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家庭洗剤と浄化槽の機能障害

Home Detergents and Jyokaso Dysfunction

水(ウエット)洗浄は、衣類・食器・水場などの汚れを水へ移行して対象から除去する。汚れの除去には、洗浄剤(界面活性剤などを含む)を用いて分散・溶解を促進する。一方、水浄化は汚れを水から除去する全く逆方向への操作である。汚れには有機・無機の固形物(繊維を含む)・溶解性塩があり、固形物は分散して水へ移行するか、分解して溶解する。一方、浄化では固形物(微細なものは凝集剤などを添加する)は浮上または沈降して除去し、溶解成分は固形分に変換するか、分解して無害な成分に変換する。
戸建住宅に設置される小型浄化槽は、固形物の浮上・沈降、微生物による溶解成分の分解とそれにより増殖した微生物を分離して、上澄液を消毒して放流する。これは、大型の浄化施設の多機能を小さな装置にコンパクトに収めた構造となっている。
一方で洗浄剤の各成分の人体・環境への安全性・影響性については詳しく調べられており、法令等で規制・標準化されているが、浄化プロセスへの阻害効果への取組は不十分である。今回、家庭に設置された浄化槽(小型合併および単独)について、機能障害を生じているケースに対する簡易検査および聞き取り調査の結果と改善・回復した事例を概説し、家庭洗剤について、浄化槽の視点から解説することとした。洗浄剤の開発・使用および浄化槽の設計・管理の双方への改善に反映されることを願っている。

1.家庭洗剤による浄化槽障害事例

1.1 調査方法

調査対象となった件数は約700基弱で、その内610基ほどが小型合併浄化槽である。これらの小型合併浄化槽の中で、基準値である透視度20度を下回る、あるいは、毎月下回る浄化槽は約70基であったが、調査結果に基づき洗剤使用への助言を行って、障害基数の90%ほどが改善・回復した。
調査方法は、浄化槽使用者に対する洗剤等のヒアリング、浄化槽や流入配管の目視による確認、浄化槽管理士が通常行う点検項目-透視度、色相、スカムの量や色相、pH、DO、浄化槽内の詰まり等を含む異常-、流入水量-量水器による計測と散水量-、および、洗剤の種類と使用量の聞き取りなどから、機能障害の原因解明と使用者への助言等を行った。なお、BODやCODの毎月の確認、細菌や原生生物の調査、界面活性剤の種類や濃度の水質分析調査は実施していない。

1.2 調査結果

上記の調査方法により、機能障害を生じた約70基の内、多くは洗剤等に含まれる毒性物質が原因と判断するに至ったので、以下に状況の概要について示す。なお、下記の「原因の特定」は、聞き取りと状況に基づく使用者への助言の結果、洗剤の扱い方やその使用量削減により浄化槽機能が回復したことを根拠としている。

(1) 殺菌・漂白洗浄剤

障害の約2割は塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)による透視度の悪化であった。カビ取り剤や洗濯槽クリーナー、パイプ洗浄剤、キッチン用漂白剤がその原因であった。
約20%は酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム、過酸化水素)による処理水の透視度の悪化であった。主に洗濯用漂白剤、洗濯槽クリーナーとして使われていた。活性酸素として浄化槽への流入は多数であり、若干の影響を受けていると思われる。酸素系漂白剤のため、使用者には40℃程度での湯で処理の後、可能な限り時間が経過してからの排水や、使用頻度を少くするように助言した。洗濯用漂白剤に関しては毎日使われるケースや3日/周ほど使われるケースが非常に多く、その影響と思われた。

(2) 陽イオン界面活性剤

約20%は陽イオン界面活性剤(主に、洗濯における衣類の柔軟剤)が原因であった。水の使用量と洗濯回数/日によって、処理水の透視度に大きな影響があることが分かった。これらの家庭(人数の考慮なし)から浄化槽への流入水量は0.5~0.7m3/日程度と少ない状態であった。この水量で洗濯を1回/日で毎回柔軟剤を添加すると影響有無の境界域で、洗濯回数が2回/日で毎回柔軟剤を添加すると浄化機能の障害が発生することが分かった。カチオン系界面活性剤は、浄化槽内に多量の有機物があるのにも関わらず、透視度の低下を引き起こしていた。

