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環境技術 2013


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2013年 特集概要
      目 次 総目次-分野別-
 1月号  2013年環境行政展望
 2月号  緊急対応型コンパクト水処理装置―上水・下水・中水・濁水・湧水―
 3月号  3.11以降の環境・エネルギー戦略 日本の温暖化対策中長期シナリオ
 4月号  3.11以降の環境・エネルギー戦略 日本の温暖化対策中長期シナリオ[Ⅱ]
 5月号  21世紀の防災を考える
 6月号  再生可能エネルギーの固定価格買取制度と廃棄物系バイオマス発電
 7月号  鉄鋼スラグ等を用いた水環境の改善・修復技術
 8月号  膜分離活性汚泥法による下水処理の技術動向
 9月号  福島第一原発事故後の放射線環境リスク
10月号  水俣(水銀)条約に係る現状と課題
11月号  レアメタルのリサイクル―都市鉱山の利用と課題―
12月号  環境水中の窒素の汚染源と処理対策・水資源管理


1月号  2013年環境行政展望
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 2月号緊急対応型コンパクト水処理装置―上水・下水・中水・濁水・湧水―
編集: 2013-02-00 大阪産業大学名誉教授・菅原 正孝

 わが国は、国土は狭小、四方海に囲まれていて、火山地帯にあり、活断層も多いなど、さまざまな災害を受けやすい環境にある。阪神・淡路大震災、東日本大震災という大きな災害をはじめ大小様々な災害において、インフラである電気ガスとともにについても一日も早い対策が求められることが多い。
 飲料水の供給や下排水の処理に関しては、平常時でも、水関連のインフラが整わない状態や、また、整備されていても何かの事情で一定期間使用できない場合も当然想定される。そのような時には、用水、排水を問わず一次貯留する方法で臨時の対応は可能ではあるが限界があり、いずれ連続処理の必要性が出てくる。
緊急対応用コンパクトなものとはいっても水を浄化する限り、基本的な原理や構成が、大きく変わるものではない。基本となる単位操作は、古いものから最新のものまで多様であるが、常によりを求めて構成要素の細部に至るまで研究開発がなされている状況にある。
 ここでは、災害・緊急時における生活排水し尿飲料水濁水・有害物質処理について特集した。

2013-02-01 移設可能型生物処理装置を利用した下水処理システム
 繊維状担体を用いた多段式接触酸化法は、その内部で微生物の食物連鎖が成立し、余剰汚泥が消化されることを特徴とする。下水処理パイロット試験では、処理水のC-BOD≦15㎎/Lを満たし、かつ、余剰汚泥量削減率は、標準活性汚泥法比較で87%。オキシデーションディッチ法比較で78%と見積もられた。移設可能型装置を用いた気仙沼市での仮設下水処理装置としての活用事例も紹介する。
2013-02-02 土壌浸透浄化法を利用したユニット型エコトイレ
 災害発生地では、独立して機能する循環再利用型トイレを迅速に設置してもらいたいとの要望が高い。海上コンテナーに浄化槽と高度処理槽を一体化して収納した「ユニット型エコトイレ」は、堅牢・コンパクトなため迅速な設置が可能である。基本処理システムは多段土壌層法を用いており、災害地での激しい水量・水質変動にも安定した処理水が得られ、これを洗浄水として循環再利用できる。処理能力は、長さ6mのコンテナー1基で最大日量15tの高度処理が可能である。
2013-02-03 高濁度原水対応の海水淡水両用小型膜ろ過システム
 地震や台風の災害時、安全な飲料水の確保が最も重要である。水源としては、海水および河川水が考えられ、また、災害時には水源の混濁が起こりえる。そこで、①海水および淡水共に対応可能、②高濁度水に対応可能、③災害現場に移動可能、という特徴を有する小型浄水装置を開発した。
 本装置は、原水濁度≦200度の淡水および海水に対して、膜の薬品洗浄をすることなく、また、配管切替のみで制御が乱れることなく、安全な飲み水を安定して確保できるシステムとなっている。
2013-02-04 災害対応型し尿分離トイレの開発
 緊急時の衛生確保において、し尿処理は重要な課題であるが、病原体を含む大便の隔離・処理はとりわけ重要である。東日本大震災を受け、筆者らはし尿を分離することで水を使わずに緊急時のし尿の処理が可能になるポータブルUDトイレ(プラスチック段ボール型し尿分離トイレ)を開発し、東北地域に導入した。また。筆者らが提案する災害対応・環境調和型し尿処理システムについて概説する。
2013-02-05 多層繊維ろ過方式による濁水処理装置
 多層繊維ろ過方式による濁水処理装置は、コンパクトながら高い浄化能力があり、従来の装置では対応できなかった高度な濁水処理やダイオキシン類などの有害物質を含む汚染水処理に活用できる。装置の概要と実施事例について述べる。

<執筆者> 2013-02-01 谷内 亜沙美・丹下 真也(帝人(株))/2013-02-02 新井 剛典((株)環境技術研究所)/2013-02-03 中嶋 友紀子・野下 昌伸((株)神鋼環境ソリューション)/2013-02-04 原田 英典・小林 広英・藤枝 絢子・日下部 武敏・清水 芳久(京都大学)/2013-02-05 森岡 錦也(村本建設(株))

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3月号  3.11以降の環境・エネルギー戦略 日本の温暖化対策中長期シナリオ
4月号  3.11以降の環境・エネルギー戦略 日本の温暖化対策中長期シナリオ[Ⅱ]
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 5月号21世紀の防災を考える
編集: 2013-05-00 (株)英晃コンサルタント・足立 考之

