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活性汚泥の性状悪化と対策-屋内実験


<目次>


<屋内実験の難しさ>

公共下水道の終末処理場や事業所排水処理施設の活性汚泥を種汚泥として、屋内で活性汚泥法(回分・連続を問わず)を運転すると、SRTを数サイクル経過すると、様々な原因による汚泥膨化が発生、SVが増加し沈降分離が困難となる。
編集者の経験では、下記の人工下水(水道水を利用)を用いた屋内実験(10L曝気槽 + 5L沈殿分離槽の規模)を数年の連続稼働において、糸状菌の発生や発泡現象は全く生じなかった。
(1) 余剰汚泥を電解塩素殺傷・返送する汚泥減量型活性汚泥法、(2) 純酸素を用いたDO 10mg/L以上で高酸素濃度型活性汚泥法(余剰汚泥なし)
また、適正な負荷・SRT・温度・DO・pHの管理を行えば、数年間に及ぶ連続稼働において、活性汚泥法の継続運転が不可能となるような汚泥性状の悪化は認められなった。

 
<本ページの目的>

本サイトに記載の活性汚泥法(回分・連続を問わず)の屋内実験に関する照会・質問は多数ある。本ページでは、これらの照会・質問事項への回答を行った中で、実験上留意すべき共通事項について、解説する。
環境関連(特に、生物利用によるガス・水・土壌などの浄化)に係る分野(教育研究、行政、公共施設、事業所、施設・設備・資材・薬品の設計・製造・施工・販売、委託管理など)の担当者で活性汚泥法の経験がなく、知識のみで業務を行ってトラブルを抱えているケースは少なくない。生物浄化に係る実務において、好気・無酸素・嫌気法に関わらず、活性汚泥法の具体的な運転管理は、様々な情報・技術を提供してくれることを強調したい。
なお、実験上の注意事項については、未記載の事項が多数あり、順次、追加するので、更新日に留意されたい。本章に記載する内容は、下記ページを既読していることを前提としている。

1) 活性汚泥法-回分実験、2) 活性汚泥法-連続実験、3) 活性汚泥法-基本設計・操作因子

1.初心者・実験への助言

(1)計算式に囚われないこと

本サイトでは、活性汚泥法の計画・装置設計・維持管理に係る計算式を挙げているが、それを余り気にしないで実験されたい。
具体的な排水量・汚濁物質の濃度から浄化装置を設計・施工・維持管理をする場合の参考として記載している。実際の条件は個々により異なるので、参考値として扱っていただきたい

 
(2)失敗は知識・技術の向上であること

生物を扱う実験は、物理や化学の実験と異なり、長期間の検証が必要となる。この実験期間中に様々な現象に遭遇し、その対処に知識と経験が必要となる。この課程で、多数の挫折により諦める初心者も少なくない。しかし、この課程を乗り越えることが大切で、どの分野においても、失敗経験は知識・技術の蓄積となることを認識されたい。

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2.活性汚泥の特徴

(1)開放系・混合系であること

活性汚泥法は、開放系であるため、流入汚水・大気中に存在する様々な微生物やその胞子・種・卵などが混入し、多様な生物が共存・競争して生息する生態系である。屋内実験であっても、環境・条件によって、これらの生態系が多様に変化する。汚泥の状況が好調であったり、不調となったりする。活性汚泥が正常に機能するためには、適切な実験装置(高額な装置を意味していない)と維持管理が必要となる。
同じ生物実験でも、厳密に管理され至適条件で行われる純粋培養系とは大きく異なる。微生物の取扱いに習熟した経験者でも、活性汚泥を適正に扱えることとは限らない。

 
(2)物理・化学の実験と異なること

化学反応などでは、再現性が良好であれば、短期間の実験で結果を確認できる。生物反応の場合には、生息環境の変化に適用できる微生物が増殖するまでに、一般的に数ヶ月を要する。また、自然界にない人工化学物質に順応できる微生物が増殖するには、数年間の連続実験が必要となることも少なくない。
細菌類は、突然変異やウイルス等を介して、新たな環境に対応できる遺伝子を導入し、世代交代を繰り返して、その環境に順応する。これを「馴致」または「育種」という。これを早めるために、現場で稼働している活性汚泥、排水溝の底泥中の細菌類、あるいはその配管内壁に付着した生物膜を、「種」として育種することも多々ある。

