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鑑賞魚水槽

観賞魚用水槽の管理は初心者にとって、微生物利用の水浄化の理解をする上でとても参考となる。ここでは、観賞用水槽の浄化方法について、概要を説明する。

1.準備する水槽・器具

使用する水槽・器具などは、専門店、ホームセンターまたはインターネットで入手できる。水槽は様々なサイズがあるが幅60cm、容量60Lのものが標準的である。このサイズの水槽・器具などが適切な価格で入手可でき、生物浄化の理解を深める上で適切であろう。これ以下のサイズは生物ろ過器が小型となりあまり参考とならない。これ以上のものは、水槽・器具・餌代・電気代などの経費が高くなり、設置場所も問題となる。実験に必要な水槽及び必要な器具等を次に示す。
①水槽(約幅60×奥行30×高さ36cm/約60L)、②上部ろ過器(またはフィルター)(水槽幅60cm用、ポンプは浸漬型が望ましい)1~2台、③ろ過材(大磯砂 中目、3~5mm程度)、④エアポンプ・エアーストーン(60L水槽用)、⑤温度調節用ヒーター(熱帯魚飼育の場合、固定式100W程度でよい)。
ろ過器は水槽上部に設置するタイプが、観察や維持管理の容易さから適切である。ろ過材は様々なものが開発・市販されているが、本水浄化実験の目的から大磯砂(3~5mm前後)が最適である。ろ材を保持する容器(底部がすのこ状)は、取り外し可能なものが管理上便利である。フィルター用吸水ポンプは浸漬型(マグネットローター型インペラー方式)が耐久性(軸受がないので、無給油・無摩耗)・消音性に優れている。

2.飼育前の準備

磯砂をバケツに入れて、撹拌・洗浄する。バケツを傾斜して洗浄水を除き、これを数回繰り返して磯砂を清浄化する。水槽の底部に、厚さ5cm程度に磯砂を敷き詰める。ろ過器本体には、磯砂を容器の高さの70~80%程度まで充填する。
水槽に、浸漬ポンプに示されている水位に達するまで水を投入する。吸水ポンプに電源を入れて、ろ過器に水を通水・循環する。

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写真1 鑑賞魚水槽の準備

3.微生物の育種

準備した直後の水槽には、水を浄化する微生物が存在しないので、フィルター及び底部の磯砂層に微生物を移植する。これには、次に示すいずれかの方法がある。
(1)脱脂粉乳・スプーン1杯程度を、毎日、数週間、投入し、微生物群を育種する。稼働開始直後は、水が汚濁しているが、日数の経過とともに清浄化してくれば、準備完了である。
(2)下水処理場の返送汚泥1~1.5L程度を水槽に投入する。
(3)畑地などの土2L程度をバケツに移し、撹拌、その懸濁液を傾斜・採取し、水槽に移す。
(4)河川(淡水魚)または海岸(海水魚)の砂地・低泥を2L程度バケツに移し、(3)の方法で採取、水槽に移す。
(2)~(4)の方法では、半日から1日で、懸濁物(微生物群)がフィルター・底砂に固定・保持され、水槽内の水が澄めば、直ちに飼育魚を移す準備が完了する。

4.魚の飼育方法

魚のサイズ及び飼育数、給餌などに関しては、他書やインターネットから情報を参考にするとよい。金魚、ヒブナ、オイカワ(河川で採取)、中小サイズ熱帯魚(専門店・インターネットから購入)など、淡水魚が飼育し易い。熱帯魚や海水魚も興味ある観賞魚であるが、大型に成長する魚類は餌・水槽に課題があり、初心者には向かない。海水魚では水の冷却装置が必要である。水産養殖用や生け簀料理店用の大型水槽の設備・水質管理については、別途解説する。
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写真2 淡水魚飼育事例-ヒブナ
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写真3 淡水魚飼育事例-オイカワ

5.生物ろ過器の維持管理

砂ろ床内に保持された微生物群が増殖して、ろ床内のろ過抵抗が増加すると、ろ床の仕切板から循環水が越流するようになると、ろ床内の微生物群と水との接触がなくなり、浄化機能を果たさなくなる。ろ床内の磯砂をバケツに移し、水道水を投入し、過剰に増殖した微生物フロックを撹拌・剥離して、傾斜・洗浄水を排出、この洗浄操作を数回繰り返し、磯砂をフィルター容器に移す。
なお、水槽底部の磯砂内には生物フロックが増殖し、掻き混ぜると水が懸濁するが、この微生物フロックを除去する必要はない。ろ過器内磯砂の洗浄直後には、微生物群がいないので浄化機能が働かない。しかし、水槽底部には多量の微生物群が保持されているので、浄化機能は継続して維持される。さらに、余剰の微生物フロックが水槽上部のろ過器に移行・保持され、早急に浄化機能が再開する。特に、後述するアンモニア酸化菌は増殖速度が遅いので、底部磯砂層内の微生物が重要となる。

