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環境技術 2008


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2008年 特集号の概要
      目 次 総目次-分野別-
 1月号 2008年環境行政展望
 2月号 PI は公共事業に有効か
 3月号 ベトナムの環境と日本の技術協力、(特別企画)-上水道への紫外線処理導入の背景と現状
 4月号 生物学的排水処理のプロセスとその維持管理
 5月号 有機フッ素化合物PFOS・PFOAによる環境汚染
 6月号 温暖化の現状と対策の行方
 7月号 大気汚染の自動測定機、マニュアル改訂
 8月号 途上国での環境アセスメントからの教訓と提言
 9月号 北海道洞爺湖サミットにおける環境分野の成果と展望
10月号 環境用水のあり方を考える
11月号 湿地の再生と管理-宍道湖と中海をめぐって-
12月号 医薬品の環境負荷と環境汚染


1月号  2008年環境行政展望



 2月号PIは公共事業に有効か
編集: 2008-02-00 中央復建コンサルタンツ㈱・藤森 茂之

 公共事業の計画では住民の参加が必要とされ、パブリックインボルブメント(Public Involvement(公衆関与、市民参画)、以下「PI」)という言葉がよく使われている。また、持続可能な社会をつくるための環境基本計画や各種の環境計画の分野でも参加は必須条件となっている。
<PI とは> PI は、アメリカで発達した概念であり、直訳すれば「市民を巻き込むこと」になる。つまり、政策過程に、広く国民(市民)を巻き込む(参加してもらう)ということになる。
 一般的には、PI は「行政が計画の策定に際し、広く意見・意思を調査する時間を確保し、かつ、策定の過程を知る機会を設ける」しくみのことである。また、「事業実施段階で情報公開し、地域の住民と対話を重ねながら、その結果を計画づくりに反映しようとする住民参加手法」のことと言われることもある。
 最近、公共事業の計画策定段階で市民に対して情報を公開し、意見を求めるものがよく見受けられる。釧路湿原の自然再生事業では、自然再生協議会がニュースレターを頻繁に発行するとともに、自然再生協議会や各種小委員会の活動状況等がホームページによって情報発信されており、「釧路湿原自然再生全体構想」の策定に当たっては、パブリックコメントの結果が反映されている。
<PI のプルセス> このように公共事業に対する市民参加の機会は、今後とも増加するものと考えられるが、東京工業大学の原科教授によると、参加には次の5段階があるといわれている。
 (1) 情報提供(Informing)→ (2) 意見聴取(Hearing)→ (3) 形だけの応答(Reply Only)→ (4) 意味ある応答(Meaningful Reply)→ (5) パートナーシップ(Partnership)
 (1) から順に参加のレベルは上昇し、(4) の意味ある応答とは透明な形での議論をするということである。(5) のパートナーシップでは、住民にとって権利と責任の双方が発生するため、全ての住民が関与できるわけではない。公共事業の利益は広域にわたるため、通常の公共事業ではレベル(4) の「意味ある応答」の参加が可能であるかが重要である。
 事業計画の情報公開を早い段階から実施し、公衆の意見に対し事業者が意味ある応答をすることは、これからの事業を円滑に進めるための重要な条件と考える。
<特集のねらい> 本特集では、「PI は公共事業を進めていくうえで有効か」といった観点から、4人の先生に執筆をお願いした。
 PI は、実施することが目的でなく、市民等のニーズを反映した計画の高質化、構想段階から計画策定までの経緯について、市民等から納得が得られることを目的として実施されるものであり、より効果的に目的が達成されるよう、PI の各種の課題を解決し、質的向上を図ることが重要と考える。今後、公共事業を進めていくためには PI は不可欠なものとなるが、その内容については改善していく点が多数あり、本特集がその一助となることを期待する。

2008-02-01 PIの役割と市民ニーズの計画への反映
 道路計画の構想段階におけるPIにどのような役割が求められるのか、今後満たしていくべきニーズについての討議こそが PIに求められていることを言及している。
2008-02-02 PIの理想と現実を事例から見る
 PIの理想と現実について、愛知万博検討会議、東京外郭環状道路、淀川水系流域委員会、戦略的環境アセスメント型のPI等、各種の事例から考察し、望ましいPIの姿として、発議権、ゼミ方式等、11点の必要事項について提案している。
2008-02-03 東京外郭環状道路のPIを検証する
 市民の立場から、東京外郭環状道路のPIに参加し、事業者の主張のチェックや過去の事例を検証し、環境影響評価の内容のあり方や道路計画に市民が参加することの困難さ等について言及している。
2008-02-04 淀川水系流域委員会における合意形成
 淀川水系流域委員会の前委員長を務めた経験に基づいて、私的立場から委員会の活動内容と委員意見の合意形成の実態について紹介している。。

<執筆者> 2008-02-01 鳥取大学・谷本 圭志/2008-02-02 名古屋大学名誉教授・島津 康男/2008-02-03 喜多見ポンポコ会議・江崎 美枝子/2008-02-04 京都大学名誉教授・今本 博健

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 3月号ベトナムの環境と日本の技術協力
編集: 2008-03-00 大阪産業大学・菅原 正孝

