植物に加えて、陸域の生活環境動植物被害防止に係る規定を設け、評価対象に水草及び鳥類が追加された。
 今後の課題として、環境省では、魚類・甲殻類・藻類の急性毒性に加え、対象農薬や物性の特徴に応じた農薬の長期的な生態影響を考慮したリスク評価の検討を行っている。

2020-05-02 パッシブサンプリングによる水環境中の農薬濃度の中長期的な観測
2020-05-03 パッシブサンプリングによる水環境中の農薬測定手順
       大阪府立環境農林水産総合研究所 矢吹芳教・野呂和嗣・伴野有彩

 環境水中の化学物質モニタリングは、Spot or Grab sampling (SP or GS) 法によって実施されてきた。この測定法では瞬間的な流入時の濃度変動を把握できない。そこで、吸着剤を水環境中に暴露し、ある期間中に捕捉した化学物質量からその濃度を求めるPassive Sampling (PS) 法が注目されている。PS法には、平衡型と速度(kinetic)型があり、河川等の濃度変化のあるモニタリングには、後者が用いられる。
 PS法の測定装置は、化学物質を吸着する相(受容相)、この相を覆う浸透膜、膜を固定する枠から構成される。kinetic型においては、吸着量の時間変化は1次反応式に従い、最大吸着量の半値までの時間変化は次式で近似できる。C = M (Rst)-1 (C: 環境水中物質濃度, M: 吸着量, Rs: 見かけ上の吸着速度定数, t: 暴露日数)。Rsは各化学物質に固有係数であり、校正試験により求められる。
 農薬だけでなく、水環境中で測定すべき化学物質は多岐にわたる。PS法は一定期間中の加重平均濃度の測定が可能であり、モニタリングデータの蓄積と水生生物への影響評価とのリンクした調査の進展が期待される。
 PS(具体的には、kinetic type – polar organic chemical integrated sampler: POCIS)法の準備は、①受容相・浸透膜の選定、②校正試験、③測定装置の組み立てと保存からなる。現地測定は、測定装置の運搬・一定期間の設置・回収したのち、前処理した後、GC-MS/MSまたはLC-MS/MSにより農薬の吸着量から、上式の関係から測定期間中の平均濃度を求める。POCISとPSとの結果比較は概ね一致している。また、PG法では検出できない瞬間的な変動も検出できることやGS法の検出限界以下の濃度へも対応できることが示されている。
 本PS法は、進展中であり、校正試験の追加、受容相・浸透膜素材の改善などにより今後の進展が期待できる。

2020-05-04 農薬リスク管理のための水生昆虫を用いた現場バイオアッセイ法
2020-05-05 現場バイオアッセイ容器の作成と取り扱いについて-取り扱い方法-
       農研機構 農業環境変動研究センター 横山淳史

 現在の農薬毒性試験では、実験室内において試験生物種へ対して一定濃度で短期間暴露させた時の致死・増殖阻害を受ける急性影響濃度で評価されている。しかし、実際の環境水では試験生物が棲息していない場合や、また、中長期的に変動する暴露濃度への影響に対しては不明である。そこで、本稿では、農薬のリスク管理における現場での生物影響評価手法の一つとして、河川などに試験生物入った容器を一定期間設置し、その生存率などを調べる試験法について解説する。
 本稿では水生昆虫コガタシマトビケラ卵塊を試験容器に入れ、約2週間、河川に設置、PS法による農薬の濃度測定と昆虫の生存率を調査した。同時に恒温(20℃)室内で同卵塊を畜養した容器に人工飼料粉末を投与して対照試験を行った。
 このバイオアッセイの特徴は、わが国の河川の上流から下流にかけて広く分布し、室内累代飼育法確立され試験個体の安定供給が可能で、さらに薬物の感受性の高い初期成長段階(孵化・弱齢幼虫)を対象としていることである。今回の実験では、対象農薬の使用時期ではない季節に実施したものの、下流地点で生存率が低下する傾向が観測され、農薬以外の要因が存在することが推測された。今後、手法の改善・データの蓄積が必要であるとともに、感受性の高い水性昆虫の初期成長への影響を調査することで、適切な農薬のリスク管理が期待できる。

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