<国内の大災害>21世紀になって、わが国は今までに経験したことのない巨大地震・大津波に見舞われた。2011年3月11日に東北地方を襲った東日本大震災はあまりにも衝撃的であり、想像を絶する壊滅的な状況を目の当たりにした。また、遅々として進まない復旧・復興の現状、出口のみえない原発事故問題にやるせなさを禁じ得ないでいる。
 同年9月には紀伊半島台風12号により、総雨量2,000ミリ超とされる集中豪雨が発生し、多数の深層崩壊(大規模崩壊)を引き起こし、大規模土砂災害は、異常気象のただならぬ気配を人々に予感させた。
<海外の大災害>2009年8月に台湾で発生した台風MORAKOT 8号による大水害では死者698人、行方不明59人、農業損害額165億元を超えたと伝えられた。この長時間豪雨は時間雨量100ミリを超える雨が10時間以上続いたとされ、3日間雨量3,000ミリの脅威として世界の防災関係者に衝撃を与えた。
 2011年7月にタイチャオプラヤ川などで発生した長期洪水は3か月以上続き、同年の11月までに446人が死亡し230万人が影響を受けた。北部のチェンマイ県から南部のバンコクまで58の県に広がった洪水の影響で、7つの主要な工業団地が40日以上浸水し、日本から進出した企業も大きなダメージを受けた。
 2012年10月30日、アメリカ東海岸を襲ったハリケーン・サンデーは、ニューヨークを直撃し、死者15人、650万人以上が停電に見舞われた。37万人に避難命令が発令され、地下鉄の浸水は復旧に1週間以上を要し都市機能はマヒした。その数年前の2005年8月末にはハリケーン・カトリーナ米南東部を急襲し、ニューオーリンズの8割が浸水、公式死者数は最終的には1,577人に達した。
<特集のねらい>わが国土は自然が豊かであるが、人が住みうる可住面積の少なさや自然災害の多さはつとに知られている。わずかな可住地において、山間部は山崩れが、平野部は洪水氾濫が、沿岸地域は津波が、そしてこの列島を地震が襲ってくる。世界的な異常気象と巨大災害を視野において、今後の防災や復興はどうあるべきか。既成概念を越える多角的な観点から21世紀の防災のあり方を模索し、自然の脅威と永く賢く付き合う。その英知を学ぶのは、今しかない。

2013-05-01 災害復興のあり方を考える
 東日本大震災後の復興が暗礁に乗り上げている状況を鑑みて、災害後の復興のあり方を原点に立ち戻って考察をする。具体的には、過去の代表的な災害復興事例から、物語復興や段階復興といったキーワードを抽出するとともに、それを踏まえて復興の目標や復興のプロセスさらには復興の資源などについて言及する形で、災害復興のあり方を論じている。
2013-05-02 巨大自然災害からの復興と保険制度
 アメリカ合衆国の国家洪水保険プログラム(NFIP)は2005年8月のHurricane Katrina によって、また、日本の地震保険制度は東日本大震災によって大きな衝撃を受け、その存続すら危ぶまれる状況にある。NFIPがどのような構造を持ち、どのような仕組みで運営されているか、また、現在の危機的状況を脱しようとしているかという点に関し考察した。
2013-05-03 巨大災害と地方の復興力
 21世紀前半の日本は、首都直下地震、東海・東南海・南海地震、さらに西日本では活断層による地震の発生が懸念されている。一方、2005年をピークに日本の人口は減少を始め、少子・高齢化が進行する日本社会を巨大災害が襲うことになる。こういった状況を踏まえ、全国一律ではなく地域類型戦略的な災害復興を行うこと、さらには人口減少を最小限にするための事前復興のための取り組みの重要性について指摘をする。
2013-05-04 総降雨量の大きい極端豪雨による土砂災害の特徴と対策
 2009年台風MORAKOT(8号)と2011年台風TALAS(12号)は多量の降雨量を流域にもたらし、それぞれ台湾中南部と紀伊半島に多数の深層崩壊を発生させた。これらの台風には、降雨強度が極めて大きいわけではないが進行速度が遅いという共通の特徴があり、長時間豪雨が続く中、様々な規模の土砂移動現象が発生し、複合的な大規模土砂災害となった。本文では、この土砂災害の特徴と対策について述べる。
2013-05-05 「災害大国」日本のサステイナブル社会構築の挑戦
 2009年台風MORAKOT(8号)と2011年台風TALAS(12号)は多量の降雨量を流域にもたらし、それぞれ台湾中南部と紀伊半島に多数の深層崩壊を発生させた。これらの台風には、降雨強度が極めて大きいわけではないが進行速度が遅いという共通の特徴があり、長時間豪雨が続く中、様々な規模の土砂移動現象が発生し、複合的な大規模土砂災害となった。本文では、この土砂災害の特徴と対策について述べる。

<執筆者>2013-05-01 室崎 益輝(ひょうご震災記念21世紀研究機構)/2013-05-02 黒木 松男(創価大学)/2013-05-03 牧 紀男(京都大学)/2013-05-04 藤田 正治(京都大学)/2013-05-05 仲上 健一(立命館大学)

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 6月号再生可能エネルギーの固定価格買取制度と廃棄物系バイオマス発電
編集: 2013-06-00 日立造船(株)・三野 禎男