 ベトナムは、面積約33万km2、人口約8,400万人である。人口構成の特徴は、若年層が多いということ、農村人口が都市人口に比べて圧倒的に多いということである。
<経済発展> 政治政策であるドイモイ路線が定着してすでに20年を越える社会主義国で、アジアでは中国についで経済発展が著しく、この数年のGDP成長率は7~8%を誇る。主要産業は農林水産業など第一次産業であるものの、工業化の度合いは著しく、インフラ整備の進展と相俟って、海外からの企業進出には目を見張るものがある。
<環境問題と対策> 日本が数十年前に歩んだ道と同様に、経済発展に伴う公害や環境破壊は美しいベトナムの田園風景を大きく塗り替えつつある。こうした現状を改善していくための国や自治体の対策としては、1993年から1995年にかけて環境保護法をはじめ環境基準や排出基準に関する法整備がされたほか、研究機関の充実を図るべく組織の見直し、人材の確保・育成にも見るべきものがある。
 しかし、環境保護や環境改善の実態は、統計資料を見る限り、あるいは筆者自身ここ数年にわたり毎年訪越しての見聞からも遅々とした状況が続いていると言わざるを得ない。
 もっとも、排出基準遵守に向けての自治体の取り組みは、天然資源環境室を中心に実施され、政令などにより環境保護違反に対する各種の罰則が規定され、優秀な企業に対しては名誉を与えるなど、排出負荷削減促進の仕組みが構築されている。
<特集の内容> 環境分野に関しては、日越関係はことのほか良好であると思われるが、本特集においてはそうした国際的な交流共同研究等の一部を紹介し、日本とベトナムとのより一層の発展に繋がることに貢献できることを願っている。内容としては、わが国の政府、自治体、大学が環境分野において、それぞれどのようにベトナムとかかわりを持っているかについて、関西を基盤に活躍する関係者から報告している。本特集が読者のベトナムの環境問題への関心をよりいっそう高めてくれることを願い、また両国のますますの発展を祈念している。

2008-03-01 ベトナムの環境の現状とその改善策
 長年にわたる(独)国際協力機構(JICA)の環境部門の長期専門家としての派遣経験を踏まえ、ベトナムにおける環境問題全般を紹介する中で、その特徴について報告している。
2008-03-02 ベトナムにおける水環境の現状
 国立環境技術研究所の所長の立場からベトナムの水環境の現状ならびに政府の取り組みについて、その経緯と課題を述べている。とくに、先進国からの財政的、技術的な支援は欠かせないことを指摘している。
2008-03-03 アジアの持続性に資する環境総合技術の開拓に向けた日越研究者交流-日本学術振興会拠点大学方式学術交流事業-
大阪大学とベトナムの大学との間で9年にわたり続く日本学術振興会プログラム拠点大学方式交流技術事業である「地球環境創造と保全のための環境総合技術の開拓」について、本事業の経緯と成果の一端を報告している。
2008-03-04 アンモニアで汚染されたハノイ地下水の浄化に関する日越国際共同研究
 アンモニアで汚染された地下水の生物学的浄化技術の日越共同開発を紹介している。
2008-03-05 ベトナムにおける大気モニタリングの共同研究
都市部への人口集中とモータリーゼーションが進むなかでの、大気モニタリングの共同研究の成果をご紹介している。
2008-03-06 ベトナムにおけるエネルギー回収型排水処理技術
 ベトナムの高濃度有機排水に対して、UASBを用いたエネルギー回収型生物処理の実施例を報告している。
2008-03-07 大阪府-ベトナム(ホーチミン地区)間における環境ビジネス調査実施について
 大阪府がそれぞれベトナムとの間で進めている事業の一端を具体的事例や調査概要を踏まえて、環境ビジネスの展望について述べている。

<執筆者> 2008-03-01 JICA/MONRE専門家・前田 泰昭/2008-03-02 ベトナム国立科学技術アカデミー環境技術研究所・Nguyen The Dong(編訳:濱崎 竜英)/2008-03-03 大阪大学・池 道彦/2008-03-04 熊本大学・古川 憲治/2008-03-05 大阪大学・近藤 明・今村 清・石 世昆/2008-03-06 大阪産業大学・濱崎 竜英/2008-03-07 APEC環境技術交流促進事業運営協議会・児嶋 英樹

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 4月号生物学的排水処理のプロセスとその維持管理
編集: 2008-04-00 広島商船高等専門学校・村上 定瞭

<水質汚濁の発生源と処理施設・設備> 水質汚濁の発生源は、生活や産業の活動に伴う排水である。生活系排水については、下水道・農業集落排水施設・し尿処理施設・浄化槽などの生活排水処理施設により汚濁負荷の軽減が図られている。産業系排水については、水質汚濁防止法によりその水質基準が定められ、個々の事業所の状況に対応した処理施設により排水が処理・放流されている。
<排水処理の課題> 生活や産業からの排水を巡る今日の課題として多くの事柄が挙げられ、それらが相互に関係している。これらの課題の中で特に問題となっている事項は、(1) 生活様式や産業構造の変遷と排水量・組成の変化、(2) 用水の節約や排水のリサイクル、(3) 省資源・省エネルギーと地球温暖化対策、(4) 厳しい財政事情と施設の老朽化対策(特に、公共排水処理施設)、(5) 規制強化と処理機能の高度化、(6) 処理施設の運転管理に係わる人員削減や団塊世代の退職に伴う技術継承などである。
<排水の組成と性状> ところで、排水中の汚濁物質の組成や濃度は、生活系・産業系で全く異なる。生活系排水は、夾雑物を除くと生物由来の汚濁物質が主成分で、生物学的処理技術を中核とするプロセスにより浄化される。産業系排水は、その事業分野により、無機系または有機系あるいは双方の汚濁物質を含み、組成や濃度も異なり、その浄化プロセスは様々な要素技術の中からのいくつかの選択とそれらの組合せにより構成されている。
<特集の内容> 以上述べたような生活・産業からの排水に係わる諸課題に対し、本特集では、排水処理施設に広く適用されている生物処理プロセスに的を絞って、排水組成・性状の特徴およびその処理プロセスの基本原理と維持管理に関する特集号を企画した。
 ここで取り挙げた分野ごとの排水として、生活排水分野からは下水・農業集落排水・し尿・浄化槽、農畜水産業分野からは畜産排水(畜産廃棄物)、工業分野からは食品工業排水、IT工業排水、化学工業排水をそれぞれ取り上げた。執筆は、それぞれの排水処理の分野で活躍されている研究者・技術者・管理者の方々にお願いした。各解説の内容は、排水組成の特徴、施設・設備の概要、プロセス設計や維持管理に係わる事項の概説に加え、今日の排水処理に係わる諸課題も含めたものとなっている。
 生物処理全般についてはプロセスの基本原理と運転管理、下水については標準活性汚泥の維持管理とその課題、農業集落排水については処理施設の機能強化、し尿・浄化槽汚泥については再生処理センターの役割と施設・設備、畜産排水については養豚糞尿のバイオガスプラント、食品工業排水については基本プロセスと維持管理、IT工業排水については処理施設の構成と生物処理の維持管理、化学工業については生物プロセスとその維持管理をそれぞれ中心とする解説がなされている。

