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窒素除去

1.窒素の循環

(1)窒素の取込

タンパク質や核酸などの有機窒素化合物に含まれる窒素は植物が土壌中(水域の低質を含む)から吸収した無機窒素化合物に由来する。植物(生産者)は、根を通して土壌中の硝酸イオン(NO3)やアンモニウムイオン(NH4+)を吸収し、それを基にタンパク質や核酸などをつくる。生物が外界から無機窒素化合物を取り込み、自身のからだに必要な有機化合物をつくり変えるはたらきを窒素同化という。

(2)生物群集内での移動

炭素の循環と同様にに、植物が動物(消費者)に食べられると、窒素化合物は動物に移る。また、動植物の排泄物・枯死体の窒素化合物は、土壌中の菌類と細菌(分解者)に移り、アンモニウムイオンへと分解され、さらに硝化菌(亜硝酸菌硝酸菌)によって硝酸イオンに変えられる。その後、再び植物に利用される。

(3)空中窒素の固定

大気中には約80%もの窒素が含まれているが、窒素分子(N2)は安定な物質なので、多くの生物は直接これを利用できない。土壌菌中のアゾトノバクターやクロストリジム、マメ科植物の根に共生する根粒菌、ある種のシアノバクテリアなどは、空気中の窒素をアンモニアに変換する。これを窒素固定という。

(4)脱窒

土壌中には、亜硝酸・硝酸イオンを窒素分子に変えて大気中に放出する脱窒素細菌(脱窒菌)が存在し、この反応を脱窒という。

(5)工業的固定

大気中の窒素と水素を化合し、アンモニアを工業的に生産(工業固定)し、肥料・合成繊維などの原料としている。特に、化学肥料を使用して食料・飼料を生産しているため、生物界を循環する窒素の総量が大幅に増加している。

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図1 窒素の循環

2.窒素の化学と除去

(1)アンモニアの工業的製法

窒素と水素を原料として、400~500℃、200~350気圧において四酸化鉄Fe3O4を主成分とする触媒を用いて合成する(ハーバー・ボッシュ法)。このアンモニアは主に肥料・化学繊維(ナイロン)の原料や排煙脱硝などに用いられる。
N2 + 3H2 → NH3

(2)工業的な脱窒素

気体

石炭利用の火力発電所などから排出される窒素酸化物(NOx)や内燃機関での酸素と窒素の結合による生成するNOxの除去には、アンモニア・尿素・シアン化水素などの窒素化合物や炭化水素・水素などの化合物を用いてNOxを窒素ガスへ変換する方法が用いられる。高温・高圧下で反応が進行するが、触媒を用いて反応条件を緩和する。
火力発電所に広く用いられている排煙脱硝法では、排ガス中にアンモニアを注入し、二酸化チタンを主成分としバナジウム、タングステンなどが添加された触媒上でNOxを選択的に反応させて窒素と水に変換する。
4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2O

液体

硝酸・亜硝酸イオンとアンモニウムイオンを等モル含む水溶液を超臨界亜臨界の高温・高圧の状態にすると不均化反応により分子状窒素と水分子が生成する。遷移金属(特に、筆者らの実験ではモリブデン・ロジウムの効果が高い)を触媒として用いると、300℃以下の温度でも95%以上の脱硝効果が得られる。この方法は、装置が複雑で高価であるので、極めて高濃度の窒素廃液処理(数千~数万mgN/L)に限定される。

3.微生物によるアンモニア酸化(硝化)

アンモニアの硝酸イオンへの微生物による酸化は2段階で行われる。酸素存在下で、ニトロソモナス属・ニトロソコッカス属など(亜硝酸菌)によって亜硝酸イオンに変換される。亜硝酸イオンは、ニトロソバクター属など(硝酸菌)によって硝酸イオンに変換される。これらの反応(上記双方の細菌群を硝化菌)によって、酸素ががモル比(O/N)で3.5倍量、重量比で4.57倍量消費される。また、水素イオンがモル比(H/N)で2倍量生成するので、水酸化ナトリウム(NaOH)換算で5.72gのアルカリが必要となる。それぞれの硝酸菌の最大増殖速度のpH(亜硝酸菌、pH6.5付近;硝酸菌、pH8.5付近)が異なりpH設定値によって律速段階が異なるので、これらの反応の制御は可能であるが、簡単ではない。
NH4 + 3/2O2 → NO2 + 2H+ + H2O
NO2 + 1/2O2 → NO3

