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環境技術 2015


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2015年 特集号の概要
      目 次 総目次-分野別-
 1月号  2015年環境行政展望
 2月号  越境大気汚染の過去、現在、今後
 3月号  持続可能な沿岸海域管理
 4月号  再生可能エネルギーの海外での取り組みとわが国の課題
 5月号  阪神淡路大震災20年―教訓はどのように継承されているか―
 6月号  地産地消の再生可能エネルギー小水力を中心に
 7月号  最終処分場でのダイオキシン類含有廃棄物の不適正搬入事例と対策
 8月号  ドイツのメタン発酵技術開発の現状とその展開
 9月号  琵琶湖の沈水植物(水草)問題の現状と課題
10月号  現場で使える環境分析技術
11月号  硫酸塩還元菌と硫黄脱窒菌利用の下排水処理と汚泥の減容化
12月号  地球温暖化と健康リスク



 1月号  2015年環境行政展望
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 2月号越境大気汚染の過去、現在、今後
編集:2015-02-00 龍谷大学・市川 陽一

 越境大気汚染の問題は、排出汚染物質が直接影響を与える大気汚染ではなく、広域輸送される間に生じる二次生成物質の関与が大きい。2013年1月の中国の大気汚染騒動以来、越境大気汚染や微小粒子状物質PM2.5 は国内社会の大きな関心事となっている。こうした中で、あまり専門に偏り過ぎるのでははなくて、最近のトピックスや研究成果の紹介に留まらず、今に始まったわけではない越境大気汚染を過去に遡って総括し、将来を俯瞰できる特集を企画した。

2015-02-01 東アジアの越境大気汚染―30年間の顛末と今後―
 環境庁が酸性雨対策検討会を組織し全国規模で酸性雨の実態調査を開始したのは1983年のことである。約30年間にわたる東アジアの越境大気汚染の顛(いただき)と末(すえ)を語り、今後の展望と課題を述べたものである。東アジアに排出源をもつあらゆる物質が、広域的な輸送現象と複雑に関係していることが明らかになった現在、まず研究者が科学的な認識を共通のものにすること、そして為政者にも同じような認識が醸成されることが、重要なのではなかろうか。
2015-02-02 酸性雨と越境大気汚染
 日本における酸性雨問題は、越境大気汚染の側面を意識しつつも、関東一円で起こった人体被害が発端となって社会問題化したため、地域汚染としての調査がなされた歴史がある。近年、中国の大気汚染が深刻化し、その影響が日本にも表れ、光化学オキシダント濃度の増加やPM2.5 濃度の増加が見られるようになった。そのため、PM2.5 対策として、国内の対策に加えて中国の大気汚染対策を支援する動きが出ている。これまでの日本における越境大気汚染に対する取り組みを紹介し、今後の展望について考察する。
2015-02-03 日本の西端で長距離輸送汚染を追う
 大陸からの窒素酸化物系大気汚染物質の長距離輸送汚染の状況を把握するため、2005年末より沖縄県辺戸岬において総反応性窒素化合物(NOy)および全無機硝酸(T.NO3)の連続観測を実施してきた。長距離輸送されてくる窒素酸化物系化合物による汚染を把握する上で必要な対象物質の特徴、測定方法と、ここまでの観測結果を基に両物質濃度の経年トレンドについて解析した結果を紹介する。
2015-02-04 越境大気汚染がくれたもの
 春季高濃度オゾン、酸性物質、PM2.5 など、。これまで越境大気汚染問題に観測とモデルの両面から取り組んできたが、越境大気汚染がもたらしたのは物質だけではなかった。
2015-02-05 30年間の中国の大気汚染
 1978年12月の改革開放から、中国では高度経済成長を達成したが、GDP 成長優先、石炭を中心としたエネルギーの大量消費、近年では自動車の急激な普及、および環境保全の人材不足などの原因によって、中国全土で深刻な大気汚染が発生している。本稿では、いままでの三十数年間の中国大気汚染状況やその対策としての環境規制の変化などを述べる。特に、2008年オリンピックおよび2014年APEC の開催都市北京の大気環境状況を中心に述べる。
2015-02-06 アジアの越境大気汚染をめぐる国際的合意に対して思うこと
 様々な利害関係者が存在し、そして国際的な取り組みが要求される「越境大気汚染」問題だが、その対策検討に必須となるのが「観測」による監視と「数値モデル」によるシミュレーション解析である。本稿では、東アジアの代表的観測網であるEANET、東アジアを対象としたモデル間比較研究のMICS-Asia、そして著者自身の経験をほんの少し交えて、越境大気汚染をめぐる国際的合意の形成に向けて思うことを述べてみたい。
2015-02-05 気質モデルを用いた越境大気汚染研究の履歴と展望
 これまでに大気質モデルを用いた越境大気汚染に関する研究として、酸性雨および微小粒子状物質(PM2.5 )関する研究を実施してきた。酸性雨に関する研究では、霧水・湿性・乾性沈着による酸性物質沈着量の分布および越境汚染の寄与の推計を行った。PM2.5 関する研究では、PM2.5 測精度向上のためのモデル相互比較研究(UMICS)やPM2.5 越境輸送解析などを行ってきた。これらの研究の成果について紹介する。

<執筆者> 2015-02-01 藤田 愼一((一財)電力中央研究所)/2015-02-02 平木 隆年(兵庫県環境研究センター)/2015-02-03 坂東 博・定永 靖宗(大阪府立大学)/2015-02-04 速水 洋((一財)電力中央研究所)/2015-02-05 李 虎・安 俊嶺((株)堀場製作所)/2015-02-06 櫻井 達也(明星大学)/2015-02-07 嶋寺 光(大阪大学)

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3月号瀬戸内海の水環境の現状と改善の方向
編集: 2015-03-00 岡山大学名誉教授・河原 長美

 瀬戸内海は、高度成長期に深刻な汚染に見舞われたが、瀬戸内海法の制定と総量削減により、水質は大きく改善され、大阪湾を除く瀬戸内海については水質を悪化させないという方向へ施策が転換された。
 ① 瀬戸内海は水質改善が進んでいるが、A類型指定の海域は環境基準達成率は40%程度である。大阪湾は汚濁されているが、近年の水質改善傾向は顕著である。貧栄養化による漁獲減やN不足によるノリの色落ちが指摘されているが、赤潮発生件数は依然として年間100件程度報告されている。これらはどう理解すべきだろうか。
 ② 底質汚染は以前と比較して幾分減少しているがあまり変化していないとされる。一般に、底泥には大量の汚濁物が含まれており、分解や溶出によっては簡単には浄化されず、底泥直上水が清浄になると、直上水と底泥成分との交換作用(拡散)で底泥からの溶出が説明できるので、正味の溶出量は増加するはずだが、どうなっているだろうか。
 ③ 漁獲については、速度は低減してきたが、依然として減少傾向が続いている。干潟や藻場の減少は止まり、微増してきている。今後の漁獲増には、どんな対策が必要だろうか。他方、黒潮の日本への接近他により、瀬戸内海の水質や漁業は影響を受けているのだろうか。
 以上のような疑問に対して、瀬戸内海の水環境の現状の整理、メカニズムの解説、ならびに、今後の対策に関して、6編の報告を掲載している。