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3.活性汚泥・維持管理の留意点

(1)回分法のサイクル回数/日

本サイトに示したバケツ(曝気容器については、後述する)による回分実験(活性汚泥法-回分実験)の件については、1 日 1 回のサイクル(静置・排出・投与、以後、翌日の静置まで連続曝気)とする。休日のときは、休日分の負荷(濃度を休日数の倍率で上げる、容量が決まっているので)で運転し、休日明けに、次回の操作を行う。粉末投与法については、後述する。
ただし、自動制御による回分実験には、目的が異なるので、計画に沿ってサイクル回数/日で実施することとなる。次に示す理由から、回分実験を数サイクル/日で行う必要はない。なお、家庭用浄化槽の汚泥引抜は、1 回/年となるように設計されている。
<実処理設備のサイクル>
現場の回分法設備では、1日に数回のサイクルで運転するが、これは、後段の余剰汚泥の処理装置の能力による。一般の下水処理場では、混合汚泥(初沈汚泥、余剰汚泥)を濃縮、(嫌気消化)、脱水・乾燥、焼却(有効利用)します。サイクル数/日を増やすのは、後段設備の安定稼働のためで、1 日 1 サイクルでは貯留・調整設備が大きくなり、不経済となるからである。

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図1 回分式活性汚泥法の操作の概略
DO計測制御では、数 mg/L(1<DO<3) に設定する。DO制御器がない場合には、上図のように曝気量を設定する。DO上昇が生じる時点が、汚水中BODが消費される時間である。なお、汚泥抜取の時間帯は、何時でもよいが、抜取後、曝気槽の所定レベルまで水道水を補給する。
 
(2)汚泥日令の管理(余剰汚泥の引抜)

<活性汚泥法と汚泥日令 SRT>
下図に細菌類のライフサイクルを示し、下表に各種活性汚泥法の操作条件を示す。以下、標準活性汚泥法を「標準法」、長時間エアレーション法を「長時間法」と略称する。
○細菌の生育は、誘導期(増殖準備期間) 0~3日
○対数増殖期(生菌数が対数的に増加): 3~9日
○定常期(生菌数が一定): 10~17日
○衰退期(生菌数が対数的に減少): 18日以降
標準法では、対数増殖期の初期間で増殖(生育)が極めて旺盛(基質摂取速度が最大)な細菌類を利用する。
長時間法は、安定期から衰退期の細菌類(基質摂取速度は低い)を利用する。
以上のことから、運転の難易度は次のようになる。
標準法:①汚泥濃度は低い、②汚泥管理(引抜)の厳密化(適正汚泥日令の範囲が狭い)、③負荷(高負荷)/曝気バランスの厳密化(DO制御)、④汚泥状態が不安定となりやすい、⑤設置面積が狭い、⑥高度の管理技術 ⇨ 都市部の大型下水処理場
長時間法:①汚泥濃度が高い、②汚泥管理(引抜)の容易化(適正汚泥日令の範囲が広い)、③負荷(低負荷)/曝気のバランスの容易化、④汚泥状態が安定している、⑤設置面積が広い、⑥高い管理技術が不要 ⇨ 小規模下水処理場、中型・大型浄化槽(集落排水を含む)
以上のことから、初心者が室内実験をするときには、先ず、長時間法をマスターする必要があろう。
<汚泥日令の管理>
室内実験では、小容量の曝気槽となるので、汚泥日令の管理は、曝気槽内の混合液を毎日、抜き取る。沈殿槽の返送汚泥(汚泥濃度が一定しないので)を抜き取ることはしない。
有効容量10 Lとした場合には、曝気・攪拌状態で、混合液を 1 L 余剰汚泥として抜き取ると、SRT は 10 日となる。0.5 Lであれば、20 日となる。n 日の間隔の抜取であれば、SRT = 10/nX として nX [L]の余剰汚泥を引き抜く。引抜間隔は毎日でも数日でもOKである。
SRT は、標準法は 2~5日、長時間法では 15~30日、MLSS は前者で 1,500~2,000 mg/L、後者では 3,000~6,000 mg/L の範囲であればよい。汚泥管理は、混合液の抜取のみとし、MLSS は自然値に任せ、特に調整する必要はない。標準法については、容積負荷と汚泥日例の厳密な管理が必要である。

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図2 閉鎖系細菌培養系における生菌の相対数の経日変化

表1 各種活性汚泥法の操作因子と汚泥性状
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(3)汚泥の性状測定