2008-04-01 生物学的排水処理の基本原理とプロセス
   排水処理、微生物、基本原理、処理プロセス
2008-04-02 標準活性汚泥法の維持管理とその課題
   標準活性汚泥法、硝化、固液分離障害、省エネルギー、活性汚泥モデル
2008-04-03 農業集落排水処理施設の機能強化(改築)技術について
   農業集落排水処理施設、機能強化技術、処理方式の切替改築
2008-04-04 し尿・汚泥処理における現状と今後の展望
   し尿、浄化槽汚泥、硝化脱窒、膜分離、汚泥脱水
2008-04-05 養豚糞尿のバイオガスプラント
   養豚、糞尿、バイオガス、メタン発酵、新エネルギー
2008-04-06 食品工場における生物処理法を用いた排水処理技術
   生物処理、食品工場、排水処理、運転管理
2008-04-07 T産業排水における生物処理プロセスの設計とその維持管理
   IT産業、半導体LSI、液晶ディスプレイ、生物分解性、生分解性
2008-04-08 化学工業排水における生物処理プロセスとその維持管理
   化学工業排水、生物処理、プロセス計画、維持管理

<執筆者> 2008-04-01 宇部工業高等専門学校・竹内 正美・山﨑 博人・村上 定瞭/2008-04-02 日本下水道事業団技術開発部・村上 孝雄/2008-04-03 (社)地域資源循環技術センター・小西 美智孝・佐藤 進・泉本 和義/2008-04-04 アタカ大機㈱・奥野 芳男/2008-04-05 ㈱コプロス・廣川 宏康/2008-04-06 松下環境空調エンジニアリング㈱・榊原 隆司/2008-04-07 松下環境空調エンジニアリング㈱・奥田 友章・山口 典生/2008-04-08 富士フイルム㈱ 宮崎 英男・竹内 正美・村上 定瞭

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 5月号有機フッ素化合物PFOS・PFOAによる環境汚染
編集: 2008-05-00 国際エメックスセンター・古武家 善成

 昨年5月、国内のいくつかの新聞で有機フッ素化合物PFOS・PFOAの名前が紙面を飾った。その記事の内容は、全国的な調査結果から、これらの物質が京阪神地域の河川水中に高濃度で存在し、水道水や住民の血液中の濃度も高いというものであった。記事の内容の一部はすでに2003年に報道されていたが、今回の報道では、その後の調査結果を合わせPFOS・PFOAによる環境汚染の現状が改めて示された。この全国調査を実施したのが京都大学小泉研究室・岩手県の研究グループである。
<PFOS・PFOAとは> 有機フッ素化合物のPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、特集論文に詳述されているようにフッ素系の界面活性剤である。界面活性剤の疎水性部分であるアルキル基の水素原子がフッ素原子に置き換わることにより界面活性剤作用がより強まり、強い撥水性、撥油性、化学的安定性などを示したことから、私たちに馴染み深い製品をはじめ家庭や産業界で広く用いられることになった。しかし、これらの物質は発ガン性発達毒性などの有害作用を有し、微量ではあるが環境中に広く残留することが明らかになってきた。国際的にも、PFOSはクロルデン、ペンタブロモジフェニルエーテルなどとともにPOPs条約への追加が検討されており、経済産業省も、産業界に対して“PFOS製造禁止に伴う代替可能性”について調査を行うようになってきた。PFOS、PFOAは第2、第3のPCBになるのであろうか。
<特集の内容> このような新たな環境汚染物質であるPFOS・PFOAの最新情報について、物性や分析法から環境汚染の現状や無害化処理法までを報告する。有機フッ素化合物の環境汚染については、最近ではPFOS・PFOAにとどまらず、フルオロテロマーアルコールなど環境中で前駆物質となっている関連物質の環境濃度に関する調査結果も報告されるようになっている。このように、有機フッ素化合物に関する環境問題の奥は深い。有機フッ素化合物汚染の全体像については改めて特集を組みたい。

2008-05-01 PFOS・PFOA 物性、製造と分析法
 物性や製造法の概要とともに、水・大気・ヒト・生物試料に関する詳しい分析法について、齋藤 憲光・原田 浩二両氏が執筆した。
2008-05-02 PFOS・PFOA 国内および国際的動向
 PFOS、PFOAの汚染問題の発端となった米国3M社、DuPont社の対応やUSEPAの動向、国内の動きなどについて、小泉 昭夫・原田 浩二両氏が執筆した。
2008-05-03 PFOS・PFOA 環境汚染の現状と健康リスク
 国内の汚染状況や詳しい毒性情報・ヒト健康リスクについて、原田 浩二・小泉 昭夫両氏が執筆した。
2008-05-04 PFOS・PFOA 分解・無害化反応システムの開発
 自ら開発されたヘテロポリ酸、過硫酸イオンなどによる光分解反応や亜臨界水反応を中心に、長年ご研究されている堀 久男氏が執筆した。


<執筆者> 2008-05-01 岩手県環境保健研究センター・齋藤 憲光、京都大学・原田 浩二/2008-05-02 京都大学・小泉 昭夫・原田 浩二/2008-05-03 京都大学・原田 浩二・小泉 昭夫/2008-05-04 (独)産業技術総合研究所・堀 久男

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 6月号温暖化の現状と対策の行方
編集: 2008-06-00 龍谷大学・増田 啓子