2015-03-01 瀬戸内海の栄養度と漁業生産の動向
 瀬戸内海の透明度、TN、DIN および漁獲量の推移を整理、検討した。その結果、透明度は1980年代から約2m上昇していること、TN、DIN とも1990年代後半から低下していることが示された。また、漁獲物組成の分析から、年代にかかわらずイカナゴとカタクチイワシの漁獲割合が高く、両種で30~42%を占めることが明らかとなった。さらに、海域の栄養度の変化によって漁獲量や漁獲物の平均栄養段階が変化することを示した。近年の平均栄養段階の上昇は瀬戸内海の貧栄養化の表れと考えられた。
2015-03-02 底質の状況と内部負荷
 瀬戸内海底質中の窒素・リン濃度の現状と溶出速度についての知見を取りまとめた。底質中の窒素・リン濃度は、1980年代から2000年代の期間において増加は認められず、1980年代以降において、底質の悪化はないと推察された。これまで報告されている底質からの窒素・リンの溶出速度は、実験方法の違いや同じ方法であっても実験条件の違いによってその結果が大きく異なり、溶出速度の増減の評価ができないことから、統一的な実験方法の必要性が示された。
2015-03-03 栄養塩類負荷量の増減が瀬戸内海の生物生産(漁業)に及ぼす影響
 瀬戸内海において、栄養塩類(窒素・リン)負荷量の増減に対する漁獲量の応答を調べた。負荷量の増加期には漁獲量も増加し、減少期には漁獲量も減少していた。また、負荷量のピーク期に生物再生産の場の多くが失われていた。過去に起きた再生産の場の消失と、近年の負荷量の減少が重なり、近年の漁獲量減少が起きているとみられる。
2015-03-04 貧栄養化にともなう生態系の変化と今後の施策に対する提言
 瀬戸内海の貧栄養化は、長期にわたって蓄積された多くのモニタリング・データから明らかである。とくに、大阪湾以外の瀬戸内海に対しても流入負荷の削減をしてきたことと、削減対象が溶存無機態窒素・リンであることは大きな問題である。貧栄養化の過程では生態系の構造が変化し、漁業生産を崩壊させることがロトカ・ボルテラモデルで推測された。大阪湾以外の海域に対する流入負荷削減は緩和して、漁業生産とのバランスを図るべきである。
2015-03-05 貧栄養化海域の水環境の現状と課題
 全リン・全窒素濃度が減少し始め、貧栄養化しつつある現在の瀬戸内海では漁獲高が富栄養化時期より大きく減少している。同じ栄養塩濃度で漁獲高が異なる、このような多重解が得られる主な理由は、富栄養化時期に海水中の有機物が海底泥に蓄積し、海底付近の酸素消費速度が大きくなって貧酸素水塊が形成されたことにある。このような状態から脱し、再び漁獲高を増加させるには貧酸素水塊を解消すると同時に、浅場環境を改善し海洋生物を増加させて、健全な栄養物質(リン・窒素など)循環を復活させる、里海を創生する必要がある。
2105-03-06 変化する大阪湾の水環境―港湾海域と沖合域との環境ギャップの拡大―
 大阪湾では、湾奥港湾海域と沖合域との環境ギャップが拡大した。湾奥港湾海域は今も懸濁態窒素や溶存態無機窒素に富み、底層水の貧酸素化や青潮が発生する。一方、湾央部以南では底層水の貧酸素化が起こりにくいものの、栄養物質濃度が低下し、難分解性栄養物質の比率が高いため、栄養転送のパスが細く、効率の悪い可能性がある。湾奥部では水質改善に伴い天然アユの河川への遡上増大が認められるが、環境ギャップの拡大が大阪湾の生物生産の低迷に影響すると考えられた。

<執筆者> 2015-03-01 反田 實・山下 正晶・原田 和弘(兵庫県立農林水産技術総合センター)/2015-03-02 駒井 幸雄(大阪工業大学)/2015-03-03 藤原 建紀(京都大学名誉教授)/2015-03-04 山本 民次(広島大学)/2015-03-05 柳 哲雄(九州大学名誉教授)/2015-03-06 矢持 進(大阪市立大学)

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 4月号再生可能エネルギーの海外での取り組みとわが国の課題
編集: 2015-04-00 元川重環境エンジニアリング(株)・守岡 修一

<日本のFITの状況>わが国で2012年7月から導入されたFIT(固定価格買取)制度での電力買取価格は、再生可能エネルギー(再エネ)発電施設が事業として成立するように決められていることから高い設定となっており、認定時の価格が最大20年間保障される。そして、その価格は毎年見直され、そのたびに低下する傾向にあるため時期が遅れると不利になるので、早期に認定を受けた施設が多い。しかし、認定だけ先に受けて稼働しないといった施設が多く、稼働率は上がっていないというのが現状である。
<日本のFITの課題>再生エネのうち、環境影響評価調査の手間が少ないこともあって太陽光発電が群を抜いて大きく、その他の再エネは導入が進んでいない。太陽光発電のうち、住宅用ではある程度稼働率は上がっている。非住宅すなわち事業を目的とした規模の大きい施設は、土地の安い地域に偏在し、電力事情の希薄な地方に多くみられる。特に太陽光発電は発電量の変動が大きく、大量に送電線に受け入れると、周波数が乱れるなどして送電設備の故障や停電の恐れがあるため、北海道、東北、四国、九州、沖縄の5電力は固定価格で買い取る契約を中断するといった事態が発生した。電力会社も多額の費用を要するため、電力会社間の送電網の増強を進めてこなかったことも原因である。
<FITの見直しと海外の状況>新たな受け入れを中断していた5電力は契約を再開することになったが、経済産業省は電気が増えすぎた場合に出力抑制の仕組みを見直すことにした。事業者に保障なしで出力抑制を指示できる日数の年間30日上限をなくし、1日単位の出力抑制は時間単位とし、発電所に通信装置の設置を義務づけて、電力会社が発電を抑制できるようにした。業者からは全量買い取りだったはずとの不満も出ている。初期の目論みと異なったわが国を考えるうえで、諸外国ではいかに進めているか、アメリカ、ドイツ、スペイン、デンマークの取り組みを紹介し、わが国の課題を検証してみる。