水温

硝化細菌は10~35℃で生育可能であるが、適温は20~30℃で、15℃では25℃の1/2に反応速度が低下する。窒素除去型浄化槽では、水温13℃以上で適正に硝化・脱窒素反応が進行するように、装置の構造基準が定められている。

pH

硝化菌の最適pHは6.5~8.5である。pHが低下すると硝化反応が進行しないので、アルカリ度が不足する汚水処理では、アルカリ添加によるpH制御が必要となる。

有機物濃度

有機物がBOD換算でおよそ30mg/L以上存在すると、硝化反応は進行しないので、曝気時間を十分とって有機物を低濃度に維持することが必要である。

DO

数mg/Lに設定する。特にその数値に拘る必要はない。1mg/L以下では、DO計の検定が不適切である場合やDO測定への妨害物質(酸素センサーの隔膜を通過する分子状電子供与体)が共存する場合には、DOが本当に酸素供給量が不足状態であるかどうか判定ができない。

汚泥令

一般的な有機物酸化菌の増殖速度は3.0~13.2/日に対して、硝化菌は0.34~13.2/日と一桁低い値である。汚泥令(SRT、汚泥滞留日数)は6~10日が最適といわれるが、7日以上確保する。
なお、生物学的窒素除去法では、システムを開始して、正常に稼働するまでに数週間が必要となる。まず、有機物酸化菌が増殖し有機性窒素が分解されてアンモニアが生成し、次にアンモニアを亜硝酸イオン、硝酸イオンへそれぞれ酸化する細菌が逐次増殖して、それぞれの機能が発揮されるからである。参考までに、魚飼育水槽を浸漬ろ床法で浄化するシステム(閉鎖系)でのアンモニア・亜硝酸・硝酸性窒素の濃度変化を別ページに示しているので、参考にされたい。

4.微生物による脱窒素(脱窒)

(1)脱窒反応

脱窒菌

脱窒菌は、土壌中や水域の底泥表層中に広く存在する。有機物(水素源)を必要とする従属栄養性の通性嫌気性菌であり、酸素が存在する場合にはこれを利用して呼吸するが、無酸素状態では硝酸・亜硝酸イオンなどの結合酸素を呼吸反応に利用する。脱窒反応は硝酸呼吸とも呼ばれる。
NO2 + 3H(有機物)→ 1/2N2 + H2O + OH
NO2 + 5H(有機物)→ 1/2N2 + 2H2O + OH

有機物量

脱窒反応には、BOD必要量は、亜硝酸イオンで窒素に対して1.7倍量、硝酸イオンで2.9倍量が消費される。メタノール必要量は、亜硝酸イオンで窒素に対して1.1倍量、硝酸イオンで1.9倍量が消費される。メタノール添加では、汚水中窒素に対して、余裕を見て1.5倍量、2.5倍量をそれぞれ添加するとよい。なお、メタノール添加・脱窒工程の後、放流する場合には、沈殿槽の前に残存するメタノールを除去するための再曝気槽の設置が必要となる。

(2)脱窒速度の影響因子

水温

脱窒菌の活性に与える水温の影響は、通常の有機物分解菌と同等であり、一般的な脱窒速度は、20℃において、水素供与体として有機物を使用した場合0.1kgN/kgVSS/日程度、メタノールを使用した場合0.2kgN/kgVSS/日程度の値を適用する。

pH

脱窒反応の最適pHは7~8であり、中性であればよい。
脱窒反応ではOH-が生成するので、pHが上昇する。硝酸・亜硝酸イオン濃度が高い汚水を処理する場合には、塩酸・硫酸等によりpH調整が必要となる。

汚泥発生量

硝化工程では流入窒素の約5%が菌体となる。脱窒工程では、メタノールの添加量を2.5倍量とすると、その約20%が菌体となる。したがって、汚水中の窒素の50%の汚泥が発生することとなる。

リンの必要量

菌体中のリン含有量は1~2%であるので、窒素量に対し0.5~1%のリンが必要となる。生活系排水ではリンの添加は不要であるが、工場排水ではリンが存在しないことが多く、適宜、リンを添加することが必要となる。

