Water & Solutions Forum – Water Science, Processing and Maintenance

MENU

凝集分離ー分散・懸濁微粒子


目 次

  はじめに
1.概要
  ・粒子表面の調整
  ・粒子の相互衝突
  ・接合粒子の安定
2.凝集機構
  ・凝集剤の作用
  ・凝集剤の併用
  ・凝集の影響因子
3.凝集剤の具体例
  ・無機系凝集剤
  ・有機系凝集剤
  ・高分子系凝集剤
  ・凝集助剤
4.ジャーテスト
5.凝集工程とその操作
  ・凝集剤の供給
  ・凝集溶液の調整
  ・供給装置
  ・フロキュレーター
関連ページ
  コロイドと界面現象

はじめに

 水浄化において、原水中の濁質のうち、粒子径が10μm程度以上のものは単純な沈澱によって除去することが可能である。しかし、粒子径が1μm以下になると、コロイド粒子して懸濁状となり、ほとんど沈降せず、また急速ろ過では捕捉することもできない(図1)。
 わが国の水道における浄水処理において、一般的に、凝集・沈殿・急速砂ろ過を基本としたシステムが採用されている。この技術が微粒子の分離に優れ、安価・大量処理など多くの利点あるため、日本の近代水道が発祥して100年以上経過した現在でもなお主流技術として用いられている。
 また、製造工程などに使われている工業用水は、おもに工業用水道と河川水・地下水(井戸水)によって供給されている。工業用水道の水は、上水道のように浄水場で処理されていないために濁質を含んでいる。河川水も同様である。井戸水は、鉄やマンガンを含んでいると汲み上げた後に水が空気と触れて酸化し、Fe(OH)3やMn(OH)3などの水酸化物が析出して、濁質となってしまう。そのため、そのまま工業用水として使うことができない。
 さらに、水中に溶解している有害な金属や非金属の原子・分子イオンを難溶性塩(共同沈殿を含む)として析出・沈降して分離除去するとき、多くの場合、1μm以下の微細な結晶性・不定形の粒子を生成するが、10μm程度以上の粗大粒子にまで成長できない例は少なくない。
 以上に述べたように、水浄化においては、微細な濁質を沈降分離や急速ろ過で効果的に除去するために、前段の処理工程として、凝集剤を原水に注入してコロイド状の濁質を効果的にフロック(集合・粗大)化するための凝集工程が必要となる。
 凝集処理の機能は、(1) 凝集剤を添加後できるだけ急速に撹拌して、濁質を微小なフロックに凝集させる前段工程と、(2) 生成した微小フロックをさらに大きなフロックへ成長させる目的で、緩やかに撹拌する後段工程とに分けられる。(1)の過程を混和、(2)の過程をフロック形成という。凝集工程は、(1)と(2)で構成される凝集工程は、後に続く沈澱および清澄ろ過の処理を行う前段工程として浄水効果を左右する重要な要素であり、その工程でのフロックの形成状況を常に的確に監視しなければならない。
 以上の凝集工程の設計や維持管理を適正に実施するためには、コロイドの性質とその分散・凝集の機構を理解することが大切となる。

particle-size_separation
図1 水浄化における汚濁物質のサイズと分離・除去法

<関連ページ> 水中におけるコロイドなどの微細粒子の挙動は複雑で、微細粒子を凝集・沈降分離するためには、その特性を理解することが重要である。目次に記載の「コロイドと界面現象」も参考とされたい。本ページ内の特に重要な事項については、上記ページの該当項目をインクしてある。

目次へ

1.概要

 用水・廃水の処理において、ほとんどのケースで固液分離技術が用いられ、凝集が固液分離の改善に重要な役わりを果たしている。濁度、浮遊物質(SS)で表示される懸濁粒子の除去に固液分離技術が応用され、その場合、凝集沈殿が主要な役割を担う。一般に、金属類の分離においては、その難溶性塩を生成させ、固液分離により除去される。有機物に対しては、微生物を用いた活性汚泥法や嫌気性消化法などを適用して余剰汚泥や消化汚泥などへ変換し、その汚泥引抜に固液分離が必要となる。
 固液分離技術は清澄・濃縮・脱水に類別され、それらの単位操作と凝集の応用の関係を表1に示す。
 凝集とは、液体中に分散しているコロイド粒子や粗粒子を接着・集合させて、より大きな集合粒子のフロック(集合粒子の塊をフロックという)を形成させることをいい、沈殿・浮上による固液分離を効果的に行うことを目的とする。液体中にコロイド粒子や粗粒子群が分散している液を懸濁液といい、粒子がコロイド粒子の場合、コロイドまたはコロイド溶液ともよぱれる。
 以下、コロイド粒子(粒径:約1μm以下)よりも大きいが、沈降速度の遅い粒子を粒子(粒径:約1~10μm)、沈降速度の大きな粒子を粗大粒子(粒径:約10μm以上)と略称する。また、コロイド粒子・粗粒子を総称して、微細粒子(粒径:約10μm以下)と略称する。
 懸濁液中の微細粒子群を合体・凝集させるには、つぎの3つの操作要素が必要となる。

