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電位とpH

水には、様々な溶質が溶解し、また、気体・固体と接して、物理・化学・生物的な相互作用を受けている。水を扱う時、何を目的として水を扱うかによって、視点(指標)が異なる。
事例を挙げると、飲料水では、先ず、人体に安全であること、次に味がよい(美味しい)水であることが視点となり、その溶質の構成(その濃度を含む)はどのうようなものであるかが、飲料水の指標となる。植物の水耕栽培では、植物の生長に必要な溶質の構成が、水耕水の指標となる。発電所では水は熱交換の媒体として利用され、熱交換器や配管の腐食が起こらないような溶質の構成が重要となる。
上記事例では、個々の目的により、その視点が異なるが、共通的な視点がある。例えば、溶解度、pH、電位、錯体などがあり、それらの条件によって、溶質の構成が異なる。
本ページでは、水の電位とpHが、溶質(水と接触する固体を含む)に対してどのような影響を与えるかについて、解説する。

1.基礎知識

(1)基礎式

電位(e)とpH(水素イオンH+)が関与する反応は、つぎの式で一般化できる。
aA + mH+ + ze = bB + cH2O  (1)

反応(1)における自由エネルギー変化ΔGを、各物質Xの化学ポテンシャルμXの和で示すと、
-ΔG = aμA + mμH – bμB – cμH2O  (2)

物質Xの化学ポテンシャルμXとその活量aXの関係を示す。
μX = μ°X + RTln aX  (3)

式(3)を用いて、式(2)を表す。
-ΔG = -ΔG°- RTln (aBb/(aAaaHm))  (4)

ここで、
-ΔG°= aμ°A + mμ°H – bμ°B – mμ°H2O – cRTln aH2O

とし、希薄水溶液系では水の活量は変化しないものとして、定数ΔG°に含めた。
一方、反応(1)では、電気量zFを伴い、その自由エネルギー変化ΔGは、
-ΔG = zFE → E = -ΔG/(zF)  (5)

式(5)に式(4)を代入すると、E°= -ΔG°/(zF)として、次式を得る。
E = E°- RT/(zF) ln (aBb/aAa /aHm )  (6)

定数R、F、温度25℃、ln = 2.303logpH = –log aHの関係から、式(6)を書き直す。
E = E°- 0.0591(m/z)pH + 0.0591(1/z)(alog aA – blog aB)  (7)

(2)活量と濃度

物理化学の分野においては溶質は活量で示すが、具体的な水浄化の分野では溶質は濃度で示すほうが便利である。
式(3)で示す溶質Xの活量aXは、その活量係数fxおよび濃度[X]でつぎのように示される。
aX= fX[X]  (8)

希薄水溶液では、一般的に活量係数fXは’1’で近似できるので、
aX = [X]  (9)

平衡反応式(1)に対して、式(7)はつぎのように示すことができる。
E = E°- 0.0591(m/z)pH + 0.0591(1/z)(alog[A] – blog[B])
= E°- 0.0591(m/z)pH – 0.0591(1/z)(apA – bpB)  (7′)

留意事項
なお、本ページでは、簡略表記のため、pX = –log[X]、を多様するので留意されたい。

(3)電位-pHの平衡図

① m = 0のときの平衡図
式(1)および式(7)は、
aA + ze- = bB + cH2O  (1a)
E = E°- 0.0591(1/z)(apA – bpB)  (7a)

となり、Eだけに関係し、pHには無関係となるので、電位-pH平衡図はpH軸に平行な直線となる。
② z = 0ときの平衡図
式(1)は、つぎのようになる。
aA + mH+ = bB + cH2O  (1b)

反応(1b)の平衡定数Kとすると、式(8)が得られる。
K = [B]b/([A]a[H+]m)
apA – bpB = – pK – mpH  (8)

この化学反応の平衡条件はpHのみに関係し、電位に無関係であるので、E軸に平行な直線となる。

(4)水の電位-pHの平衡図

水が分解して酸素ガスと水素ガスになる反応は、
2H2O = O2 + 4H+ + 4e  (9)
2H+ + 2e = H2  (10)

気体Xの分圧をPXで表記し、上記の反応を式(7)で示すと、
E = 1.228 – 0.0591pH – 0.0148pPO2  (11)
E = -0.0591pH + 0.0295pPH2  (12)

