Water & Solutions Forum – Water Science, Processing and Maintenance

MENU

汚泥減量型活性汚泥法-原理・設計・運転

1.はじめに

従来の活性汚泥法に対して,汚泥減量型活性汚泥法は,返送汚泥の一部を処理して基質化し,この基質化汚泥を曝気槽へ返送し生物学的に分解・消化して,排出汚泥を減量化する方法である(図1).
「汚泥の基質化」とは,汚泥を生分解性物質に改質することである。本ページでは、生分解性物質とは、溶解性物質では曝気槽における水理学的滞留時間HRT内で微生物群により分解・消化されるものし、固形物質では処理系内における汚泥滞留時間SRT内で微生物群により分解・消化されるものとする。

slidge-less_proc-flow
図1 汚泥減量型活性汚泥法のフロー

「汚泥基質化」のことを「汚泥可溶化」、また、「汚泥減量」のことを「汚泥削減」あるいは「汚泥減容」ともいう.これらの用語は厳密には異なるが、活性汚泥法の多機能性から見れば、同じ意味を示していると考えてよい.なお、本ページでは汚泥濃度を「MLSS」で表示しているが、正確には「MLVSS」のことで、特にことわらない限り「MLSS」と略記している.

2.汚泥基質化法の分類

2.1 微生物細胞レベルでの分類

本ページでは汚泥の基質化法を微生物細胞レベルの観点から,細胞殺傷,細胞破砕および細胞低分子化の3つに分類している(図2).
細胞殺傷法は,化学的または物理的手段により活性汚泥を構成する微生物細胞を損傷・殺傷する方法である.細胞破砕法は,物理的手段により細胞壁を破壊して細胞質を漏出させて,活性汚泥を基質化する方法である.細胞低分子化は,細胞を低分子化・溶解して活性汚泥を基質化する方法である.

2.2 基質化装置の方式による分類

提案あるいは開発されている主な汚泥基質化技術をその装置の方式により分類すると,生物法(好熱細菌など),化学法(酸・アルカリ、酸化剤、酵素など),物理法(紫外線、電子線、加熱、マイクロ波、超音波、回転ディスク、高圧噴流など),物理化学法(オゾン、電解塩素、アルカリ加熱、高温高圧法など)に分類できる.オゾンや電解塩素を用いた方式は,その酸化作用により汚泥を基質化するので化学法に属する.しかし,その設備は放電によるオゾン発生装置や塩化物電解による塩素発生装置を含むので,物理化学法とした.同様な方式に属するものでも,基質化の機構を微生物細胞のレベルで見たとき,その類型は様々に異なる.

convert_mecha-sludge_digestable
図2 微生物細胞レベルから見た汚泥基質化法の分類

3.汚泥減量化系のモデル化と基本設計

汚水中の有機物(その量はBODで示す)は反応槽内の微生物に摂取され,生命維持のエネルギーとして消費されるとともに,細胞合成(微生物の増殖)に利用される.これを一般式で示すと,汚泥増殖量ΔXまたは増殖率ΔX/Xは,下記の式(1)または式(2)で示される.
ΔX = aSr – bX                (1)
ΔX/X = aSr/X – b           (2)
ΔX: 汚泥増殖量 [kg/日]
Sr: 除去BOD [kg/日]
X: 反応槽内の微生物量 [kg]
a: 除去BODの汚泥転換率 [-]
b: 内生呼吸による自己分解率 [ /日]

ΔX/Xは,好気性微生物と嫌気性微生物では,大きく異なっている.また,同類の微生物でも,負荷量S(容積負荷Γ)と微生物量X(微生物濃度MLSS)または汚泥負荷S/X(Γ/MLSS)によって,ΔX/Xが大きく異なる.泥減量化技術において,ΓやMLSSの設定は汚水浄化システムの設計や操作の重要な因子となる.
表1に,好気性微生物を用いた各種活性汚泥法の操作条件を示す.これらの活性汚泥法に汚泥減量化技術を導入すると,設計条件や操作因子がどのようになるのか,定量的に考察する必要がある.ここでは,汚泥減量型活性汚泥法をモデル化し,本技術の設計・操作の条件について述べる.

