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電解/電池の電子移動・物質変化の速度

執筆中

1.はじめに

電気分解(電解)法を用いた水浄化法の装置の設計・製造・維持管理、電解槽や配管系の材料の選定や上水道/下水道システムにおける設備・送水管・鉄筋コンクリートなどの腐食と防食などにおいて、酸化還元反応における物質間の電子移動に関する速度論的な理解は極めて重要な要素となる。
別ページでは酸化還元反応の基礎について説明したが、これは自然界の現象や浄化プロセスを理解する上で重要な知見となるが、実際の浄化プロセス・施設の設計や運転管理を実施するときには、処理装置において単位電極面積・単位時間における水処理量(負荷量)と電力量(電圧×電流×時間)の関係などは、具体的な設計・運転因子となる。ここでは、電気分解モデルを取り上げて、基本的な事項を説明する。
具体的な水浄化における電気化学的プロセスやその計測制御システムについては、別のページで事例を挙げて説明する。

2.電池/電解系のモデル

分かりやすくするため、本ページでは仮想的な電池/電解系を取り上げて、電池/電解系における物質移動(電子を含む)、電気化学的反応の速度について解説する。

(1)電池/電解系の構成

図1に示すように、円筒形の容器(断面積Scm2、長さLcm)の両端に不活性電極としてPt板を装着し、円筒の中央部に隔膜(陰イオンのみ透過する膜)で仕切った左右の室にそれぞれの活性物質である金属塩、AX + AX2(割合は適宜)とBX + BX2(割合は適宜)、および不活性な電解質塩YXを共通に含む水溶液を満たす。
左右の電極をリード線で、直流電源、電圧計および電流計に接続する。

(a) 電池/電解系の半反応

活性物質AおよびBの半反応および電位はつぎの通りとし、系内の他の物質との化学反応は起こらず、反応(1)・(2)は可逆的に進行するものとする。
A2+ + e- = A+  EA = E°A – (RT/F)ln [A+]/[A2+]  (1)
B2+ + e- = B+  EB = E°B – (RT/F)ln [B+]/[B2+]  (2)

(b) 電池系と平衡状態

電源回路を切断し、電流計に直列に抵抗を接続すると、電池系が形成される。
今、E°B > E°Aとし、Co = [A+]o = [A2+]o = [B+]o =[B2+]oのときには、図1に示すPt(+)からPt(-)に向かって外部回路に電流が流れる。なお、図1および図2は電解系の流れを示しているので、電流i、電子e-の流れ、および各物質の変化を示す各矢印‘→’は、それぞれ、逆方向となる。そして、つぎの式を満たす各物質濃度に達すると、平衡状態(E = 0) となり、電流の流れが止まる。
ln ([B+]e / [B2+]e) / ([A+]e / [A2+]e) = (E°B – E°A) F/(RT)  (3)

活性物質AおよびBの初期濃度が分かっているので、式(3)より、平衡状態における物質AおよびBの濃度が計算できるが、省略する。

(c) 電解系の構成

今、上記(b)の平衡状態から、図1に示すように外部電源に接続し(SWをON)、このときの両電極間の電圧をE[V]としたとき、i[A]の電流が流れることとして、以下の説明を行う。

<本仮想モデルの特徴>

多くの2価金属イオンは、弱酸性~アルカリ性領域で水酸化化合物を形成し、沈殿する。そのため、錯イオンを形成させて電解を行う。本モデルでは、水酸化物を形成しないものとする。
添加する電解質Y+およびXは、酸化還元(電極)反応には、全く関与しないものとする。また、水の電気分解も全く起こらない範囲内の電解系とする。
実際の実験系では、X2ガスあるいは水の電気分解によるH2ガスまたはO2ガスが発生するケースが多いが、本モデルでは、このような反応は生じない電池/電解系とする。
A2+ + B = A+ + B2+の反応を防止するために、隔膜は陰イオンXのみ透過できるイオン交換膜とし、陽イオンの透過は阻止できるものとする。
活性物質AおよびBの各イオンの活量は’1’として扱う。

electrolysis-cell
図1 電池/電解系のモデル(各’→’は電解系の流れを示す)
各電極の面積・円筒セルの断面積:S[cm2}、電極間距離:L[cm]、隔膜:イオン交換膜(陰イオンのみ、透過)

cell_chemical-reactions
図2 電池/電解の電子移動・物質変化のモデル(各’→’は電解系の流れを示す)

