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活性汚泥の性状悪化と対策-屋内実験

本サイトに記載の活性汚泥法(回分・連続を問わず)の屋内実験に関する照会・質問は多数ある。本ページでは、これらの照会・質問事項への回答を行った中で、実験上留意すべき共通事項について、解説する。
なお、本章に記載する内容は、下記ページを既読していることを前提としている。

1) 活性汚泥法-回分法、2) 活性汚泥法-連続法、3) 活性汚泥法-基本設計・操作因子

1.初心者・実験への助言

(1)計算式に囚われないこと

本サイトでは、活性汚泥法の計画・装置設計・維持管理に係る計算式を挙げているが、それを余り気にしないで実験されたい。
具体的な排水量・汚濁物質の濃度から浄化装置を設計・施工・維持管理をする場合の参考として記載している。実際の条件は個々により異なるので、参考値として扱っていただきたい

 
(2)失敗は知識・技術の向上であること

生物を扱う実験は、物理や化学の実験と異なり、長期間の検証が必要となる。この実験期間中に様々な現象に遭遇し、その対処に知識と経験が必要となる。この課程で、多数の挫折により諦める初心者も少なくない。しかし、この課程を乗り越えることが大切で、どの分野においても、失敗経験は知識・技術の蓄積となることを認識されたい。

2.活性汚泥の特徴

(1)開放系・混合系であること

活性汚泥法は、開放系であるため、流入汚水・大気中に存在する様々な微生物やその胞子・種・卵などが混入し、多様な生物が共存・競争して生息する生態系である。屋内実験であっても、環境・条件によって、これらの生態系が多様に変化する。汚泥の状況が好調であったり、不調となったりする。活性汚泥が正常に機能するためには、適切な実験装置(高額な装置を意味していない)と維持管理が必要となる。
同じ生物実験でも、厳密に管理され至適条件で行われる純粋培養系とは大きく異なる。微生物の取扱いに習熟した経験者でも、活性汚泥を適正に扱えることとは限らない。

 
(2)物理・化学の実験と異なること

化学反応などでは、再現性が良好であれば、短期間の実験で結果を確認できる。生物反応の場合には、生息環境の変化に適用できる微生物が増殖するまでに、一般的に数ヶ月を要する。また、自然界にない人工化学物質に順応できる微生物が増殖するには、数年間の連続実験が必要となることも少なくない。
細菌類は、突然変異やウイルス等を介して、新たな環境に対応できる遺伝子を導入し、世代交代を繰り返して、その環境に順応する。これを「馴致」または「育種」という。これを早めるために、現場で稼働している活性汚泥、排水溝の底泥中の細菌類、あるいはその配管内壁に付着した生物膜を、「種」として育種することも多々ある。

3.活性汚泥の維持管理の留意点

(1)回分法のサイクル回数/日

本サイトに示したバケツによる回分実験(活性汚泥法-回分法)の件については、1 日 1 回のサイクル(静置・排出・投与、以後、翌日の静置まで連続曝気)とする。休日のときは、休日分の負荷(濃度を休日数の倍率で上げる、容量が決まっているので)で運転し、休日明けに、次回の操作を行う。
ただし、自動制御による回分実験には、目的が異なるので、計画に沿ってサイクル回数/日で実施することとなる。次に示す理由から、回分実験を数サイクル/日で行う必要はない。なお、家庭用浄化槽の汚泥引抜は、1 回/年となるように設計されている。
<実処理設備のサイクル>
現場の回分法設備では、1日に数回のサイクルで運転するが、これは、後段の余剰汚泥の処理装置の能力による。一般の下水処理場では、混合汚泥(初沈汚泥、余剰汚泥)を濃縮、(嫌気消化)、脱水・乾燥、焼却(有効利用)します。サイクル数/日を増やすのは、後段設備の安定稼働のためで、1 日 1 サイクルでは貯留・調整設備が大きくなり、不経済となるからである。