(a) 沈降特性
毎日あるいは数日おきに、SV30 の測定を行い、汚泥の沈降性を観察する。さらに、SVI を求める。沈降特性および SV30、SVI が適正な状況でない場合(SVI > 200)には、何か障害が生じている。
熟練してくると、SV30 の値だけで、下記の MLSS 濃度が推定できるようになる。測定試料は 1.0 Lを要するので、実験混合液の容積が少ない場合(5 L以下)には、静置前に測定して、測定後、バケツに試料を戻す。試料採取中、バケツの曝気を行って均一なものを採取する。
(b) 汚泥濃度 MLSS の測定
定期的( 1 週間に 1 回程度でよい)に汚泥濃度MLSSを測定する。減圧ろ過器・乾燥器が必要である。特に必要としない場合には、MLVSS の測定は不要である。目的の MLSS 値になるように、引抜量を増減して SRT を調整する。

 
(4)曝気速度

静置直前(1回サイクル/日の場合)に DO を測定し、数mLであればOKである。時々、静置前の数時間前後の DO を測定し、DOの上昇の有無を確認する。静置直前に、DO = 0 mg/Lであれば、曝気不足である。逆に、静置数時間前に、DO が上昇していれば、過曝気となり、汚泥濃度が減少する。人間と同じで、食事と運動のバランスにより、太ったり・痩せたりする。

DO_vs_time
図3 曝気速度一定条件での回分実験における時間経過と組成変化の事例
曝気槽に BOD が高濃度のときは、BOD分解は酸素の供給速度が律速となり、DO 値は “0” である。BOD が消費され低濃度になると、NH4+の酸化が始まる。この条件では、(酸素供給速度) > (NH4+ 酸化速度) となり、少しずつ、DO が増加する。上記に記載の「DOの上昇」とは、この現象をいう。

(5)pH の管理

本サイトに記載の人工汚水(スキムミルク + 塩類)は、pH の調整機能があるので、pH 制御装置は不要である。しかし、pH が中性付近にあるか、時々、チェックする。もし、pH < 6 になるようであれば、NaHCO3(炭酸水素ナトリム、重曹)の割合を増量する。

 
(6)温度管理

一般に哺乳動物は、体温調節ができる。その他の動物・植物は冬眠・夏眠したりして、それぞれの環境に対応した生活を送っている。
細菌類や微生物は、環境温度によって「種」が変化する。また、1 日の温度差が 5°C を越えると生育が不安定となる。下水処理などでは、水量も多く、下水管・処理池は、地面下で保温条件もよく、1 日の温度差を少なく維持できている。
ところが、室内実験では、特に冬期において、昼間(暖房-on)と夜間(暖房-off)の温度差が 20°C 以上になることも少なくない。この温度変化が、室内実験での活性汚泥を不安定にする主な原因である。屋外でも、冬期には温度差が大きい。
冬期は固定温度ヒーター(25~30°C)をバケツ(曝気槽)内へ設置して、温度を一定にすることで、安定稼働が達成されると考える。このとき注意すべきは、水の蒸発、空だきである[ヒーターに自動電源切断(温度ヒューズ)の有無をメーカーに確認、火災防止のため]。また、実験室を昼夜連続稼働していない場合には、下図に示す安価な恒温槽などに曝気槽を設置して、温度を一定してもよい。

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図4 観賞魚用水槽セットを活用した恒温水槽(サーモバス)の事例