<温暖化の現状> 世界の年平均気温は2007年までの100年間に0.72℃、25年間に0.46℃上昇し、近年ほど上昇率が大きい。日本も100年間に1.2℃、25年間に1.0℃と、世界よりさらに上昇率は大きく、近年の温暖化が著しい。2007年の年平均気温を見ても世界は平年値を0.28℃、日本は0.85℃上回り温暖な年であった。日本のこの年の冬の平均気温は全国 153気象官署のうち63個所で高い記録を更新した。特に、2月の平均気温は平年値より 2.35℃も高温を記録した。夏の平均気温も、7月は平年を下回わったものの、8月は1.28℃、9月は1.94℃も高温を記録した。8月16日には熊谷や多治見では 40.9℃を記録し、国内最高値となった。8月の最高気温は821地点中101地点で観測史上最高を記録した。
<温暖化対策> 日本ではこの地球温暖化をさらに人々に浸透させる北海道洞爺湖サミットが2008年7月に行われる。90年比でCO2を20年までに25~40%、50年までに60~80%の削減目標とする次期枠組について議論される。議長国である日本は、12年までに90年比で-6%という目標さえ達成できそうにないのに、中長期目標を明確にする責任がある。誰もが環境が悪くなることは望んではおらず、政府の主導しだいで温暖化対策に向けた環境保全活動は飛躍的に進むものと期待される。
<温暖化の理解> だが、地球温暖化対策ばかりを考えるあまり、その策が将来の人類や環境に悪影響を引き起こす環境問題となってはならない。そのためには、国、行政、企業、そして国民一人一人が地球温暖化を正しく理解し、本当に進めるべき対策をグローバルに長期的な評価をしながら進めなくてはならない。

2008-06-01 過去からみた現在の温暖化気候
 現在の温暖化した気候は、過去の長い時間での気候変動から眺めると、どのように位置づけられるか。地球の気候をさまざまな時間スケールから眺め、現在の気候を考えてみる。
2008-06-02 地球温暖化とヒートアイランド現象による温暖化-世界・日本・近畿の気温の長期変動-
 日本の気温上昇を、世界の気温を上昇させている地球温暖化と、都市化によるヒートアイランド現象という2つの温暖化を識別してみる。
2008-06-03 温暖化が我が国の農業生産に及ぼす影響とその対策について
 我が国における都道府県の農業関連研究機関へのアンケート結果の解析から、温暖化の影響が水稲、麦類、大豆、野菜、花き、飼料植物、家畜生産などの農業生産現場で顕在化していることを述べ、その適応策がまとめられている。
2008-06-04 地球温暖化緩和への森林の役割
 地球温暖化における森林の位置づけや役割、京都議定書における日本の森林吸収源、および途上国の森林減少の問題などについて、考え直させる。
2008-06-05 地球温暖化-健康影響と対策-
 地球温暖化が人への健康面へどのように影響するのか、熱ストレスによる疾患や動物媒介性感染症について紹介し、未然防止を考える。
2008-06-06 地球温暖化が琵琶湖に与える影響
 近年の暖冬傾向で琵琶湖の湖底の溶存酸素濃度が減少し、生物への影響が懸念されている。温暖化すると閉鎖性水域にどのような影響が現れるかを考える。
2008-06-07 再生可能エネルギー普及の最新動向と政策
 乏しくなっていく石油に代わるエネルギーは何が最善策なのか、風力発電や太陽光発電、バイオマス利用など再生可能なエネルギーの普及を最新動向から考える。

<執筆者> 2008-06-01 同志社大学・増田 富士雄・増田 啓子/2008-06-02 龍谷大学・増田 啓子/2008-06-03 (独)農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所・本多 親子・杉浦 俊彦/2008-06-04 (独)森林総合研究所・松本 光朗/2008-06-05 (独)国立環境研究所・小野 雅司/2008-06-06 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター・熊谷 道夫/2008-06-07 元 立命館大学・和田 武

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 7月号大気汚染の自動測定機、マニュアル改訂
編集: 2008-07-00 大阪府立大学・坂東 博

<大気汚染の経緯と現状>わが国各界の永年の努力により、国内大気環境の状況は昭和40~50年代の高度成長期のような重篤な汚染問題は影を潜めたものの、近年の東アジアの急速な経済発展に伴う越境大気汚染が徐々に進行している。かつては光化学オキシダントの警報や注意報とは縁が薄かった九州北部や日本海側の地域において、一昨年あたりからときどき注意報の発令にいたる事態も見られる。このように、環境大気に対する人為影響は、地球規模で拡大しながら大気質の汚染状況を底上げしつつある。
<環境大気常時監視の経緯>一方、国際比較の必要性から、大気環境の質を示す指標も世界標準に合うものが求められるようになってきた。また、環境大気常時監視業務の現場では監視体制の維持・管理作業の負担低減化の潜在的要求と相まって、環境庁は1996年に二酸化硫黄、二酸化窒素および光化学オキシダントの公定測定法に乾式測定法を導入することに踏み切った。これを受けて、1997年に「環境大気常時監視マニュアル」の第3次改訂(同4版)が行われた。
<常時監視業務の変遷と課題>乾式自動測定機の導入により機器の稼動安定性が得られ、維持管理業務の負担低減を可能にする。そのため、財政状況が厳しいほとんどの自治体にあって、大気汚染の状況が全般的に改善方向にあるとみられる現状で、業務担当者数の格好の削減対象となり、また2007年問題といわれる団塊世代の技術者の大量退職時代到来と重なり、常時監視業務部門の高度専門家数はかなり減少した。
 常時監視システムの管理責任主体である各自治体では、一般論として維持管理のために現場で装置に接する機会が減少し、それまでの湿式法では必要であった機器内部の洗浄など、分解・組立を要する煩雑な工程もなくなり、結果として校正の頻度が少なくなる。
 こうした状況は結果として何をもたらすだろうか?
 (1) 測定装置がブラックボックス化し、そこから生み出されるデータが内包する問題点への想像力が働かなくなる。
 (2) そのデータに対する思い入れが低下し、データは単に時系列の数値群以上のものではなくなる。システムが安定してデータを供給し続ける限り、多数の業務を同時に抱える現在の自治体環境監視部門の担当者にとって、あえてそれ以上にデータの質を吟味する必然性を徐々に感じなくなっていくであろう。
 (3) データがテレメータシステム(これも、前回の改訂版ではデータ転送の主役の地位にあったが、今や民間のインターネットインフラを利用することで、安価でより安定してデータを中央監視センターに集積できる。これらの点も今回の改訂では記述が加わった)から順調に吐き出されてくる限り、それは「正常」とみなされ得る。
 (4) 実は測定項目とはまったく別物の干渉を受けているデータであっても、多くの人の目を潜り抜け、現場の環境を代表する確定値として生き残ってしまう可能性は高くなる。
 (5) 一昨年に発覚したS社製窒素酸化物計の不備に基づく測定データの信頼性を過去に遡って検討するに至った事態は、製造メーカーにおけるこのような問題を図らずも露わにした事例と筆者は感じた。このときは、自治体の現場担当者の、データに対して抱いた疑問が発端となり、S社との長い検討の結果、問題点が明らかになり得た。彼らの疑問がなければ、この問題はどのような経過を辿ったか? 環境計測に関わる者の一人として、心に留めておくべき出来事であった。
<マニュアル改訂と特集の内容>マニュアルの前改訂版(4版)の発行から10年弱を経て、乾式法への更新が徐々に進み、使用実績が蓄積してきたことから、それらの経験知も活かした新たなマニュアル改訂が2007年3月に発行となった(同5版)。本特集では、これを機会に、第5版の改訂に関係された専門家諸氏ならびに現場での維持管理の担当者から、マニュアル改訂の主なポイントと、常時監視の現場で感じられる問題点などを紹介することにした。

