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写真工業の用水・排水と処理

目次

1.写真工業の推移
2.写真工業の用水
 ・水質
 ・水量
3.写真工業排水と処理
 ・感光材料製造排水と処理
 ・現像排水と処理

写真技術は、過去においては感光フィルムで撮影し、フィルムを現像した後、印画紙にプリントしていた。今日、半導体光学素子・画像データの記録媒体・画像モニターの高度精密化によりデジタル写真技術が広く普及し、感光フィルムを用いた写真技術は急速に衰退し、その市場は特殊なケースに限定されている。しかしながら、感光材料の製造工場は、高度で広範な科学技術が集積した総合技術で設備産業であることから、その用水・排水処理技術は他分野の水浄化技術の開発・設計・維持管理にとって参考となるものであり、本サイトで取り上げることとした。

1.写真工業の推移

写真工業は、通常感光材料と光学機器製造工業に分類されるが、それらの工業製品を用いる二次産業であるカラー現像所や写真製版印刷、病院における医療診断用写真撮影現像などの現像業が加わる。一方、光学機器製造工業は、日本の国際市場シェアの大きい工業であり、本サイトの別ページで記載する。
写真技術は1839年に発明され、感光材料製造工業は約1世紀半の歴史があるが、その生産国は世界でも数カ国にすぎない。この理由は、この工業が高度で広範な科学技術にわたる総合技術であることと設備産業であることが新規参入を妨げていることと、大量かつ良質の用水の確保必須の用水立地支配型の産業であるからである。
感光材料の製造は、①写真乳剤の製造、②支持体(フィルムベース、印刷紙)の製造、③乳剤の支持体上への塗布、④塗布済みのロールの裁断から包装までの加工工程から構成される。この工業は、各種の科学技術が高度に集約された総合工業である。例えば、赤・緑・青の各光にそれぞれに感光する3層ごとの感光乳剤を含む合計15〜16層もの構成層が全体厚み20μmに均一に塗布されており、また写真特性を発揮させるため、120種類の化学物質が用いられている。さらに、マイクロフィルムではA4サイズ1ページが、2×3mmのフレーム内に画像として収まるほどの高い記録密度もっている。
感光材料の製造が数カ国の少数メーカーに限れているのに対し、現像は、病院・印刷・出版・新聞・報道・大学・研究機関・現像所など隅々にまで分布している小規模・分散型の産業である。過去において全国で約17,000箇所あった写真店・スーパーマーケットなどでのミニラボも、電子写真媒体の普及により、現状では市中から激減して、写真店などに限られている。

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2.用水と水質

感光材料製造工業は水質と水量に依存する工業であり、日本におけるその製造工場は多摩川・箱根・富士の地下水か伏流水が得られる地域に集中していた。しかし、現在、その内容は製造工程の変革に伴う用水原単位の減少や工程の要求水質の変化に伴って著しく変化している。感光材料主要製造工程の用水量は次のとおりである。

ボイラ用水 4.5%、乳剤原料水 1.5%、中間製品処理水 18.1%、環境調節用水 74.5%、雑排水他 1.4%

2.1 水質

感光剤の感度その他の写真特性は、ごくわずかな不純物の混入に敏感に変化するので、表1に示すように乳剤仕込み用の原料水と中間品処理水などに年間を通じて、過去においては、水温の変化のない低温度の軟水が大量に得られることが工場の立地条件であった。1960年代の後半に乳剤の脱塩水洗行程を不要とする行程改革(洗浄脱塩から沈降分離脱塩へ)が行われ、また乳剤仕込み用の工程水には純粋を用いることが可能となり、もはや水量・水質が立地条件を左右する条件ではなくなった。それでも重要な用件であることに変わりはない。
乳剤仕込みや中間品処理に適した代表的な用水の水質事例を表1に示す。写真製造に必要な水は重金属や有機成分を含まない清浄な軟水でである。

