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ウイルスの概要

目次
目次

  1.ウイルスとは
  2.ウイルスの特徴-構造と種類-
  3.ウイルスの増殖
  4.ウイルスの検出
  5.ウイルスと生物進化
  6.ウイルスと病気
  7.ウイルス感染と予防・治療
  8.ウイルスと生態系
  9.ウイルスの利用
    参考文献

文章、図表、イラストなど適宜追加します


細菌は通常1~10μmの大きさの生物であるが、一般のウイルスの大きさは細菌の1/10~1/100(20~100nm)程度である。細菌は光学顕微鏡で観察可能であるが、ウイルスは電子顕微鏡でなければ観察で来ない。
従前において、ヒトや農畜水産に係る動植物に係る病原性ウイルスに係る研究が中心であった。分子生物学に係る様々な測定機器や実験手法の進展により、環境中には膨大な種・数のウイルスが存在し、地球上生態系において重要な役割を担っていることが分かってきた。本websiteでは、水浄化に関わる科学と技術を扱っており、上記の病原性だけでなく、環境中ウイルスに係る知見の理解が必要である。
また、ヒトゲノムのうちウイルスが持ち込んだ可能性があるの遺伝子は、全体の46%を占めており、ヒト進化や様々な働きがあるのではないかと考えれている。
なお、現在、世界中で猛威を振るっているCOVID-19の病原ウイルスであるSARS-CoV-2については、別ページに記載している。

1.ウイルスとは

(1)宿主が必要

A) 簡単な構造

 ウイルスは細胞がなく、細菌よりさらに単純な構造である。タンパク質でできた「カプシド」という殻のなかに遺伝子情報となる核酸が収められている。また、インフルエンザウイルスなど一部のウイルスには、カプシドの外に「エンベロープ」という膜がついているものもいる。

B) 自活できない

ウイルスは自分の力では増殖することができない。生きた他生物(細菌、動植物)の細胞(宿主)に侵入し、宿主から細胞が増殖に必要な遺伝・構成材料を宿主から調達して、自己の複製を行う。
①細胞がない、②栄養を摂取したり、エネルギーを生産したりしない、③自力で動くことはできない、④ウイルス単体は自力で増殖できない。

 他生物のどの細胞にも侵入できることはできず、特定生物またはその特定細胞(宿主という)にのみに侵入することができる。宿主細胞は、ウイルスの種類によって様々に異なる。

(2)多種多様性と突然変異

ウイルスは、生きている宿主の細胞内で繁殖するので、宿主生物にとっては病原体となる。感染すると、宿主細胞は、元のウイルスの何千もの同一のコピーを迅速に生成する。ほとんどの生物とは異なり、ウイルスは分裂する細胞がなく、感染した宿主細胞で新しいウイルス(ビリオン)が組み立てられる。しかし、プリオンのような単純な感染性化学物質とは異なり、ウイルスは遺伝子コピーにおける突然変異により進化することができる。
環境中に存在する数百万種のウイルスのうち、確認されているものは4,800種以上のウイルスが存在する。それらの起源は明らかになっていないが、プラスミド (細胞間を移動できるDNAの断片)から進化したものもあれば、一部は細菌 (バクテリア)から進化した可能性もある。

(3)分類上の論争

ウイルスが生物であるかどうかは研究者によって意見が別れている。しかし、下記の理由などから「生物である/ない」といい切れないことも事実である。
①ここ数十年において、生物が有する機能を一部もつ巨大なウイルスが発見され、様々な環境に生息していることが分かった。
②ウイルスが生物の進化に深く関与していることが分かってきた。
③ウイルスの多様性により、生物とウイルスの区別ができない重複した機能を有するものが存在する。