2008-07-01 環境大気常時監視マニュアルの改訂について
2008-07-02 自動測定機による環境大気常時監視システムの維持
2008-07-03 環境大気常時監視マニュアル第5版 第2・3章 改訂のポイント
2008-07-04 「自動測定機の維持管理」と「測定値の確定及び管理」-マニュアル第5版 第4章、第6章改訂のポイント- 
2008-07-05 最近のIT技術の進展とマニュアル第5版第5章改訂のポイント
2008-07-06 環境大気常時監視の維持管理の現場の声

<執筆者> 2008-07-01 環境省・西村 洋一/2008-07-02 埼玉大学・坂本 和彦/2008-07-03 (社)日本環境技術協会・三笠 元/2008-07-04 千葉県環境研究センター・吉成 晴彦/2008-07-05 福岡県保健環境研究所・大久保 彰人・菊池 宗光・田中 孝典・山本 知/2008-07-06 (財)千葉県環境財団・中後 謙一郎

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 8月号途上国での環境アセスメントからの教訓と提言
編集: 2008-08-00 アイ・シー・ネット(株)・浦郷 昭子

環境アセスメントは、どうすれば意味のあるものになるのだろうか。制度やルールが整備されても適切な審査が伴わなければ意味がないし、早い段階から関われるようになったとしても影響回避につなげられなければ意味がない。制度やルールの整備のほかに、審査技術の向上、事業者の理解、市民の理解、予測技術の向上など、多面的なアプローチが必要である。今回の特集は、制度の専門家、審査者、NGO、実務者によって環境アセスメントを多面的に分析することで、環境アセスメントの効果向上への糸口を探ることをねらいとしている。
 この特集では、政府開発援助(ODA)事業の環境アセスメントに焦点を当てている。ODA事業の環境アセスメントは、戦略的環境アセスメントを取り込んでいるほか、代替案の検討、透明性の確保など、国内の環境アセスメントよりも制度面では先進的である。これらODA事業の環境アセスメントを分析することで、将来環境アセスメントの進むべき道筋を見出すことができるのではないかとも期待している。

2008-08-01 途上国での環境社会配慮-JICA・JBICの現行ガイドラインと新JICA-
 ODA事業は複数の組織が関係する上、意思決定過程が複雑であり、分かりにくい。さらに各組織がそれぞれ環境社会配慮ガイドラインを策定しているため、環境社会配慮の仕組みも分かり難い。これら複雑なODAの環境社会配慮を、JBIC(国際協力銀行)、JICA((独)国際協力機構)双方の環境社会配慮ガイドライン作成に携わった原科氏が、分かりやすく解説している。
2008-08-02 東南・南西アジアの環境社会配慮制度の現状と今後の展望
 制度策定に欧米ドナーが支援していることもあって、途上国の環境アセスメント制度には先進的なものもある。きちんと運用されているかどうかは別にして、これら制度から学ぶことは多い。これらアジア諸国の環境アセスメント制度は、アジア諸国での環境社会配慮を数多く経験している臼井氏が分析している。
2008-08-03 国際協力銀行(JBIC)環境社会配慮ガイドラインの実施に係る考察
資金を貸す側からの環境社会配慮は、実はかなりの力がある。自然保護団体が訴えても動かなかったものが、環境社会配慮を貸付の条件にするだけで確実になる可能性もあるからである。そういう意味でJBICは攻めの環境社会配慮のできる数少ない機関であろう。JBICの環境社会配慮は、JBIC環境審査室の齋藤氏が紹介している。
2008-08-04 国際協力機構(JICA)における環境社会配慮の取り組み
 JICAの環境社会配慮は、計画の早い段階に実施されるため、計画アセスメントや戦略的環境アセスメントに意欲的に取り組んでいる。国内ではなかなか本格的な代替案が見られないが、JICAでは代替案の比較検討など、学ぶべきところが多い。これらの事例は JICA審査室準備室の村瀬氏・渡辺氏が詳しく紹介している。
2008-08-05 海外向け公的資金の環境社会配慮と市民社会
 海外では環境アセスメントに意見を言う立場にあるNGOも強力である。ただ事業に反対するのではなく、環境アセスメントの情報公開、意見陳述の場を最大限に活用し、意思決定に大きな影響を与えている。ともすると存在さえも無視されてしまいがちな弱い立場の市民の意見をNGOが丁寧に拾い上げる過程を、NPOメコン・ウォッチの松本氏が紹介している。
2008-08-06 参加型開発と社会配慮-現場で学んだ12の教訓-
 日本の環境コンサルタントが海外に出て最も戸惑うのが社会環境配慮である。移転対策は何とか分かるが、それ以外は未知の世界である。一方、環境アセスメントではないが、海外の村落開発の現場では、村人が自分達で村の方向性を決めていくような参加型開発が多く行われており、その考え方は、あるべき社会配慮の姿を考える上で多くのヒントを与えてくれる。アフリカでの村落開発を中心に社会配慮の経験の豊富な島津氏は、このような社会配慮の真髄を紹介している。
2008-08-07 実務者から見た途上国の環境社会配慮
 実際に環境アセスメントのレポートを作成する実務者の立場から、技術面での問題点の分析を本特集の編集者である浦郷氏が試みている。