表1 固液分離技術
solid_liquid--separation-proceses

1.1 粒子が衝突・接着できる表面性質の条件を整えること

<コロイドの安定要因の理解>
 粒子間力は van der Waals力のほか、化学結合・主原子価のイオン結合・共有結合や水素結合が作用するなど、複雑である。また、粒子間力としては懸濁粒子が直接、相互に及ぼす力のほか、共存している分子やイオンを介した作用がある(詳しくは、コロイドと界面現象ー2.疎水・親水コロイド、参照)。


<接触・接着妨害因子の理解>
 懸濁液中の粒子群には、粒子同士を衝突・接着させる力がある反面、懸濁粒子の衝突を妨害する阻害囚子が存在する。主な阻害因子として、懸濁粒子の表面荷電および水和層である。これらの阻害因子は粒子同士の衝突・接着を阻害する因子であるから、その影響の程度は粒子が有する運動エネルギーの大きさによって異なる。


<接触・接着の妨害因子の除去>
ブラウン運動により衝突の機会が与えられる疎水性コロイド粒子の場合には表面電荷の除去が不可欠で、親水性コロイド粒子の場合には水和層の除去が重要な因子となる。表面荷電が大きい親水性コロイド粒子は脱水和と表面荷電の除去が必要となる。分散・懸濁粒子の接触・接合に必要な操作モデルを図2に示す。

coagulation-condition
図2 分散・懸濁粒子の接触・接合に必要な操作モデル
荷電親水コロイド:Aからスタート、疎水コロイド:Bからスタート、iep等電点 iep にpHを調整

1.2 微細粒子が相互に衝突すること

 微細粒子相互の衝突はコロイド粒子ではブラウン運動により、粗粒子の場合には掻き混ぜなどの外部エネルギー供給による粒子運動(微少乱流変動)により、粒子同士の衝突が可能となる。

1.3 接着・合体した粗大粒子が液体中で安定に存在すること

 微細粒子が衝突したとき、粒子同士が接着・合体してフロックを形成する。さらに、接着・合体の状態を安定に維持しなければならない。粒子が衝突・合体したフロックを壊さない条件が必要となる。
 粗粒子の場合、緩速掻き混ぜなどの普通の粒子運動に対して、それらの粒子表面の荷電による斥力は無視できる。粗粒子においては、上記の阻害因子よりむしろ衝突したのち、接着・合体したフロックを壊さない対策が必要となる。
 粒子の運動のエネルギーは衝突に十分な大きさでなければならないが、衝突・接着した粒子集合体(フロック)の安定性(粒子間の接着力)より過大であってはならない。衝突に必要な粒子運動は一般に緩速掻き混ぜによって行われ、その装置をフロキュレータという。

coagulation-process-model
図3 分散・懸濁粒子の凝集プロセスのモデル図
A:水和荷電粒子、B:ブラウン運動による粒子の衝突、C:2粒子の接合体、D:多数の粒子が凝集・粗大化したフロック

目次へ

2.凝集機構

2.1 凝集剤の作用

 凝集機構について、単純な作用だけを取り上げると、以下の(ⅰ)~(ⅳ)の事項が示される。凝集工程の設計・運転に重要な要素である懸濁物質の粒子サイズと凝集剤の効果を表2にまとめて示す。高度重合体高分子は、その重合度が大きいものほど、凝集粒子(フロック)サイズが大きくなりので、粗粒子に対して有効であるが、約1mm以上の大きな粒子に対してはその効果は小さい。