2015-04-01 アメリカの再生可能エネルギーとスマート・グリッド
 現在のアメリカでは、スマート・グリッドへの期待が高まっている。それは、2008年の大統領選挙でバラク・H・オバマが当選し、温室効果ガスの排出量を削減するために、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーへの転換を目指すグリーン・ニューディールを提唱し、電力系統を最適化・高度化・多目的化させるスマート・グリッド構想が打ち出されたからである。
2015-04-02 ドイツの再エネ普及政策─固定価格買取制から入札制へ─
 ドイツは、固定価格買取制を実施し、再エネの大幅普及に成功した。その一方で、賦課金が急激に上昇したが、これは、電力市場における再エネ電力量が増えたことによる影響が大きい。また、ドイツは、固定価格買取制をやめ、2014年からプレミアム制、2017年からは入札制へと移行する。この移行は、再エネと電力市場との統合を目指すEU 政策によるものである。入札制によって再エネ普及が着実に進むかどうかについては、今後注目する必要がある。
2015-04-03 スペインにおける再生可能エネルギー導入・FIT制度の状況と課題
 スペインは欧州の中でも再生可能エネルギーの導入が進んでいるが、その重要な要因となったFIT 制度の実施に当たっては電力会社に巨額の欠損が生じ急速な見直しが行われている。一方、技術的には失敗とは言えず、物理的・制度的インフラの整備に関しては、わが国が参考とすべき点も少なくない。
2015-04-04 デンマークの再生可能エネルギーとFIT制度
 EUの再生可能エネルギーの取り組みはチェルノブイリ事故(1986年)以後盛んになった。その中にあってデンマークは再生可能エネルギーの取り組みの歴史が古く、1891年最初の風力発電機を建設し、世界で最初にFIT制度を取り入れた。デンマークの特徴は、国民1人当たりの風力発電量が世界一で、洋上風力発電の取り組みも早く1991年世界初で、麦わらを燃料にしたバイオマス発電等もある。地域暖房はほとんどがNPO 法人の運営であり、再生可能エネルギーの普及に関連した制度がきめ細かく合理的に組み込まれているのも特徴である。FIT制度では紆余曲折があったが、現在は洋上風力発電等でなされている。
2015-04-05 FIT制度の効用評価と自然エネルギー導入の考え方
 先行の諸外国にならい、わが国では2012年7月から導入されたFIT(固定価格買取)制度について、2014年5月に公表された同年2月までの実績データを用いて、その社会的効用を評価した。その結果、導入設備が太陽光に集中しており、その他の再生可能エネルギー(自然エネルギー)の普及促進が進展していない実態が明瞭になった。また、太陽光の中でも非住宅用、すなわち事業を目的とした導入量が非常に大きく、しかも大規模設備の稼働率は16%弱しかなかった。筆者らは導入以前からこの制度に大きな問題があることを指摘していたが、この結果はまさにFIT制度の根本的な欠陥を顕わにするものと言える。この制度に頼らず自然エネルギーを導入する対案として、新たに「限界設備価格」概念を提案し、具体的な試算例を示す。

<執筆者> 2015-04-01 河内 信幸(中部大学)/2015-04-02 大島 堅一(立命館大学)/2015-04-03 佐野 郁夫・荒井 眞一((独)環境再生保全機構)/2015-04-04 本庄 孝子(阪南大学)/2015-04-05 松田 智・久保田 宏(静岡大学)

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 5月号阪神淡路大震災20年―教訓はどのように継承されているか―
編集: 2015-05-00 神戸学院大学・古武家 善成

 2015年は阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)発生から20年目に当たる。1995年1月17日(火)午前5時46分、M7.3の規模を持つこの大都市直下型大地震が発生した。国内での過去の地震の発生状況を遡れば、1993年北海道南西沖地震(M7.8)、1983年日本海中部地震(M7.7)、1946年南海地震(M8.0)など、本地震より規模の大きな地震が発生しているが、震度7の揺れは近年の地震では最大であった。
 阪神・淡路大震災20年を迎えた日本の科学技術が、この地震から得た教訓を東日本大震災に直面してどのように継承し活かしているかについて、環境およびその他の分野から振り返り、“大災害”時代への対処の仕方を探ることとした。この特集ではアスベスト問題、水利用、トイレ問題、および災害ボランティアに焦点を当て、それぞれの分野の研究者に執筆をお願いした。阪神・淡路大震災20年の節目として、環境分野に人文・社会の分野を加え“大災害”時代への教訓を提示した。

2015-05-01 災害時のアスベスト問題―阪神・淡路大震災から東日本大震災まで―
 大地震の二次被害としての損壊した建物解体時のアスベスト飛散について、1995年の阪神・淡路大震災で社会問題化した。解体作業員の健康被害が明らかになっている。資源循環型社会形成の動きの中で、2005年のクボタショックを経て、2011年の東日本大震災の解体作業におけるアスベスト被害の未然防止にどう活かされたのかを、政府、自治体、市民の取り組みについて、経過をまとめた。今後想定される大規模震災時のアスベスト被害の未然防止対策について、教訓としてまとめた。
2015-05-02 震災時の水利用とその課題
 水道施設の震災対策および震災後の対応の中で、特に応急給水に焦点を当てた。まず、阪神・淡路大震災を振り返り、この経験で得た教訓とその後進められた対策を述べた。特に、水道施設の復旧期間、および応急給水量の目標が導出されたことを示した。ついで、東日本大震災を振り返り、新たに浮かび上がった課題を述べた。特に、活用されるべき技術として応急浄水処理装置を取り上げ、その意義と実現のために必要な仕組みについて論じた。
2015-05-03 災害時のトイレ問題
 人は生きるために食物を摂取し、不要になったものを排泄する。この日常不可欠なことが困難になるのが災害時である。災害に備えて食料は備蓄しても、なぜかトイレの備蓄は優先順位が低く見られがちで不十分である。大都市直下型の阪神・淡路大震災において災害時のトイレ問題が顕在化した。ライフラインが不能となり水洗トイレが使えない状況下、搬送される仮設トイレの不足、外便所という悪条件での使用の困難さ、不慣れな共同生活、十分な水洗でないための汚れの増幅などによってトイレパニックが起きた。その経験を踏まえてこれから確実に起きる大地震にどう備えるべきかを考える。
2015-05-04 災害ボランティア―その勃興と現状および課題―
 阪神・淡路大震災では多くの若者が災害ボランティアを行った。それ以降、多くの市民がボランティアを行い、ネットワークが構築され、災害ボランティアは量、質ともに高くなった。しかし、東日本大震災では大学や企業が支援活動を展開したが、規模の大きさと被災場所との関連で様々な問題点もみえてきた。南海トラフ巨大地震や首都直下型地震に備え、官民学が連携して災害ボランティアの醸成に向けて努力していく必要がある。

<執筆者> 2015-05-01 中地 重晴(熊本学園大学)/2015-05-02 伊藤 禎彦(京都大学)/2015-05-03 高橋 志保彦・山本 耕平(日本トイレ協会)/2015-05-04 前林 清和(神戸学院大学)

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 6月号地産地消の再生可能エネルギー―小水力を中心に―
編集: 2015-06-00 阪南大学・本庄 孝子

 かつて農山村は、食料・木材・薪炭などの資源供給地であった。近年、産業の発達、大量生産・大量消費に伴い、地方は原発など大規模電力の供給地への貢献等が主となり、地域のエネルギーは衰退し、電気やガスを地域外から調達するなど資源消費になってしまった。
 3.11東日本大震災以後、エネルギーをいかに確保するかは喫緊の課題である。
特集では、地域資源に焦点を当て地域による再生可能エネルギー開発への取り組み状況を、小水力等を中心に報告したい。2012年、FIT(固定価格買取制度)が導入されて再生可能エネルギー(以下、再エネ)導入の道筋が切り開かれたものの、制度的には未熟で、太陽光や風力発電に逆風が吹き始めている。ここでは小水力事業等の現在は、どうかを地域社会の中で考えてみたい。
 政府はこの4月に、2030年の電源構成は再エネ22~24%と前提とする案をまとめた。一方、環境省は2030年、33.2%の再エネ電源が導入できることを示した。各省庁の取り組みは前向きになり、再エネ関連予算概算要求額の総計は2,000億円を超えた。再エネを導入すると、温室効果ガス削減、エネルギー自給率向上、化石燃料購入資金の抑制、雇用の創出、地域活性化等の意義がある。再エネの発電効率は太陽光15%前後、風力は風が吹いているときに20~30%であるのに対し小水力は平均して60%程度になる。小水力発電は農業用水や上下水道関連施設、中小河川に適しており、潜在資源量は多い。
 小水力発電の課題には、水利権、採算性、維持管理があり、少しずつ改善の兆しが見える。本特集から、地域に多量にある小水力などの再エネの活用で、農山村活性化の実現を願ってやまない。