<執筆者> 2008-08-01 東京工業大学・原科 幸彦/2008-08-02 (独)国際協力機構 臼井 寛二/2008-08-03 国際協力銀行・齋藤 法雄/2008-08-04 (独)国際協力機構・村瀬 憲昭・渡辺 泰介/2008-08-05 NPOメコン・ウォッチ・松本 悟/2008-08-06 (資)環境と開発研究所・島津 英世/2008-08-07 アイ・シー・ネット(株)・浦郷 昭子

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 9月号北海道洞爺湖サミットにおける環境分野の成果と展望
編集: 2008-09-00 立命館大学・仲上 健一

1.北海道洞爺湖サミット
 北海道洞爺湖サミットは、2008年7月9日に全日程を終え成功裏に閉幕した。
<サミット議長>総括では、世界経済環境・気候変動開発・アフリカ政治問題の4分野で議論結果がまとめられた。
<主要8ヵ国>(G8)の首脳は、「3つの危機」、すなわち、「原油高騰」、「食料価格の上昇」、「地球温暖化」に対する処方箋づくりに傾注した。
<首脳宣言>では、「2050年までに世界全体の温暖化ガスの排出量を半減するという長期目標を世界が共有するよう求める。」、中期目標について、「野心的な国別総量目標の実施」ということを言及した。
<主要排出国>会合(MEM)首脳宣言では、「長期目標として、「低炭素社会の実現を目指した」排出量削減の世界全体の長期目標を含む、長期的な協力行動のためのビジョンの共有を支持する。」とし、中期目標として、「世界全体の長期目標の達成には、とりわけ社会及び経済的条件、エネルギーミックス、人口動態、インフラに関する差異などを考慮しつつ、バリ行動計画の合意された結果に反映されることになる個別の中期目標、約束、行動が必要となる。」とまとめた。
<環境G8>北海道洞爺湖サミットに先立って、5月24~26日、神戸市において、「環境G8」が開催され、「気候変動」「生物多様性」「3R」のテーマが話し合われ、サ、ミット前哨戦の、様相を呈した。
 以上の内容については、「北海道洞爺湖サミットでの環境・気候変動分野の成果」として、環境省地球環境局総務課から寄稿されている(2008-09-01)。
<G8大学サミット>大学関係でも、6月30日~7月1日に札幌市において、G8大学サミットが初めて開催され、「グローバル・サステイナビリティと大学の役割」というテーマで、世界の35大学で活発な討議が行われた。この概要は、立命館大学川口清史学長報告に紹介されている(2008-09-02)。
2.特集の内容
 本特集では、「北海道洞爺湖サミット」の成果と課題を検証しつつも、環境政策、環境技術という視点で、「環境分野の成果と展望」を目指して、関連研究の最先端を紹介することを狙いとした。
 近年、サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)において、「サステイナビリティ学」の構築に関する研究・教育分野での議論が旺盛になってきている。サステイナビリティ学の目標は、従来の「環境」の分野に限定せず、「地球システム、社会システム、人間システムの再構築と修復」にある。さらに「これらの3つのシステムおよびその相互関係に破綻をもたらしつつあるメカニズムを解明し、持続可能性という観点から各システムを再構築し、相互関係を修復する方策とビジョンの提示を目指す。」ものである。本特集では、「環境技術」と「サステイナビリティ学」を連結し、「サステイナブル・ソサエティー」構築のための方策を探るものである。
 本特集ではIR3S、大阪大学サステイナビリティ・サイエンス機構(RISS)の研究プロジェクトの一環として、環境省の「地球環境研究総合推進費 H20地球環境問題対応型研究-「都市・農村の地域連携を基礎とした低炭素社会のエコデザイン (FY2008-FY2010)(代表梅田靖大阪大学大学院教授)」に参加する大阪大学・北海道大学・立命館大学の研究者、さらには、立命館大学サステイナビリティ学研究センターの研究員を中心に、「北海道洞爺湖サミット」の成果と課題についてそれぞれの研究の視点で論を展開していただいた(2008-09-03~2008-09-08)。

2008-09-01 北海道洞爺湖サミットでの環境・気候変動分野の成果
2008-09-02 G8大学サミットとサステイナビリティ学-大学・研究機関の役割-
2008-09-03 北海道洞爺湖サミットの成果とJEARIC’sの課題
2008-09-04 熱帯泥炭・森林の修復と保全による地球温暖化防止
2008-09-05 「低炭素型環境都市」による持続可能なまちづくり
2008-09-06 低炭素社会へ向けたシナリオの構造的記述
2008-09-06 広域低炭素社会実現を目指して-「低炭素共同体」構想の提起-
2008-09-07 製品の設計寿命延長による資源節約と地球環境負荷低減

<執筆者> 2008-09-01 環境省・小林 香/2008-09-02 立命館大学・川口 清史/2008-09-03 立命館大学・仲上 健一/2008-09-04 北海道大学・大崎 満/2008-09-05 大阪大学・盛岡 通/2008-09-06 大阪大学・梅田 靖/2008-09-07 立命館大学・周 ●生/2008-09-08 立命館大学・酒井 達雄・天野 耕二

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10月号環境用水のあり方を考える
編集: 2008-10-00 内外エンジニアリング㈱・足立考之