(7)曝気槽のサイズと形状

以下、曝気槽容積とは混合液容量(有効容積)のことを示す。曝気槽の形状の要点は、①効率的な酸素移動、②十分な容器内の流動である。
実施設では、一般的に、曝気槽の形状は矩形で、水深は 4m ~ 6m であり、散気管による曝気で酸素供給と混合液攪拌が行われる。家庭用小型曝気槽(構造例示形)の水深 1.2m 以上となっている。
屋内実験の曝気槽の容積は、数十L以下で水深が浅く、散気による曝気では水中での滞留時間が短く、酸素移動効率が低く、かつ、気泡上昇による攪拌効率も悪い。
以上のことから、曝気槽の形状については、下記の事項に留意する。
<500mL~5L>
理化学用メスシリンダー(例えば、5L用:φ = 13cm, H = 60cm)など、円筒形で容量に応じて市販されいるものを利用するとよい。(半)透明であれば、プラスチック・ガラス製いずれでもよい。また、ペットボトルやブランデーボトルの上部を切り取って、曝気槽としてもよい。
有効水深は容器高さの2/3程度が限度である。
○収納容器:曝気槽の転倒防止のため、側面が格子状・底面が平底状の食器容器などを用い、園芸用ビニールタイ(巻線型)(同じ価格でも、品質に差があるので注意)で曝気槽容器のサイズに合わせて囲いを作り、これに収納する。多数の同時実験が可能となる。
○曝気(エアストーン):曝気は、酸素供給だけでなく、混合液の攪拌も兼ねているので、粗大気泡が望ましい。また、エアストーンが浮上しないように、比重のある棒などに固定して、容器の底に設置する。
○分岐管:曝気槽が小さいと、観賞魚用エアポンプでも流量が過大となることがあるので、分岐管(分岐コック外径とチューブ内径に留意)を用いて、複数の曝気槽へ空気を供給するとよい。また、逆に、下記に示す10L以上の曝気槽BOD負荷が高いときには、分岐管に複数のエアポンプを接続して送気量を上げてもよい。なお、曝気量の調節のため、分岐バルブ・コックの一つは、エア抜きとし、各曝気槽へのエア供給量を調節する。
○留意事項:分岐管で複数の曝気槽へエア供給する場合には、曝気槽サイズおよび内容液の高さを同一にする。
<10~20L前後>
本サイト内の別ページに示す写真1&2に示すような透明 PVC 製円筒型で、高さ H > 直径 φ であるような容器がよい。底面から適当な間隔で、バルブ付きコックを溶接すると、有効容積の可変できる。底面にはテーパ状として、排水バルブ付きコックを付けるとよい。
<20L以上>
円形型は制作上コストが高くなるので矩形型となるが、なるべく、高さ H > 底辺 (W + D)/2 となるものがよい。背の高いバケツでもよい。
○攪拌:容器サイズが大きくなると、曝気泡による流動・攪拌が十分でないので、大きな羽根を低速回転(高価)で攪拌するとよい。この際に、センサーコード・散気管チューブなど巻き込まないように、細い塩ビパイプに通し、その塩ビ管を曝気槽側壁に固定するとよい(参照:回分法ページ図3)。
また、図4に示す観賞魚用循環ポンプ(安価)を用いて攪拌してもよい。この場合には、曝気管(球)の反対側から吸込み、曝気管へ向けて吐出すように配置する。また、底面設置型の水中循環ポンプは、適切に槽内攪拌が行われる位置に据え付ける。これらのポンプの回転羽根に生物膜が付着するので、小まめに取り外して洗浄する。羽根の回転速度が速く、少しのブロック解体が起こるのが欠点であるが、沈殿槽でフロックの再集合が起こるので、沈降分離に障害を生じることはない。

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4.活性汚泥の性状・機能の悪化と対策

回分・連続に関わらず、汚泥の性状悪化には、大きく分けて、以下の 4 項目が挙げられる。内容を理解して、性状悪化に対しては実験方法など見直しをする。

 
(1)泥水などに含まれるコロイド状無機微粒子の不足

下水などには、洗濯水、床洗浄水、排水溝、雨水などが含まれ異物・砂・泥などの成分が含まれる。異物や砂などは、スクリーン・沈砂池・初沈池で除去されるが、無機微粒子・髪・繊維ごみ(以下、微粒子等と省略)などは曝気槽へ流入する。活性汚泥と微粒子等が堅牢な混合フロックを形成し、さらにフロック比重が増加するので、沈降性のよい良質な活性汚泥となる。
シリンダーで沈降状況を観察すると、上澄み液が透明な界面沈降で沈降も速く、5~10 分程度で圧縮沈降へ移行する。
(参考ページ)沈殿池の基礎
天候・季節によって変動するが、下水汚泥には、20~30% の無機物質(強熱残量)が含まれている。下水汚泥の焼却灰は厄介者であるが、下水処理においては、活性汚泥の良好な沈降分離に役立っている。しかしながら、下水中の汚泥中有機物の割合は、年々増加傾向にあり、有機物割合が90%弱の処理場も見受けられるようになった。これは食生活の変化、即ち脂質や動物性タンパク質の摂取量の増加、および下水排除方式が分流式になってきた。即ち下水に流入する無機質が減少してきた事等によると思われる。[川崎、1985]
室内実験などで、模擬汚水を投与する場合には、上記の微粒子等が含まれていないので、下水汚泥を「種」として実験すると、7~20 日程度で上記の微粒子等が系外に排出され、少しずつ汚泥フロックが軽くなり自由沈降の状態となって、上澄み液も懸濁し、沈降速度も遅くなる。
下水などの実汚水でなく、模擬汚水、あるいは、無機微粒子等を含まない汚水を用いる場合には、活性汚泥中の微粒子等を常に 20% 程度に維持する必要がある。安価な化粧用カオリンなどを利用するとよい。
<カオリン投与量の計算事例>
曝気槽内の汚泥・総重量の 20% 程度に相当するカオリンを定期的に投入する。基本的な原理は、汚泥日令が経過すると、全てのカオリンが消失するものとする。本サーバにカオリン投与量の計算xlsファイルがあるので、ダウンロードして活用するとよい。
○曝気槽の有効容積 V: 10L
○汚泥日令 SRT: 20日
 長時間曝気法: SRT = 曝気槽内の混合液を0.5L/d抜取 = 10L/(0.5L/d)=20d
 休祭日がn日のときには、その前後日に0.5L/d✕(n+1)抜き取る
 汚泥濃度 MLSS: 3,000mg/L(直近の5回程度の測定値の平均値)
○ 7日の間隔(曜日を決めておく)
 3,000[mg/L]✕10[L]/20[d]✕7[d]✕20[%] = 2.1 g
○ 10日の間隔(10日、20日、30日のように投与する日を決めておく、休祭日には、その前後日とする)
 3,000[mg/L]✕10[L]/20[d]✕7[d]✕20[%] = 3.0 g
(Web参考)カオリン