2015-06-01 地域による地域のためのエネルギー戦略―小水力・森林バイオマスの利用と農山村の生存―
 森林バイオマスと小水力の活用事例や可能性を示しながら、地域主導の再生可能エネルギー生産供給が小さな経済を地域に生み出せること、減少した農家所得を回復させる地域の雇用創出に貢献することを論じ、農山村の再生可能エネルギー生産供給の意義を考察した。
2015-06-02 地方自治体における再生可能エネルギー供給の現状と展望
 日本は、諸外国と比較して、再生可能エネルギー導入比率が低く、太陽光以外の再生可能エネルギー電力の普及や熱利用政策などの余地が残されている。環境省検討会の検討によれば、固定価格買取制度の運営費用や再生可能エネルギー大量導入に伴う系統対策の費用などが合理的な範囲内に収まる一方、化石燃料費流出防止、雇用の促進など経済面でもメリットが期待される。地方主導で再生可能エネルギー導入が進むよう、とくに小規模自治体を対象とする国の支援が必要であろう。
2015-06-03 (事例)エコでヒューマンな自立できる村づくりを目指して―吉野町の挑戦―
 奈良県吉野町では、地域の手作り水車で町を元気にする取組(水車プロジェクト)が始まり、防災、耕作放棄地の再生、新たなコミュニティづくり等に発展し、各地に波及した。自分たちで地域のビジョンを描きそれに向かって活動し続ける人のエネルギーが「水車」として形になり、ローカルエネルギーへと広がっている。身近な資源をエネルギーに変える柔軟な発想力、行動力が、これからの山村振興に求められている。
2015-06-04 (事例)神戸市水道局における小水力発電事例
 神戸市水道局では、太陽光、水力などの再生可能エネルギーを有効利用するため、2001年より発電設備を順次導入している。千苅浄水場小水力発電設備は2004年より運用を開始し、従来、流量制御弁により損失していたエネルギーを有効活用して発電し、浄水場の運用に利用している。その発電量は場内使用電力量の約5%を占め、CO2削減量は年間約193 t-CO2となっている。
2015-06-05 (事例)中国地方での小水力発電―60年余の取り組み―
 日本の電気エネルギー政策は、戦後、主となる発電設備の構成を水主火従から火主水従に、そして原子力発電へと移行させてきた。3.11を境にエネルギーに関する国民の意識は高まり、昨今は再生可能エネルギーの大切さが知られるようになっている。中国地方では半世紀以上前から、地域経営の自家用小水力発電が建設・運営され、農村の経済復興と電力不足の解消に大きく寄与してきた。一方で経済成長によるエネルギー政策の変遷の波にさらされてもきた。ここでは、この歴史に学ぶことで、これから小水力発電が進むべき方向を考えてみたいと思う。
2015-06-06 農業水利施設を利用した小水力発電
 ダム、頭首工、農業用水路等の農業水利施設には、落差、農業用水が賦存し、大規模な土木工事を行うことなく小水力発電が建設できる。農業農村整備事業等で整備された小水力発電所は落差と流量が地区ごとに異なり、種々の特徴を有している。規制緩和の進展と相まって、新たに発電水利権を取得するケースも見られる。農業水利施設で電気エネルギーを生産することは、経済的効果だけでなく農村地域社会の再構築にとっても重要である。
2015-06-07 展開が進む雪氷冷熱エネルギー
 昔から雪国の生活文化であった雪利用は、昭和50年代以降に再興し、現在全国で約150施設が稼働する。単なる冷熱価値だけでなく、極めて安定した温度・湿度環境、除塵・脱臭効果など独自の優位性も立証され、農産物貯蔵・熟成への活用が急伸する。農業生産へ導入し採算性を高めた事例や、雪室食品のブランド化、夏の雪室ツアーなど、農業の6次化の全ての段階で貢献しつつあり、データセンターや防災備蓄など新たな挑戦も始まった。

<執筆者> 2015-06-01 小林 久(茨城大学)/2015-06-02 倉阪 秀史(千葉大学)/2015-05-03 岸田 かおる(吉野小水力利用推進協議会)/2015-06-04 津島 美貴男・河田 俊行・土井 佑介(神戸市水道局)/2015-06-05 沖 武宏(イームル工業(株))/2015-06-06 後藤 眞宏((国開研法)農研機構・農村工学研究所)/2015-06-07 上村 靖司(長岡技術科学大学)

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 7月号最終処分場でのダイオキシン類含有廃棄物の不適正搬入事例と対策
編集: 2015-07-00 神戸学院大学・古武家 善成

<ダイオキシン類規制の背景>“ダイオキシン類は人の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがある物質であることから、基準や規制を定め国民の健康の保護を図ることを目的”としたダイオキシン類対策特別措置法が制定されたのは、今から16年前の1999年である。ダイオキシン類による環境汚染や人体影響が国内で大きな社会問題となったのは、1983年に愛媛大学の立川 涼教授(当時)がゴミ焼却炉の灰からダイオキシン類を検出したことがきっかけである。わが国では焼却処理がゴミ処理の主要な方法として採用されていたことから、ダイオキシン類による環境汚染は社会問題化し、国会でもこの問題が取り上げられるようになった。1988年には、兵庫県宝塚市の一般廃棄物焼却施設におけるプラスチック混焼によるダイオキシン類生成の問題が、住民訴訟の対象となった。
 その後、国の全国調査等により、1996年には、兵庫県宍粟郡の宍粟環境美化センターの排ガスから990 pg-TEQ/m3という最高濃度のダイオキシン類が検出され、1997年には、大阪府豊能郡の豊能郡美化センター周辺でダイオキシン類による大規模汚染が明らかになった。1980年代後半から90年代にかけては、ゴルフ場農薬など有機塩素系を中心とした農薬やシックハウス原因物質等、有害化学物質による環境汚染への市民の関心が特に高まった時期である。さらに90年代後半には、米国の研究者が発表した内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)による生体影響や環境汚染が、国内でも大きな社会的関心を呼んでいた。前記のはこのような社会的背景の中で制定された。
<ダイオキシン法>同法では、ダイオキシン類の耐容1日摂取量(TDI)として4pg-TEQ/㎏/日、環境基準として大気:0.6 pg-TEQ/m3( 年平均)、 水質:1pg-TEQ/L(年平均)、底質:150 pg-TEQ/g、土壌:1,000 pg-TEQ/g が定められた。環境基準値から明らかなように、環境モニタリングには極微量分析が要求されることから高分解能GC/MS法が公定法になっている。しかし、含有濃度が比較的高い廃棄物焼却炉の排ガス、ばいじん、燃え殻に関しては、罰則適用には用いられないが迅速な対応を目的に、生物検定法(2005)および簡易的機器分析法(2010)が追加指定された。その後、法規制強化や関係分野の努力により、廃棄物処理施設からのダイオキシン類排出量は過去15年間に約98%減少し、環境基準超過率も2%以下となった(2014年版環境白書)。
<不適正搬入事案と対策>昨年、基準超過ダイオキシン類を含有する焼却灰が産業廃棄物最終処分場に搬入された事案が明らかになった。近畿圏の最終処分場確保の目的で、近畿2府4県の自治体が出資して1983年に設立された大阪湾広域臨海環境整備センター(大阪湾フェニックスセンター)における事例である。このような事例は構成自治体との間の信頼関係を揺るがせる重大問題であることから、フェニックスセンターは搬入事業者への立ち入り調査を実施するとともに、学識経験者・関係者で構成された検討委員会を立ち上げた。そして、昨年12月に再発防止の取り組みや対策が公表され、迅速検査体制の要として、ダイオキシン類の生物検定法も採用された。
<本企画のねらい>本企画では、ダイオキシン法制定後の16年間にわたる国内でのダイオキシン対策の重要事例として、フェニックスセンターおよび迅速モニタリング体制確立に協力を示した民間分析機関2社から、その取り組みを紹介している。微量化学物質による環境汚染問題に関しては、専門家の関心が医薬品・香粧品に移りつつある感がある。しかし今回の事例は、この問題の象徴的物質であるダイオキシン類の汚染リスクが、我々の傍に厳然とあることをあらためて示している。