<日本のエネルギー事情>は、日々の生活や産業活動で使用するエネルギー供給(石油、石炭、天然ガスなど)の8割以上を海外に依存している。近年、新興国の経済発展を背景としたエネルギー需要の増大や化石燃料価格の乱高下などエネルギー市場は不安定化しており、エネルギーセキュリティーの観点から自給率の向上が望まれている。また、地球温暖化対策として温室効果ガス排出規制強化も進められており、環境負荷の低い国産エネルギーへのシフトは緊急の課題となっている。
<エネルギー政策>エネルギー基本計画(2010年6月、閣議決定)では2030年までにエネルギー需給率を約40%へ引上げることや二酸化炭素を排出しないゼロエミッション電源比率を約70%とすることを目標とし、電力構成を原子力:約53%、再生可能エネルギー:約21%とする計画が示された。しかし、2011年3月11日の東日本大震災福島原子力発電所・事故以降、原子力発電所の安全性や原子力依存のエネルギー構造の是非を巡る議論の中で原子力発電比率を極力下げることが共通の認識となりつつある。一方で、再生可能エネルギーへの期待は、ますます大きくなってきている。
<再エネへの取組>再生可能エネルギーの導入については、2002年に電力会社に一定割合で再生可能エネルギーの導入を義務づける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」が制定されるなど促進が図られてきた。また、2011年8月26日には「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が成立し、2012年7月1日より「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」がスタートしている。
<特集のねらい>わが国エネルギー自給率の向上、地球温暖化対策への貢献、さらには未来の産業創出に向け、再生可能エネルギーを育てる(育エネ)へのスピード感ある取組みが広く望まれているところである。このような状況を踏まえ、FITが始まり1年が経過する中で、以下の3つの視点から再生可能エネルギーの一つであり分散型電源として大きな可能性を持つ廃棄物系バイオマス発電の普及・拡大への取組みに迫ってみた。

2013-06-01 再生可能エネルギーの固定価格買取制度について
 我が国の再生可能エネルギーの普及を加速させるため、2012年7月に固定価格買取制度がスタートした。制度開始以降、全国各地で再生可能エネルギーの導入が進んでいる。本年2月末までに固定価格買取制度の適用を受け、運転を開始したバイオマス発電設備は10件、出力にして30,395kWとなっている。今後も固定価格買取制度の安定的な運用や各種規制改革等を通じ、バイオマスを含めた多様な再生可能エネルギーの普及を拡大させていきたい。
2013-06-02 廃棄物発電導入の現状とその推進策
 地球温暖化対策や資源有効利用を目的に、地域において廃棄物発電の取組は進んでいるが、市町村における平均発電効率は約11.7%と高くないなど、エネルギー回収の余地はまだ多く残されている。一方で、社会的関心事になっているエネルギー安定供給への寄与や災害時に防災拠点として地域貢献が見込めるなど、廃棄物発電の今後への期待は大きいことから、現状や導入促進策を中心に、その動向を紹介する。
2013-06-03 大阪市における固定価格買取制度への移行について
 固定価格買取制度の開始に備え、大阪市の8つの既設ごみ焼却工場に対し制度移行について検討を行ったところ、3工場を固定価格買取制度に移行することとした。その経過を紹介するとともに、今後の課題を考える。
2013-06-04 バイオガス発電施設と固定価格買取制度
 再生可能エネルギーと資源循環を目的に施設の活用を進めてきた京丹後市エコエネルギーセンターは、施設の維持経費が課題となっていたが、固定価格買取制度により電力価値の評価を受けることで大幅な収支改善への期待は高まり、施設運営の持続性を確保して、安定した再生可能エネルギー電力の供給と資源の循環のためさらなる活用を目指す。
2013-06-05 固定価格買取制度への期待、現状と課題
 昨年7月より施行された再生可能エネルギーの固定価格買取制度に関し、環境省からの受託事業として一般廃棄物処理施設にアンケート調査を実施した。調達価格等算定委員会で提示されている廃棄物発電のコストデータとアンケート結果を比較すると、施設規模が小さい施設ほど数値が乖離する傾向が強い。また、1回/月のごみ組成分析を、費用、労務両面で負担に感じている自治体が多い。

<執筆者>2013-06-01 添田 隆秀(経済産業省)/2013-06-02 豊村 紳一郎(環境省)/2013-06-03 蓑田 哲生(大阪市)/2013-06-04 後藤 正明(京丹後市)/2013-06-05 宇野 晋((社)日本環境衛生施設工業会)

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 7月号鉄鋼スラグ等を用いた水環境の改善・修復技術
編集:2013-07-00 駒井幸雄(大阪工業大学)