<環境用水の動き>環境用水をめぐる諸相は多様である。国内を概観すると、2005年1月に「六郷堀・七郷堀」(仙台市)において河川からの冬季取水が許可され通年通水に成功し、これを機に国土交通省河川局は、地方自治体などが環境水利権を取得する場合の「環境用水に係る水利使用許可の取扱い基準の策定」(2006年3月)を通達した。その適用第1号は「亀田郷」(新潟市、2006年10月)の冬季導水である。また「都市化地域水環境改善実証調査」(2002年度~2006年度実施の農林水産省と国交省の連携事業)のなかで、「小牧川」(山形県酒井市)は、河川浄化を目的に農業用水の一部を環境用水に活用することが許可されている。さらに環境省大気・水環境局は「環境用水導入事例~魅力ある身近な水辺づくりにむけて~」(2007年3月)において、地方自治体や NPOが実施した全国 47地区の導水事例をヒアリング調査した結果をとりまとめた。また農水省農村振興局は「地域水ネットワーク再生事業」(2008年度新規施策)を立ち上げ、環境用水を含む新たな用水を地域で取得する取り組みを推進する。これら一連の動きは、地域の知恵や発想を実現する取り組みとして注視したい。
<海外の動向>海外の動きでは2つの潮流に注目したい。一つは、近年の国際的な水議論の場でしばしば話題となる「E-フロー(environmental flows、環境流量)」である。主に河川において生態系保全に必要な流水の確保は最優先すべきという議論であるが、そこには科学的な知見と同時に地域や国によって異なる社会的文脈のなかでの判断が含まれている。国内においても最近の議論や提言にみられ、今後の水利用や水管理のあり方について重要な課題を投げかけている。もうひとつは、「水利権取引市場」である。いくつかの地域や国では活発に議論され、また実施されている。これまでわが国はダムづくりによる供給強化策で需給緩和を達成してきたが、既存の水利権が社会的な変化によって初期の目的の意味を失った場合、それによって需要コントロールが長期にわたり制限を受け続けるのは好ましくない。これまで視野になかった選択肢について特区などでの社会実験を行うなどの大胆な試行と検証の積み重ねが必要であろう。
<特集の内容>世界的にも水利用のあり方が注目されるなかで、わたしたちは今回の特集を通し、あらたな水利秩序形成に向けて多くの可能性に関わる有用な知見を得た。農業水利や河川工学・環境科学・総合政策・経済学などのさまざまな分野からの斬新な提言や含蓄に富む示唆が込められている。この特集は、2007年2月号特集「あらたな都市の水環境を考える」でテーマとした環境用水に関するその後の全国動向を俯瞰した発展形の企画である。

2008-10-01 地域水ネットワークの再生と環境用水-農業水利改革の新たな視点-
 わが国の伝統的な農業水利システムは水田用水が生態系の維持など環境保全の役割を同時に担ってきたが、その意味と価値を再考し評価する。
2008-10-02 環境用水の類型と成立契機
 環境用水事業は成功事例を直ちに移転できるモノでなく、水利権調整や維持管理など機能、制度両面において、その地域固有の判断を考慮しなければならない。
2008-10-03 環境用水創出のための行政界を超えた新たな地域連携-淀川左岸地域を事例として-
 行政が発案・実施し住民が享受・評価するというこれまでの図式的な役割区分を脱し、地域の人々の共同作業や負担を起点とした連携が重要である。
2008-10-04 環境用水の導入に向けた合意形成プロセスモデルの考案
 合意形成では、その方針、手続き、方法論に関する一貫性を堅持しながら、計画から管理にいたる各プロセスで多様な選択肢を提示する。
2008-10-05 環境流水(E-フロー)をめぐる世界の動向とわが国の取り組み
 E-フローの本質をめぐる多様な議論をふまえ、財務的評価と経済価値評価を兼ね備えた流域経営の視点で公共信託を含む政策転換を図る。
2008-10-06 オーストラリアの環境用水と水利権取引市場
 各地域での社会的判断にまで切り込んだ、さまざまな形の代替案の提示により、市場を介し効率的利用の可能性を探る、等々である。

<執筆者> 2008-10-01 鳥取環境大学・三野 徹/2008-10-02 滋賀県立大学・秋山 道雄/2008-10-03 摂南大学・澤井 健二/2008-10-04 滋賀県立大学・錦澤 滋雄/2008-10-05 滋賀大学・中村 正久/2008-10-06 滋賀大学・近藤 学

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11月号湿地の再生と管理-宍道湖と中海をめぐって-
編集: 2008-11-00 島根大学・武田 育郎

<宍道湖の意義と役割>島根県東部に位置する宍道湖では、古くからシジミ漁が盛んであり、宍道湖のシジミ(ヤマトシジミ)漁獲高は全国の約4割を占め、最も多い。朝もやの中、静かな湖面に多数のシジミ舟の浮かぶ風景は一幅の絵にもなり、城下町松江の観光資源の一つとなっている。また、シジミのほか、スズキ、モロゲエビ(ヨシエビ)、ウナギ、アマサギ(ワカサギ)、コイ、シラウオは宍道湖七珍と呼ばれ、豊かな食卓の演出にも貢献している。さらに、宍道湖やその周辺は有数の水鳥の飛来地でもあり、特に冬季には白鳥やウミネコ、ガン・カモ類が多く見られ、バードウォッチングのスポットも豊富である。
 宍道湖は2005年に近接する中海とともにラムサール条約(水鳥や魚介類をはじめ湿地の持つ幅広い機能を保全するための条約)に登録され、これらの湖における自然との共生をふまえた「賢明な利用」が重要なテーマとなっている。
<水質の現状>一方、宍道湖と中海は、湖沼水質保全特別措置法の指定湖沼でもあり、現在は第4期の水質保全計画が進行中である。これらの湖の環境基準は、全窒素 0.4mg/L、全リン 0.03mg/L、COD 3mg/Lであるが、これまでに環境基準をクリアした年はなく、最近20年の水質の推移は、年によって増減があるものの、後述の人口減少にもかかわらず、顕著な改善がみられない。そして、宍道湖ではアオコが、中海では赤潮が時として出現するなど、これらの湖での水質改善が重要な課題となっている。
<地域の状況>わが国の人口密度の都道府県平均は342人/km2であるが、島根県は112人/km2と少なく、これは全国で下から4番目という位置づけにある。宍道湖と中海の集水域については、人口増加にあるのは松江市や出雲市などの都市部に限られており、その他の多くは過疎化・高齢化の進行によって人口減少が著しい中山間地域である。わが国の人口は、2005年より減少に転じたとされ、また、最近のコンパクト・シティーの概念なども考えると、今後は多くの地域で次第に人口減少の傾向にあると考えられる。このような中、島根県の過疎化・高齢化の進行は全国レベルよりも10年早いとの言もあり、その意味ではフロントランナーであるとも言える。
<汽水域研究プロジェクト>島根大学では、2005~2007年度の3年計画で重点研究プロジェクト「汽水域の自然・環境再生研究拠点形成プロジェクト」が策定され、生態学・環境工学・地球化学・分析化学・水文学などの様々な分野を専門とする二十数名の研究者による、宍道湖と中海の再生と管理をめざした科学的なアプローチが行われた。本研究プロジェクトでは、5つの研究チームが編成された(生態系モニタリングシステムチーム、水環境修復技術チーム、底質活用チーム、流域統合管理法開発チーム、水環境評価と地域連携チーム)。本特集では、プロジェクト全体の総括および各研究チームから、それぞれの取組とその成果について紹介する。