(3) 複合要因

約20%は複合的要因であった。上記の洗剤量(毎回の使用量と頻度の積)が多いケース、または、流入水量が少ないケースである。

(4) その他

明らかに油分が原因と思われるケースは過去に2基あった。流しから曝気槽までの流路に固形油脂が確認された。油分に加えて、嫌気槽と好気槽に生物膜が見られない点やスカムの色相が異常であることから、他の毒性物質の流入も考えられる。その他の約1割(約7基)は、透視度の悪いケースであるが、浄化槽の破損や汚泥の貯留量等は加味しても、原因が判らず現在調査中である。残りの3~4基は、使用者の排水状況からは、全く原因を特定できなかった。
これらの浄化槽に共通している事象は、(a) コンパクトやモアコンパクト型の浄化槽に加えて、流入水量が少ないこと(約0.5m3/日)や(b) スカム量が少ないことで、透視度が常に悪い状況(10~20cm)であった。

2.汚れと洗浄

食器・衣類、台所・化粧室の流し、バスの浴槽・床、便器などの表面に付着しているもので、洗剤の対象となるものは、油脂類・カビ類・細菌類(ヌルヌルしたもの)・難溶性塩類(水から析出したもの)・ほこり・着色類に分けられる。これらは汚れと言われる。

2.1 油脂類

台所流しの付着物は、食材・食器・調理器からのものである。(a)新しいものは粘性流動性があり、(b)古くなって変質し樹脂化したものから、(c)炭化したものまである。
粘性のある変質していない油脂類(a)は界面活性剤と反応させ、ミセル・分散化して除去できる。また、強アルカリを添加・加温・攪拌(反応速度を増大)すると、油脂類はけん化されて水可溶性物質に変化するので、除去できる。樹脂化したもの(b)は、有機溶剤で膨潤させアルカリで3次元構造を破壊し、擦り取るかまたは紙などで拭き取る。炭化したもの(c)は、金属製ブラシなどで擦り落とすしかない。調理台上のダクト・換気扇に付着する油脂類の性状も同様である。また、熱調理する際に、揮発したエアロゾルとして、浮遊微粒子に凝集・付着して、油脂類が空気中を拡散し壁・窓・床に付着する。
食用廃油は凝固剤(ゲル化)で固めて、ゴミとして廃棄する。油脂は、調理用・食品・皮脂が原因で、キッチン・洗面の流し、バスの浴槽・床、それぞれの排水溝・管のヌメリや閉塞の原因となる。

2.2 カビ類

白色から黒色まで、多様な色を示す。平滑な面上のカビはタワシ・硬いブラシで擦れば除去できる。凸凹面や角面の付着しているカビは難しい。また、難溶性塩類や変質した油脂類と混ざっているものは擦るだけでは除去できない。カビの胞子は空気中に浮遊し、水分(湿気)と栄養源(水・土壌中だけでなく、空中に浮遊する微粒子も栄養源となる)があれば、どこでも繁殖する。

2.3 ヌメリ

細菌・カビ類が繁殖し、その死骸や分泌物が主成分である。脂肪・炭水化物・タンパク質の固形分が混ざり合っており、すべて、ヌメリの原因となる。特に、油脂は流し・配管などの表面に上記固形分と混ざり合って付着するので、細菌・カビの温床となる。界面活性剤も、細菌・カビの栄養源となる。ヌメリが肥大化した油脂・脂肪酸・固形分との混合物は、配管等の閉塞を招くことが少なくない。ヌメリは、悪臭の発生源ともなる。悪臭成分は、微生物の代謝中間体である揮発性低級脂肪酸、揮発性有機イオウ化合物、アンモニア、硫化水素などで、異様な臭気となる。

