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水域浄化の基本技術

 水質改善が必要な水域には、河川、湖沼、海域、地下水などに大別され、さらに、その規模も大小様々である。また、水域の利用形態から見ると、上水・農業・水産・工業の水源・水場としての機能の他に、地域住民の憩いの場や観光資源としての機能を有している。このような大小の水域およびその多機能性から、水質保全技術も多岐にわたる。ここでは、汚濁が進行した水域の基本的な浄化技術について、その事例を挙げる。
 水域の浄化技術に決定的なものはなく、それぞれの水域に適した方法を選択・組合せて実施されている。水域の保全には発生源対策が基本となるが、汚濁した閉鎖性水域の浄化には困難を伴うケースが多い。水域の浄化法には多種多様な手法があり、逐次、追加掲載していく予定である。

底泥管理

池干し

<対策のメカニズム>
 底泥を空気にさらして乾燥・酸化させることで底泥からの栄養塩類溶出を抑制する。一般的には、水利用が少ない冬季に水位を低下させ、底泥を数ヶ月程度乾燥させる。
 ①水位低下時の波や降雨による底泥洗い流し作用、②日光中の紫外線による殺藻作用、③温度変化による殺藻作用(日温度変化,凍結)、④土壌粒子の団粒化、⑤酸化作用によるリンの不活性化、⑥有機物の好気的分解作用、⑦底生生物、土壌微生物相の変化による作用等が総合的に作用することにより、水質改善の効果が生じると考えられる。
<対策の効果>
 日光に含まれる紫外線の作用や乾燥、温度上昇等により、湖底に堆積する藻類の栄養細胞あるいは休眠胞子の殺藻・不活性化を図る。富栄養化した貯留水を排出し、フレッシュな河川水を貯留することで水質改善を図る。外来種による被害が生じている池では、池干しと合わせて外来種の駆除も行うことができる。水位を下げて浚渫を行うよりも、水位を下げた状態で天日乾燥させた方がアオコ制御に効果があることが実験で明らかになっている。
<実施事例>
大久手池(愛知県) 面積 7.04ha、平均水深 1.7m
名古屋市の大久手池では、ため池の改修工事に伴って池干しを実施し、COD、BOD、T-P、Chl.a に低減効果(下図)が見られ、その後 11 年間効果が持続したことが確認されている。

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図 池干し前後の水質の経年変化
出典:土山ふみ・他:環境技術、Vol.25, No.8, pp.448-452(1996)

機械・物理法

紫外線照射

<殺菌灯と紫外線>
殺菌灯は、殺菌力を持つ波長域の光線(殺菌線)を照射する光源の総称で、蛍光灯タイプのものが一般的である。ガラス管の内側に蛍光物質を塗布していないので、水銀の発光が可視光線に変換されることなく、そのまま外部に照射される。
 殺菌力を持つ波長域は紫外線で、水銀のスペクトル線のうち、253.7 nm付近のものが特に殺菌・殺藻力が高い。細胞内の核酸へ作用し、DNAを損傷(チミン二量体を生成)することで殺菌効果を発揮する。この波長域の光線は一般のガラスでは吸収されてしまうため、殺菌灯の管には石英ガラスが使われる。
 蛍光灯形の型番はGL-X(Xはワット数)で一般的に4ワットから40ワット程度まである。蛍光灯器具のランプを取り替えるだけで殺菌灯器具として利用できるが、取り扱いには注意が必要で、防護メガネの着用は必須である。水浄化用の紫外線照射装置が製造・販売されている。
<細菌・藻類の殺傷効果>
 紫外線を照射することで細菌、ウイルス、藻類、カビ、原生動物、寄生虫を殺し、さらに一部の有機物を分解することで、水の透明度を高める効果がある。照射法の多くは、ポンプによって揚水し、放電管を収めた円筒状の密閉容器に通過させ殺菌・殺菌する。遮光する覆い構造の浅い水路に紫外線を照射してもよい。水中設置や通水型円筒状密封装置では、スケールや有機物の分解成分が殺菌灯表面に沈着するので、定期的な洗浄が必要となる。同じ消費電力でも紫外線の波長や放電管の紫外線透過率、単位時間の流水量、流水の不均一性などによって殺菌効果に大きな差が出る。装置内の流水が偏らず、十分長い時間を掛けて通過するような構造が望ましい。
<取扱い上の注意事項>
 DNAを損傷するので、人体にも有害であり、皮膚・目を傷害する。肉眼で点灯中のランプを見るのは厳禁であり、また光線が皮膚にあたらないよう遮光する必要がある。水処理専用のモジュールを適切に使用する限り紫外線が製品外に漏出することはなく、池内の生物はもちろん、人体にも無害である。
<紫外線照射の特徴>
 浮遊性藻類等に対して極めて効果的である反面、欠点として、多量の水を処理する場合には、高い消費電力が挙げられる。また、藻類を殺傷しても、それらを除去する能力はないので、ろ過や接触酸化などの他の方法と併用することが多い。
 池や水槽に固着性の藻類に対して効果がない。閉鎖性の池等では、透明度が改善されると沈水性植物の生息環境が改善されるが、日差しの強い季節には糸状性のアオミドロが大量発生することがある。
 また、寄生性原虫であるプトスポリジウムは強い塩素耐性を持つため、この対応策として上水処理・プール・浴場・などへ紫外線照射装置が導入されている。水族館水槽や活魚水槽では、殺菌だけでなく透明度の改善に効果がある。
<実験例>
 ○実験池・対照池(ビニールハウス内に設置):W 4.1m×H 1.6m×D 0.7m; 有効水深 :0.46m、水量:3.0m3
 ○実験池ー殺菌灯:15W×2台(接触酸化ろ床の上部に設置); 接触酸化ろ床: 0.15m3; 焼成酸化マグネシウムペレットろ床(りん固定剤):0.02m3
 ○対照池ー上記接触酸化ろ床のみ設置
 実験池・対照池とも、毎週1回、水道水を補給して池水の滞留日数を40日とした。。冬季にはヒーターを投入して、水温を20℃以上に保った。ヒブナ(体長10〜18cm、25匹)を飼育し、毎日、市販コイ飼料60gを投与した。
 殺菌灯をON-OFF制御して、実験池の透明度1m以上を維持するに必要な殺菌灯W数(30W×照射時間/24時間:照射時間は月平均)は、最小、1月 0.3W/m2-水面、最大、5月 3.0W/m2-水面であった。この理由は、夏季において日照の時間・強度とも最大であるが、水温が30℃を超えたため、浮遊性藻類の増殖が抑制されたからである。実験池のリン酸態リンは検出限界以下、有機態リンは0.5〜1mg/L、対照池では有機態リンが直線的に増加した。

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図 紫外線照射による池の浮遊性藻類の除去


掲載日:2018年7月5日
更新日:

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