 
(2)余剰汚泥の引抜

毎日引き抜く場合には、静置前に(有効容量10 Lとすると)を曝気・攪拌して、混合液を1L余剰汚泥として引き抜く。この場合の汚泥令(SRT)は 10 日となる。0.5 Lであれば、20 日となる。n 日の間隔の抜取であれば、SRT = 10/nX として nX [L]の余剰汚泥を引き抜く。引抜間隔は毎日でも数日でもOKである。
SRT は、MLSS の状態を見て、10~30 日の範囲で適宜設定する。MLSS は2,000~4,000mg/Lの範囲であれば、十分である。

 
(3)汚泥の性状測定

(a) 沈降特性
毎日あるいは数日おきに、SV30 の測定を行い、汚泥の沈降性を観察する。さらに、SVI を求める。沈降特性および SV30、SVI が適正な状況でない場合(SVI > 200)には、何か障害が生じている。
熟練してくると、SV30 の値だけで、下記の MLSS 濃度が推定できるようになる。測定試料は 1.0 Lを要するので、実験混合液の容積が少ない場合(5 L以下)には、静置前に測定して、測定後、バケツに試料を戻す。試料採取中、バケツの曝気を行って均一なものを採取する。
(b) 汚泥濃度 MLSS の測定
定期的( 1 週間に 1 回程度でよい)に汚泥濃度MLSSを測定する。減圧ろ過器・乾燥器が必要である。特に必要としない場合には、MLVSS の測定は不要である。目的の MLSS 値になるように、引抜量を増減して SRT を調整する。

 
(4)曝気速度

静置直前(1回サイクル/日の場合)に DO を測定し、数mLであればOKである。時々、静置前の数時間前後の DO を測定し、DOの上昇の有無を確認する。静置直前に、DO = 0 mg/Lであれば、曝気不足である。逆に、静置数時間前に、DO が上昇していれば、過曝気となり、汚泥濃度が減少する。人間と同じで、食事と運動のバランスにより、太ったり・痩せたりする。

DO_vs_time
図1 曝気速度一定条件での回分実験における時間経過と組成変化の事例
曝気槽に BOD が高濃度のときは、BOD分解は酸素の供給速度が律速となり、DO 値は “0” である。BOD が消費され低濃度になると、NH4+の酸化が始まる。この条件では、(酸素供給速度) > (NH4+ 酸化速度) となり、少しずつ、DO が増加する。上記に記載の「DOの上昇」とは、この現象をいう。

(5)pH の管理

本サイトに記載の人工汚水(スキムミルク + 塩類)は、pH の調整機能があるので、pH 制御装置は不要である。しかし、pH が中性付近にあるか、時々、チェックする。もし、pH < 6 になるようであれば、NaHCO3(炭酸水素ナトリム、重曹)の割合を増量する。

 
(6)温度管理

一般に哺乳動物は、体温調節ができる。その他の動物・植物は冬眠・夏眠したりして、それぞれの環境に対応した生活を送っている。
細菌類や微生物は、環境温度によって「種」が変化する。また、1 日の温度差が 5°C を越えると生育が不安定となる。下水処理などでは、水量も多く、下水管・処理池は、地面下で保温条件もよく、1 日の温度差を少なく維持できている。
ところが、室内実験では、特に冬期において、昼間(暖房-on)と夜間(暖房-off)の温度差が 20°C 以上になることも少なくない。この温度変化が、室内実験での活性汚泥を不安定にする主な原因である。屋外でも、冬期には温度差が大きい。
冬期は固定温度ヒーター(25~30°C)をバケツ(曝気槽)内へ設置して、温度を一定にすることで、安定稼働が達成されると考える。このとき注意すべきは、水の蒸発、空だきである[ヒーターに自動電源切断(温度ヒューズ)の有無をメーカーに確認、火災防止のため]。また、実験室を昼夜連続稼働していない場合には、下図に示す安価な恒温槽などに曝気槽を設置して、温度を一定してもよい。

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図2 観賞魚用水槽セットを活用した恒温水槽(サーモバス)の事例