2015-07-01 ダイオキシン類の受入基準を超過した廃棄物の搬入事案とその対策
 大阪湾広域臨海環境整備センターは近畿2府4県で発生した廃棄物を受入れ、海面埋立処分を行っているが、平成26年度にセンターの定めるダイオキシン類の受入基準値を超過した廃棄物が相次いで搬入される事案が発覚した。本事案を受け、当センターでは関係団体,地元住民の信頼を回復するために必要な調査・検査を実施するとともに、全国で最も厳格かつ重層的な検査体制のもと廃棄物を受け入れる体制を平成27年度より導入した。
2015-07-02 簡易測定を活用したダイオキシン類の抜取検査体制
 大阪湾広域臨海環境整備センターでは、最終処分場に持ち込まれた廃棄物から抜き打ち的に試料を採取して、受入基準の適否を検査している。ダイオキシン類の測定は、従来、廃棄物処理法に基づく高分解能ガスクロマトグラフ質量分析法で実施していたが、不適正な搬入事案を受けて、より迅速に状況を把握するため、実証試験を通じて簡易測定の導入を検討し、関係者との調整を経て、簡易測定を組み入れた新たな検査体制を構築した。
2015-07-03 生物検定法の実際(1) Ahルシフェラーゼアッセイ
 Ah ルシフェラーゼアッセイは、ダイオキシン類を迅速に評価することのできる生物検定法であり、公定簡易法として10年を超える実績がある。一方で機器分析による従来の公定法に比べ、認知度が低く、潜在的な活用の場面は多く残されていると考える。10年の実績を振り返り、手法の特徴や活用への期待を紹介する。
2015-07-04 生物検定法の実際(2) ダイオキシン類簡易測定法ケイラックスRアッセイの実際
 ケイラックスRアッセイは、平成17年に環境省が認定法として公布したダイオキシン類生物検定法(告示法第92号1の1)である。国内外において、廃棄物の排出施設・最終処分場及び土壌・底質、食品・飼料のスクリーニング及びモニタリングの分野で幅広く活用されている方法であることから、ここでは、導入経緯を最初に述べ、技術概要、事例を紹介する。今後、臭素化ダイオキシン類の規制管理における応用研究や発展途上国でのPOPs 対策ツールとしての展開が期待される。

<執筆者> 2015-07-01 奥野 博信(大阪湾広域臨海環境整備センター)/2015-07-02 濱口 弘行(大阪湾広域臨海環境整備センター)/2015-07-03 横堀 尚之((株)住化分析センター)/2015-07-04 中村 昌文((株)日吉)

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 8月号ドイツのメタン発酵技術開発の現状とその展開
編集: 2015-08-00 龍谷大学・竺 文彦

<西欧からの学び>日本は、明治以降、西欧の社会システムや科学技術を学びながら、国を発展させてきた。科学技術の面では、西欧に追いつき追い越して、世界最高の技術を達成し、高度成長を遂げてきた。しかし、最近は中国や韓国などの技術的な発展に追われて、社会的にも経済的にも停滞感が強くなっているように思える。かつて日本が技術面で西欧を追い越そうとしていたとき、西欧の社会は、これらの状況にどのように対処してきたのであろうか。日本は、まだまだ西欧諸国から学ぶことが多いと思われる。
<メタン発酵の状況の違い>温暖化防止対策として、再生可能エネルギーを利用し、化石燃料の消費を減らしていこうとする考え方や政策は誰もが認めるところであるが、有機物をメタン発酵してエネルギーとして利用する施設については、日本とドイツではかなり状況が異なっている。すなわち、ドイツではメタン発酵施設が多く建設され、畜産廃棄物や飼料などがエネルギーに変換されているが、日本では北海道を除くと、メタン発酵施設の数は多くない。これは、技術的な課題として、メタン発酵後の脱離液の処理の問題があると考えられる。すなわち、農業形態がメタン発酵の技術に関連してくるのであり、脱離液を液肥として散布できる地域と、水田のように液肥の使用が困難な地域では、メタン発酵の経済性が異なるのである。
<廃棄物と再生エネルギー>電力の買取システムの違いや、発生する温水の利用可能性などの社会的な状況の違いが、ドイツと日本のメタン発酵の普及に大きな影響を与えているものと考えられる。
 私自身、2012年に1ヵ月ほどドイツのアーヘン市に研究滞在し、環境施設の見学を行った(本誌2013年1、2、4、5月号「アーヘン訪問記」参照)。日本との違いについては、まず、家庭ごみから生ごみが分別され、主に紙とプラスチックが焼却施設で焼却されて発電、さらに、地域に温水が供給されて、エネルギー利用されていた。ドイツでは、ホットなごみはホットに処理し、ウェットなごみはウェットに処理するという考え方をもとに、生ごみの堆肥化が1990年代に普及して、現在ではどこの町にも堆肥化施設があるといえる。さらに、アーヘン市では生ごみにより嫌気的堆肥化が行われていた。すなわち、密閉式の堆肥化施設で、発生するメタンガスにより発電を行っていた。日本ではメタン発酵の後に出てくる脱離液の処理が問題であるが、嫌気的堆肥化により脱離液の処理の問題が解決するかもしれない。家庭ごみを焼却して発電しようとする場合、生ごみは水分が多く発電効率を下げることになる。日本では、まず、家庭ごみから生ごみを分別することが必要であろう。
 最近流行のバイオエネルギー村の見学も行った。マールブルグ市に近いオーバーロスフィー村の見学会に参加したが、木材チップによる発電と畜産廃棄物、飼料によるメタン発酵を行っていた。多くの近隣の農民が見学に来ていた。ドイツの人たちは、真剣にエネルギーの問題に取り組んでいると感じたものである。
<本特集のねらい>ドイツでは、再生可能エネルギーの利用について試行錯誤しながら歩みを進めており、日本もどのようなプロセスを経て政策を決定し進めていくかについて、ドイツから学びながら、日本の方針を定めていく必要がある。ドイツの廃棄物と再生エネルギーについて、憧憬の深い有識者による執筆を企画した。