VSS_SS
図5 下水処理場(U市)の返送汚泥を植種した室内の活性汚泥実験における VSS/SS の経日変化
模擬汚水(スキムミルク+栄養塩類+pH調整剤):300mg-BOD/L、HRT = 24h、MLSS = 1,800mg、SV30時のMLSS = 7,200mg/L(実験開始時)、SRT = 20d
VSS/SSが20日以後、90%で一定となっている。20日以後の強熱残留物は 10% となっているが、模擬下水中の溶解性無機塩類で、コロイド状微粒子に由来する成分ではない。
 
(2)油分を含む排水

油分を含む汚水を処理すると活性汚泥の沈降性が悪くなる。多数ある料理店街など高濃度油分を含む下水や油分濃度の高い食品工場排水の処理では、凝集助剤(粘土系、アルミ・鉄系など)・高分子凝集剤を投入し、処理コストが高くなる。排出源におけるオイルトラップなど設置とその適正な維持管理が必須となる。さらに、加圧・浮上分離による油分の除去を行う。
(参考ページ)凝集分離

 
(3)糸状菌の発生

季節の変わり目、高温・低温時期、活性汚泥の弱体化(過曝気・酸素不足、負荷の過不足、栄養塩類の過不足、阻害物質や油分の混入など)など、様々な原因により発生する。
糸状菌の発生原因を解明し、根気よく改善に努めることも経験となる。一方で、実験室では最初からやり直したほうが効果的な場合もある。

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写真1 糸状細菌による活性汚泥のバルキング事例(屋内実験)
沈殿槽の外壁が汚れているので、上澄液の様子が見えにくいが、極めて透明・清浄である。しかし、汚泥が膨化し沈殿分離が極めて難しくなる。負荷(特に流量)を軽減して、回復するまでに長期間の対応が必要となる。曝気槽温度を室温で運転すると、秋から冬への季節変化時期に発生しやすい。

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写真2 糸状細菌が異常発生した活性汚泥の検鏡(100倍)事例(実施設・曝気槽)
本活性汚泥は、SV30 98~100 で、曝気槽のMLSSと沈殿槽の分離液のSSがほぼ等しい状況である。