表1 各種活性汚泥の操作条件
act_sludge-operation

3.1 基質化汚泥の分解・消化過程のモデル化

(1) 活性汚泥を構成する細菌類の細胞構造

活性汚泥の大部分は細菌類が集まったものである.細菌類の細胞は,その外側が細胞壁で包まれている.この細胞壁はペプチドグリカンと呼ばれる多糖の鎖がペプチドの短い鎖によって架橋された複雑な三次元立体構造になっている.グラム陽性菌の細胞壁は,鎖状構造が多いもので40層も重なった三次元的な繊維層を形成し,通常の生物機能による代謝分解は困難かまたはその分解には長い日数を必要とする.

(2) 基質化汚泥の分解・消化過程のモデル化

2.1において、汚泥基質化法を細胞殺傷,細胞破砕,細胞低分子化に分類した.これらの基質化汚泥の分解・消化過程を速度論的にモデル化して理解することは,汚泥減量型活性汚泥法の設計および運転管理において極めて重要である(図3).
細胞殺傷は,さらに3つ細分類される.①基質化処理により細胞が即死t2するものと(即死型),②細胞損傷を受けた後,しばらくして細胞死に至るものである(遅死型);τ1(t1~t2).細胞死が起こると,その細胞は,曝気槽内の微生物群の酵素により溶菌(細胞壁の一部が溶解し,細胞質が漏出すること)される;τ2(t2~t3).③細胞死が明確でなく,細胞壁が損傷を受けた後,浸透圧による細胞壁の破裂による細胞質の漏出が起こることもある.溶菌や細胞破裂により漏出した細胞質成分は比較的短時間で分解・消化されるものと思われる;τ3(t3~t4).しかし,難生分解性の細胞壁成分は活性汚泥中に混在して,ゆっくりと時間をかけて分解・消化されるもと思われる;τ4(t3~t5).
細胞破砕では,細胞壁が破壊されるので,t3から分解・消化が始まる.
細胞低分子化では,細胞成分は全て低分子されているので,易生分解性となり,その分解・消化過程は短時間(<τ3 )で完了する.
なお、上記したτ1~τ5についは、厳密に観察や測定できるものではなく、そのような課程を経て基質化(殺傷、破砕や低分子化)された汚泥(微生物群)が曝気槽内で分解・消化されるというモデルとして理解することに留意していただきたい。

sludge_digest-mecha
図3 基質化汚泥の分解・消化過程のモデル

(3) 汚泥減量型活性汚泥法のモデル化

図4に示すように,負荷量(基質)S,汚泥総量X,汚泥増殖量ΔX,汚泥滞留日数SRTで運転する従来型活性汚泥法を想定する.この仮想システムでは,基質Sは全て微生物に摂取されるもとし,その内,細胞合成への割合をα(同化率)および生体エネルギー生産への割合をβ(異化率)とする.次に,増殖量ΔXの全量を基質化して曝気槽へ返送する汚泥減量型活性汚泥法を想定する.この仮想系では,返送された基質化汚泥は完全に消化され,系外へ汚泥は全く排出されないものとする.ただし,SRT = X/ΔXは従来型と同じ日数とし,これを減量型(Ⅰ)と略称する.
ΔX = aS – bX                      (3)
ΔX/β = a S/β – b X/β     (4)
α + β= 1           (5)
α: 基質の同化率 β: 基質の異化率

表2に示すように,培養1日目の増殖量ΔX はαSとなる.2日目にΔXを基質化して返送すると,負荷は(1+α)Sとなる.以後,これを繰り返すと一定値となり,(1+α+α2+・・・)S = S/(1-α) = S/βとなる.同様にして,平衡状態に達したときの曝気槽内の汚泥総量はX/βとなり,増殖式(4)が得られる.
増殖式(4)から、従来型から減量型(Ⅰ)へ移行したときの各操作条件は,従来型の各操作条件に1/βを乗じたものとなる.このような条件では、曝気槽内のMLSSは1/β倍(β< 1)に増加し,沈殿池の能力を超えてしまうことがある.減量型のMLSSを従来型と同じ濃度に維持するためには,どのように運転したらよいかを次に示す.なお,これを減量型(Ⅱ)と略称する.
(1 + bατ)ΔX/β= a S/β – bX      (6)
τ(= STR) = X/ΔX                         (7)
τ’(= SRT’) = τ/ (1+bατ)           (8)

