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有機性排水処理

化学品製造工場や電子部品製造工場などの排水には、難分解性の有機化合物が含まれていることが多い。これらの排水の主処理工程に物理化学的な方法を採用すると経費が高くなる。これらの有機化合物が微生物で分解できれば、処理コストが安くなる。生物分解性は排水のBOD、COD、TOCなどを比較することで、ある程度推測できる。また、BODは、測定に用いる植種によって測定値が大きく異なる。
ここで紹介する実験方法及び装置は、鑑賞魚水槽の生物ろ過装置を応用したもので、次のような特徴がある。
①排水中の汚濁物質が生物で分解できるかどうか。可能であれば、その処理工程の設計上の知見が得られる。
②スケールアップした生物処理工程に用いる微生物を育種できる。
③当該する工場排水のBOD測定の植種用微生物を培養・保持ができる。
④この実験装置の維持管理は極めて容易である。

1.実験装置

実験装置は、観賞魚水槽用(水量60L)の生物ろ過器(幅61×奥行13×高さ9cm、磯砂1.8L充填)×2台と循環水貯槽6L(幅60×奥行30×深さ1.4cm)を有するろ過器架台(幅60×奥行30×高さ20cm)を組み合わせたものである。
循環ポンプは水中型(マグネットローター型インペラー方式、AC100V_50/60V_4/5W)である。ろ過器架台は塩化ビニール板を切断・溶接して作ったものである。総経費は1万円程度である。
この実験装置内の総水量は約8Lである。


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図1 有機性工業排水の生物分解性試験用生物ろ過装置の概要

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写真1 生物ろ過装置の実験状況(上部斜め)
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写真2 生物ろ過装置の実験状況(側面斜め)

2.運転管理

本処理装置の能力は1~2gBOD/日である。下水(全国平均150mg/L)は10L/日程度の処理できる。工場排水は1~1.5gBOD/日程度になるように、例えば、BOD400mg/Lの排水では3L程度/日の排水が処理できる。
(1)排水の投入
排水の投入方法には、①定量ポンプを用いた連続投入法と②1日1回全量を投入するバッチ法がある。
バッチ法の場合には、排水を投入する直前に投入量と同量の循環液を抜き取り、新たな排水を投入する。
(2)空気曝気は不要
図1に見られるように、循環水と空気との接触面積が大きく酸素供給は十分で、特に曝気する必要はない。
(3)栄養塩及び無機塩類の補給
製造工程においては、純粋など塩類を含まない排水も見受けられる。このような排水を生物処理する場合には、窒素・リン及び他の無機塩類を添加する。窒素やリンを含む有機化合物の場合には、窒素・リンの補充は不要である。また、河川・地下水・水道水・海水など天然水との混合排水の処理では、無機塩類の補充は不要である。
補給する塩類の種類を分量を表1に示す。
(4)pHと水温の管理
排水処理によって、pHが大きく変化する場合にはpH制御を行う。冬期、水温が15℃を下回るようであれば、温度制御を行う。バッチ法で温度制御を行うと、蒸発により水量が減少するので、所定の水位になるよう水道水を補給し、循環液を抜き取る。
(5)処理水の水質測定
処理水の水質分析には、連続法では循環液を採取し、バッチ法では抜き取った循環液を、それぞれ測定に用いる。

(6)礫砂の洗浄
礫砂層の微生物が過大に増殖すると、ろ過層の通水圧力が増加し、循環水がろ槽の仕切り板を越流するようになったら、ろ槽を取り出し、礫砂をバケツに移して、水道水を加えて微生物フロックを撹拌剥離し、懸濁した剥離液を傾斜除去する。これを数回繰り返して、礫砂をろ槽に移して、生物ろ過器に取り付ける。ろ過器は2台設置してあるが、2台のろ過器の磯砂を同時に洗浄しない。同時に洗浄すると、生物ろ過器に微生物が存在しなくなり、浄化機能が失われる。

3.測定項目

水質の測定項目は、一般的にはpH、BOD、COD、TOC、SSを測定し、特定物質の除去が目的であれば、その物質を所定の方法によって測定する。アンモニアや窒素を含む有機化合物であれば、全窒素に加えて形態別窒素の測定を行うと、有機化合物の分解過程や分解能力を解析できる。また、硫黄を含む有機化合物であれば、硫酸イオンの分析も参考となる。

4.微生物の植種と育成

磯砂を充填した生物ろ過器には、微生物が存在しないので、浄化能力がない。実験を開始する前に、鑑賞魚水槽で述べた方法により種汚泥を植種する。また、工場排水の場合には、当該排水の排出溝内の低泥等を利用するとよい。
工場排水中の有機物を分解できる微生物が十分に増殖して、生物ろ過器が適正に稼働するまでには、相当な期間を必要とすることが多々ある。例えば、半年から数年を要することもある。強力な化学物理法でも分解できない有機化合物でも、自然界では分解できる微生物が存在することが多々認められる。短期間での実験で諦めることなく、長期間にわたる実験が成功につながることになる。

5.その他

(1)本実験装置は、初心者でも簡単に維持管理ができる。活性汚泥法を用いた長期間にわたる実験では、相当な知識と経験が必要である。また、装置配管の不具合や汚泥の状況により、1日にして全ての活性汚泥が漏洩や流出して、最初から実験をやり直すことも少なくない。
(2)実験に必要な試料排水も少量であるので、定期的な運送等により当該工場から離れた場所(水質測定の人材や計測機器が整っている)でも実験が可能である。生活排水とは異なり、室温での保存中に試料排水の性状変化も少ない。
具体的な工業排水の適用事例は、他のページで紹介する。
(3)工場排水の成分は生活排水と異なり、BOD測定の植種の採取が困難な場合もある。この生物ろ過器のろ層に駒込ピペットを差し込んで、微生物フロックを採取して利用することができる。

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掲載日:2017/05/07
更新日:2017/05/17

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