表1 感光材料製造用水の水質事例
photosensitive-material-production_water

2.2 水量

写真感光材料の国内生産量は、1990年代に急増(1993年:写真フィルム 293百万m2、写真感光紙 335百万m2)し、これに比例して用水量も伸びたが、中間品処理の工程改革によって用水量も激減した。
一方、写真感光材料の性能進歩と要求品質の高度化の伴ってその製造工程の塵埃のない清浄な空気の必要性が高まり空気洗浄を含む環境条件調節に大量の水が必要となり、工場用水の75%が環境調節に用いられることとなった。用水単位は、製造品種・工程設備・供給水温によって異なるが、環境材料 1m2当たり50~100L程度である(1960年代では、2,700~4,000Lであった)。

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3.写真工業排水と処理

3.1 感光材料製造排水と処理

(1)工場排水
工場排水の75%を占める環境調整排水は、空気洗浄、冷却に反復使用された水であり、有機物を含まない清浄水の部類に属するので、ボイラ排水とともに一般的には河川放流される。
①支持体製造工程、②乳剤製造工程、③塗布工程などの工程排水と④試験検査排水は、活性汚泥処理によって浄化した後、河川放流される。⑤工程排水のうち銀塩を含んでいるものは、凝集沈降などで銀回収を行ってから活性汚泥処理される。工程排水の主な成分は、溶存写真ゼラチンで、その他、乳剤工程で副生する硝酸イオン、ハライド(アルカリ金属塩)、アンモニア、酢酸、その他添加剤、発色剤などであり、その結果全体として、BODがCODよりも高い排水である。これらは活性汚泥法により河川放流基準以下に除去される。表2に代表的な感光製造工程排水の処理事例を示す。年間を通してほぼ定常的な処理が行われ、放流先の河川と同レベルの水質である。オゾン処理は、活性汚泥処理では分解できない染料を分解脱色を行っている。
(2)含乳剤排水
乳剤を高濃度に含む排水は、分別収集して、ゼラチン分解酵素により分解し、遠心分離によって銀塩を回収した上で、上記の活性汚泥プロセルで合流処理される。
(3)試験・検査・研究の排水
これらの付属部門からの排水は、①活性汚泥処理が可能な排水、②銀塩を含む排水、および③活性汚泥処理が不可能な濃厚薬液・染料・発色剤などの廃液に分別される。①および②は、上記した方法で合流処理される。③は、回収して専門業者に委託して無害化処理を行った後、管理型埋立処分される。
(4)排水管理
感光材料製造工場では、工場内排水系統には、pHメーター、COD計、伝導度計、工業用監視カメラなどのモニタリング体制がとられ、要所ごとにモニター用養魚スポットを配置している。また、活性汚泥施設から河川への放流放流部分には非常時に停止できるリザーバーを池を設けるとともに養魚鑑賞池も活用している。
表2 感光材料製造工程排水の処理例
photosensitive-material-process_wastewater-treatment

photographic-industry_wastewater-purification-process
図1 感光材料製造工業における排水処理工程の事例

3.2 現像排水と処理

現像所・印刷所の写真製版印刷工程・病院のレントゲンフィルム現像などの各写真現像排水は、比較的濃度の薄い水洗行程からの排水と高濃度の無機・有機化合物を含む現像液・定着液・安定浴などの処理廃液がある。
水洗排水は、日量 50m3以下であれば下水系を利用できる。
廃液は、通常数万mg/LのCOD・BODを含んでおり、下水系へ投入できない。これらの濃厚廃水は全国的な写真廃液の回収ネットワークによって収集され、銀を含む廃液は銀を回収した後、焼却処理を行っている。写真廃液には、難生物分解性のEDTA、発色現像主薬、還元性の高い現像薬品、酸化性のある漂白剤などが含まれており、BOD・COD の低減が複雑となる廃液である [1, 2, 3, 4]。現実的な対応として、焼却処理が行われている。燃えがらは、アルカリ性無機塩、アルカリ金属硫酸塩および少量の不溶解性鉄塩であり有害な物質を含んでいないので、その処分は容易である。燃焼ガスは、硫黄分が多いので排煙脱硫装置が整った焼却炉が必要となる。排煙が直ちに洗浄される液中燃焼方式は写真廃液の焼却処分の最適手段となっている。

参考文献

用廃水便覧:丸善(1973), pp.864-867
水処理管理便覧:丸善(1998), pp.663-666


掲載日:2020年05月05日

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