(4)過曝気(痩せる)・酸素不足(肥満)による汚泥の活性低下とフロックの解体

(a) 連続曝気
新たに模擬汚水を投与( 1 日 1 回)する時刻前の 1~2 時間前後に、DO の上昇が起こる曝気速度とする。曝気の過不足には注意する。
また、活性汚泥の弱体化、または、負荷(模擬下水成分の濃度)の過不足は、酸素消費量の変化(次サイクルの 1 時間前の DO 変化の有無)によって判断できる。曝気量の調節のみでなく、上記の DO 状況によって、負荷を増加/減少することも大切である。
<フロックの弱体化>
バクテリアの細胞表面は、-COOH ⇄ COO 基によって、pH > 4 ではマイナス電荷を帯びている。(なお、アミノ酸のアミノ基はプラス電荷を帯びているが、内部にあって他の構成物質、例えば、-OH などと水素結合している。詳しくは、本サーバー内のxlsファイルをダウンロードして、アミノ酸のシートを参照されたい。)。これによってバクテリアは、水中において分散状態で (下記ページを参照)、生存している。ところが、活性汚泥のバクテリア(凝集性)は細胞外に粘質物質を分泌して、互い付着・凝集してフロックを形成し、沈降性を有しています。流れのある地表水・海水中に生息する付着性バクテリアも同様である。
自然界では、沈降すると酸素や栄養分を摂取できなくなるので、粘質物質を分泌しない分散性バクテリアが優占種となる。
一方、活性汚泥法では曝気・機械攪拌により、フロックが水中で分散状態となるので、凝集性バクテリアの生存が可能となる。分散性バクテリアは沈降性がないので、最終沈殿池において放流水とともに系外へ排出される。凝集性バクテリアは沈殿分離して返送され、曝気槽に保持される。このように活性汚泥法とは、粘質物質を分泌するバクテリアを選択的に保持培養するシステムで、一般の分散性バクテリアは生存できない。
フロックの弱体化(活性汚泥の解体)とは、不適切な環境におかれた凝集性バクテリアがその活性度の低下によって粘質物の細胞外分泌量が減少し、活性汚泥バクテリアの相互付着・凝集力が低下して分散状態となる現象をいう。
(参考ページ)コロイドと界面現象
(b) DO 計を用いた曝気量制御の場合
2 台のエアポンプを使用し、1 台はやや不足の曝気速度、1 台は On-Off 制御する。DO 計は、定期的に校正し、劣化した電極(消耗品である)は更新する。また、酸化還元剤によって、異常な反応をするので、注意する。設定値は 数mg-DO/L とし、正確に設定しなくてよい。DOを 0 mg 近くの値に設定すると、DO 計の校正不良のとき、酸素不足となることがある。
(参考ページ)現場での簡易測定- DO 計

 
(5)発泡現象

活性汚泥の生育環境(温度、投与する原水組成と負荷、新たな植種汚泥など)、少しずつの変化では、問題とならないが、これらの生育環境が急激に変化すると、必ず、発泡が生じる。市販品の曝気槽では、水面上部の側壁の高さが 5cm 程度のものもある。この高さでは、僅かな発泡でも、汚泥が流出する。写真1および写真2に示すように、少なくとも、曝気槽の水面から30cm以上の側壁が必要である。ただし、この発泡現象は、異常な汚泥の性状悪化ではなく、活性汚泥の生物相がその環境に順応できるようになると、発泡は減少してくる。
放線菌が異常発生すると、頑固な発泡現象が生じる。放線菌の表面はミコール酸で覆われており、これによって菌体を保護している。ミコール酸は、炭素数60~90から構成される超高級脂肪酸である。したがって、これが異常に増殖すると、菌体から剥離したミコール酸が水中に分散して、界面活性剤(炭素数10~20程度)のような「サラサラ」した泡ではなく、粘性の高い頑固な泡となる。下記 5.1-(2)-5)発泡対策 に記載する消泡剤を多量に散布すると、一時消泡するが、多量に加えた消泡剤とミコール酸の相互作用により、粘性の高い混合液となり、返送汚泥ポンプの閉塞など、様々な障害が連鎖的に生じる。

 
(6)汚泥浮上

維持管理が良好な条件(曝気量が十分なとき)では、アンモニアが硝酸に酸化される。活性汚泥には、窒素還元菌(通性嫌気性細菌)が混在しているので、沈殿槽での汚泥の滞留時間が長くなると、窒素ガスが発生し、その浮力により汚泥が浮上する。この様な汚泥浮上は、汚泥の性状悪化ではない。沈殿池の汚泥全体を 1 rpm程度の速度で攪拌するとともに、返送速度を上げることにより、汚泥浮上を避けることができる。
<実験に用いる供試汚泥>
下水処理施設から汚泥を入手して、沈降特性や濃縮薬剤効果を試験するときの留意すべきは事項は、試験中における汚泥の分離浮上である。例えば、汚泥特性を測定中、30分も経過すると汚泥が浮上して測定が困難となる場合が少なくない。これは、次の理由による。
以前においては、下水処理はBOD除去を主目的に稼働していたが、閉鎖性水域の富栄養化などを理由に、窒素規制が厳しくなり、硝化・脱窒が行われるようになり、無酸素-好気(窒素除去)、嫌気-好気(リン除去)、嫌気-無酸素-好気(窒素・リン除去)など、汚泥の滞留時間が長くなって、硝化菌が十分増殖する環境となっている。このため、汚泥沈降測定中に無酸素状態となると脱窒反応が直ちに進行して、汚泥細胞内に窒素ガスが生成して汚泥が浮上する。
このような活性汚泥に対しては、曝気槽の混合液の1/3程度を1週間~10日(温度 25℃、SRT 3サイクル程度)、毎日、抜き取るとよい。硝化菌が洗い流されて、汚泥浮上が起こらなくなる。