表2 粒子サイズと凝集剤の効果
particle-size_coagulant
○:有効、△:部分的に凝集しても沈降促進効果は小さい、×:無効
(1) 対イオン・同イオン:懸濁粒子の表面電荷と反対符号イオン・同符号イオン
(2) 粗粒:粒径が約1mm~約100μm、細粒:約100μm以下

(ⅰ)親水性コロイド粒子の脱溶媒和

 親水性コロイド粒子が安定しているのは、粒子間力が有効に作用する距離までにブラウン運動によって粒子同士が接近することを、粒子表面を覆う水和層が阻止するからである。
 親水性コロイドであるアルブミン・グロブリン・ゼラチンなどのタンパク質、各種合成高分子水溶液に対し、メタノール・アセトン・硫酸アンモニウム・石灰などの物質の添加によって、析出(塩析を含む)・凝集させることができる。これらの物質は脱溶媒和作用があり、粒子同士の衝突を阻害する水和層を除去することで凝集するようになる。

(ⅱ)高分子電解質の相互作用・沈殿

 ペクチン酸・フミン酸・ポリアクリル酸水溶液などへの硫酸鉄(Ⅱ)、硫酸アルミニウム、ポリエチレンイミンなどの添加による凝集・沈殿、および、リグニンスルホン酸のポリカチオンによる凝集・沈殿などの例がある。この凝集・沈殿反応は、イオンまたはイオン基の反応で、相互作用としてほぼ化学量論的取扱いが可能である。

(ⅲ)疎水性コロイド粒子の表面電荷の低下

 疎水性コロイド粒子においては、その凝集阻害要因(安定化因子)である粒子表面に存在する表面電荷を、その表面電荷と反対符号のイオン(金属イオン、高分子電解質が主に用いられる)を加えて静電気力を遮蔽し、粒子間力(van der Waals力)が作用しうる距離まで接近させる。すなわち、粒子のブラウン運動で、表面電荷によるエネルギー障壁を越え、粒子間力が作用できる距離にまで接近させるため、拡散電気二重層を圧縮するか、または、粒子表面に吸着させて表面電荷を除去あるは相殺することにより、粒子を凝集させる。(数量的扱いは、Ⅰ-3.疎水コロイドの分散と凝集、参照)


<表面電荷の除去>
 表面電荷が正の場合には陽イオンが、負の場合には陰イオンが用いられる。
陽イオンとしてはAl3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、または各種の陽イオン性高分子電解質があり、それらの水溶性塩が用いられる。
陰イオンとしては硫酸イオンSO42-、リン酸イオンPO43-、または各種陰イオン性ポリ電解質があり、それらの水溶性塩が用いられる。
 コロイド粒子は負に荷電している対象(特に天然物質)が多いので、一般に、凝集剤として多価の陽イオンを電離するミョウバンM(Ⅰ)M(Ⅲ)(SO4)2・12H2O(M(Ⅰ):Na+、K+など、M(Ⅲ):Al3+、Fe3+など)や硫酸アルミニウムAl2(SO4)3・16H2Oなどが、清澄のための凝集剤の代表例として多用されている。
疎水性コロイドの凝集はその表面電荷と反対符号のイオンが有効で、その凝集力はイオンの価数が大きいほど大であることはSchlze-Hardyの法則として知られる。この法則に関して、Verweyらは理論的な解明を行い、添加したイオンの価数 zと凝結価 C(凝結させるに要する薬剤の最低所用濃度、または、臨界凝集濃度cfc)の間に、次の関係があることを示した。

C ∝ 1/z6

 なお、Al3+やFe3+などは、硫酸塩、塩化物として添加されても、懸濁液が中性付近にあるときに、塩基性塩の重合度は小さいものの縮合物(例えば、Al8(OH)2O4+など)を生成しているので、それらの縮合物の作用を考慮しなければならない。
 また、両性物質であるAl3+は、アルカリ性ではAl(OH)4となり、正負の電荷が逆転するするので、適正なpHに設定する必要がある。