2015-08-01 ドイツの再生可能エネルギー政策―特にメタン発酵を中心に―
 ドイツにおける再生可能エネルギー(RES)の促進を目的とした重要政策について、特にバイオガス産業を中心として論じる。バイオガスには、コジェネレーションの媒体、バイオメタン変換によるエネルギー貯蔵や天然ガスの代替としての利用など、多様な利用形態が望めることから、バイオガス産業は、ドイツの「エネルギー転換」において重要な役割を果たしている。2012年には、再生可能エネルギーの急激な拡大が、再生可能エネルギーの費用効率とエネルギー市場統合を重視する政策転換のきっかけとなった。その結果、バイオガス産業への投資が大きく減少し、バイオガス産業に対するドイツの野心的な長期目標の達成可能性に懸念が生じている。
2015-08-02 ドイツにおけるバイオエネルギー村とバイオガスプラントの現状
 ドイツにおいて、再生可能エネルギーの導入に積極的な地方自治体を検索すると、決まって、「バイオエネルギー村(Bioenergiedorf)」の名を冠した事例が浮かび上がってくる。単なる技術導入を超えた、社会横断的な取り組みであるドイツのバイオエネルギー村と、その中心的役割を果たすメタン発酵(バイオガス)エネルギーの現状と展望について紹介する。
2015-08-03 ドイツLIPP GmbHのスパイラルタンクとバイオガス発酵槽の技術開発
 ドイツのバイオガスプラントを供給している数十社はあると言われているプラント会社やエンジニアリング会社の中で、バイオガスの重要な部分、発酵槽を設計、製造、施工、プラントのエンジニアリングを単独で行っている企業は稀である。バイオガス発酵槽の開発で、長い歴史を持つLIPP GmbH の60年に渡る金属タンク製造とメタン発酵槽の技術革新の過程を解説し、最新のバイオガス発酵槽とバイオガスプラントの技術的傾向について述べる。
2015-08-04 日本におけるバイオマス事業の取組みと普及の課題
 メタン発酵は湿潤系バイオマスからメタンガスとしてエネルギーを取り出せる特徴のある技術であり、国内の利用の歴史も長いものの広く普及するまでに至っていない。一方、ドイツでは2014年において約8,000ヵ所のバイオガス施設が建設され、約3,800 MW の発電が行われている。筆者らの知見において、その違いがどこにあるのかを比較しつつ、国内のバイオガス事業普及の課題を考察する。

<執筆者> 2015-08-01 ラウパッハ・スミヤ ヨーク(立命館大学)/2015-08-02 梶村 良太郎(Agentur fur Erneuerbare Energien)/2015-08-03 今泉 亮平(日本ユニテック(株))/2015-08-04 岡安 良安・他(バイオガス事業推進協議会)

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 9月号琵琶湖の沈水植物(水草)問題の現状と課題
編集: 2015-09-00 根来 健

<沈水植物の過去状況>湖沼の水辺の水草帯、特に沈水植物群落は、一次生産者として、それに付着して棲息する藻類や小動物の生活基盤として、エビ類の生息場所として、また多くの魚類の産卵や仔稚魚の生育場所として、生物生産に重要な役割を果たしている。かつては田んぼや畑の肥料としても重要で、周辺の農家ではこれらの水草を大量に採取していたことや、この水草をとる権利を巡って集落同士で争いが起こったことなどが、各地の記録に残されている。
<沈水植物の減少・消滅>全国の多くの湖沼で、1960年前後から沈水植物の量や種類の減少・消滅が報告されてきた。埋め立て工事に伴う濁水や、下水道の未整備による工場排水や家庭排水、農薬の流入などが原因ではと推測されてきた。
<沈水植物の再生対策>これに対して、かつてそこに生育していた沈水植物の種の保存や、沈水植物による水質改善効果を期待して、様々な方法で沈水植物再生への取り組みが行われている。
<琵琶湖の状況>琵琶湖でも、かつて沈水植物が激減した時代があった。特に南湖での減少はひどく、面積の2%程度にまで至った(びわ湖生物資源調査団編:びわ湖の生物資源をめぐって、1966年)。しかし、1990年代半ば以降、琵琶湖、特に南湖の沈水植物は増加に転じた。近年の増加は著しく、2014年度は過去最高の現存量を記録するに至り、南湖の湖底の90%以上、容積の50%弱を沈水植物群落が占有するに至っている。これらは、必ずしも外来種のオオカナダモやコカナダモの繁茂によるものではなく、在来種のセンニンモ等の繁茂によるところも大きく、しかも年々優占的な種類が変遷していることが特徴である。
<沈水植物の異常繁茂>沈水植物の増加に伴い、植物プランクトンの減少や濁度の減少に伴う透明度の向上など、いくつかの水質項目の改善が報告された。しかし、異常に繁茂し湖面まで覆うようになった沈水植物は、景観悪化、湖岸に漂着した藻の腐敗による悪臭、船舶の航行障害、漁業の操業障害、生態系への影響等を引き起こしている。沈水植物は水中に酸素を供給する役目もあるが、大量に繁茂した沈水植物群落は、水の動きを止め、濁質の沈降を促進することで湖底を泥質化させ、底層を生物の生存が困難な状態にまで貧酸素化させている実態も明らかになってきた。
<水源の問題>琵琶湖は、京阪神1、400万人の水道水源でもある。近年の水草の増加に伴い、原水水質の変化が水処理にも影響を及ぼし始めた。その一つが低濁度化と高pH 化によるものであり、従来からの浄水処理法では処理が難しくなっている。琵琶湖水のかび臭の原因は、1969年の発生以来、湖水中のプランクトン(浮遊性藍藻類)に由来してきたが、近年はそれらの生物が出現していないにもかかわらず、比較的低濃度のかび臭が長期間にわたり検出される事態が生じている。沈水植物群落に付着している藍藻類等によるものと推定されている。
<水草対策>琵琶湖を抱える滋賀県は、関係部局や研究機関等からなる水草対策チームを設置し、調査研究と対策に取り組んでいる。水草刈取船等による水草除去のほか、漁船と貝曳き漁具を用いた水草の根こそぎ刈り取り等の新たな施策や、除去した水草の利用方法の開拓などの施策を展開している。
<特集のねらい>2014年12月、環境省は「自然浄化対策について~生態系機能を活用した“健やかな湖沼水環境”の実現を目指して~」を公表した。この中で、生態系機能を活用した水質浄化の取り組み「自然浄化対策」が、ときには期待している効果と異なる望ましくない結果をもたらすことがあるということも明記されている。
 広大な湖沼における沈水植物の再生・復活は、時として暴走をきたし、人間の手で制御することは難しい。日本最大の湖・琵琶湖の、沈水植物(水草)の現状、対策、課題を特集する。