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5.糸状菌対策ー粉末添加法/次亜塩素酸ナトリウム法

5.1 スキムミルク混合粉末添加法

(1)適用範囲
本粉末法は、あくまでも、屋内実験にのみ適用できるもので、実処理施設に対しては不可能である。(1) 植種用汚泥に異常に糸状細菌が含まれていたり、上記4(3)に示した原因等で糸状菌が発生し、汚泥膨化・発泡などにより実験の継続が困難になったときに適用する。(2) 現場の実廃水や他組成の人工廃水を実験中で、糸状菌の発生した実験汚泥を回復させたい場合にも、適用できる。また、(3) 実処理施設での活性汚泥の性状が悪化したときの原因解明の一つとしても、有効な検証法である。
本法を適用し、糸状菌が消滅してから、個々の実廃水や人工廃水へ切り換える。元の実験に復帰して、再度、糸状菌が発生する場合には、実験系に不具合があるので、その原因を検討すべきであろう。
本法の特徴は、汚泥流出がないので、初心者は安心して実験ができる。唯一のトラブルは、下記の5)発泡対策のみである。注意すべき事項は、曝気速度(1mg<DO<3mg)と容積負荷(g-BOD/L/d)のバランスのみである。過曝気では汚泥の解体が進行し、酸素不足では汚泥の膨化が起こる。長時間(半日以上)に及ぶ酸素不足では汚泥腐敗やカビ発生の原因となることがある。また、適正なDO管理が行われても、曝気槽内に滞留部分があると、長時間の過曝気と酸素不足のゾーンが生じるので、上記の3.(7)曝気槽のサイズと形状で示した容器内の流動状態には、特に注意する。
(2)実施法
1)スキムミルク混合粉末の調整
サーバーに保存中のxlsファイルダウンロードし、これに(以下、粉末と略称)準じて、スキムミルク・栄養塩類・pH調整剤を混合して、所定量の混合粉末を調整し、保管する。
2)回分法
連続活性汚泥法では、原水投入を停止して、回分法に切り換える。なお、汚泥返送ポンプは稼働し、沈殿槽での HRT を 1~2h 程度になるように、返送循環する。
3)DO制御と曝気量の調整
DO制御装置が付設されている場合には、1mg/L<DO<3mg/L に設定する。DOの上限は3mg/Lに近い値であれば、問題ない。DO制御器がない場合には、図1に示したように曝気量を調整する。
4)粉末投与
曝気槽・容積、SRT、MLSS、曝気速度等から、適宜、粉末投与量を決定する。図1に示した手順に沿って、回分法を運転する。
5)発泡対策
粉末投与直後に発泡するので、下記のように措置する。
溶液型シリコン系消泡剤の 5 倍希釈液をスプレー(JET↔SPRAYの調整可能で、200~500mL程度、100円ショップ等で販売)のJET状で、曝気槽表面に散布する。数mL の散布で消泡できる。
6)測定・観察項目と維持管理
次の項目の測定を行い、粉末投与量または曝気速素を図1の状況になるように調整する。
① DO:朝、昼、夕に3回/日 ② SV30・MLSS:1回/日
注)連続曝気法を粉末回分法へ変更した場合には、沈殿槽の界面が1/2~1/3(ただし、糸状菌が減少し回復過程にあるとき)になるように汚泥返送速度を調節する。毎日、沈殿槽の汚泥界面の高さ、界面の明確度、上澄液の透視度など観察し、汚泥回復の状況を調べる。
③ 温度図4に示す熱帯魚水槽のヒーター(100W )を曝気槽へ浸漬して、温度26℃程度に保つ。
④ 同粉末は、pH緩衝能力が高く、海水pHと同程度に保たれる。念のため、適宜、pHも測定するとよい。
⑤ 粉末投与量と曝気量:DO計測制御器を用いて曝気量を制御して運転する場合には、粉末投与量は適宜、実験条件に応じて選定できる。同機器がなくて一定曝気量で運転する場合には、図1に示すDO挙動を示すように粉末投与量に対応した曝気量を設定する必要があり、この調節に手間がかかる。
⑥ MLSS:本粉末法では、汚泥の流出がないので、最大 MLSS 8,000mg/L 程度まで運転可能であるが、6,000mg/Lを越えるときには、汚泥抜取量を増加しSRTを短縮するとよい。
7)糸状菌の消滅
粉末投与・回分法により適正に運転した条件化では、異常に発生した糸状菌が消滅するまで20~30日が必要である。可能であれば、顕微鏡で糸状菌の状態を観察するとよい。50<SVI<150が望ましいが、SVI<200 または SV30<60~80、かつ、汚泥界面が明確になれば、糸状菌はほぼ消滅し、回復したと判断する。