2.4 難溶性塩類

炭酸カルシム(マグネシウム)、リン酸カルシム(マグネシウム、アンモニウム)などで、析出直後はアモルフォス(無定形・多孔質)状に対しては、弱酸性有機酸やキレート剤で溶出できるが、時間経過とともに結晶化(多様な結晶体)してくると、pH 3程度以下の酸性でないと溶出・除去できない。溶出速度は、付着層の厚さによる。厚いものは、長時間の処理時間に加えて、ブラシ等での物理的摩擦、超音波照射などが有効である。酸化剤や還元剤に溶出効果はない。便器では尿石(黄~黒色、尿中の尿素が分解しアルカリ性となり、上記の難溶性塩が析出)、ヤカン・電気ポットでは湯垢(白~灰色)と言われるものである。
浴室・化粧室では、陰イオン界面活性剤・皮脂由来の難溶性・脂肪酸金属塩が固形化・付着したものが多い。この金属塩の除去には研磨剤やキレート剤が有効である。

2.5 ほこり

ほこり(塵埃)は、衣類・靴などに付着して住居内に持ち込まれるもの、屋外の空気中から微粒子として住居内に持ち込まれるもの、住居内で発生したもの(身体、衣類、食材)など、発生源は多様である。有機系・無機系・微生物など種類も雑多である。

2.6 着色

しみ・黄ばみなど着色の由来は、人の排泄物・分泌物、食品・調味料の付着物、水洗時の成分などがある。これらの着色成分が界面活性剤で除去できない場合には、化学反応(酸化あるいは還元)によって分解して白さを回復する。主に衣料用の漂白剤は酸化型漂白剤と還元型漂白剤がある。さらに酸化型漂白剤には塩素系と酸素系がある。
塩素系は高い漂白効果があり、主に染料の発色基を分解し、衣類 の色柄を退色させてしまう恐れがある。酸素系は、漂白効果が比較的穏やかであり、色・柄物の繊維製品にも使用できる。製品の形状は粉末型と液体型がある。還元型は、鉄さびの汚れを落とすのに効果があり、鉄分を含んだ水で黄ばんでしまった衣類の漂白に使われる。この製品の形状は粉末型のみである。

2.7 汚れの形態と除去

汚れの形態は、①繊維の隙間に物理的に保持されるもの、②ファンデルワールス力により付着・保持されるもの、③水素結合など弱い化学結合により付着・固定されるもの、④塊状・棒状で静電気的に付着・保持されるもの、⑤繊維と化学的に結合するものに分類される。
(1) 形態①
生地の表面や繊維に物理的に付着・保持されている汚れは、擦る・揉む・絞るなどの物理的作用によって、水槽へ移動・除去させる。塊状粒子は、簡単に除去できる。繊維と絡み合っている糸状で長いものは単純な水洗での除去が困難となる。
微粒子・油脂は界面活性剤で、分散して、水相へ移動・除去する。セルロース・ポリペプチドなどは、それぞれの分解酵素で低分化して、水槽へ移動・除去する。
(2) 形態②
糸状・鎖状・板状の汚れは、衣類を構成する繊維高分子とファンデルワールス力によって、生地に付着・保持されている。酵素分解と界面活性剤による分散によって、水槽へ移動・除去する。
(3) 形態③
繊維は、-O- , -CO-, -NH- で高分子を形成している。綿(植物繊維)はセルロース系で、エーテル結合(-O-)で化学的に安定である。一方、絹・ウール(動物繊維)は、ペプチド結合(-CO-NH-)で化学的に不安定である。これらの官能基は、水分子と水素結合により、親水性が高くなる。
詳しい説明は省略するが、洗濯(クリーニング)には、ドライ(有機溶剤)とウェット(水洗)がある。水洗い不可の理由は、水と反応して繊維構造が崩れる(縮む/伸びる)、洗濯機による摩擦に弱い、色柄が薄くなるなど、衣類生地によって異なる。
(4) 形態④
空気中では静電気より強く付着しているが、水中では誘電率が大きいので剥離・除去が簡単である。物理的(摩擦など)に剥離し、または、界面活性剤で分散して、水相へ移動・除去する。負電荷には陽イオン系、正電荷には陰イオン系が有効である。
(5) 形態⑤
酸化剤(タンパク質系の汚れ)・還元剤(鉄・マンガン系の染み)・酵素(炭水化物・セルロース・タンパク質・脂質の分解酵素)などにより、化学結合を切断して低分子化・可溶性にして除去する。有機系色素の染みは、発色団を破壊して、染みを除くこともできる。しかし、柄物に作用するので、染色・染料の種類を確認する必要がある。