2015-09-01 琵琶湖南湖の沈水植物の長期変遷と近年の繁茂について
 琵琶湖南湖でさまざまな社会問題を引き起こしている沈水植物の繁茂を取り上げた。1936年から2014年までの沈水植物の消長を詳しく検討し、近年の沈水植物の繁茂は、最終的には栄養塩の多さに問題があることを指摘した。
2015-09-02 水草繁茂と琵琶湖南湖の水質
 琵琶湖南湖で水草が繁茂する5~10月の水質は、1978~2013年の35年間で透明度、Chl-a、BOD、SS、TN、TPに改善傾向がみられるが、水草の大量繁茂により水が停滞し、底層で貧酸素化等の弊害も生じている。底層DOは、2014年9月の南湖調査52地点のうちの13 %で魚介類の生理活性に影響するレベルを下回った。また、2013年の定点観測では連続5時間致死レベル以下となるなど、魚介類の生育環境として厳しい状況の所もある。
2015-09-03 沈水植物(水草)の繁茂と水道での浄水処理への影響と対策について
 水草繁茂により琵琶湖での出現生物や水質等水環境に大きな影響が生じてきている。水草帯は浄化能力が高く水質改善に貢献する一方、高pH 値及び低濁度化などの現象が生じ、水道の浄水処理過程で凝集阻害等の問題に直面している。かび臭は水草繁茂の影響もあり、浄水場で予測不能な急な発生に見舞われ、対応に苦慮する事例が発生している。これらの具体的な事例を紹介し、その問題点と対応等について考察している。
2015-09-04 琵琶湖の水草の順応的管理と有効利用への挑戦
 琵琶湖で大繁茂する水草は、生活環境や自然環境に大きな影響を与えており、これを緩和するため、滋賀県では、水草の繁茂要因や生態について調査検討を行うとともに、効果的な除去方法や有効利用方法について試行錯誤を積み重ねてきた。こうした滋賀県の取り組みを紹介している。

<執筆者> 2015-09-01 芳賀 裕樹(滋賀県立琵琶湖博物館)/2015-09-02 石川 可奈子・岡本 高弘(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)/2015-09-03 矢野 洋(淀川水質汚濁防止連絡協議会琵琶湖・淀川生物障害等調査小委員会委員長)/2015-09-04 川﨑 竹志(滋賀県琵琶湖環境部琵琶湖政策課)

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10月号現場で使える環境分析技術
編集: 2015-10-00 京都大学・藤川 陽子

<環境分析と近年の動向>環境分析の目的は、環境汚染の診断、環境中の物質の動態や分布の分析、各種の法令基準への適合度の判定、そして例えば各種製造工程や排水・廃棄物の処理プロセス等の監視と最適化など、場面と用途により様々である。
 近年、環境分析分野では、ますます機器分析の比重が高まっている。例えば、元素分析においては原子スペクトロメトリ法の装置が多くの研究機関に採用されている。また、従来はそれぞれ単一の装置で行っていた分析を組み合わせるいわゆるhyphenated method(たとえば高速液体クロマトグラフ─質量分析法による有機および無機物質の分析)もセット商品として販売されるようになった。このような機器分析の進展と高度化は、環境を保護する観点から望ましいものであるが、エンドユーザーの側から見れば、分析操作の内容がブラックボックス化したということでもある。大学・関係機関での教育や技術継承が重要である。
<現場での環境分析とは>環境分析では、試料保存の難しい測定項目(例:水中の溶存酸素濃度や酸化還元電位)や現場で測定するほうが容易な項目(例:pH)は、現場で測定するが、それ以外の項目は試料を実験室に持ち帰って測定を行う。実験室に試料を持ち帰る場合は、分析結果の出るまでにタイムラグが出る。一方、緊急を要する環境監視や、時々刻々変化する処理プロセスを環境監視に基づく最適化等の目的がある場合、分析結果の出るまでのタイムラグの発生は不都合である。そのため、現場で、ある程度高度な分析項目についてもデータが得られる分析技術や分析機器の需要が存在する。ただ、近年進歩の著しい機器分析技術は、分析用のガス供給等のための配管その他の分析環境整備が必要で必ずしも現場で使えないものが多い。
<本特集のねらい>本特集では、このような観点から、特に水環境監視や排水処理で問題となる水質項目と、福島第一原発事故以降注目の集まる放射線に関し、現場で使える環境分析技術について、興味ある数事例を紹介する。

2015-10-01 Field Kitsを用いた水中有害物質(As、Sb)の分析
 1987年のタイのロンピブン村のヒ素汚染発覚に始まり、ガンジス下流域などで大規模な飲料用井戸水のヒ素汚染が見つかり、現場での迅速な分析が必要となり、著者はヒ素分析用フィールドキットの開発を進め、水銀を使用しないフィールドキットも開発した。呈色した硝酸銀紙は0.1μg 以上ではエネルギー分散型蛍光X線分析法で定量が可能であり、1 ng ~ 100 ng では硝酸銀紙の一部(1/4~1/32片)を炭素炉原子吸光(GF-AAS)のキュベットに投入し定量した。
2015-10-02 ボルタンメトリー法による重金属などのオンサイト分析―作用電極および測定自動化の動向―
 ストリッピング・ボルタンメトリ法(SV 法)は多様な元素についてオンサイトでのスクリーニングや分析を行うことができる。同法の装置は比較的安価であるが、一部の元素については、本法がオンサイトで水道水質基準以下での定量の可能な唯一の手法である。また、比色法に比べて測定対象とできる元素数も多い。一方で、測定手法があまりにも多様で柔軟性に富む結果、本法についてあまり経験のないユーザーにとっては却って取りつきにくい分析手法でもある。本報告ではSV 法での分析手法選択時に考慮すべき要因や部品の選択、ならびにトラブルシューティングについて紹介する。
2105-10-03 めっき排水中の有害物質等の分析ニーズと自動分析
 めっき工場の排水は、有害物質を多く含むため、めっき工程と排水処理工程は切っても切れない関係がある。さて、めっき排水処理においては処理用薬品(吸着剤含む)が不可欠で、処理コストの低減のために、薬品使用量の最適化が求められている。本報では、めっき業界で最近問題となっているホウ素処理の最新動向を紹介するとともに、六価クロム処理用の薬品使用量の最適化のために自動水質分析装置を開発・使用した例を紹介する。
2015-10-04 放射線事故現場での実用的な放射線測定器とは
 放射線事故後の放射能環境を調査するには、放射線測定器の特性を充分に把握しなければならない。たとえ同じ場所で空間線量率を計測しても、測定結果が約0.75~1.6倍もばらつくことがある。核種同定に利用されているLaBr3 シンチレーターは良いエネルギー分解能を有するが、結晶中の不純物の存在に配慮が必要である。また、エネルギー分解能が劣るNaI シンチレーターでも、優れた核種同定性能を有し、放射線事故現場での利用価値が高い測定器もある。

<執筆者> 2015-10-01 廣中 博見((元)福岡市保健環境研究所)/2015-10-02 Paul LEWTAS・藤川 陽子・Magda WAJRAK(Edith Cowan University・京都大学)/2015-10-03 上村 健二・藤川 陽子(㈱いしかわエンジニアリング・京都大学)/2015-10-04 髙田 真志(防衛大学校)

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11月号硫酸塩還元菌と硫黄脱窒菌利用の下排水処理と汚泥の減容化
編集: 2015-11-00 大阪産業大学・尾崎 博明

<下排水処理の現状>下排水処理における窒素化合物とリンの除去では、周知のように生物学的硝化・脱窒及び嫌気―好気法による生物学的脱リン、及びそれらを組み合わせた「嫌気―無酸素―好気」による窒素化合物とリンとの同時除去が実用化されている。一方、生物学的脱窒素においては排水中有機物やメタノールなどの水素供与体が必要であり、従属栄養細菌が関与するため多くの汚泥が生成する。また、生物学的脱リンでは、そもそも生成した汚泥を引き抜くことによりリン除去が成立しており、汚泥生成は欠かせない。生成汚泥の効率的な処理法や有効利用、さらには汚泥の減量化が水処理法開発の緊要の課題となっている。
<新たな技術開発と汚泥減容化>最近、硫酸塩などの硫黄の酸化と還元に関わる微生物の機能を利用した下排水処理が注目を集め、すでに実用段階に達している。その基礎については本特集にもご寄稿いただいている池本良子教授らのグループにより、除去機構や構成微生物などについて先駆的に多くの研究がなされており、我が国においても十分な基礎が整っている。