前節の式(4)に式(5)を代入して変形すると,式(6)が得られる.ただし,式(6)中のτは,式(7)に示すように,従来型におけるSRTである.式(6)より,基質化に必要な汚泥量は,減量型(Ⅱ)では従来型の(1+ bατ) /β倍に増加する.一方,減量型(Ⅱ)の汚泥滞留日数SRT’は式(8)に示すように従来型SRTの1/ (1+ bατ)に短縮される.

sludge-less_proc_model
図4 汚泥減量化システムのモデル化

表1 パラメーターの計算
parameter_calc

(4) 減量型活性汚泥法の操作因子

表1に示した各種活性汚泥法について,従来型を減量型に変更したとき,その操作因子がどのように変わるか,具体的に計算した結果を表3に示す.また,操作因子の変化をグラフ化したものを図5図7に示す.汚泥を基質化して曝気槽へ返送することにより,その負荷量および曝気量は,減量型(Ⅰ・Ⅱ)いずれも同化率αの増加とともに増加する.減量型(Ⅱ)の基質化汚泥量は,同化率α、汚泥滞留日数τ、自己分解係数bの増加とともに増加する.

表3 従来型および汚泥減量型の活性汚泥法の操作条件の比較
operation_comparision

load_vs_alpha
図5 従来型に対する減量型(Ⅰ・Ⅱ)の負荷量・曝気量の増加率および
従来型余剰汚泥量に対する減量型(Ⅰ)の基質化汚泥量の倍率
sludge_vs_alpha
図6 従来型余剰汚泥量に対する減量型(Ⅱ)の
基質化汚泥量の倍率
SRT_vs_alpha
図7 従来型と減量型(Ⅱ)の汚泥滞留日数の比較
(ただし、b = 0.2 とした)

3.2 汚泥減量型活性汚泥法の設計・運転管理

(1) 汚泥減量型の設計・操作の条件

事例として、表4に長時間曝気法(低負荷)および標準活性汚泥法(高負荷)について、汚泥減量型のモデル化から予想される設計・操作の条件を示す。
汚泥減量型を導入すると,SRTを変えない場合には,MLSSが増加する.また,MLSSを従来型と同じに維持すると,活性な微生物の滞留日数SRT’が短縮し,その機能および性状の悪化が予想される.高負荷でSRTの短い活性汚泥法に汚泥減量型を導入すると,異化率βの値が小さいので,BOD負荷の増加率が高く,曝気量の増加率が高くなることが予想される.

表4 汚泥減量化型活性汚泥法の設計・運転の条件
sludge-less_operation

(2) 基質化法の類型と汚泥滞留日数との関係

3.1(2)で述べたように基質化汚泥の分解・消化過程のモデルにおいて,基質化法の類型によりその速度が大きく異なることを示した.また,汚泥減量型の導入によるMLSSの増加を抑えるために,基質化汚泥量を増量する減量型(Ⅱ)では,活性汚泥の滞留日数SRT’が短くなることを示した(表3表4).SRT’が,図3に示す基質化汚泥の分解・消化総時間Στiより短いと,系内に未消化の難分解性固形物質(主として細胞壁成分)が蓄積して様々な障害を起こすことが予想される.SRT’はΣτiよりも十分長い日数に設定する必要がある.特に,分解・消化に長い日数を必要とする細胞殺傷法や細胞破砕法に属する基質化法には注意を要する.また,基質化設備の運転を開始してから,難生分解性である細胞壁成分などを分解できる微生物群が十分に増殖するまで,数ヶ月の馴致期間が必要である.細胞低分子化法は,分解・消化時間が短いので,SRT’を短く設定できる.

4.汚泥減量型活性法の導入における留意事項

既存の活性汚泥設備を汚泥減量型へ変更する場合には,留意すべき事項があるので,これについて以下に示す.