2.ウイルスの特徴―構造と種類―

細菌の細胞は、人間を含めた動物・植物の細胞とは大きく異なる。細菌でも動植物でも遺伝情報はDNAという分子構造に記録されているが、動植物ではこのDNAがタンパク質(ヒストン)に巻き付いて染色体という構造を作り、その染色体が核という部分に収まっている。核を持つ細胞でできている生物を「真核生物」という。一方で細菌の細胞には核がなく、DNAがその他の物質とともに細胞膜内に混在している。このような細胞を持つ生物のことを「原核生物」という。
また、細菌の細胞の多くは植物と同じように細胞膜・細胞壁によって区切られているが、マイコプラズマなどの一部の細菌では、例外的に細胞壁のないものもいる。

(1)ビリオンの形状と基本構造

ウイルス粒子はビリオンとも呼ばれ、カプシドと呼ばれるタンパク質の保護膜に囲まれたDNAやRNAから作られた遺伝子で構成されている。カプシドは、カプソメア(英語版)と呼ばれる多くの小さな同一のタンパク質分子で構成されている。カプソメアの配置は、正二十面体 (20面体)、らせん状、またはより複雑なものがある。DNAやRNAの周りには、タンパク質でできたヌクレオカプシドと呼ばれる内殻がある。一部のウイルスは、エンベロープと呼ばれる脂質 (脂肪) の泡で囲まれているため、石鹸やアルコールに対して脆弱である。

(2)大きさ

ウイルスは最小の感染性病原体の一つであり、光学顕微鏡で見るには小さすぎて、ほとんどのウイルスは電子顕微鏡でしか見ることができない。その大きさは20~300nmで、1cmまで伸ばすには、それらを30,000~500,000個並べる必要がある。それに比べて、細菌は通常、直径が約1000nm (1μm) であり、高等生物の宿主細胞は通常、数10μmである。メガウイルスやパンドラウイルスなどの一部のウイルスは、比較的大きなウイルスである。アメーバに感染するこれらのウイルスの大きさは約1000nmで、2003年に初めて発見された[La Scola, 2003]。これらのウイルスはインフルエンザウイルスの約10倍幅広く (したがって体積は1000倍)、これらの「巨大」ウイルスの発見は科学者たちを驚かせた。

(3)ゲノムの種類

ウイルスのゲノム(g:genome)は、一般的には、DNA(gDNA)またはRNA(gRNA)として保存されている。このゲノムには、(1) 自己を複製する酵素、(2) 宿主細胞に吸着・侵入する酵素、(3) 宿主の持つ免疫機構から逃避する酵素などをコードしている。これらの (1)~(3) の特徴は、ウイルス感染とその対策にとって、極めて重要な知見である。
 ウイルスゲノムの種類によって、次の(A)~(C)に示すように増殖の仕組みが異なる。
(A) DNAウイルスは宿主DNA(dsDNA)にまぎれ込み、そのゲノムDNA(gDNA)を鋳型として、RNAポリメラーゼによってmRNAを合成し、そのmRNAからタンパク質を合成・増殖する。gDNAには2本鎖dsDNA(第1群)、1本鎖ssDNA(第2群)の2つに分類される。
(B) RNAウイルスには、(1) ゲノムRNA(gRNA)からDNAを介さずに宿主ドグマを利用して増殖するものと、(2) gRNA(ssRNA-RT)をいったん逆転写酵素によってDNA(dsDNA)へ変換し、そのDNAが宿主DNA(dsDNA)にまぎれ込み、その宿主ドグマを利用して増殖するものに分けられる。(2)を特にレトロウイルスという。
(C) gRNAは、さらに、2本鎖RNA(dsRNA)(第3群)および1本鎖RNA((±)ssRNA)に分けられる。(a) (+)ssRNAでは、ゲノムRNAがそのままmRNAとして機能し、そのまま宿主ドグマにより翻訳されて、増殖する(第4群)。(b) (-)ssRNAでは、RNAポリメラーゼにより、相補的な配列である(+)ssRNAへ変換され、これがmRNAとして宿主ドグマに組み込まれて増殖する(第5群)。
(D) レトロウイルスには、1本鎖RNA逆転写ウイルス(ssRNA-RT、第6群)と2本鎖DNA逆転写ウイルス(dsDNA-RT、第7群)がいる。第6群では、ssRNA-RTは逆転写を行ってdsDNAをつくり、それが宿主DNAにまぎれ込み、宿主のセントラルドグマを利用する。第7群では、子カプシド(gDNAを包み保護するタンパク質の殻)が生産されると同時に、RNA-RTがつくられ、これによってds(-)DNAがつくられたのち、gDNA(dsDNA-RT)が生成する。

