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水と溶質

1.電解質

(1)水和

電解質は水に溶けて水溶液となる。
イオン結晶を壊してばらばらの自由イオンにするには100〜1000kJ/molのエネルギー(⊿Gion)を必要とする。一方で、水分子は分極しており、イオンと水分子との静電的相互作用により、イオンを囲んで水分子が配向して安定化し、水和イオンとなる。水和には水構造を壊して水分子が配向するためのエネルギーも必要となる。
電解質が水に溶解するとき、発熱するものと吸熱するものがある。自由エネルギーは、エンタルピー⊿Hとエントロピー⊿Sで示され、次式で表される。
⊿G = ⊿H – T⊿S

⊿Hが負のとき発熱し、正のとき吸熱となる。発熱・吸熱に関わらず⊿H < T⊿Sのときには、⊿Gは負となり溶解反応が起こる。
自由イオンが水和するとき、その水和エネルギーは、ほぼz2/r(電荷の2乗/イオン半径)に比例する。すなわちこの数値が大きいほど強く水和して安定化する。
また、電解質が水に溶けると正負のイオンに解離し、電解質溶液は導電性となる。水和の程度が大きいほど移動のときの抵抗が大きくなり、その水和イオンの移動速度が小さくなる。

hydrated-ion
図1 水和イオンと水構造のモデル
Ⅰ:水和した水分子層、Ⅱ:ⅠとⅢの中間層、Ⅲ:氷に似た構造化水相
 

hydration-process
図2 電解質(結晶)が溶解するときの自由エネルギー変化
 
表1 イオンの水和エネルギーと極限モル伝導率
ion-hydration

(2)配位水

d軌道やf軌道を有する遷移金属は、配位子が接近すると縮退しているd軌道やf軌道が分裂し、低スピン型では低準位の軌道に電子が配置されて安定化する(配位子場安定化エネルギー)。遷移金属イオンに対して水分子が配位子として働き、[M(OH2)n]z+(aq)として安定化する。
例えば、塩化コバルト(Ⅱ)には、無水塩(青色)をはじめ、数種の水和塩が存在し、安定な六水和塩は単斜晶(桃色)である。塩化コバルト(Ⅱ)無水塩の水溶液と塩化コバルト(Ⅱ)六水和塩の結晶の吸収曲線は一致している。このことから、コバルト(Ⅱ)イオンは水溶液中では水和塩結晶と同じように6個の水分子で正八面体形に囲まれていることを示している。
この電解質の水溶液は桃色であるが、塩酸を加えていくと桃色から青色へ変化することはよく知られている。
コバルト(Ⅱ)の外殻電子は3d7であり、6個の水分子が配位することで、d軌道はdε(dxy、dyz、dzx)とdγ(dx2-y2、dz2)に分裂し、 外殻電子がdε5dγ2(正八面体形、高スピン型)に配置されてコバルト(Ⅱ)錯体が安定化する。[CoCl4]2-(aq)の電子配置はdγ4ε3(正四面体形、高スピン型)となる。(F.A. Cotton and G. Wilkinson: Advanced Inorganic Chemistry, p.565, p.881, John Wiley & Sons(1972))

[Co(OH2)6]Cl2(s) ⇔ [Co(OH2)6]2+(aq)  ⇔ [CoCl4]2-(aq)

cobalt-H2O-complex
図3 [Co(OH2)6]2+錯イオンの構造(赤球:Co2+、青球:O、茶球:H)

2.非電解質

(1)小さい分子

非電解質にはファンデルワールス力が働き、メタンやエタンなどの低分子の物質は水構造の隙間に入り込んで水に溶け込む。しかし、電解質に比べ、溶ける量は極めて少ない。

(2)大きな分子や粒子

親水基と疎水基を有する大きな分子は、疎水部分を内側に畳み込み親水部分を水と接触させて、水に溶け込む。パンパク質・DNAなどの生体高分子が水に溶け込む例が代表的なものである。また、親水基と親油基を有する界面剤は、親油基を油粒相へ親水基を水相へ向けてミセルを形成し、油粒を水相へ分散させる。

oil-micelle
図4 油粒のミセル


掲載日:2017/07/03
更新日:2017/07/09

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