表3 分散コロイドの臨界凝集濃度 cfc [mmol/L]
colloid_electrolyte-cfc

(ⅳ)水溶性高分子の架橋吸着により粗粒子の凝集

 粗粒子ではブラウン運動の影響は認められず(別ページ 図Ⅰ-15、参照)、粒子運動は掻き混ぜなどによる乱流変動による。粗粒子においては、乱流変動のエネルギーは大きく、粒子の表面電荷の接近・衝突に対する阻害効果は無視できる。しかし、粗粒子が接合しても、van der Waals力のみよって、粒子同士の吸着状態を安定に維持できる粒子間力はない。
 水溶性高分子の架橋吸着は、古くから「のり」に似た作用として解釈され、接着力を増す効果がある。ところが、一般材料に使用される接着剤は厚く多数の分子層で構成されるのに対し、凝集の場合は粒子表面の5~50%程度の単分子層の被膜が有効である。ところが、粒子表面へ水溶性高分子が過剰吸着すると、粒子間の接着が阻まれて、逆に分散作用となるので留意する(別ページの解説(H) 微粒子系での吸着と分散・凝集を参照)。
 水溶性高分子は、分子内に数多くの親水基(極性基)と疎水性基(一般に炭化水素基)を有し、水中に分散する(水になじむ)粒子に対して吸着する性質がある。その吸着力はほぼ重合度10付近で飽和に達するが、架橋力は分子が大きいほどその効果は大きくなる。吸着架橋作用を有する物質として、水溶性の天然高分子、それらの変性物、各種の合成高分子などがあげられる。

polymer-coagulant-function
図4 高分子凝集剤の添加量と凝集/分散
A:適正添加による橋渡かけ吸着と凝集作用、B:過剰添加による高分子吸着皮膜形成と分散作用

2.2 凝集剤の併用効果

 懸濁液の凝集に対して、凝集剤の単独使用での効果は上記の各項で示したが、それぞれの特徴を有する複数の凝集剤を併用することにより、はじめて微細粒子の凝集が可能となるケースあるいは目的とする大きさのフロック形成が可能となることもある。このような事例を下記に示す。

(ⅰ)脱水和と表面電荷の低下-表面が大きい親水性コロイド粒子の凝集

 脱水和と表面電荷の低下が必要な事例を以下に示す。
 寒天の水溶液はエタノールを加えて脱水和しただけでは凝集しない。脱水和したのち塩類を加えて、表面荷電の反対イオンの作用で表面荷電を低下させるとフロックの生成が認められる。
 ゼラチンの水溶液は、酸・アルカリを加えてpHを等電点付近に調節し、さらに、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムを加えると凝集する(ただし、分子量はかなり大きいものが効果的)。また、ポリエチレンイミンの水溶液にポリアクリル酸水溶液を加えると相互作用によって、懸濁物質が凝集し、沈降性フロックを形成する。この例では脱水和だけを目的とする薬剤を必要としない。

(ⅱ)表面電荷の低下と架橋吸着-無機塩との併用

 コロイド粒子と粗粒子を含む泥土の懸濁液(多分散系懸濁液)を凝集させるのに硫酸アルミニウム(無機塩)と高分子凝集剤を併用する。なお、高分子凝集剤の種類によっては単独使用のみで、凝集が可能な場合もある。
 多分散系からなる懸濁液の場合、コロイド粒子と粗粒子を同時に凝集させようとするときには、コロイド粒子の表面電荷の低下作用と粗粒子の架橋吸着作用が必要で、それぞれの機能を有する凝集剤が併用される。コロイド粒子が凝集すると粗粒子を形成するが、それをさらに粗大なフロックにしたい場合には、無機塩高分子凝集剤の併用は極めて効果的である。
 (1) 無機塩とイオン性高分子凝集剤の混合・併用にさいしては、凝集剤同士の相互作用(特に難溶性塩を形成する組合せ)に留意しなければならない。
 (2) 粘土の多分散系懸濁液の場合は、一般に粘土粒子は負の電荷をもっているから、ポリエチレンイミンのような陽性の高分子凝集剤を加えると、コロイド粒子と粗粒子を同時に凝集させ粗大なフロックを形成させることができる。

2.3 凝集に影響する因子

 凝集剤の溶存状態及びその作用機序に直接影響する因子として重要なものにpHおよび共存物質による変化や相互作用がある。共存物質としては無機溶存イオン(無機塩の存在)のケースが多いので、無機塩について述べる。

(ⅰ)pH

 中性付近で懸濁液に硫酸アルミニウムや硫酸鉄(Ⅲ)を加えた場合、アルニウムや鉄は重合度は小さいが縮合イオンを生成する。アルミニウムについては、様々な縮合イオンが想定されるが、その一つにAl8(OH)204+がある。これらの縮合イオンは単イオンであるAl3+やFe3+に比べはるかに吸着活性と考えられる。
 ただし、それらの使用に際しては注意が必要である。上記 2.1(ⅲ)で述べたように、中和剤の過剰投与によってAl(OH)4が生成し、凝集剤としての機能が失われる。高重合度のポリアクリル酸ナトリウムは、酸性で沈殿するので、凝集剤として作用しない。