2015-11-01 硫黄の酸化還元にかかわる微生物を活用した下排水処理
 下排水処理における硫黄の酸化還元にかかわる微生物の影響と活用について概説した。下水管内や嫌気性処理においてこれらの微生物が様々な問題を引き起こすだけでなく、活性汚泥処理においても糸状性細菌の増殖や栄養塩除去に影響を与えている。一方、これらの微生物反応を排水処理に活用する試みも始まっている。硫酸塩還元条件で排水中の有機物を分解することにより、汚泥発生量が抑制できることから、今後の展開が期待される。
2015-11-02 硫酸塩還元細菌を利用した担体充填生物ろ過法による排水処理技術
 嫌気性微生物である硫酸塩還元細菌を利用した排水処理技術として、染色排水を対象とした処理と、窒素リン除去を目的とした処理について紹介した。どちらの処理においても硫酸塩還元細菌と硫黄酸化細菌または硫黄脱窒細菌が共存し硫黄の酸化還元サイクルを形成していた可能性を示した。他の細菌と競合することなく共存関係を築くことによって嫌気条件下の利用に留まらず、様々な条件下での利用が望まれる。
2015-11-03 SANIプロセスによる下水処理と汚泥の減容化
 SANI.プロセスは硫酸塩還元などの硫黄サイクルを利用した独立栄養細菌による脱窒・硝化を組合せた炭素と窒素の生物学的除去プロセスであり、汚泥の引き抜きなしでの運転が可能である。従来の下水処理法と比較すると余剰汚泥生成量の90%までを抑制、エネルギー消費量35%、CO2排出量36%を削減でき、すでに実用段階にある。現在、脱窒硫酸還元EBPR 法とSANI.プロセスとを組み合わせたSANI.-EBPR によるTN、TP の同時除去とHRT の短縮に関する研究を進めている。
2015-11-04 バンコクにおける好気性ろ床/硫黄脱窒システムによる下水処理
 低消費エネルギーかつ即効的な汚染対策として有望な、好気性ろ床と硫黄脱窒から成る分散型の下水処理システムの性能評価をバンコク(タイ)において実施した。その結果、本処理システムは、集合住宅から排出される下水に対して優れた有機物・窒素処理性能と省エネルギー性能(消費電力削減、余剰汚泥削減)を安定的に発揮した。今後の研究の継続により、途上国への実用的な展開を図っていきたい。

<執筆者> 2015-11-01 池本 良子(金沢大学)/2015-11-02 山下 恭広((国研法)農業・食品産業技術総合研究機構)/2015-11-03 陳 光浩・橋口 亜由未・尾崎 博明(香港科学技術大学)/2015-11-04 珠坪 一晃・宮岡 佑馬・山口 隆司・角野 晴彦(国立環境研究所地域環境研究センター)

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12月号地球温暖化と健康リスク
編集: 2015-12-00 神戸学院大学・古武家 善成

<人為的地球温暖化の明確化>人為的地球温暖化に対する危機感を背景に、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が1988年に設立した気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、1990年以来、この問題に関する最新の自然科学的、社会科学的知見をまとめ、5回の報告書を世界に公表してきた。人為的影響について、1990年の第1次報告書ではまだ「はっきり検出できない」という程度の予測であったが、1995年の第2次報告書では「示唆される」と確信度が向上し、2001年の第3次報告書では「可能性が高い(66~90%)」、そして、2007年の第4次報告書では、「非常に高い(90%以上)」というレベルまで評価が明確になってきた。一方、日本ではこの頃より“温暖化懐疑論”の主張が一般書で展開され、2009年には、エネルギー・資源学会誌上で、人為的地球温暖化問題に関する専門家の徹底討論も行われた。このような動きの背景には、2009年に英国の大学で発生した、温暖化データの捏造を疑わせるメール流出事件も大きく関係した(この事件は、その後の調査で、IPCC 評価の基本的な信頼性を損なうものではないことが明らかになった)。
しかし、2014年にまとめられた第5次評価報告書では、温暖化に対する人為的影響の可能性について、「極めて高い(95%以上)」とこれまでで最も強い確信度が示され、懐疑論は後退した。
<温暖化と健康リスク>このような経緯のある地球温暖化問題について、本企画ではこれまでも節目の時機に何度か取り上げてきたが、温暖化要因や自然科学的根拠を扱う内容が中心であった。しかし、温暖化の影響には、当然のことながら「人への健康リスク」も含まれる。本企画では、これまで十分に取り上げてきたとは言えない「人への健康リスク」に焦点を当てた。構成としては、この企画の背景である第5次報告書に関する解説をはじめとし、健康リスクの研究や具体例に関する論文を配した。

2015-12-01 IPCC第5次評価報告書を読み解く―WG2「影響・適応・脆弱性」を中心に―
 本稿では、まずIPCC 評価報告書の歴史を振り返りながら、第5次評価報告書がリスク管理を枠組みとしているという特徴を述べ、その中での健康の位置づけについても記述する。次に第5次評価報告書に記述された健康への影響、適応、共便益(健康増進が緩和策につながること)について解説した。更に、第5次評価報告書以降に出版された最新のWHO 報告書から内容を補足した。
2015-12-02 気候変化による低栄養とそれに起因する健康影響
 気候変化がもたらす低栄養とそれに起因する健康負荷に関する知見を概観する。初めに、気候変化が低栄養を通じてもたらす健康負荷とそのプロセスについて述べ、IPCC 第5次評価報告書(AR5)までの気候変化と低栄養に関する研究について紹介する。さらに、AR5以降に著者らが行った関連研究について紹介し、今後の展開の可能性について述べる。
2015-12-03 地球の温暖化と感染症リスク―マラリア対策を中心に―
 2014年夏、我が国で約70年ぶりとなるデング熱の国内感染例が報告され、東京を中心に患者数が160人を超える流行となった。いったん対策に成功した感染症の“逆襲”に、国民は驚いた。マラリアでもそのようなことが起きるのか? 関係諸機関は、地球の温暖化と我が国の気候変動、そして感染症の新興・再興と拡散のリスクを心配せざるを得なくなった。本稿では、地球規模課題としての温暖化と健康のリスクを、マラリアを中心とした感染症対策を具体例として論じ、我が国および世界のアジェンダについて概説する。
2015-12-04 東京都内でのデング熱発生―必然それとも偶然?―
 2014年の夏、デング熱の国内感染・流行が約70年ぶりに都内代々木公園等を推定感染地として発生した。本事例の経過や都の対策の概要、またその発生に関与したであろう要因等の分析を紹介した。さらに約70年前の流行時と現在の状況との対比等を通じて、デング熱ウイルスの運搬者であるヒトと媒介蚊の両面から今日のグローバル化の進展や地球温暖化とデング熱感染拡大との関連について考察した。

<執筆者> 2015-12-01 本田 靖・高橋 潔(筑波大学)/2015-12-02 長谷川 知子(国立環境研究所)/2015-12-03 狩野 繁之(国立国際医療研究センター研究所)/2015-12-04 保坂 三継(東京都健康安全研究センター)

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掲載日:2018年01月25日
更新日:2018年07月28日

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