4.1 技術上の留意事項

(1) 適用可能なBOD汚泥負荷の限界

既存施設のBOD汚泥負荷は最大0.1kg-BOD/kg-SS/日が限界であろう.これ以上の高負荷で運転している施設の減量型への変更では,曝気量やMLSSの増加が過大となり,曝気装置や汚泥分離槽の増設が必要であろう.

(2) 適用可能な汚泥滞留日数

汚泥減量型へ変更するとMLSSが増加し沈殿槽の能力を超えるので,多くの技術では基質化汚泥量は従来法の余剰汚泥量の3倍量としている.このため,汚泥減量型導入後の活性汚泥の滞留日数SRT’は短くなる.特に,細胞殺傷や細胞破砕に属する汚泥基質化法では,細胞壁など難生分解性成分の分解・消化を完全にするために,既存施設のSRTには十分に余裕のある日数が要求される.

(3) 余裕のある汚泥基質化設備の導入

汚泥基質化設備の設計および選定においては,その能力に十分な余裕を持たせる.設備を能力の限界で運転すると,汚泥の基質化が不十分となり,目標の汚泥削減率が達成されない.一般的に削減率は70~80%で設計・運転される。これは、コスト(設備費および運転費)と削減率の関係を最適化したときの値であって,能力に余裕のある設備で運転すると削減率をさらに向上することが可能である.逆に,余裕のない設備で運転すると削減率は低下する.

(4) 処理水質

汚泥減量化システムを導入した場合に処理水のBOD,COD,SSはほとんど変わらないが,TNおよびTPは若干増加する(ただし、窒素・リン除去を導入している施設を除く).

4.2 経済性およびLCA上の留意事項

(1) 経済性

汚泥減量化設備の導入にあたり、経済性についての次に示す①および②の項目について評価する必要があろう。
①従来施設の汚泥管理に関する項目:汚泥の発生量とその搬出・運搬・処分などに係る経費
②新設備導入に関する項目:新設備および維持管理(人・薬品・電気など)に係る経費
世界の経済情勢、特にエネルギー動向と電気代、国内では人手不足など、その時代の社会状況が変化するので、長期視点による評価が求められる。

(2) LCAなど

新設備の導入に当たって、経済性だけでなく、地域の状況やLCAなどの視点から評価する必要がある。

5.汚泥減量化対策

5.1 高濃度有機性汚水

高濃度食品製造排水や畜産排水には,汚泥の発生量が少ない嫌気性微生物法が最適であろう.ただし,高濃度の硫黄分を含む排水への適用は難しい.また,嫌気性微生物法では処理水の水質が公共水域への放流基準を満たさず、追加の処理が必要である.仕上げ工程に対しては、汚泥削減化活性汚泥法は有効な手段であろう。

5.2 低濃度有機性汚水

生活排水や低濃度有機性産業排水(高濃度排水を希釈する場合を含む。)では,汚泥減量化活性汚泥法の導入が期待できる.ただし,4.で述べたように本法の導入には留意すべき事項がある。

5.3 大量の汚泥を排出する汚水浄化施設

汚泥を大量に排出する大規模な都市下水や産業排水の浄化施設では,汚泥の減容化(脱水,嫌気性消化,焼却等)や資源化(メタン発酵,堆肥化,炭化,セメント原料化,建設資材化等)を総合的に最適化して,汚泥減量化対策を進めることが大切である.

6.おわりに

微生物を用いた有機性汚水の処理においては、微生物増殖による汚泥が発生する。この汚泥は廃棄物中大きな割合を占め、その処理・処分に高額な経費が費やされている。汚泥減量型活性汚泥法は、汚泥発生量を調節できるので、小規模処理施設を中心に期待される技術である。しかし、この技術の適用にあたっては、いくつかの留意事項がある。汚泥対策にオールマイティはなく,汚水の性状と規模に応じ、減量・減容化と資源化を総合的に最適化した対策が必要であろう。

掲載日:2017/05/31
更新日:2017/06/05

PAGETOP
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.