(ⅱ)塩類-界面活性剤との難溶塩の形成

 ポリアクリル酸の水溶液に2価以上の金属塩を加えると、ポリアクリル酸イオン[-CH2-CH(COO)-]nは金属イオンと反応して難溶性塩を形成し、凝集剤として作用しない。また、縮合アルミニウムイオンは、硫酸イオンが存在するとやや形態が変わることが知られている。カチオン性高分子凝集剤では、塩化物イオンClは水に溶解しやすいが、硫酸塩SO42-は一般にやや溶解しにくい。
 先に述べたように、凝集剤の併用に際しては多くの留意すべきことがある。特に、高分子凝集剤として広くポリ-アクリルアミド・アクリル酸[-CH2CHX-]n(X = NH2、COOH、CONHCH2NR2)が用いられているが、処理対象液中に2価以上の金属イオンが共存しているときには注意を要する。
 凝集剤は、それが本来もっている凝集作用を失わないように、純水に溶解することが望ましい。

(ⅲ)他の因子

 懸濁粒子は、加えた凝集剤やpH調整剤などによって、目的とする凝集作用とは異なる作用を受けることも多い。懸濁粒子の挙動は、吸着・イオン交換・変質などによって、可逆的あるいは不可逆的なこともある。
 粘土は、ほとんどの種類がイオン基を有し、イオン交換性である。さらに、工業的に凝集の対象となる固体または液体粒子で、全くイオン基・イオン交換性を持たないケースはむしろ少ない。
 イオン交換基を有する粒子においては、その交換基であるH型、OH型、あるいはその塩が条件によって変化し、表面電位・表面性質は大きく異なる。
 酸・アルカリで凝集する粒子においては、表面変化による凝集として解釈できるケースが多い。
 また、図4に示したように、水溶液性高分子の疎水性コロイド粒子への過剰吸着は、コロイドを安定化させ、保護コロイドとして作用している。このようなケースに対しては、保護コロイド剤として作用している水溶液性高分子に対処できる凝集剤を選ばれなければならない。

目次へ

3.凝集剤の具体例

<凝集剤の効果コスト>
 広い意味では、凝集効果を有するものとして、ほとんどの水溶性物質をあげなければならない。しかし、有機物で脱水和作用を有する薬剤(脱水和剤)は、一般に工業的量産されている水溶性の各種有機溶剤(アルコール類、アセトンなど)であり、価格の点、その他から、その用途は特殊な場合に限られる。無機性の脱水和作用を有する薬剤(たとえば生石灰、消石灰、硫酸アンモニウムなど)は有機質懸濁粒子の脱水和をも考慮した凝集剤として用いられることがある。
 コロイド粒子の表面荷電を低下させる目的で各種イオン・非金属イオン・低分子イオン・高分子イオンが対象に応じて凝集剤としての作用を示す。効果と価格の比較から無機塩または高分子電荷質が一般的に用いられる。
 以上の事項を考慮した凝集剤の種類と分類を表4表6に、凝集の改善に用いられる粉体の凝集助剤の例を表7に示す。
 なお、水道用硫酸アルミニウムの品質については、JIS K 1450がある。凝集剤の使用においては、濃度と比重・粘度との関係があれば管理上便利である。