(2)電池/電解系の等価回路

図1に示す電解系のPt(-)面からの距離d[cm](0≦d≦L)の平衡断面における電位φ(d) [V]を示したものが図3である。dAおよびdBは、dSに比べて遙かに小さいものであるが、模式的に示した。3つに区分された部分を以後、di(i=A、S、B)ゾーンとよぶこととする。各ゾーンの具体的な状況(現象または過程)については、下記において詳細に述べる。
今、電極間の電圧E[V]、流れる電流i[V]、各ゾーンにおける抵抗[Ω]をそれぞれRB、RS、RAとし、各ゾーンにおける電圧降下[V]をEA、ES、EBとすると、つぎの関係が成立する。
E = EA + ES + EB = RAi + RSi + RBi
i = E/(RA + RS + RB)  (4)

electric-potential_circuit
図3 (A) Pt(-)電極からの距離dにおける断面の電位φ(d)、(B)等価電気回路

impedance_Pt-A-surface
図4 Pt(-)電極近傍における等価電気回路

(3)等価回路から見た律速過程

式(4)において、あるゾーンの抵抗が他のゾーンに比べて極端に大きいときには、つぎのようになる。式(5)の意味していることは、電解系において、外部から電圧を加えたとき、流れる電流は、抵抗が極端に大きいゾーンによって規制されるということである。このゾーンにおける現象のことを律速過程という。

RA ≫ RS、RB → i ≒ E/RA
RS ≫ RA、RB → i ≒ E/RS
RB ≫ RA、RS → i ≒ E/RB
(5)

3.電解質と溶液抵抗

4.電極表面近傍の電気二重層

5.濃度拡散と物質移動

6.電極-溶液界面での電子移動

7.電解/電池系のまとめ


電極の機能と名称

アノードとカソード

電極とは、受動素子、真空管や半導体素子のような能動素子、電気分解の装置、電池などにおいて、その対象物を働かせる、あるいは電気信号を測定するなどの目的で、電気的に接続する部分をいう。
電気化学(電気分解)やダイオード(真空管、半導体素子)では、外部回路から電流(i)が流入する/外部回路に電子(e-)が流出する/電極アノード(anode)と呼び、外部回路に電流が流出する/外部回路から電子が流入する)電極カソード(cathode)と呼ぶ。
(アノード、カソードの語はファラデーにより命名され、ギリシャ語で’上り口’を意味する’anodos’と’下り口’を意味する’cathodos’に由来する。)
<電気化学(電気分解、電池)>
内部の電解質(活性物質)から電子(e-)を受け取り、外部に電子を放出する電極がアノードで、酸化反応が起きる。外部から電子が流入し、内部の活性物質に対して電子を供与する電極がカソードで、還元反応が起きる。
なお、アノード電極が活性の場合には、自ら電子を放出し、イオンとして溶解するか、内部の物質と反応して不溶性の塩や酸化物などを形成する。


掲載者は、つぎのように理解することとしている。
アノード=外部に電子を放出する電極=内部の活性物質から電子を受容する電極=酸化反応が起こる電極
カソードは上記事項に対して、それぞれ逆に対応する。


正極と負極

電位により極性を定義する場合は、電位が高い方を正極(+)(positive electrode)、低い方を負極(-)(negative electrode)と呼ぶ。電流は正極から負極へ、電子は負極から正極へ流れる。

電池と電解

正極/負極とアノード/カソードは、電池と電気分解(電解)では対応が逆になる。
  電解(充電): 正極 = アノード、負極 = カソード
  電池(放電): 正極 = カソード、負極 = アノード
これは、電解(充電)の時には正極へ電流が流れ込み、電池(放電)では正極から電流が流れ出すことに対応する。例えば、二次電池である鉛蓄電池のPbO2極は、充電時も放電時も正極であるが、充電時は電流が流れ込むアノードとなり酸化され、放電時は電流が流れ出すカソードとなり還元される。

陽極と陰極

陽極陰極の用語は、電流の方向(酸化・還元の方向)による(アノード、カソードの直訳)とする流儀と、電位の高低による流儀があり、混乱している。これに対して、正極、負極の用語は、電位の高い/低いの区別として定着している。高校化学では、電池の場合「正極・負極」、電気分解の場合「陽極・陰極」と呼んでいる。


参考文献


掲載日:2018年2月15日
更新日:2018年2月16日

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