5.活性汚泥の性状・機能の悪化と対策

回分・連続に関わらず、汚泥の性状悪化には、大きく分けて、以下の 4 項目が挙げられる。内容を理解して、性状悪化に対しては実験方法など見直しをする。

 
(1)泥水などに含まれるコロイド状無機微粒子の不足

下水などには、洗濯水、床洗浄水、排水溝、雨水などが含まれ異物・砂・泥などの成分が含まれる。異物や砂などは、スクリーン・沈砂池・初沈池で除去されるが、無機微粒子・髪・繊維ごみ(以下、微粒子等と省略)などは曝気槽へ流入する。活性汚泥と微粒子等が堅牢な混合フロックを形成し、さらにフロック比重が増加するので、沈降性のよい良質な活性汚泥となる。
シリンダーで沈降状況を観察すると、上澄み液が透明な界面沈降で沈降も速く、5~10 分程度で圧縮沈降へ移行する。
(参考ページ)沈殿池の基礎
天候・季節によって変動するが、下水汚泥には、20~30% の無機物質(強熱残量)が含まれている。下水汚泥の焼却灰は厄介者であるが、下水処理においては、活性汚泥の良好な沈降分離に役立っている。
室内実験などで、模擬汚水を投与する場合には、上記の微粒子等が含まれていないので、下水汚泥を「種」として実験すると、7~20 日程度で上記の微粒子等が系外に排出され、少しずつ汚泥フロックが軽くなり自由沈降の状態となって、上澄み液も懸濁し、沈降速度も遅くなる。
下水などの実汚水でなく、模擬汚水、あるいは、無機微粒子等を含まない汚水を用いる場合には、活性汚泥中の微粒子等を常に 20% 程度に維持する必要がある。
泥・土(ふるいで砂・小石などを除いた微粒子)・粘土などを曝気槽へ投入すると、汚泥フロックが良質となる。安価な化粧用カオリンなどを利用するとよい。
7~10 日程度の間隔で、曝気槽内の汚泥・総重量の 20% 程度に相当するカオリンを投入する。例えば、MLSS 3,000mg/L、混合液総量 10L であれば、カオリン 6g 程度(適当でよい)となる。
(Web参考)カオリン

VSS_SS
図3 下水処理場(U市)の返送汚泥を植種した室内の活性汚泥実験における VSS/SS の経日変化
模擬汚水(スキムミルク+栄養塩類+pH調整剤):300mg-BOD/L、HRT = 24h、MLSS = 1,800mg、SV30時のMLSS = 7,200mg/L(実験開始時)、SRT = 20d
VSS/SSが20日以後、90%で一定となっている。20日以後の強熱残留物は 10% となっているが、模擬下水中の溶解性無機塩類で、コロイド状微粒子に由来する成分ではない。
 
(2)油分を含む排水

油分を含む汚水を処理すると活性汚泥の沈降性が悪くなる。多数ある料理店街など高濃度油分を含む下水や油分濃度の高い食品工場排水の処理では、凝集助剤(粘土系、アルミ・鉄系など)・高分子凝集剤を投入し、処理コストが高くなる。排出源におけるオイルトラップなど設置とその適正な維持管理が必須となる。
(参考ページ)凝集分離

 
(3)糸状菌の発生

季節の変わり目、高温・低温時期、活性汚泥の弱体化(過曝気・酸素不足、負荷の過不足、栄養塩類の過不足、阻害物質や油分の混入など)など、様々な原因により発生する。
糸状菌の発生原因を解明し、根気よく改善に努めることも経験となる。一方で、実験室では最初からやり直したほうが効果的な場合もある。

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写真 糸状最近による活性汚泥のバルキング
沈殿槽の外壁が汚れているので、上澄液の様子が見えにくいが、極めて透明・清浄である。しかし、汚泥が膨化し沈殿分離が極めて難しくなる。負荷(特に流量)を軽減して、回復するまでに長期間の対応が必要となる。曝気槽温度を室温で運転すると、秋から冬への季節変化時期に発生しやすい。