3.家庭洗剤

ここで扱う家庭洗剤は、身体用と衣類・器具・設備用に分けて記載し、台所・浴室・トイレ・洗濯の洗剤を対象とし、家具・窓等の直接に流しに直結していないものは除く。

3.1 身体用洗剤

手洗い・洗顔・浴室(身体の洗剤、頭髪のシャンプー・コンディショナー)で使用するもので、界面活性剤(陰イオン、陽イオン、両性または非イオン)が含まれており、その使用量と頻度が問題となる。また、コンディショナーには、頭髪の保湿・しなやかさなどを保つために、陽イオン界面活性剤(衣類の柔軟剤も同じ機能、衣類では静電気防止剤ともなる。)が含まれている。

3.2 衣類・器具・設備用洗剤

(1) 手に触れる洗剤
スポンジ・タワシなどつけて使用する。台所の食材・食器・調理器を対象としているので、食品衛生法で厳しく規制されおり、さらに、身体(手)に触れるので、浄化槽内の微生物に対する毒性のあるものは少なく、浄化槽への影響は界面活性剤(陰・非・両性)の使用量が問題となる。
(2) 手と非接触の洗剤
スプレーなどで吹き付け、棒・柄の付いたブラシ・スポンジを使用する。
界面活性剤に加えて、酸・アルカリ・酸化剤・還元剤などを含み、汚れの種類に対して、適切に洗剤の種類を選択する必要がある。酸化剤の成分と強さは、塩素系(液体)>過酸化水素(液体)・過酸化物(固体:過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム)であり、還元剤として二酸化チオ尿素、ハイドロサルファイトなどが挙げられる。浄化槽への影響は、過剰な酸化・還元剤の流入である。
(3) 洗濯洗剤
洗濯用洗剤は、衣類に付着した汚れを除去するものである。この汚れは、①身体から分泌・排出されるものおよび表皮の剥離したものなど、②「ほこり」や食材の付着物、および、③しみなどの色素に大別される。

4.殺菌・除菌

水に係る殺菌・除菌について簡単に説明する。一般的に水系の殺菌・除菌には、塩素、酸化剤、高級アミン有機化合物、紫外線が用いられる。

表1 水に係る殺菌・消毒剤の概略
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(説明)
逆性石鹸(陽イオン系)は普通石鹸(陰イオン系)に比べるとその界面活性作用はあまり強くないものが多く、このため洗浄力では劣る。しかし陽性に荷電した逆性石鹸は、セルロースやたんぱく質など、陰性に荷電した高分子(微生物・動植物の細胞膜)とは電気的に吸着しやすいという性質があり、殺菌力は優れている。逆性石鹸を細菌やカビの微生物に作用させると、その表面の生体高分子に吸着して変性させることで殺菌作用を示し、外用殺菌・消毒薬として利用される。ただし、ある種の細菌やウイルス(表面の構造による)、細菌胞子(芽胞)や真菌胞子には殺菌効果を示しさない。また衣類や頭髪に吸着することで、空気中の水分が保持されやすくなり、柔軟性を与えることから、衣類の柔軟剤や頭髪コンディショナーとしても利用される。

5.調査項目

5.1 調査事項の現状

一般に、浄化槽の状況は、定期的に実施される保守点検時における調査項目で十分に把握できる。現場で簡単に測定できる項目として、SV30があれば、汚泥の性状に係る情報が得られる。SV30と透視度から、浄化槽の稼働状況を様々な視点から、把握することができる。
家庭排水や食品排水の処理水のBODとSSには、図1に示すように直線関係が認められ、透視度の測定で推定可能である。ただし、図2に示すように、SS(∝濁度D)の対数値 log SSと透視度の逆数値1/Tが直線関係にあることに留意する。透視度が低いことは、曝気槽の活性汚泥の性状が悪化して、沈降分離機能が低下していることを示す。汚泥の性状悪化の原因とその悪化状態は、多様であるので、詳しい説明は省略する。