 鉄鋼スラグは鉄鋼製造過程で副生成物として発生するもので、カルシア(CaO)とシリカ(SiO2)を主成分とし、マグネシア(MgO)や鉄分を多く含むものもある。
 わが国では年間約 2,400万トン(平成 23年度)の高炉スラグと約 1,400万トンの製鋼スラグが生み出されている。鉄鋼スラグは、セメント用、道路用、土木用などに利用されている。これらに加えて、閉鎖性海域における悪化した底質と水環境の改善を目的とした海砂に代わる覆砂材、人工藻場・干潟の造成資材、あるいは海藻の増殖とこれと連動した水産資源の増加を目的とした鉄の供給源として、鉄鋼スラグを用いた漁礁などへの利用が期待できる。
 本特集では、これまでの鉄鋼スラグ等を用いた水環境の改善・修復技術に関する基礎研究および実用化技術の成果が解説されており、これらの技術の現状と課題への理解の参考となるものである。
2013-07-01 水環境改善・修復材としての鉄鋼スラグとその物理化学的特性
 鉄鋼スラグの物理化学的特性とその特性を生かした水環境改善・修復材としての適用事例を海域環境に絞って概説している。鉄鋼スラグ製品は幅広い物理化学的性状を有しており、水環境への適用にあたってはその特性を十分に把握し推進する必要がある。近年の海域への鉄鋼スラグの適用は、物理化学的特性を理解した上で推進されており、内湾底質改善、浚渫窪地埋め戻し、干潟・浅場造成、藻場造成、鉄系施肥材など幅広い分野にわたっている。
2013-07-02 強閉鎖性水域の水質改善に向けた鉄鋼スラグの利用と効果
 室内溶出実験において炭酸化製鋼スラグによる覆砂は、海砂に比べて顕著で長期のDOの減少防止と底質からのリンの溶出抑制が認められた。スラグ中のリンの形態変化として、有機態リン(OP)が一定量含まれることと、無機態リンでは安定なCa 結合型リンではなく嫌気条件下でリン溶出に関わるFe 結合型リンの増加が認められた.しかし、室内実験の結果は、無酸素条件下でもリンの溶出は見られないことが示されている。
2013-07-03 製鋼スラグの環境修復材としての海域利用
 干潟・アマモ場等の浅場再生に必要な海砂代替材として有望な製鋼スラグについて、その化学的性質、干潟土壌としての利用等について解説している。製鋼スラグからの遊離カルシウム溶出に伴うpH上昇と水硬性は利用においては制御すべき特性であり、特に用いるスラグの粒子径との関係に注意する必要がある。また、製鋼スラグとともに干潟土壌として要求される微粒子および有機物源として浚渫土砂を活用するメリットについても言及している。
2013-07-04 水産資源回復に向けた鉄鋼スラグの利用と効果の検証
 水産資源回復を目指し、沿岸域における藻場を再生・造成するため鉄鋼スラグを活用する技術として、海域への鉄分供給と藻類の着生基材とに関し、実海域での実証実験事例を交えて紹介している。前者については北海道増毛町での埋設実験事例と兵庫県姫路港での沈設実験事例を、また後者については兵庫県家島での魚礁設置実験事例を通じて、鉄鋼スラグ資材が海域において有用かつ安全に活用できる資材であることを確認している。
2013-07-05 鉄鋼スラグ製品による海域環境改善技術への取り組み―実用化技術開発の現状と今後の課題・展望―
 鉄鋼スラグは、鉄、シリカ、カルシウム等を多く含むことより、貧栄養海域での海藻類に対する施肥効果や、富栄養化海域の底泥の浄化・固化効果等を有している。これらの鉄鋼スラグの固有な特性に着目し、鉄鋼スラグを海域利用するために新規開発した「鉄鋼スラグ水和固化体」と「カルシア改質土」を取り上げ、本技術を適用した海域環境改善事業の実施状況を紹介し、今後の本格普及に向けた課題と展望を示している。
<執筆者> 2013-07-01 三木 理(金沢大学)/2013-07-02 駒井幸雄・佐々木 望(大阪工業大学)/2013-07-03 西嶋 渉(広島大学)/2013-07-04 加藤敏朗・松元弘昭(新日鐵住金)/2013-07-05 中川雅夫(新日鐵住金)

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 8月号膜分離活性汚泥法による下水処理の技術動向
編集: 2013-08-00 大阪産業大学・尾崎 博明

<従来の実用例>膜分離活性汚泥法は従来、し尿処理浄化槽ビル排水処理(再利用)など、比較的高濃度の小規模排水の処理に用いられてきた。その後は、小規模・低濃度の下水処理への適用が模索されてきたが、最近では比較的大規模な下水処理場向けに最終沈殿池が省略できる処理法として、下水道事業団による実処理が行われるまでになった。
<下水への適用課題>周知のように膜分離法自体は、直接ろ過によりあるいは凝集処理などの前処理を行うことにより、海水淡水化をはじめ浄水、排水処理など多彩に応用されてきた。塩分や重金属、各種溶存有機物質、タンパク質、微粒子などの対象物にあわせた多様なすぐれた膜が開発されてきたことも大きい。しかしながら膜分離は、一般的にタイトな膜ほど透過水量が少なく、また膜ファウリング(膜面汚れ)はどうしても避けがたく短所も存在している。とくに下水のように、膜ファウリングを引き起こす微細粒子や高分子物質、塩類などの多様な成分を含有し、しかも比較的水量が多く汚濁物質の濃度が低い原水は、膜による直接ろ過の対象になりにくい。また微生物の力を借りる膜分離活性汚泥法の適用についても技術的にまたコスト的に課題が山積している状況にあった。
<下水への適用開始>日本下水道事業団(JS)を中心に平成17年度から数百m3/日~1万m3/日の比較的小規模な下水処理への適用が試みられてきた。また最近では、高速道路建設により最終沈殿池の用地が確保できなくなったことが端緒とは言え、わが国としては最大規模(60,000m3/日)での実用化が大阪府堺市で行われている。さらに、日本全国において今後も多くの施設が導入されることになっている。実処理が行われるにつれて、処理性が関わる運転実績維持費用膜ファウリングの実際などの貴重な知見が明らかになってきている。一方、本特集においても指摘されているように課題や未知の部分も多い。
<特集のねらい>膜分離活性汚泥法は、排水処理ばかりではなく下水への適用も試みられるようになったが、未だ端緒が開かれたばかりである。本特集でいくつかの課題が明らかにされているが、まだ知られていない有用な特性もあると考えられる。同法の基礎的な特性がさらに明らかにされ、応用実績が積み重ねられて設計手法や効率的な運転管理手法が確立されていくことを期待したい。