スキムミルク混合粉末の特徴
スキムミルク(脱脂粉乳)は、炭水化物とタンパク質のバランスがよく、脂質が少なく、ビタミン・ミネラルも豊富である。また、同混合粉末中のBOD:N:Pの比率も適正である。NaHCO3・NaCO3が多量に含まれているので、pH緩衝力が強く、曝気液のpHは、表面海水のpH(8.1~8.2)付近に維持される。BOD[g] ≒ (1/2)×スキムミルク [g] で、BOD負荷の計算が簡単である。以上のことから、初心者が活性汚泥実験を行うときの、人工廃水として適している。

5.2 次亜塩素酸ナトリウム法

執筆予定
下水道の終末処理場の糸状菌等の発生対策については、横浜市のHP「下水道調査・研究>運転管理に関する調査・研究」に詳細が記載されているので、該当ページを参照されたい。
屋内実験系への本法の適用にあたっては、基礎的な実験・測定技術が必要であるので、関連ページを掲載の後、執筆する。


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6.生物膜法

(1)維持管理の簡素化

生物膜法(生物ろ過法、浸漬ろ床法)法は、負荷変動・温度変化に対して、比較的に安定な稼働をする。実験目的によっては、採用すると便利である。例えば、難分解性汚水の処理や阻害物質の有無など。
下記 2)に示す装置は、1 日 1 回、または数日1回の排水・投入、定期的な水質検査でよい。負荷量は、ろ床の再生回数(1~2 週間に 1 回程度)に合わせて行う。曝気の必要はない。検討され、有効であれば活用されとよい。

<生物膜法の説明>
以下のページを参照されたい。
1) 生物ろ過(1)-観賞魚水槽、2) 生物ろ過(2)-有機性排水、3) 生物膜法による水処理、4) 難分解工業排水の処理プロセスの開発実験例 
(2)多数の検証実験

(a) 阻害物質などの影響を調べる場合には、濃度効果の実験数に応じて、台数を設置することとなる。
阻害物質の影響(慢性)の結果取得まで、少なくとも、数ヶ月が必要である。急性影響は 1~数週間程度となる。設置場所、経費節減(装置・管理費)、台数多数の場合には、下記に示す外付けフィルター付き観賞魚用小型水槽を用いてもよい。この場合、負荷量(濃度)は小さくする。数日~1 週間に 1 回程度のフィルター再生。フィルターを 2 台設置するとよい。
(b) この実験で、確認したのち、このバケツ等による活性汚泥の回分実験を行う。このとき、「種」は、生物膜法(生物ろ過法)のろ床の汚泥を使用する。
(c) 実験装置は、熱帯魚用小型水槽を活用するとよい。この場合には、適宜、ろ過装置のフィルターを洗浄再生する。水槽へ底砂などを敷かない場合には、ろ過装置を 2 台とする。フィルターを洗浄すると、バクテリアが存在しなくなるので。
<観賞魚用小型水槽の事例>
G 社製小型熱帯魚飼育セット

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参考-主要な測定機器

MLSS/MLVSS測定

「JIS K 0102-14 懸濁物質及び蒸発残留物」に沿って測定する。
ろ過器・乾燥機(MLSS:105~10℃)・電気炉(MLVSS:600℃)が必要である。

溶存酸素(DO)計

電気化学式および光学式がある。価格も様々である。(a)出力端子を有し経時変化を記録計でモニターできるものか、または、(b)一定時間間隔で測定値を記憶し、CPUなどへデータ転送できるものがあれば、省力化が可能となる。
(a)型はエアポンプに接続(リレー回路が必要)し、DOを所定値に維持できる。

pH計

ガラス電極と参照電極の一体型を用いる。DO計と同様に、出力端子があれば、ペリスタポンプへ接続(リレー回路が必要)しアルカリ/酸溶液を注入して、pHを所定値に維持できる。

顕微鏡

光学顕微鏡の中で生物顕微鏡(透過観察型顕微鏡)といわれるもの。安価な小学生科学実験用から、医学・生物の分野で用いられる高性能・高価なものまで、様々である。
写真撮影やモニター付きがあれば、なおよい。写真撮影は、第三者の所見を求めることができる。モニターがあれば、グループで観察・ディスカッションができる。


掲載日:2019年11月30日
更新日:2020年02日16日

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