6.水質の測定と管理

魚飼育水槽の水質管理で最も重要な事項は、溶存酸素濃度、pH、温度である。温度については、飼育魚の最適な温度を維持すればよい。
溶存酸素、pHは魚にとっても、水浄化を担う好気性微生物の双方にとって大切な管理である。
まず、固形の給餌残渣や固形排泄物(以下、固形有機物)は、底部やフィルター内で分解・可溶化され、微生物によって酸化・無機化される。魚から排泄された尿中アンモニア及び固形有機物が分解され生成するアンモニアは、硝化菌によって硝酸イオンに酸化される。硝化反応にはアルカリが消費されるため、pH低下が起こる。
通常、水道水などには炭酸水素イオンが含まれ、pH緩衝作用があるが、これが全て消費されるとpHの低下が起こり、硝化反応が進まず、アンモニアが蓄積する。アンモニア毒性は魚種によりその程度が異なるが、アンモニアが蓄積すると、魚の摂餌活動が低下する。さらに、アンモニア濃度が高くなると、魚が死に至る。
pHを適正に管理する方法として、次の2つの方法がある。
(1)重曹(炭酸水素ナトリウムまたは水酸化マグネシウム)を添加する。水酸化マグネシウムは溶解度が低く、過剰に添加してもpHの急激な上昇がないので、pHの管理には最適である。
(2)1週間に1回程度、水槽内の水の1/3程度を新しい水道水と交換する。これは、自然水に含まれる炭酸水素イオンを補給するためである。

7.微生物による水浄化の機構

底部表層部及びフィルター内ろ床内に生息する微生物群により、生物学的に有機物が酸化される。
(1)固形有機物(餌残渣や排泄物)は、微少動物・カビ類・細菌類により、低分子状に分解・可溶化される。
(2)可溶化された有機物(炭素、窒素、燐、硫黄の化合物)は、好気性微生物により、二酸化炭素、アンモニア、リン酸イオン、硫酸イオンなどに酸化・無機化される。リン酸イオンは、カルシウムやマグネシウムと不溶性の化合物を形成し、水中濃度は低い。
(3)アンモニアは、窒素酸化菌により、亜硝酸イオンを経て硝酸イオンに酸化される。底部磯砂の深部には嫌気性微生物群が生息し、嫌気性消化され分解・可溶化される。
(4)有機物(炭水化物、タンパク質、脂肪、繊維素など)は、単糖類、ペプチド・アミノ酸、グリセリン・脂肪酸、単糖類などに加水分解・低分子化される。
(5)磯砂層の深さが10cm程度になれば、上記、低分子化有機物はメタン発酵されてメタン、二酸化炭素、アンモニア、硫化水素などへ無機化される。しかし、深さ5cm程度では、低分子化された有機物の大部分は水中へ移行し、②~③で述べたように表層部やろ床内の好気性微生物により無機化される。ここで留意しべき事項は、③の過程で、アンモニアの亜硝酸への変換で、pH依存性が高く、pHが中性に適正に維持されないと、前述したようにアンモニアが蓄積する。

8.水質測定と水質管理

魚飼育水槽の水質の主な測定項目は、①温度、②溶存酸素、③pH、④無機性アンモニア化合物(アンモニア、亜硝酸イオン、硝酸イオン)である。②~④の項目の測定装置は高価であり、これらの機器が完備されている研究室・実験室では可能である。
しかし、自宅や事務所等では、測定は困難である。今日、簡便な水質測定キットが市販されているので、インターネットや専門店から、入手可能である。
適正な水質は飼育する魚種によって異なり、本サイトの目的ではないので、具体的な各項目の数値は他書・インターネット等を参考にされたい。要は、飼育魚の健康状態(捕食活動が正常・活発)が維持できれば、水浄化を担う微生物群は清浄に機能するということである。

9.その他

(1)ろ床の磯砂洗浄の回数
1ヶ月に1回程度、給餌量が多く、数週間ごと洗浄が必要なケースでは、ろ過器を2台設置する。
(2)吸水ポンプのインペラー羽根の洗浄
磯砂洗浄の折に、吸水ポンプのインペラー羽根も歯ブラシなどで付着した生物膜を擦り落とす。
(3)給餌
魚種により異なるが、一般的には、5~10分程度で食べ尽くす量の餌を一日1回投与する。浮上性と沈降性があるが、魚種によって異なる。粒径は魚の口サイズに合わせて選ぶ。
(4)水の補給
水槽内の水は蒸発し、少しずつ減少する。熱帯魚など飼育し、ヒーターを使用しているケースでは、冬期にその減少量が激しい。適宜、水道水を補給する。特別な魚種を除き、水道水中の塩素を除く必要はない。冬期には、生物ろ過器・水槽上部にガラスや透明プラスチック製の板で覆うと、蒸発量を減らすことができる。

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掲載日:2017/05/07
更新日:2017/07/07

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