2013-08-01 膜分離活性汚泥法の技術評価について
 平成25年に作成された日本下水道事業団による膜分離活性汚泥法(MBR)技術評価(第2次)から、MBRの技術的体系(MBRのシステム構成、生物処理システム、浸漬型MBR、槽外型MBR)、処理水質などの技術的特徴、MLSS濃度などの維持管理方法、現状における建設コスト、エネルギー消費量など重要な事項を取りまとめ、今後のMBR の普及促進のための資料とした。
2013-08-02 膜分離活性汚泥法の微生物学的特徴
 膜分離活性汚泥法(MBR)による下水処理性能の向上を図るうえで重要な微生物群集の構造や挙動に関する知見を整理した。沈殿池を有する従来の処理法と比較して、MBR では多様な細菌が優占化することで、流入水質や環境条件に対応した“柔軟な”処理が達成されることや、貧栄養条件下での増殖に優る硝化菌が優占化することなどが示唆されているが、現状では極めて限られた知見しか得られておらず、今後の研究の進展が望まれる。
2013-08-03 膜分離活性汚泥法の下水処理への適用動向
 わが国における下水処理への膜分離活性汚泥法(MBR)の適用は、平成10年度に日本下水道事業団が民間企業との共同研究により、実下水を用いた本格的な実証試験を開始したことを契機に、平成17年3月には国内第一例目の施設が供用開始している。その後、年々供用箇所数が増加し、平成24年12月現在、19の実規模施設が稼働している。さらなる導入拡大に向けては、省エネルギー化や合流式下水道への対応が今後の課題である。
2013-08-04 堺市三宝下水処理場-日本最大規模の膜分離活性汚泥法の導入と運転状況-
 堺市三宝下水処理場では、阪神高速大和川線の建設の支障となる標準活性汚泥法施設の最終沈殿池を撤去し、残存する反応槽に処理能力60,000m3/ 日の膜分離活性汚泥法を導入した。膜ファウリングや雨天時の流量増大に留意する必要があるものの、時間最大処理水量84,000m3/日以上で連続6時間の膜ろ過が可能であった。処理水質はりんを除き高度処理法同等以上、電力原単位は0.54 kWh/m3で、合流式大規模下水処理施設の改築更新にも有効と考える。

<執筆者> 2013-08-01 長岡 裕(東京都市大学)/2013-08-02 池 道彦・橋本 くるみ・高田 一輝(大阪大学)/2013-08-03 橋本 敏一(日本下水道事業団)/2013-08-04 宮本 博一(堺市・三宝下水処理場)

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 9月号福島第一原発事故後の放射線環境リスク
編集: 2013-09-00 京都大学・藤川 陽子

 本稿執筆時点で福島第一原子力発電所(第一原発)の事故から約2年半が経過した。第一原発をめぐっては、燃料デブリの取り出しと廃炉までの長い道のりがまだ残っている。しかも、同原発では、最近になって冷却水の貯蔵タンクからの汚染水の大量漏えいが判明し、当初、国際原子力事象評価尺度でレベル1という評価であったものを、レベル3として再評価する案を原子力規制委員会が出しているところである。
放射線被ばくの健康影響に関する調査も進行中である。福島県では若年者の甲状腺診断が引き続き行われ、被ばく線量が低いグループで甲状腺に良性・悪性の腫瘍がある傾向が認められている。従来100万人に一人といわれてきた甲状腺がんであるが、この調査の結果、2011年度および2012年度に見いだされ、手術により確かめられた甲状腺がんはそれぞれ7例、5例(100万人当たりに換算すると174例、37例)となっている。チェルノブイリで甲状腺がんを発症した若年者の場合と比較すると著しく低い個人線量のグループに対してこのような結果が出たことで、放射線被ばくではなく、他の要因が関与しているのではないかとも考えられる。いずれにせよ、このような大規模な甲状腺の調査は行われた例がないことから、結果の解釈にはまだ時間がかかる見込みである。
 東日本大震災の被災地では、いまだに多くの人々がもとの居住地に帰還できていない現実がある。しかし、岩手県・宮城県で懸案であった災害廃棄物の処理は、予定どおり2014年春までに完了する見通しとなった。また、放射性セシウムの自然減衰と除染の進行で、いわゆる警戒区域であった地域の一部では、住民が帰宅できる条件が整いつつある。しかし、放射線被ばくへの懸念から、帰還の進まない地域の多いことも現実である。
 環境技術誌では、第一原発事故をめぐって、事故直後から緊急的な速報と特集を組んできた(2011-04、2011-05)。原発汚染水についても、その処理技術を中心にした特集を組んだ(2012-06)。今回の特集では、第一原発事故から今に至るまでの放射線のリスクとそれに対してどのような対応が行われてきたかについて、振り返ることとした。