(4)過曝気(痩せる)・酸素不足(肥満)による汚泥の活性低下とフロックの解体

(a) 連続曝気
新たに模擬汚水を投与( 1 日 1 回)する時刻前の 1~2 時間前後に、DO の上昇が起こる曝気速度とする。曝気の過不足には注意する。
また、活性汚泥の弱体化、または、負荷(模擬下水成分の濃度)の過不足は、酸素消費量の変化(次サイクルの 1 時間前の DO 変化の有無)によって判断できる。曝気量の調節のみでなく、上記の DO 状況によって、負荷を増加/減少することも大切である。
<フロックの弱体化>
バクテリアの細胞表面は、-COOH ⇄ COO 基によって、pH > 4 ではマイナス電荷を帯びている。これによってバクテリアは、水中において分散状態で (下記ページを参照)、生存している。ところが、活性汚泥のバクテリア(凝集性)は細胞外に粘質物質を分泌して、互い付着・凝集してフロックを形成し、沈降性を有しています。流れのある地表水・海水中に生息する付着性バクテリアも同様である。
自然界では、沈降すると酸素や栄養分を摂取できなくなるので、粘質物質を分泌しない分散性バクテリアが優占種となる。
一方、活性汚泥法では曝気・機械攪拌により、フロックが水中で分散状態となるので、凝集性バクテリアの生存が可能となる。分散性バクテリアは沈降性がないので、最終沈殿池において放流水とともに系外へ排出される。凝集性バクテリアは沈殿分離して返送され、曝気槽に保持される。このように活性汚泥法とは、粘質物質を分泌するバクテリアを選択的に保持培養するシステムで、一般の分散性バクテリアは生存できない。
フロックの弱体化(活性汚泥の解体)とは、不適切な環境におかれた凝集性バクテリアがその活性度の低下によって粘質物の細胞外分泌量が減少し、活性汚泥バクテリアの相互付着・凝集力が低下して分散状態となる現象をいう。
(参考ページ)コロイドと界面現象
(b) DO 計を用いた曝気量制御の場合
2 台のエアポンプを使用し、1 台はやや不足の曝気速度、1 台は On-Off 制御する。DO 計は、定期的に校正し、劣化した電極(消耗品である)は更新する。また、酸化還元剤によって、異常な反応をするので、注意する。設定値は 数mg-DO/L とし、正確に設定しなくてよい。DOを 0 mg 近くの値に設定すると、DO 計の校正不良のとき、酸素不足となることがある。
(参考ページ)現場での簡易測定- DO 計

6.生物膜法

(1)維持管理の簡素化

生物膜法(生物ろ過法、浸漬ろ床法)法は、負荷変動・温度変化に対して、比較的に安定な稼働をする。実験目的によっては、採用すると便利である。例えば、難分解性汚水の処理や阻害物質の有無など。
下記 2)に示す装置は、1 日 1 回、または数日1回の排水・投入、定期的な水質検査でよい。負荷量は、ろ床の再生回数(1~2 週間に 1 回程度)に合わせて行う。曝気の必要はない。検討され、有効であれば活用されとよい。

<生物膜法の説明>
以下のページを参照されたい。
1) 生物ろ過(1)-観賞魚水槽、2) 生物ろ過(2)-有機性排水、3) 生物膜法による水処理、4) 難分解工業排水の処理プロセスの開発実験例
 
(2)多数の検証実験

(a) 阻害物質などの影響を調べる場合には、濃度効果の実験数に応じて、台数を設置することとなる。
阻害物質の影響(慢性)の結果取得まで、少なくとも、数ヶ月が必要である。急性影響は 1~数週間程度となる。設置場所、経費節減(装置・管理費)、台数多数の場合には、下記に示す外付けフィルター付き観賞魚用小型水槽を用いてもよい。この場合、負荷量(濃度)は小さくする。数日~1 週間に 1 回程度のフィルター再生。フィルターを 2 台設置するとよい。
(b) この実験で、確認したのち、このバケツ等による活性汚泥の回分実験を行う。このとき、「種」は、生物膜法(生物ろ過法)のろ床の汚泥を使用する。
(c) 実験装置は、熱帯魚用小型水槽を活用するとよい。この場合には、適宜、ろ過装置のフィルターを洗浄再生する。水槽へ底砂などを敷かない場合には、ろ過装置を 2 台とする。フィルターを洗浄すると、バクテリアが存在しなくなるので。
<観賞魚用小型水槽の事例>
G 社製小型熱帯魚飼育セット
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