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環境技術 2004


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2004年 特集号の題目
       目 次 総目次-分野別-
 1月号 2004年環境行政展望
 2月号 2004年環境技術展望
 3月号 (1) 都市域での緑化プロジェクトとその理論的背景
 3月号 (2) 大気拡散モデル・風洞実験と環境アセスメント
 4月号 (1) リスクコミュニケーションと環境保全に係わる社会問題
 4月号 (2) 鉄バクテリア法など高効率生物処理
 5月号 (1) 環境マネジメントシステムの最新の動向、
 5月号 (2) 流域のノンポイント汚染
 6月号 (1) 工場廃水の嫌気性処理
 6月号 (2) ディスポーザ導入にともなう利点と課題
 7月号 (1) バイオマスの技術と活用
 7月号 (2) 水道水質基準改定後の動向
 8月号 (1) 電解法を用いる新しい排水処理
 8月号 (2) 景観保全と良好な景観づくり
 9月号 家庭用小型浄化槽の技術動向
10月号 (1) 子どもの健康と公共室内空気汚染
10月号 (2) 低周波音問題への新たな対応
11月号 (1) 酸性雨長期モニタリングの現状と課題
11月号 (2) オゾン促進酸化法の技術展開と適用
12月号 (1) ビオトープづくりと自然再生
12月号 (2) 企業の社会的責任(CSR)の動向


1月号  2004年環境行政展望
2月号  2004年環境技術展望



 3月号(1) 都市域での緑化プロジェクトとその理論的背景
編集: 大阪人間科学大学・福永 勲

 近年、都市域の人々が、緑と安らぎを望む時代となっている。特に、最近、自然再生と言われることが多くなったが、都市にあっても釧路湿原のような人の手が入らない自然を再生できるだろうか。経済成長と人口の増加に併せてがむしゃらに都市が発達し、振り返ってみれば、そこには緑と安らぎがなくなってしまった、そこでそれを取り戻すための自然再生はどうすればよいか、というのが今日的課題である。そのためには、人の手が入っていない地域の自然再生とは異なった考え方、手法に基づかなければならないであろう。

1.自然再生と都市域の緑
 基調論文として都市域での自然再生に対する考え方、方法論、さらに新述べた。
2.大阪湾堺臨海部緑の拠点創出-堺第7-3区共生の森構想について-
3.「尼崎21世紀の森」の推進について
 兵庫県と大阪府でそれぞれ進められている低未利用地を利用した「森構想」の具体事例を紹介した。これらの官主導の計画には住民・市民参加をどう勝ち取っていくかが最も重要な課題であり、その立地が都心部から遠距離である点など、克服すべき課題が山積している。
4.都市と「農」の交流を通じた自然再生について
 神戸市における都市と「農」の交流を通じて文字通り住民参加・子供参加を実現して、ひとつ一つは小さくても多くの角度から都市域での自然再生の具体化を図っている事例を紹介した。

<執筆者> 1.中瀬 勲(兵庫県立 人と自然の博物館)/2.竹中 正一(大阪府)/3.本井 敏雄(兵庫県)/4.高畑 正(農・都共生ネットこうべ)

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 3月号(2) 大気拡散モデル,風洞実験と環境アセスメント
編集: 姫路工業大学・河野 仁

<経緯> 大気拡散モデルや風洞模型実験は大気汚染予測の道具として有用であり、環境アセスメントや総量規制、都市の環境管理計画の立案に広く使用されている。煙突からのSO2拡散予測のための標準的な手法として「総量規制マニュアル」が環境庁によって作成されたのが1975年、煙突と自動車排ガスの拡散予測のために「窒素酸化物総量規制マニュアル」が作成されたのが1982年である。このマニュアルは、その後環境アセスメント等で広く使用されることとなり、20年間あまり大きな変化はなく現在に至っている。
<状況変化> アメリカヨーロッパでは、拡散モデルが法規制のために広く使用されているが、この間に使用される拡散モデルに大きな変化が起きている。わが国でも山間部における焼却場や道路の建設、あるいは背後に山地がある場所に火力発電所を建設するなど、複雑地形における拡散予測も必要になってきている。最近では光化学スモッグの発令回数は1970年代と比べると減ってはいるが、オゾンの平均濃度の上昇、あるいはオゾンの環境基準を超える時間数の増加が問題となってきており、その対策のために、その原料である窒素酸化物と反応性炭化水素の削減量決定のモデルが求められている。建物の近傍における自動車排ガス拡散予測や、ヒートアイランド対策のため、都市の換気と建物の高さ、密集度の関係を解析するための道具として風洞模型実験が使用されている。