2013-09-01 発電所敷地外におけるリスクと対応
 事故後の発電所敷地外における国の放射線防護対策を概観し、その背景にある放射線防護の考え方を紹介するとともに、事故による放射線の健康影響を考える際に参考となる情報を提示する。併せて、注目すべき対策技術についても紹介する。
2013-09-02 環境モニタリングの経験と環境回復のための取組
 東日本大震災と東京電力原子力発電所事故を受けて、福島県が講じた環境モニタリングの概要と環境回復のための取組について概説する。
 震災被害で電源の確保、通信回線の復旧が遅れ、情報収集が不十分な中で、様々な機関・組織の支援を受け、大気、水道、地上の放射線のモニタリング、スクリーニング等々を実施してきた。水、土壌、農産物の安全確認・情報公開とともに迅速な除染、廃棄物の処理によって環境の回復を行うため、中核施設「環境創造センター」を整備する。
2013-09-03 放射性ヨウ素による甲状腺癌のリスク―福島とチェルノブイリ
放射性ヨウ素(I-131)は我が国でも1950年代から医療に使用され、世界では数十万人が108Bq程度を投与されているが、発がんの増加の報告はない。本稿では最初にチェルノブイリ原発事故後に子供の甲状腺癌の増加が国際的に認められるまでの経過を比較的詳しく紹介する。そして、福島原発事故後の甲状腺被ばくの状況、甲状腺の超音波による検査の現状をチェルノブイリの経験と比較しながら、今後の福島における甲状腺癌の問題点を考えたい。
2013-09-04 間違った情報にどう対処すべきか―「メディアのメディア」をつくろう―
 放射線のリスクだけでなく、遺伝子組み換え作物、食品添加物、医薬品、農薬などの分野でおかしなメディア情報が飛び交っている。放射線量が年間1ミリシーベルトを超えると健康被害が生じるかのような情報もそのひとつだ。こういう根拠のない情報を打ち消すための「カウンター情報」が必要だ。なぜ、ニュースがゆがみ、なぜ、専門家が嘆くような状況になるかを考えながら、おかしな情報をチェックする「メディアのメディア」の創設が必要だと提案したい。
2013-09-05 災害廃棄物中の放射性セシウムのリスクに関する誤解
 東日本大震災で発生した大量の災害廃棄物のうち、宮城県・岩手県のものについては国が広域処理の呼びかけを行った。しかし西日本地域では廃棄物の受け入れについて躊躇する自治体が多く、その要因は災害廃棄物に含まれるかもしれない放射性セシウムであった。大阪府は1年にわたる検討を経て最終的には本格受け入れを行った数少ない西日本の自治体の一つである。その経緯を紹介し、市民や自治体が人工放射性物質のリスクに対してどのように対処したかについて考察する。

<執筆者> 2013-09-01 茶山 秀一(事故対策経験者)/2013-09-02 片寄 久巳(福島県)/2013-09-03 長瀧 重信(財)放射線影響協会)/2013-09-04 小島 正美(毎日新聞社)/2013-09-05 藤川 陽子(京都大学)

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10月号水俣(水銀)条約に係る現状と課題
編集: 2013-10-00 元大阪人間科学大学・福永 勲

 本年10月標記条約が熊本で開かれる国際会議で採択される予定になっている。条約名に入れられたように、「水俣」の歴史を持つわが国は国際的に果たすべき役割も大きいものがある。環境に関する技術的な知見を網羅することを目指している本誌「環境技術」は、その採択に併せて本条約の概要と海外の動向、わが国における法制上および技術上の課題を健康被害・生体影響等関連事項も含めて特集することになった。技術上の課題には、個々の処理技術だけでなく、輸入乾電池には多くの水銀が含まれている可能性があること、大量に排出すると予想される余剰水銀など多くの問題があると考えている。

2013-10-01 水銀に関する水俣条約の概要と我が国の対応
 「水銀に関する水俣条約」は、地球規模の水銀による環境汚染と健康影響を防止することを目的として、2013年1月に条文案が合意された。本年10月に熊本県で行われる外交会議を踏まえ、条約の背景、意義と概要、今後の対応などについて紹介する。日本は、水俣病を経験した国として、今後とも、これまで蓄積された知見や技術を世界に発信し、早期の条約発効に向けて引き続き努力を続けていく。
2013-10-02 水銀の毒性―汚染の歴史と研究の現状―
 水銀は常温で唯一液体の金属で、古くから多くの用途に使われてきた。しかし、水銀の使用に伴う危険性が人や野生動物において明らかになった。その最も大きな健康被害が、水俣病である。本稿では、過去の水銀汚染例、化学形態別水銀の毒性や生体内代謝、メチル水銀の生体濃縮胎児移行性、低濃度メチル水銀の胎児影響について概説する。
2013-10-03 水俣病などの水銀汚染にかかる歴史とあるべき今後の社会的取組み
 水俣病の教訓をもとに、締結される水銀条約に関して、水銀汚染の歴史的な経過と問題解決のプロセス、条約化について、まとめた。水俣湾における魚介類の汚染と汚染サイトとしての埋立地の現状を述べ、輸出削減や長期保管、水俣病の解決など、水銀条約締結後の日本の課題についてまとめた。
2013-10-04 水銀の大気汚染と処理対策に関する現状と課題
 水銀の世界的な管理において環境への排出媒体として大気系は重要であり、水銀条約の政府間交渉でも議論のまととなった分野である。世界の大気排出推定量(2010年ベース)は年間1,960t(1,010~4,010t)と見積もられ、小規模金採掘石炭燃焼からの排出量が多い。日本の大気排出推定量は年間19~24t(自然由来を除くと17~22t)である。セメント製造、鉄鋼製造、非鉄金属製造、廃棄物焼却が主な排出源である。条約文案では石炭燃焼、セメント製造、非鉄金属製造、廃棄物焼却の4分野の排出源削減計画が求められる。排ガス処理設備における水銀除去率は電気集じん装置20%、バグフィルター集塵装置53%、活性炭吸着塔78%であり、電気集じん装置を主たる排ガス処理としている製造業では水銀除去への対策が必要となろう。
2013-10-05 水銀に係る廃棄物と処理対策の現状と課題
 水銀条約の制定について本年1月合意されたことから、条約における廃棄物処理に関連する部分が紹介され、今後の締約国会議での重要な論点が示された。我が国の水銀廃棄物の現状を把握するため、環境省によりまとめられた水銀マテリアルフローが示された。マテリアルフローからは約44トン程度が余剰水銀として発生することが確認された。さらに余剰水銀の処理・保管・処分に関する技術及び海外動向などが紹介され、日本における今後の対応が整理された。