5.生物学的硝化脱窒プロセス

生物学的脱窒においては、硝化反応と脱窒反応を合理的に行わせ、先に述べた硝化菌・脱窒菌の生理特性を考慮した上で処理プロセスを構成する。
硝化菌・脱窒菌を汚水処理に適用する基本的な要素は、①微生物群の保持方法、②好気槽・無酸素槽などの槽配列とその流動形態である。微生物の保持形態(培養法)としては浮遊型(活性汚泥法)か付着型(生物膜法)か、反応槽の形状・規模、汚水滞留時間・流動形式などである。一般的に小・中型処理装置には生物膜法、大型処理装置では活性汚泥法がそれぞれ用いられる。各反応槽の配置・流動形式で分類すると、間欠曝気型連続曝気型に区分できる。
生物型窒素除去法は有機物酸化・硝化・脱窒を行わせるための反応槽と沈殿池の組合せによっていくつかの方式に分けられる。硝化槽ではアルカリ度が減少し、脱窒槽では増加するとともに有機物が必要である。曝気槽で有機物の酸化分解と硝化を同時に進め、その後で脱窒反応を行う方法(図2(A)図3(D))では有機物やアルカリ度の活用からみて効果的ではない。無酸素槽を前置して、硝化液を循環する方式が多用される(図2(B))。この方式には、脱窒工程を硝化工程の前後に配置させる方式または脱窒槽・硝化槽の順に組合せ硝化液を循環させる方式がある。水素源として流入水中の有機物を、また硝化のためのアルカリ分を脱窒液に求める方式が多い。生活排水などへは、汚水中の有機成分を有効に利用することができ、しかも硝化脱窒時のpH変動を低く抑えることができる硝化液循環型の処理プロセス(図2(B))が広く用いられている。
以上述べた生物学的窒素除去法は有機物酸化・硝化・脱窒をおこなわせるための反応槽と沈殿池の組合せによって図2及び図3に示すように分けられ

(1)一相汚泥方式

単一の活性汚泥中に有機物酸化菌・硝化菌・脱窒菌を共存培養する方式で複数の反応槽(活性汚泥でも生物膜でもより)と1つの沈殿池を最終的に設ける。プロセスの構成は簡単になるが、それぞれの細菌群の間で拮抗作用が起こる可能性がある。1槽を曝気槽とし、他の1槽を無酸素状態(微生物と汚水を接触させる攪拌が必要)で汚泥を保持して各微生物群を活用する方式である。最も所有面積が少なくてすむが、汚泥管理を十分にする必要がある。
図2(A)は、第1槽で有機物・アンモニアを同時に参加して、残存する亜硝酸・硝酸イオンを攪拌(無酸素)槽で水素供与体(有機物)を添加して窒素ガスに変換する方式である。なお、水素供与体を添加する方式では、脱窒素(無酸素)槽の後段に再曝気槽を設置するが、図中では省略してある。これは脱窒槽で供給された水素供与体(メタノールなど)の残存分の除去を目的とする。以下、同様である。
同(B)は、第2槽(曝気槽)の亜硝酸・硝酸イオン含む硝化液を第1槽(無酸素槽)へ循環して、流入水の有機物を水素源として脱窒反応を行う。生活排水系では、循環量は流入水の3~4倍が最適といわれている。この方式では、汚水中の有機成分を有効に利用することができ、しかも硝化脱窒時のpH変動を低く抑えることができる。流入汚水中の有機物(BOD)/Nの割合がおよそ3倍以上であれば、水素供与体の添加は不要である。
同(C)(間欠ばっ気法)は、上記(B)(連続曝気法)の変法で、曝気(有機物酸化・硝化)および攪拌(無酸素)を一定間隔で繰り返して、硝化・脱窒反応を交互に行うシステムである。攪拌には機械攪拌ポンプ攪拌ガス攪拌などがあるが、ガス攪拌の場合には曝気装置の兼用が可能である。

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図2 一相汚泥式硝化脱窒プロセス

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写真 一相汚泥・硝化液循環型窒素除去法の室内実験装置
装置(撹拌槽-3L、曝気槽-10L、沈殿槽-3L)、医・農薬製造排水-10L/日

(2)二相汚泥方式

図3(D)のシステムは、酸化と硝化を同一の反応相で行い、脱窒を別の反応槽で行う方式である。反応槽と沈殿槽はそれぞれ2つ必要となる。二相汚泥システムでは有機物酸化と硝化を第1槽で完了させ、脱窒を第2槽で実施する。曝気槽でのアルカリ添加と水素供与体としてメタノールなどの添加が必要となる。