今、pPXに対して0、1、2、・・・に対するE-pHの平衡図を図1に示す。
この図について、若干の説明をする。水に一対のPt電極を浸漬し、両電極に加電(直流)し次第にその電圧を増していくと、陽極Ptでは酸素が発生して溶解し、陰極Ptでは水素が発生して溶解する。さらに、電圧を増加して、酸素および水素の分圧が大気圧(1atm)に達すると、それぞれの電極上からガス泡の発生が観測されるようになる。図中の赤線および青線は、各pHにおける発生する酸素および水素の分圧と電位の関係を示している。pPXは分圧の逆対数を示しているので、図中に示すそれぞれの数値0、4、8、12は、1、10-4、10-8、10-12気圧に対応する電位とpHの関係を示している。
注意事項
実際の電気化学反応は過電圧(速度抵抗や液抵抗)などの因子が関係し、E-pH 平衡図と実験事実とは多々異なることに注意する。例えば、水の実際の分解電圧は、両極における過電圧により、1.7~1.8Vを示す。E-pHの平衡図に限らず、平衡反応と実際の反応(実験では、速度を伴う時間の因子を含む)が一致しないことは矛盾することではない。現実に起こる反応を予測・推定する上で、平衡反応が重要であることに変わりはない。

E-pH_H2O
図1 水の電位-pH 平衡図

2.有機酸・無機酸と電位-pH 平衡図

図1で示したように、大気圧(1atm)において水が酸化還元分解しない電位内で、酸化還元反応を示す有機酸の代表例として、キノンQとヒドロキノンH2Qの酸化還元電位を事例として挙げる。なお、ここでは概略を理解することが目的であり、取扱を簡略するため、希薄水溶液とし各物質の活量係数は全て‘1’とし、濃度表示で記載する。
Q + 2H+ 2e = H2Q  E = Eº+ RT/(2F) ln K  (1q)
K = [H2Q]/([Q][H+]2)

一方、ヒドロキノンはつぎのように酸解離する。
H2Q = HQ + H+  Ka2 = [HQ][H+]/[H2Q]  (2q)
HQ = Q2- +H+  Ka1 = [Q2-][H+]/[HQ]  (3q)

文献値によって解離定数の値が異なる(測定条件の相違)が、ここでは、Eº= 0.70V、pKa1=11.5、pKa2=9.9を用いいる。
ヒドロキノンの解離種について、pH-存在率の関係を図2に示す。pH<pKa1では、H2Qが、pKa2pH<Ka1ではHQが、pKa1pHではQ2-が、それぞれ主たる解離種である。
上記式(7’)を式(1q)に当てはめると
E = 0.70 – 0.0591pH – 0.0296(pQ – pH2Q)  (4q)

式(2q)より得た、pH2Q = pHQ + pH – pKa2 、を式(4q)に代入して、
E = 0.41– 0.0296pH – 0.0296(pQ – pHQ)  (5q)

式(3q)より得た、 pHQ = pQ2- + pH – pKa1 、を式(5q)に代入して、
E = 0.070 – 0.0296(pQ – pQ2-)  (6q)

ここで、式(4q)~(6q)において、それぞれ、[Q]=[H2Q]、[Q]=[HQ]、[Q]=[Q2-]の条件では、各式の最後の項は’0’となる。この条件下でE-pHの関係をグラフ化したものが、図3である。
すなわち、式(4q)→AB、式(5q)→BC、式(6q)→CDにそれぞれ対応するE-pHのグラフで、CDはpHに依存せずEは一定で、pHに平行な直線となる。

pH-hydro_quinone
図2 ヒドロキノンの解離種のpH-存在率の関係
E-pH_quinone
図3 キノン-ヒドロキノンの電位-pH 平衡図(25℃、1atm)
黒線AB:Q-H2Q、黒線BC:Q-HQ、黒線CD:Q-Q2-、緑破線:H2発生(1atm)、赤破線:O2発生(1atm)

(以下、執筆中)
E-pH-CO2
図4 炭酸H2CO3の希薄水溶液の電位-pH 平衡図
pΣ[Ci]=10、25℃、1atm

3.金属の電位-pHの事例

E-pH-Al
図5 アルミニウムAlの希薄水溶液の電位-pH 平衡図
pΣ[Ali]=10、25℃、1atm


E-pH-Fe
図6 鉄Feの希薄水溶液の電位-pH 平衡図
物質記号(鉄の酸化数)の色:黒-金属Fe、緑-Fe2+、茶-Fe3+;pΣ[Fei]=10、25℃、1atm


掲載日:2018年01月23日
更新日:

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