1.大気拡散モデルの行政への利用-技術指針など-
2.欧米のアセスメントで使われる大気拡散モデルの新しい動き
3.環境アセスメントにおける大気拡散計算の問題と改善策について―予測実務の立場から―
4.数値シミュレーションモデルの大気環境アセスメントへの適用性
5.光化学大気汚染対策へのモデルの活用
6.風洞実験からみた自動車排ガス対策

<執筆者> 1.岡本 眞一(東京情報大学)/2.河野 仁(姫路工業大学)/3.鈴木 秀男(環境解析研究所)/4.北林 興二(工学院大学)/5.山口 克人・近藤 明(大阪大学)/6.上原 清((独)国立環境研究所)

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 4月号(1) リスクコミュニケーションと環境保全に係わる社会問題
編集: 大阪人間科学大学・福永 勲

 今日、リスクという言葉が社会で普通に通用し、いろんなケースに使われている。我が国では、人々の近年の交通事故死が1年に1万人に近いことから、そのリスクは1年に1万人に1人に近いとも言われる。また、化学物質などによる人々の健康への影響もリスクゼロはありえない、しかし、いかにリスクを小さくし、健康に長生きできるようにするかというようになってきた。そして、その理由や仕組みに関わる情報が国民一人ひとりに伝達・理解され、納得してこそその対策効果も上がると言われるようになってきた。それが、まさにリスクコミュニケーションである。

1.スクコミュニケーションをなぜ取り上げたか
2.リスクコミュニケーションの意義と背景-情報公開と責任の再配分-
3.PRTR法に基づくデータの集計・公表と情報の共有
4.企業による情報開示とリスクコミュニケーションへの取り組み
5.有害物質現地処理におけるリスクコミュニケーション

<執筆者> 1.村岡 浩爾(大阪産業大学)/2.磯村 篤範(大阪教育大学)/3.菊井 順一((財)ひょうご環境創造協会)/4.臼倉 文雄(日本ペイント(株))/5.中地 重晴(環境監視研究所)

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 4月号(2) 鉄バクテリア法など高効率生物処理
編集: 立命館大学・金子 光美

 本特集は、昨年、本学会が行った鉄バクテリア等による高効率生物処理法に関するセミナーの内容をもとにしたものである。その内容は2つの側面をもつ。一つはをバクテリアの酸化能力を利用して除去すること、もう一つは微生物を利用した高速ろ過の浄水技術の開発である。小規模水道では地下水を取水しているところが多い。地下水は冷たくておいしく、かつ安全というイメージが強いが、実際はトリクロロエチレンのような有機溶剤農薬あるいは亜硝酸性-硝酸性窒素に汚染されているケースが多い。また人為的汚染がない場合でも鉄、マンガンによる赤い水、黒い水に悩まされるケースはいまもってよく見られる。
 小規模水道で地下水を利用するのは、コストが安くかつ高度な技術を必要としないという利点にある。この利点を生かして、赤水や有機汚染に対処しようというのが、本特集で取り上げた技術である。緩速ろ過のように生物を利用した技術が広く採用されていた時代もあったが、今日、急速ろ過が主流を占めてくると、浄水技術に生物を利用する考えが希薄になってきた。最近では前処理に生物作用を利用する場合もあるが、環境にやさしい技術として生物を利用する技術は、上水道においてももっと採用されることが望ましい。
 溶存鉄が鉄バクテリアによって酸化されて赤い水になるなら、その作用を利用して鉄を除去しようとする試みは古くからあり、実際に取り入れたところもある。しかし以前の方法はろ過速度が遅いのが欠点の一つに挙げられる。本特集ではろ過速度を高めるとともにその他の物質も除去する技術の進歩を示すものである。この高速の生物処理技術は単に地下水に適用されるだけでなく、懸濁物質に対する対応を考慮しながら表流水にも適用可能のはずである。また、鉄バクテリアの生活の動態鉄酸化のメカニズムなど未だ完全にわかっていない。その点についても示唆される論文が紹介されている。