表4 無機系凝集剤
inorganic-coagulants

表5 有機系凝集剤(界面活性剤)
organic-coagulants


表6 高分子系凝集剤
polymer-coagulants

表7 凝集助剤
coagulant-aids

目次へ

4.凝集試験法-ジャーテスト

 一般には、写真1に示すような凝集試験機(ジャーテスター)を用いる。テストは次のような手順によって行う。
 水質分析の項目は、排水の種類及び処理目的によってて異なるが、一般には外観、水温、濁度、色度、透視度、pH、濁物質などである。目的によってはCOD、BOD、油分なども測定する。具体的な試験方法の手順を以下に示す。
 ① 必要な数の500mLビーカーに処理すべき試料を正確に500mL採水する。
 ② ビーカーをジャーテスターに並べ、攬伴軸を下ろして攬伴羽根を水中にセットする。
 ③ 電源スイッチを入れ、タイマーを作動させる。攬伴羽根の回転数を120~150/minにして運転しながら、次のように薬品を添加する。
&emsp④メスピペットで処理に使用する薬品(例えば、硫酸アルミニウム溶液)を計算量ずつ各ビーカ一に速やかに滴下する。例えば、1%硫酸アルミニウム溶液を、20、40、60、80mg/Lになるように注入したい場合、試料量が500mLであるから、それぞれ1、2、3、4mLmLずつ添加すればよい。
 ⑤ 薬品添加後1~5分間たったら、攬伴羽根の回転数を30~60/minに下げる。つまり最初は薬品を均一に混和して微小フロックを形成するために急速攬絆し、次いでフロックの成長を図るために緩速で接伴する。
 ⑥ 緩速攬絆を10~20分間続けた後停止し、攬絆羽根を上に引き抜く。
 ⑦ 直ちにフロックの状態や沈降速度を観察し記録する。大きいフロックで沈降速度が大きく、上澄水が清澄になる薬品の種類と量が、この試水の処理に適当であると判定される。
 ⑧ この上澄水の水質を分析する。さらにろ紙5種Aでろ過した水をも分析しておけば、凝集後に砂ろ過をした場合の水質を推定できる。
 ⑨ 装置の計画、設計のためには、急速攬伴を行って何分後に目に見えるフロックが生成するか、緩速攬伴のときに生成フロックが壊れやすいかどうかなどについても観察しておくとよい。
jar-test-1
(A) PAC添加直後
jar-test-2
(B) 急速攪拌 1分 → 緩速攪拌 10分
jar-test-3
(c) 緩速攪拌中
jar-test-4
(D) 緩速攪拌後、静置
写真 凝集試験の事例
検液1:無添加、検液2:PAC添加
出典:石川県鶴来浄水場(http://www.pref.ishikawa.lg.jp/tedori/konwachi.html)

目次へ

5.凝集工程とその操作

 凝集工程においては、一般に、(1)懸濁液への薬剤の添加、(2)加えた薬液と懸濁液の急速な溶解・混合をおこなう急速攪拌(フラシュミキサなど)、(3)粒子群を衝突させ集合接合させフロックを形成させる緩速攪拌(フロキュレータ)から構成される。

coagulation_sedimentation-process
図5 凝集・傾斜沈殿池による懸濁微細粒子の分離工程の事例
凝集剤およびpH調整剤を別々の槽に分けて、添加・混和が必要なケースもある。

5.1 凝集剤の供給

 凝集剤は粉末として供給されることもあるが、一般に水溶液として供給される。

(ⅰ)凝集剤の供給装置

 フロキュレータへの薬剤の供給においては薬液濃度を適切にするとともに、厳密に定量を供給し、かつ均一混合の点から、処理水量が大きいケースでは、一カ所で添加するよりも数カ所で分割添加する必要がある。
 2種類以上の凝集剤を併用する場合は、その添加順序添加位置に留意する。無機塩と高分子凝集剤を併用する場合は、一般には無機凝集剤が先に添加される。
 原水流量が変動する場合は、流量に応じて変えることが必要で、比例注入装置を採用する。

(ⅱ)凝集剤溶液の調整

 凝集剤が低粘度の水溶液の場合はそのまま、高粘度の水溶液あるいは粉末の場合は前もって所定の水溶液にして用いる。粉末で供給される場合もある。
 凝集剤の添加量については、水溶液濃度は小さいほど供給が容易で、原水との急速な均一混合が容易であるが、処理水量に影響するほど過大になってはならない。
 一般に、塩類の場合は数%以上の高濃度で、高分子凝集剤や約0.01~0.5%で種類に応じて粘度が高くない濃度で用いられる。
 無機塩の場合は、その溶解容易であるから普通の攪拌槽が用いられる。拡散速度の小さい高分子凝集剤は反応速度が遅く、水に添加したのち約2~4時間、緩やかな掻き混ぜを行う。
 なお、粉末の場合は、槽内の水を掻き混ぜながら、散布して加え(振動フィーダを用いる場合がある)、また水の噴射流に粉末を供給し瞬間的に水にぬらし分散させる装置(一般にディスパーザとよばれる)を用いる。