<執筆者> 2013-10-01 牧谷 邦昭(環境省)/2013-10-02 坂本 峰至・村田 勝敬(国立水俣病総合研究センター)/2013-10-03 中地 重晴(熊本学園大学)/2013-10-04 貴田 晶子(愛媛大学)/2013-10-05 高岡 昌輝(京都大学)

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11月号レアメタルのリサイクル―都市鉱山の利用と課題―
編集: 2013-11-00 誠心エンジニアリング株式会社・網本 博孝

<レアメタル資源の偏在>金属資源は大別して鉄、アルミニウム、銅などの大量に用いられるベースメタル、金、銀、白金などの貴金属、この中間にあるのが47種類のレアメタルである。金属資源にいずれも共通する課題は資源が偏在することであるが、レアメタルに関してはその傾向が極端である。一例を挙げるとレアアース(希土類)と総称される17種類の金属は中国に偏在している。レアアース以外のニッケルそのほかに関しても偏在地域は異なるが同様である。またリーマンショックの頃から資源の高騰が始まり、特にレアメタルは乱高下が激しく、加えて中国の輸出規制などもあり、レアメタルのリサイクルへの関心が高まってきた。
<レアメタルの用途>レアメタルの用途は量的にはニッケルやクロムのようにベースメタルに近い使用量の場合も例外的にはあるが、通常は使用量が少ない。質的には単独で用途がほとんどなく、合金としての主成分でない構成成分、その他複合材料として用いられることがほとんどであり、いずれも高機能を発現させるために用いられる。高機能部品として小型、軽量化を実現するためにありとあらゆる製品に使用されている。自動車、カメラ、ほとんどの種類の小型家電、そのほか産業用の電子部品ではレアメタルなしでは最終製品を生産できない程である。レアメタルを用いた最終製品は今後さらに増加すると思われる。
<レアメタルのリサイクルと課題>レアメタルは高機能を発現する部品であるが最終製品での使用量は少なく、しかも複合材料であるため金属単体としての使用量はさらに少なくなる。廃棄時には様々のレアメタルが集積されるため廃棄物中のレアメタル濃度はさらに少なくなる。レアメタルを含んだ廃棄物は都市鉱山と呼ばれるが、本特集では都市鉱山の利用と課題について5件の報告を頂いた。レアメタルのリサイクルは法的にも技術的にも始まりつつあるといった段階であり、今後の研究の進展、実用化に期待したい。またレアメタルのリサイクルについて利用用途の少ない金属についても研究が進み、レアメタルの総合的な利用─リサイクルの枠組みが確立されるよう願っている。

2013-11-01 使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律について
 「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」が本年4月1日に施行された。本法に基づくリサイクルを実効性のあるものにするには、使用済小型電子機器等の回収量を確保して、規模の経済を働かせながら効率的なリサイクルを進めることが非常に重要となる。そのために、消費者・市町村・事業者などの関係者の積極的な制度参加や廃棄物処理法・バーゼル法の運用強化、違法な不用品回収業者への取締強化も必要である。
2013-11-02 電気電子機器廃棄物のレアメタルリサイクルにおける有害物質管理
レアメタルリサイクルにおける有害物質管理について、特に電気電子機器廃棄物(E-waste)リサイクルを主なプロセスとして、複数の論点を述べた。まず、近年の国内動向を、レアメタルを含んだ広範な有害物質の整理や、貴重な実測データ、環境管理の視座から論じるとともに、部位別偏在性と経年変化について指摘した。さらに、途上国での不適正リサイクル問題や、インジウムを例にレアメタル自体の有害性に関して概括した。
2013-11-03 京都市における使用済小型家電の回収・リサイクルについて
 京都市では、平成21年8月に国のモデル事業の採択を受け、法制化に先駆けて使用済みとなった家庭からの小型家電の回収を開始し、モデル事業終了後も、環境モデル都市として先進的に取り組むこととして、本市予算にて回収拠点や品目の拡大といった内容の充実を図りながら事業を継続している。本稿では、モデル事業を中心にその概要を紹介する。
2013-11-04 バイオ技術をベースにしたレアメタル・貴金属リサイクル
Shewanella属細菌の機能を活用し、希薄溶液中のレアメタル(Pd(Ⅱ)、Pt(Ⅳ))、貴金属(Au(Ⅲ)、Rh(Ⅲ))を細胞内に還元回収してナノ粒子を生産することや、希薄溶液からレアメタル(In(Ⅲ)、Ga(Ⅲ)、Dy(Ⅲ))を細菌細胞に吸着分離・回収することができる。これらバイオ要素技術をベースにした新規リサイクルシステムを提案し、その実用化可能性を従来システムとの比較検討によって探る。
2013-11-05 ネオジム磁石からの希土類の回収技術
 金属製錬や金属リサイクルにおいて、物理的分離プロセスの後段に化学的分離プロセスを行うことで金属を得ている。希土類元素の鉱石は放射性物質を含む場合が多く、放射性物質の適切な処理を必要とすることから希土類元素の製錬プロセスは他の元素と比較して環境負荷が高いといえる。ネオジム磁石の従来型のリサイクルプロセスでは、酸浸出(溶解)の後に溶媒抽出、沈殿回収を行い、溶融塩電解によって金属に還元される方法が開発されている。また、多くのリサイクルプロセスでは、希土類元素の金属への還元には溶融塩電解を用いることを想定している。化学的分離プロセスの前に位置する物理的分離プロセスがリサイクル製錬プロセス全体の効率を左右する技術といえる。

