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反応速度の基礎

村上定瞭(水浄化フォーラム)

目次

はじめに
Ⅰ.素反応の典型例と濃度変化のパターン
 1単分子反応
 2.2分子反応
   擬1次反応を含む
 3.併発反応
 4.逐次反応
 5.可逆反応
 6.酵素反応
 7.触媒反応
 8.自触媒反応
 9.複合反応と定常状態近似
Ⅱ.素反応の解析と実験
 1.微分法
 2.積分法
 3.分離法と初速度法
 4.緩和法
Ⅲ.気相・液相・界面での反応速度と特徴
 1.気相反応
 2.液体反応
 3.界面反応
Ⅳ.電子移動反応
 1.電子の受授
 2.分子の電子エネルギー
 3.活性化状態
 4.配向エネルギー
 5.電子移動速度の推定
 6.電子移動のモデル図
Ⅴ.反応動力学
 1.温度と反応エネルギー
  素粒子と反応エネルギー 
 2.分子衝突と化学反応
  分子の動力学
 3.マーカス理論
  溶媒中の電子移動反応
 4.電極反応と電流密度
  過電圧と電流密度
 5.井戸型ポテンシャルと電子移動
  量子論と反応速度
 6.分子構造と反応速度
  分子構造と活性化エネルギー

一連の本ページは、逐次、内容を掲載する。また、複数のページにより構成されているので、目次を基点に閲覧されたい。
リンクされていない項目は、執筆準備中である。また、目次の構成と内容が変更されることもあるので、更新日に留意されたい。

はじめに

<浄化プロセスと反応速度>

水浄化プロセスの可否については、熱力学的情報から、始めの状態(汚濁状況)および終わりの状況(浄化状況)を予測できる。しかし、浄化プロセスは有効な時間内に終了しなければならないことと、プロセス設計・維持管理においては、物質の移動を含めた反応速度に関する情報が必須となる。
本サイトの浄化プロセスの数量的な扱いについては、熱力学的な情報に基づく扱いが多い。この理由は、汚濁物質の化学的反応が物質移動に比べて極めて速く、反応槽の形状や攪拌などの物理的因子が律速となるからである。具体的には、中和プロセスや固液分離プロセスに代表される。
一方で、コロイドの凝集やヒ素・セレンなどの酸化還元などのプロセスでは、反応速度が問題となる。このような浄化プロセスでは、反応速度を律している因子を明確にしないと、有効な時間での処理が完了しない。
一例として、コロイドを扱う場合には、表面電荷の制御が重要となる。他ページに記載しているように、疎水コロイド粒子間には引力(静電的遠距離力)と斥力(ファンデルワールス力による近距離力)の相反する力が働き、粒子が接近して凝集する前に、越えなければならないエネルギー障壁が存在する。pHの調整あるいは凝集剤の添加等によって、この壁を壊さない限り、コロイドはいつまで経っても安定に存在することとなる。

 
<反応速度の基礎知識>

物質の反応速度の理解には、様々な視点からの理論計算と実験データ解析が必要となる。これには、統計力学、量子力学、熱力学、分光学、電気化学などの基礎知識が求められる。環境や水浄化に興味あるまたは希望する学生や初心者にとって、これらの基礎知識を学習するには労力と時間を必要とする。本ページの内容は、少なくとも理数系の高校、望ましくは大学教養課程で学習する物理・化学の知識で理解できる範囲のレベルに限定する。また、必要に応じて、本サイト内の関連する具体例を解説した他ページを参考としながら解説する。

 
<本解説の構成>

物質の反応速度過程を扱うには、古典的、半経験的、量子論的など様々なアプローチがある。これらのアプローチを系統的に解説すると、分厚いページとなり、閲覧者の興味も失せてくる。
ここで、本ページでは、教科書的な解説構成に拘ることなく、それぞれのアプローチを並列的に扱い、どの順に閲覧しても、最終的に全体概要を理解できればよい構成とする。
また、具体的な個々の浄化プロセスや物質測定法の説明の中で、本ページの記載内容を引用するので、合わせて理解されればよいと編集者は考えている(例えば、AsやSeなど)。

 
<各章の目的と概要>

Ⅰ.素反応の典型例と濃度変化のパターン
自然界・実験室・浄化プロセスで進行する反応には、それぞれ、典型的なパターンがあり、反応に関与する物質濃度は特徴ある経時変化を示す。それぞれの反応を構成する素反応を示し、各素反応の速度定数の相対比から、経時変化のパターンを理解する。複雑な素反応で構成される反応では、必ず、その速度を律する素反応があり、その素反応を明らかにする。
Ⅱ.素反応の解析と実験
Ⅰ章で示した典型的な反応について、観測・実験データを用いた各素反応の速度定数値を決定する方法について示す。反応に関与する濃度の経時変化を解析した構成素反応を実データで検証することとなる。
Ⅲ.気相・液相・界面での反応速度と特徴
自然界や浄化プロセスにおいて、気相、液相、気相・液相・固相の界面では、共通な反応機構と各相に特異な反応機構がある。それぞれの反応機構の特徴を示し、反応速度に及ぼす因子について説明する。また、化学反応が生じるためには、物質間の接近・接触が必須となるが、物質移動または化学反応のいずれかが律速となる。このメカニズムについても説明する。
Ⅳ.電子移動反応
宇宙を構成する素粒子は、原子核を構成する様々な素粒子、電子、光子などがある。地球表面でおこる化学反応は、主として、光子・電子が関与する反応である。電子が物質間で移動するとき、物質を構成する特定の原子間で、電子受授が行われる。相互の原子または分子が接近して、それぞれの電子軌道(雲)が重なるようになると、それらの軌道エネルギーが一致したとき瞬時に電子移動が起こる。電子軌道が重なるための分子構造の立体的因子や軌道エネギーが一致するための要因が反応速度に影響する。
V.反応動力学
物質の化学反応の進行とその速度には、ざまざまな因子が関係してしてくる。地上表面で起こる化学反応においても、素反応の速度は十数桁の範囲で異なる。Ⅰ章の酸-塩基触媒反応では、定数値の意味について少し触れているが、本章によりそれらの値の意味が理解できることと思う。本章では、活性化エネルギー(反応の壁)や頻度因子(反応の確率)を熱・統計・古典・量子の各力学の視点から考える。

参考文献


掲載日:2019年10月06日
更新日:2019年10月25日

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