virus-classification-by-genome

<解説>

ウイルスは細胞外では粒子構造を有している。即ち、ゲノム(遺伝情報)としての核酸が、タンパク質の殻に包まれている。ウイルス粒子はそれが次の宿主細胞に出会うまで、遺伝情報を保護している。
マイナス一本鎖鎖ss(-)RNAあるいは2重鎖のdsRNAを遺伝情報として持つウイルスは、次の宿主に入ってもゲノムがmRNAの構造をしていないので、遺伝子の発現が出来ない。このようなウイルスは、必ず、ウイルス粒子内にRNAポリメラーゼを持っている。
宿主細胞に入ると、まずウイルス粒子内のポリメラーゼがゲノムRNAを鋳型としてmRNAを転写し、次いでウイルス複製に必要な酵素を作る。
ウイルスの遺伝子のサイズは限られている。例えば、ポリオウイルスは約 8,000 塩基からなる。1遺伝子 1,000 塩基として、蛋白としては8種類しか作れない。作れる蛋白の種類は限られている。この為、ウイルス粒子は僅かの種類のサブユニットタンパク質(capsomere)がたくさん会合して作られる。
この様な会合体が安定な構造を取るには対象形の構造を取る必要がある。各サブユニットは非対象形である。非対象形のものを3次元空間に並べ安定な対象形のものを作るには、helical symmetryまたはicosahedral symmetry(それぞれ、ラセン対象、正20面対象)のいずれかである。
上のような構造をカプシドと云う。ウイルスにより、カプシドがさらに細胞膜と同じ脂質2重膜に囲まれているものがある。それにウイルスのエンベロープ蛋白が突き刺さっている。この様なウイルスを、エンベロープウイルス(enveloped virus)と云う。
重篤な呼吸器疾患を起こすSARS-CoV-2、小児まひを起こすポリオウイルス、風邪の症状を起こすアデノウイルスなどはエンベロープを持たない。エイズウイルス(HIV)、B型やC型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルスなどはエンベロープウイルスである。

(4)ゲノムの非分節と分節

RNA鎖・DNA鎖を問わず、また、それが1本鎖・2本鎖を問わず、そのゲノムが一つの鎖で構成されているウイルスゲノムを非分節型といい、複数の鎖で構成されているウイルスゲノムを分節型という。
例えば、ヒトコロナウイルスのゲノムは一つのみのss(+)RNA鎖で構成された非分節型ゲノムであり、MERS-CoVやSARS-CoV1/2などがこの型のウイルスゲノムである。
一方で、インフルエンザウイルスのゲノムは、A/B型は8分節、C/D型は7分節のss(+)RNA鎖で構成される分節型ゲノムである。例えば、A型インフルエンザの場合には、ウイルス表面の突起には、HA(ヘマチルニン)とNA(ノイラミニダーゼ)があり、HAは16種類、NAは9種類ある。この組合せでだけでもHA1~16NA1~9の144通りの亜型ゲノムがあり、亜型の遺伝子は8分節の中にそれぞれコードされている。例えば、A型インフルエンザウイルスは、もともと水鳥のカモの仲間を自然宿主として共生関係にあり、このウイルスに感染しても、普通には病気にはならない。ところが、異なる亜型ウイルスが同じ細胞に感染すると、ウイルス粒子(ビリオン)の生成過程で、他の亜型の分節が紛れ込んで新しい組合せのゲノムが生まれることがある。H5N1やH7N9などのヒトへの感染力が強く重い症状が現れる「高病原性」ウイルス亜型が知られている。

(以下、執筆中)


参考文献

La Scola, B. et al.: A giant virus in amoebae. Science 299, 2033 (2003) doi:10.1126/science.1081867.

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