(ⅲ)凝集剤の供給装置

(1) 水溶液注入装置
 定水位槽に薬液を入れコック・バルブにより定量供給する重力式定量注入装置、精密ポンプにより圧力式定量注入装置、カップを設けたカップ式定量注入装置などがある。
 原水パイプにオリフィスを設け、その差圧による原水の流れを応用する方式にポット型、二重オリフィス型などがある。
(2) 粉末注入装置
 粉末の重量または容量を計りながら原水へ注入する。原水路は開水路の場合は直接あるいは水と混合し添加する。パオプの場合には水と混合し圧力注入する。
 粉末の貯槽、シャッタ、コンベア、計量器をそなえたフーダなどが用いられる。
(3) 電解法
 アルミニウム、鉄などの金属を電極として直流または交流電圧を加え電界させ、溶解するアルミニウムや鉄などのイオンや水酸化物などの凝集作用を応用する方法である。一般には、対極と作動電極(アルミニウムや鉄など)を組合せ、直接電圧を加える。
 作動電極は板・箔または小片をかごに入れて用い、溶出に伴い消耗した板は取り換え、箔は自動供給、小片は添加により補充する。
 電解法は塩分を含み十分な電流が流れることが必要となる。原水の塩分含有量が少ないときは塩を添加する必要があり、また海水が利用されるケースがある。原水に触接に電極を挿入する場合と、別途に電解槽をおき、凝集剤水溶液を調整して添加する場合がある。
 電解法は自動管理が容易で、なお、酸化・泡の生成・その他の効果が得られる。

5.2 フロキュレータ

 懸濁粒子群の衝突を促進し集合接着させフロックを形成させる装置である。
 コロイド粒子はブラウン運動するが、コロイド粒子が凝集すればフロック粗粒子を形成し、数μm以上の粗粒子なればブラウン運動をしない。したがって、より大きな粗粒子に成長させるには、その運動を活発にするため外部からのエネルギーの供給が必要となる。一般に凝集を応用する場合には粗大粒子にすることを目的とするので、コロイド粒子・粗粒子共に外部エネルギーの供給が必要となる。
 フロキュレータは外部からエネルギーを供給して粒子運動を活発にする装置である。フロキュレータでは、薬液の注入位置、緩速攪拌強度および攪拌時間が適切でなければならない。

図2.31

(ⅰ)フロキュレータの種類

(1) 機械攪拌
 縦型・横型の攪拌槽または「とい」にパドル形・プロペラ形・タービン形などの羽をもうけたもので、羽の周辺速度は一般に10~60cm/s程度で、対象に応じて定める。
(2) とい・管
 懸濁液の水路のとい・管などでの乱流を応用する方法である。といの場合は、といの途中に迂回流するようにじゃま板を設けたもの、といを屈曲させたものなどがある。管の場合は、管での乱流を応用する方法で、水平板をそのまま応用するもの、管を上下に迂回させるもの、ジグザグに屈曲させたものなどがある。
(3) その他
 超音波を利用する方法があるが、水処理においては実用化されていない。

(ⅱ)固液分離装置とフロキュレータ

 フロキュレータで形成されたフロックは壊れない条件で、できるだけ速やかに固液分離槽(沈殿池など)へ供給しなければならない。そのため、フロキュレータは固液分離槽内の内部に設けるか、あるいはそれに併設する。
 フロキュレータは沈殿槽あるいは浮上槽の一部に組み込まれる場合が多い。沈殿槽内部にフロキュレータを設けたケースには、スラり循環型凝集沈殿槽、スラッジブランケット型凝集沈殿槽、複合型凝集沈殿槽などがある。

目次へ


参考文献

池上徹(栗田工業KCRセンター):水処理教室-凝集処理、https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/012.html
化学工学協会編:化学工学便覧、丸善(1978)
(社)産業環境管理協会:新・公害防止の技術と法規-水質編(2016)
野田 道宏:高分子凝集剤の種類と作用機序、高分子、Vol.17, No.194, pp.404-412(1968)
福田 清成・中垣 正幸:コロイド化学の基礎、大日本図書(1969)
粉体工学会編:液相中の粒子分散・凝集と分離操作、日刊工業新聞社(2010)
松村 淳司:界面・電気化学講義、http://res.tagen.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/kogi/kaimen/kaimen2002/2002-6.pdf
用水廃水便覧編集委員会編:用水・廃水便覧、丸善(1973)


掲載日:2019年04月24日
更新日:

PAGETOP
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.