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 食品工場の処理水のSS濃度とBODの関係

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図2 カオリン濃度SS(mg/L)と濁度Dの関係
logD = a/T + bであるので、LogD vs1/Tの直線グラフから、濁度Dの値を求める。だだし、Tは透視度[cm]。

細菌や原生生物の調査ができる顕微鏡観察ができるとよい。顕微鏡もピン(数千円)からキリ(数百万円)まである。外部所見等が必要な場合には、写真が撮れるものが必要ですが、内部的に使用する場合には、携帯用(数千円)で十分である。

5.2 BODとCOD

流入原水と浄化槽稼働についての精密な測定には、次の事項が必要となる。BODについては、総濃度BODt、固形性濃度BODss、溶解性BODsolが必要である。また、BOD測定においてN成分があると、複雑な挙動を示しめす。CODでは、CODCr、CODMnの双方について、CODt、CDss、CODsolが必要となることもある。さらに、TOCについても、BOD・CODと同様である。形態別Nについても、同様である。これの測定値を総合的に評価して、浄化槽の機能を判断する。このような測定項目には、相当な額の機器設備と人員を要する。

5.3 洗剤の種類やその成分濃度

問題のある特定の浄化槽については、使用洗剤のメーカー・商品名とその購入数(/月)、流入水量(/月)から推定すればよい。

6.洗剤の適正使用と浄化槽の保全

家庭洗剤と浄化槽機能の関係についてのみ、コメントする。その他の因子と保守管理は、適正に実施されていることを前提とする。

6.1 界面活性剤

界面活性剤は、油・微粒子を水中へ分散して、食器・調理器・衣類に付着した汚れを除去する。汚れの分散機能を発揮させるためには、汚れの量に対して臨界ミセル濃度(critical micelle cmc concentraction, cmc)以上の濃度に維持する。cmc以下では、汚れの除去は不完全で、また、cmc以上の濃度を超えて多量に加えても効果が向上する訳ではない。要するに、cmcを僅かに越える適量を加えることが大切である。
ところで、浄化槽の主構成は、(a)沈殿・貯留・嫌気槽、(b)曝気槽、(c)沈降分離槽、(d)消毒槽である。
特に、(a)槽は特に重要で、沈降性成分の沈降分離・貯留(沈殿汚泥)、浮上性成分(油脂など)の浮上分離・貯留(スカム)、固形・溶解成分の嫌気性分解を担っている。
この槽に、cmc以上の界面活性剤が存在すると、沈降・浮上の両成分を分散して、(b)槽の負荷を増加させる。加えて、活性汚泥の沈降性を低下させるので、(c)槽の機能を阻害し放流水中のSS濃度を増加(透視度の低下)させる。(a)槽のスカム破壊により、スカム厚さの減少や破壊は、明らかに、界面活性剤が多量に流入している証拠である。
 したがって、(a)槽での界面活性剤の濃度をcmc以下に維持する。この対策としては、① 適量以上の洗剤を使用しないこと。② 水の使用量を増やして希釈すること。③ 容量の大きい(a)槽が望ましいことである。
界面活性剤は、細菌・カビに対しては増殖効果を示すが、魚類等に対しては毒性を示し、LC50は、天然系(原料:植物・動物油脂)で100mg/L、合成系(原料:石油)で1~10mg/Lと言われる。ただし、飼育実験系での値である。
界面活性剤については、web等に分子構造とその特徴が多数記載されいるので、説明は省略する。
陽イオン系(逆性石鹸)は陰イオン・非イオン・両性系にくらべて洗浄効果が少ない。表1に示したように、殺菌・消毒剤、衣類の柔軟剤、頭髪コンディショナーに多用されている。細菌・カビ類に対する逆性石鹸の殺菌・消毒作効果については、web等に詳しく記載されているので省略する。