(3)三相汚泥方式

有機物の酸化・硝化・脱窒をすべて別々の微生物群汚泥を保持する反応槽を使って行う方式である。三相汚泥システムは、第1槽でBOD成分を代謝分解し、第2槽でアンモニウムイオンを硝化し、第3槽で無酸素状態で有機物を添加して亜硝酸・硝酸イオンを窒素ガスに変換する方式である。第2槽では硝化反応によりアルカリ度が消費され、pHが低下するため、そのアルカリ剤を添加してpH調整を行う。第3槽では所定量の有機物を添加する。本システムでは各微生物群を個別に培養するので、それぞれの微生物群の至適条件で維持管理できるので安定した処理が期待できる。しかし、汚泥の培養数に事例して沈殿槽が多くなる上にアルカリや有機物の添加が必要となり、建設費や維持管理費が高くなる。
汚水中に硝化菌あるいは脱窒菌に阻害効果のある物質が含まれている場合には、BOD酸化を主体とする活性汚泥プロセスを独立さて阻害物質を分解し、後段で二相汚泥または三相汚泥方式で窒素除去を行う。

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図3 二相汚泥式(D)・三相汚泥式(E)硝化脱窒プロセス


DOの意味とその制御

好気性微生物を利用する生物反応槽においては、DOは極めて重要な操作因子である。ここでは、DOの意味とその制御について、詳しく説明する。

反応槽でのDOの意味

話の前に収入と預金量の話をする。収入が多いから、預金量が多いとは限らない。振込量と引出量の差が預金量となる。
ここで好気性生物反応槽では、振込量が酸素供給量、引出量が酸素消費量、預金量がDO(正確には、DO[mg/L=g/m3]×反応槽容積V[m3])ということになる。
酸素供給量酸素消費量の場合にはDOは平衡状態まで上昇するし、酸素供給量酸素消費量の場合にはDO = 0となる。
酸素消費量は、生物量(正確には、反応槽内生物による有機物の最大分解速度)有機物量(正確には、有機物負荷)の場合には有機物流入量が律速になり、生物量有機物量の場合には生物の呼吸量が律速となる。
なお、酸素供給が曝気により行われる場合には、その供給量は気液界面での酸素の移動速度(溶解速度)によるが、これは気液界面の総面積(曝気の送風量と気泡径などに依存)、酸素分圧、飽和DOと溶存DOとの差など多くの因子の関することとなるので、別のページで記載することとし、ここでは触れないこととする。

DOの制御

呼吸器(肺や鰓など)・血液などの酸素取込・運搬系および呼吸を行う体細胞から構成される水生動物と水浄化の微生物の主役である単細胞菌(懸濁培養系では微生物フロック、または担体付着系では生物膜)においては、最適な水中DO値が全く異なるので注意する。水生動物では鰓で酸素交換を行うので外部DO値が重要となるが、単細胞では酸素が細胞膜を通過して細胞内へ直接取り込まれる(濃度差による分子拡散)。
したがって、生物反応でのDOは上述したように、酸素供給量と酸素消費量のバランス(過不足)の指標と考えるべきで、DO値そのものに特に拘る必要はない。好機生微生物の反応槽では、数mg/Lに設定する。1mg/L以下では、DO計の校正や維持管理(センサへのスラム付着など)が不適切である場合やDO測定への妨害物質(酸素センサーの隔膜を通過する分子状電子供与体)が共存する場合には、DOが本当に酸素供給量が不足状態であるかどうか判定ができない。
一般的に反応槽の好気性微生物で重要なことは、その槽内におけるDO値の位置分布が重要となる。反応槽の容積が大きくなるほど、有機物(反応中間体を含む)濃度の位置分布が異なり、DO値分布も異なる。反応槽内の汚水流動状態から見ると反応槽も混合型から層状流型まで様々である。流入部、中央部、流出部でのDO値は異なり、流出部でのDO値がゼロ近傍では酸化分解が不完全であることを示している。

参考文献

1) 河村 清史(監修)、2013:浄化槽工学、pp.85-89、日本環境整備教育センター
2) 楠井 隆・松原 数喜、2007:廃水処理施設における硝化細菌と硝化能力の関連、富山県立大学紀要、Vol.27、pp.93-97
3) 鈴木 孝仁・他、2014:新生物-生物基礎・生物、数研出版、p.428
4) 野村 祐次郎・他、2016:新化学-化学基礎、数研出版、p.340
5) 芳倉 太郎・西尾 孝之・福永 勲、1999:生物学的硝化脱窒芳による高度処理、生活衛生、Vol.43、No.21、pp.49-64
6) 吉村 二三隆・北川 幹夫、2011:わかりやすい水処理設計、技術評論社、pp.83-89


掲載日:2017年09月22日
更新日:2017年11月19日(再曝気槽に関する記述を訂正)

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