1.鉄バクテリアの除鉄機構とその応用の紹介
2.鉄・マンガン酸化バクテリアによる鉄・マンガン集積構造のメカニズム
3.鉄バクテリア法による浄水処理技術-自然ろ過方式-
4.繊維担体を用いた生物接触ろ過処理技術
5.生物接触ろ過法による水道原水の処理効果

<執筆者> 1.八木 正一(元岡山大学教授)/2.田崎 和江・盛一 慎吾(金沢大学)/3.石丸 豊・中町 眞美((株)神鋼環境ソリューション)/4.杉澤 滋(ユニチカ(株))/5.渕上 浩司(JFEエンジニアリング(株))

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 5月号(1) 環境マネジメントシステムの最新の動向
編集: ㈱地域環境システム研究所・西田 一雄

 世界共通の環境マネジメントシステム規格であるISO14001の発行から、まる7年が経過して、約15000事業所等が認証取得するまでに普及した。運用の効果や運用実態の評価もさまざまな事例で報告されるようになり、有効性や効果の点で疑問や課題も出されている。また、ISOのわが国唯一の認定機関であるJAB(日本適合性認定協会)から認定取り消しや一次停止の処分を受ける審査登録機関が出るなど、第三者審査の現場でもさまざまな動きが出ている。
 さらに、中小、零細企業からは環境マネジメントシステムの認証取得は、金と時間がかかる割には、企業メリットがないという声もあり、これらを反映して地域での簡易ISOといわれるローカルスタンダードの環境マネジメントシステムが作られ普及しつつある。環境管理という内容は、環境改善活動から環境経営まで、幅広い概念で捉えられており、環境マネジメントシステムとイメージされるしくみも多様化の様相を呈している。
 今回の特集は、21世紀の企業社会に不可欠な環境対応の仕組みが、いかに有効に活用でき、経営システムとして持続的な発展に本当に活かせるしくみとは何かを問い直す機会となることを期待して各環境マネジメントシステムに深く関わる方に執筆をお願いした。

1.ISOの新たな展開と規格改定
2.エコアクション21の概要とねらい
3.エコステージの制度と環境マネジメントの推進
4.KES・環境マネジメントシステム・スタンダードについて
5.岩手環境マネジメントシステム・スタンダード(IES)について
6.(事例報告)南信州いいむす21の展開を地域ぐるみで

<執筆者> 1.中川 優((社)日本能率協会)/2.川野 光一(環境省)/3.盛岡 通・矢野 昌彦(大阪大学)/4.津村 昭夫(京のアジェンダ21フォーラム)/5.長澤 幹(いわて環境マネジメントフォーラム)/6.小林 敏(地域ぐるみ環境ISO研究会)

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 6月号(1) 工場廃水の嫌気性処理
編集: 大阪産業大学・菅原 正孝