6.2 塩素・酸素系の殺菌剤

これらの物質は、嫌気性・無酸素性・好気性の微生物によって、阻害効果(それらの濃度と接触時間に依存)は大きく異なるので、浄化槽全体で観測することが大切である。
塩素系は、酸化剤であるとともに殺菌力も強く、MIC(mimimum inhibitory concentration、最小発育阻止濃度)として0.5ppm程度が妥当な値であろう。
酸素系(過酸化物)は、細胞壁で阻止されるので、グラム陰性菌(細胞壁の厚い外膜のある菌)や莢膜を有する細菌に対して、その効果は少ないであろう。それよりも、多量の流入による(a)槽内の嫌気性環境が保てなくなることにある。同じレベルの流入量の浄化槽(特に、コンパクト・モアコンパクト型)において、窒素除去型と非除去型を比べて、前者に対して阻害効果が大きい場合には、その影響が確認できる可能性が高い。
対策としては、これらの物質を含む洗剤の使用量を削減することにある。具体的には、2.洗浄対象の2.2に対しては効果があるが、同-2.2同2.4に対しては全く効果がないので、汚れのタイプを見極めて、洗剤の種類を選択することである。
例えば、トイレの水たまり内壁に付着した尿石に対して、トイレ洗浄剤(主成分:弱アルカリ性、酸素系酸化剤、界面活性剤、発泡剤)を入れても、効果はない。効果がないので、使用頻度が多くなり、浄化槽への影響がでることもある。尿石を除去する方法として、食酢を適量(30~50mL)加えて時々内壁をブラシで擦ると除去できる。酢酸は、浄化槽内で、嫌気消化ではCH4とCO2、好気酸化ではCO2へ変換され、CO2が揮散して中性となる。酢を主成分とする酸性洗剤もある。
浴槽やその床に汚れは、乾燥すると空気酸化や乾燥による変質・固形化して、頑固な汚れとなる。洗浄は、排水直前・直後に実施すると洗剤が不要または少量で汚れを除去できる。

6.3 アルカリ剤

パイプ洗浄剤(キッチン・浴室・洗面所の排水パイプ・排水口のヌメリの除去・臭いの消臭・詰まり予防・詰まりの解消・除菌)が市販されている。その多くは殺菌剤に加えて、NaOHの含有量が高く(1%程度)、油脂をけん化して、水溶性のグリセリンと脂肪酸Naへ変換して除去する。多くのパイプ洗浄剤は、アルカリ濃度が高く、浄化槽の微生物に対して毒性があるばかりでなく、沈殿槽のスカムを破壊する。
パイプ洗浄は、パイプブラシで物理的に除去するのが最善の方法である。また、流し(写真1)の排水溝およびそのパーツを取り外して、数回/周、中性洗剤をつけたタワシ・ブラシなどで、洗浄することや、台所流しの三角コーナーを荒目のネット、目皿に細目ネット(水切りストッキング)を装着し、小まめに取り換えること(別ページ参照)で、パイプ洗浄剤の使用量を大幅に削減できる。なお、ネット交換時に、排水溝トラップに接続している配管内部もパイプブラシで洗浄する。以上の様な台所流しの管理を行えば、パイプ洗浄剤などを使用する必要は全くない。
手洗い・洗顔流し、バス室の浴槽・床なども、排水速度が低下したら、排水溝・口のパーツを取り出して、頭髪・ヌメリなどを台所流しと同様な方法で洗浄する。浴室の浴槽内面・床面の洗浄は、ブラシ等で擦る。手間が掛かるが、キッチン流し・浴室用の強力な洗浄剤の使用量を極力削減できる。

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写真1 台所流しの事例

6.4 漂白剤

漂白剤には、酸化剤と還元剤がある。酸化剤(塩素・過酸化物)は、有機系の染みに効果がある。
有機系の染みには、芳香環に窒素基が結合したものが多く、酸化剤で二重結合の開裂や窒素化合物基の酸化によって、発色・色素成分が消失する。
鉄・マンガンなどの無機系染みには、還元剤が使用される。鉄(III) → 鉄(II)、マンガン(IV~VII)→ Mn(II)に還元して、水に可溶性のイオンとして除去する。還元剤は、浄化槽微生物に対する阻害効果は低い。
固形粒子で繊維間隙に物理的に付着している染みに対して効果はなく、2(2)(c)①に記載した方法で除去する。
漂白剤で、殺菌作用が強く、浄化槽微生物に影響があるのは、次亜塩素酸(市販液:pH 11~12.5)である。漂白剤を多量に使用する家庭に対して、漂白に必要な衣類のみに使用する。また、漂白剤を注入した別の容器に浸漬したのち、洗濯器で洗浄することで、使用量を削減できる。さらに、使用済み液にハイポ(チオ硫酸ナトリウム:還元剤)を漂白剤と当量程度添加して、排水するなどするとよい。ハイポの添加量は、酸化還元反応の当量が等しくなる(redox中和)程度する。適正添加量は、洗剤中漂白剤の含有量から計算する。酸素系漂白剤の浄化槽への機能障害が疑われる場合も、ハイポでredox中和するとよい。なお、漂白剤中和剤も市販されている。