<執筆者> 2013-11-01 阿部 賀代(環境省)/2013-11-02 藤森 崇(京都大学)/2013-11-03 濱口 弘行(京都市)/2013-11-04 小西 康裕(大阪府立大学)/2013-11-05 神本 祐樹・市野 良一(名古屋大学)

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12月号環境水中の窒素の汚染源と処理対策・水資源管理
編集: 2013-12-00 京都大学・藤川 陽子

<自然界での窒素の循環>窒素ガスは大気の主成分であるが、これを直接同化して有機態窒素やアンモニアに変換できる生物としては、マメ科植物の根に共生する一部の根粒菌等が知られているのみである。さて、このようにして同化された窒素は生体を構成する主要元素のひとつとして様々な形態で水および土壌環境と生態圏を循環する。最終的に窒素化合物が再び窒素ガスとして大気に戻ることで窒素の環境中の循環は完結する。
<人為的過剰な窒素による汚染>しかし化学肥料合成アンモニア製造のための人工窒素固定をはじめとする様々な人間活動の結果、自然の物質循環がかく乱され、世界中で様々な水域が過剰な窒素で汚染される事態に立ち至った。特に我が国では、肥料のみならず、穀物や飼料の形でも窒素を大量に輸入してきた結果、閉鎖性水域の窒素汚染は一向に改善しないまま、ここ数十年が過ぎている。
 環境水中の過剰な窒素は水域の富栄養化をもたらす。また環境水を上水として利用する際、硝酸・亜硝酸・アンモニア性窒素は障害成分として問題になる。特に硝酸・亜硝酸性窒素は毒性が高く慢性摂取による健康障害への懸念も高い。

2013-12-01 硝酸態窒素による地下水汚染に関する研究動向―汚染の状況と要因および対策―
 表題について執筆者の研究例を交え紹介した。硝酸態窒素による地下水汚染は、欧米をはじめ世界的な懸念事項となっている。汚染要因には地域差があるが、事例の多くは農業によるもので、安定同位体比の利用による窒素源の特定や脱窒反応に関する先進的研究が進んでいる。汚染対策は、飲用水確保としての浄水処理から抜本的対策である窒素負荷削減技術・施策にわたるが、抜本的解決には長期にわたる息の長い取り組みが必要である。
2013-12-02 地下水の窒素汚染の現状と岐阜県各務原台地の浄化対策事例
 環境省の地下水の水質全国調査の結果では、環境基準28項目の中で、硝酸性窒素の基準超過率が最も大きい。汚染原因は、窒素肥料畜舎等の廃棄物生活排水などによる。特に農耕地における肥料成分の地下浸透に起因する汚染は、その防止・軽減対策に困難を極める。施肥に起因する岐阜県各務原台地の汚染を例に、調査手法、浄化対策、工学的な浄化技術の実証試験などを紹介する。しかし、浄化対策は、減肥対策など土壌への負荷量低減が基本であり、農業サイドを中心に取り組むべき問題である。
2013-12-03 熊本市における下水処理水の農業用水利用
 熊本市の農業用水としての処理水再利用について、全国でも取り組み事例がなかった37年前に本市の先輩たちが取り組み、実用化した経緯や現在の状況、水質向上の取り組みを紹介します。
2013-12-04 循環灌漑による琵琶湖への窒素負荷削減の効果
農業由来の窒素などによる環境水への水質汚染が懸念されることから、環境配慮型の水管理として排水の再利用を行う循環灌漑の適用が試みられている。本稿では、循環灌漑における用排水状況、循環取水率および窒素の流入・流出負荷に関するデータを整理し、循環灌漑による環境水(湖沼の琵琶湖を中心に)への窒素負荷削減効果を検討した。その結果に基づき、窒素負荷削減効果の定量的な考察と循環灌漑の今後のあり方を述べる。
2013-12-05 ベトナムの水田における消化液の液肥利用効果と窒素流出負荷
 ベトナム南部の農村では小規模メタン発酵が普及し、得られるガスは主に調理用の燃料として利用されている。一方、消化液は多くの場合未処理のまま垂れ流しとなっている。著者らは現地の水田で消化液の液肥利用試験を行い、消化液は化学肥料に劣らない肥料効果を有すること、液肥利用に伴う下流水域への窒素負荷を防ぐためには、消化液区からの排水を停止する期間等、詳細な水管理方法の検討が必要であることを明らかにした。
2013-12-06 ベトナムの地下水のアンモニア汚染と一槽型アナモックス処理
 低コストで途上国でも適用可能なアンモニアの浄水処理法としてアナモックス法に着目して検討に着手した。あわせてベトナムなどアジア途上国における地下水水質問題について概括する。

<執筆者> 2013-12-01 川越 保徳(熊本大学)/2013-12-02 寺尾 宏(岐阜大学)/2013-12-03 矢野 幸晴(熊本市上下水道局)/2013-12-04 櫻井 伸治、林 友紀、中桐 貴生、堀野 治彦(大阪府立大学)/2013-12-05 折立 文子、中村 真人、山岡 賢、柚山 義人、Nguyen Phuoc Dan、Dang Vu Bich Hanh、Nguyen Duy Khanh、迫田 章義((独)農研機構・農村工学研究所)/2013-12-06 藤川 陽子(京都大学)

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掲載日:2018年01月26日
更新日:2018年

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