2008-11-01 汽水域の自然・環境再生の研究拠点形成に向けた取り組みについて
2008-11-02 水中ビジュアルモニタリング技術による汽水域の環境解析
2008-11-03 産業副産物を用いた中海浚渫窪地の埋め戻しに向けて
2008-11-04 汽水湖底質の特性と土壌資源への変換技術
2008-11-05 土壌浸透水採取による山林斜面における面源負荷の形成過程の解明
2008-11-06 自然再生推進法を活用した中海の環境改善を目指して

<執筆者> 2008-11-01 島根大学・國井 秀伸/2008-11-02 島根大学・野村 律夫/2008-11-03 島根大学・桑原 智之・兵頭 正浩・佐藤 利夫・野中 資博/2008-11-04 島根大学・石賀 裕明/2008-11-05 島根大学・森 也寸志・宗村 広昭・武田 育郎/2008-11-06 島根大学・相崎 守弘

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12月号医薬品の環境負荷と環境汚染
編集: 2008-12-00 (財)国際エメックスセンター・古武家 善成

<医薬品と環境負荷>医薬品は私たちの命を守るのに不可欠の化学物質である。その意味では、医薬品の使用に制限が加わるようなことがあってはならない。しかし、一方では、同じ患者に異なる医療機関から類似の薬が処方され、患者がそれを服用せずに捨てるという類いの話しを耳にして久しい。これは医療制度の不備を表しているのに他ならないが、このように捨てられ、あるいは体内から排出された過剰の医薬品は、最後には環境に負荷され環境を汚染することになる。
<医薬品と環境汚染の研究動向>医薬品による環境汚染問題がヨーロッパ、アメリカの研究者の大きな関心を呼んでいることを、編者は6年前のある国際学会で知った。その当時、日本では内分泌撹乱化学物質、いわゆる環境ホルモン物質による環境汚染や環境動態がまだ研究の中心になっており、編者もその関連の発表を行っていた。その時、これまでの環境汚染問題と同様に、「数年後には日本でもこの問題に関する研究が広がるだろう」と考えたが、その予想は見事に当たった。ここ1・2年の間に、日本でも医薬品の環境汚染に関する研究が急速に進んでいる。
<特集の内容>日本でも知見が蓄積してきた医薬品の環境汚染問題に焦点を当てた。医薬品の適用を考えた場合、それは人間に対してのみではない。畜産業や水産業でも、効率を求めた密集飼いに由来する感染症防止の目的での使用はもとより、肉質向上のためにも多くの医薬品が使用され、一部では「薬漬け」と批判される状況にいたっている。この特集では、医薬品による環境汚染の概要や研究の基礎となる微量分析法の現状とともに、畜産業や水産業における医薬品使用の状況についても取り上げた。
 特集論文で示されている現況から、国内においても水環境中に医薬品が残留し、医薬品による環境汚染が進行していることは明らかである。しかし、生態系やヒトへの影響に関しては、一部の事例を除き明確になっていない。また、個々の環境濃度は必ずしも高くないが多数種が残留する医薬品の複合影響に関する研究については、他の化学物質の場合同様進んでいるとはいえない。これらの課題への急速なアプローチが望まれる。

2008-12-01 水環境の医薬品類汚染と削減技術の開発
 日用品を含む100種類以上の医薬品類について、一斉分析法、河川での残存状況、処理法、生態毒性評価など、全般的な現状を執筆している。
2008-12-02 環境中微量医薬品分析の現状と課題
 水環境中の医薬品の微量一斉分析法として LC/MS/ MS法の適用を詳述している。
2008-12-03 動物用医薬品による放牧地の糞の残留汚染―イベルメクチンが非標的糞分解昆虫に及ぼす影響―
 牛用駆虫剤のイベルメクチンが糞中に排出され、標的でない昆虫の個体群にも大きな影響を及ぼしている貴重な調査結果を報告している。
2008-12-04 動物用医薬品の環境影響評価とリスク管理
 魚類も含む動物用医薬品の環境影響評価手法やリスク管理の現状について、具体的なガイダンスを多数引用しながら詳述している。
2008-12-05 水産業で使用されている医薬品
 多岐にわたる水産用医薬品について簡潔にまとめている。
2008-12-06 環境中の医薬品類由来の化学物質によるヒトに対するリスク評価
 多摩川水系などで検出された医薬品の実態濃度をもとに、ヒトへのリスク評価を詳述している。

<執筆者> 2008-12-01 京都大学・田中 宏明・山下 尚之・中田 典秀・金 一昊・鈴木 穣・小森 行也・宝輪 勲・小西 千絵・加藤 康弘・田久 保剛/2008-12-02 大阪産業大学・尾崎 博明・谷口 省吾/2008-12-03 帯広畜産大学・岩佐 光啓/2008-12-04 農林水産省動物医薬品検査所・遠藤 裕子/2008-12-05 北海道大学・吉水 守・吉田 夏子/2008-12-06 国立医薬品食品衛生研究所・西村 哲治・久保田 領志

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掲載日:2018年01月26日
更新日:2018年08月26日

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