6.5 補助剤

水軟化剤、pH調整剤(強力なアルカリ性・酸性の調整剤を除く)、キレート剤、酵素、酸化防止剤、防錆剤、蛍光増白剤、研磨剤など、洗剤の用途と成分により無数の組合せがあり、浄化槽への阻害効果は小さいので詳しい説明は省く。

7.おわりに

好気性・嫌気性を問わず、実験室で浄化実験を行うと維持管理がとても難しい。例えば、活性汚泥法では1ヶ月程度で、汚泥の性状が悪化して、継続実験が困難になる。主な原因は、過曝気による汚泥解体、曝気不足による汚泥減少、原生動物の捕捉による汚泥減少、糸状菌による膨化と汚泥の流出、発泡による汚泥の流出などである。流入負荷、曝気量や温度を精密に制御しても、上記の汚泥性状悪化が発生する。そこで、SRT、負荷、曝気量を適宜調節する必要がある。大学でも、活性汚泥法を適正に長期間にわたって実験できる研究室は少ないのが、現状である。
小型浄化槽においては、毎日、状況を観察・管理していないが、1日における流入負荷の時間帯変化、季節変化、洗剤などによる機能障害など、様々な環境変化にもかかわらず、多くの浄化槽は数十年も適正に稼働している。日本の浄化槽システム(装置構成、維持管理、検査体制などの総合的な仕組み)は極めて高度なものである。装置構成が複雑でコンパクな浄化槽は、維持管理も高度な技術と利用者の注意が求められる。また、利用者の家庭の人数・年令構成・職業や食事の嗜好、清潔感など多様な要因が関係し、洗剤の種類・使用量も大きく異なる。利用者の浄化槽への理解と協力が重要である。
今回、洗浄剤を中心に浄化槽の障害を解説をした。人口減少と財政逼迫の時代を向かえ、全国下水道の更新整備と維持管理が厳しくなる状況の中で、都市周辺地域や過疎地域における浄化槽の重要性が益々高まっている。洗浄剤と浄化槽障害に関する調査研究事例は少なく、今後、現場での調査件数の拡大を願っている。また、5.調査項目で述べた処理水質に加えて、浄化槽内での洗浄剤成分の消長、DNA解析による槽内細菌叢への影響とスカム・汚泥の性状(浮上・沈降特性など)、充填材への保持特性などについて、高度な化学・生物機器と科学技術を有する諸機関での取り組みを期待している。

参考資料

Web上で、家庭用洗剤に関する文献・資料は多数ある。参考までに、数例を下記に示す。
1) 製品評価技術基盤機構化学物質管理センター:家庭用洗剤、https://www.nite.go.jp/data/000097447.pdf
2) 日本石鹸洗剤工業会:界面活性剤のヒト健康影響および環境影響に関するリスク評価(2001)、https://jsda.org/w/02_anzen/pdf/200110kaimen_riskassessment.pdf
3) 日本界面活性剤工業会:界面活性剤の主な性質と種類、https://jp-surfactant.jp/surfactant/nature/index.html
4) 日本界面活性剤工業会:界面活性剤の安全性と環境への影響、https://jp-surfactant.jp/surfactant/safety/index.html
5) Sanyo Chemical Magazine:洗浄力と生分解性を両立した衣料用洗剤基剤、 https://www.sanyo-chemical.co.jp/magazine/archives/1281
6) 奈良県環境保全協会:家庭での注意点について、http://www.nara-kankyo.or.jp/household/


掲載日:2021年02月07日

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