<有機性排水> 排水中に含まれる有機物のうち微生物によって比較的容易に分解される有機物は、通常腐敗性有機物といわれ、水質指標ではBODとして表されるが、工場廃水の中にはこうした有機物を含む廃水も多い。このような有機物を除去するには、微生物の力でもって分解・無機化するのが理に適っている。
<生物処理の分類> 微生物は、酸素を必要とする好気性微生物と酸素を必要としない嫌気性微生物という2種類に大別されるので、どちらの種類を主として利用するのかによって処理システムも異なってくる。好気性微生物の場合には、処理速度は速いが、酸素(通常は、空気)の供給は不可欠となり、そのための電力費が維持管理費として計上されてくる。また、処理の結果発生する汚泥の生成量が多く、その処分にさらに費用がかさむ。他方、嫌気性微生物の場合は微生物の活動はゆっくりしており、処理に要する時間は長く、また有機物の除去率も低いが、汚泥の生成量は少ない。それで、処理効率を上げるための工夫がこれまで種々試みられてきた。そのためには好気性処理との組み合わせ方式を採用することも一つの考え方である。
 このように、好気性処理、嫌気性処理はそれぞれ一長一短があるが、一般的には、高濃度の有機性廃水には、嫌気性微生物を利用した嫌気性生物処理が有利であるとされている。例えば、身近な例として、屎尿や下水汚泥は濃厚であり、その処理には嫌気性処理、それに比べて都市下水は低濃度であり、好気性処理というのが一般的である。
<嫌気性生物反応> 無酸素のもとで進む有機物の分解反応は、酸素存在下でのそれと比較してかなり複雑であり、生成される物質の種類も多いのが特徴である。主要な生成物は、メタン、炭酸ガスで、それが大半であるが、他に、アンモニア、水素、硫化水素等々もある。とくに、このメタンガスや水素という燃料が生成されることで、バイオエネルギーの視点から注目を集めており、実際メタン生成をめざしての実施例も多い。
<UASB> 嫌気性生物処理における生物反応槽(リアクター)の形式は反応効率を左右する大きな要素である。設計、運転管理を行ううえで、リアクターについて理解することが重要である。リアクターには数種類の形式があるが、オランダ生まれのUASB(上向流式嫌気性汚泥床)方式はそれまでの方式にくらべて単位容積あたりの微生物濃度を格段に高めることができる、つまりコンパクトな装置で効率良く処理が可能である、という点で評価は高い。とくに食品、飲料廃水分野での事例が増えつつある。この方式の特徴は、担体は投入しないで、リアクター内の構造や水の流れに工夫をこらし自己造粒化させた汚泥を利用していることである。
<嫌気性処理> こうしたリアクターの開発が進む一方で、運転管理上の改良によって嫌気性処理の効率改善が図られてきた。とりわけ、固形廃棄物やSSが多い廃水への可溶化技術の適用に関しては注目すべき研究開発も報告されている。
<特集の内容> 本特集では代表的なものとして、BOD濃度の高い食品、飲料、化学工場廃水を取り上げた。むろん、廃水にはその他の成分も含まれるのがふつうであり、なかには微生物に対して阻害作用を及ぼすものもあるので、嫌気性処理がすべての有機性廃水に適用できるかどうかは、事前の検討が必要である。以上のような背景も踏まえて、ここでは嫌気性生物処理の基礎から応用まで網羅していることから、研究開発のみならず、設計、運転など実務に携わる方々にとり、有意義な情報になることを期待する。

1.嫌気性生物処理の特長
2.UASB法によるビール廃水の嫌気性処理
3.飲料工場廃水の嫌気処理
4.食品産業における嫌気性廃水処理装置
5.化学工場廃水の嫌気処理

<執筆者> 1.(株)神鋼環境ソリューション・宝月 章彦/2.栗田工業(株)・依田 元之/3.住友重機械工業(株)・栗栖 治夫/4.富士化水工業(株)・白石 皓二
/5.(株)神鋼環境ソリューション・多川 正

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 6月号(2) ディスポーザ導入にともなう利点と課題
編集: 大阪人間科学大学・福永 勲

<ディスポーザとは> 各家庭の台所の流し台の下に設置して、調理で出た生ごみや食べ残しをカッターで破砕し泥状にして下水管に排出する装置である。厨芥ごみが台所からなくなって腐臭がなくなる効果があり、アメリカなど欧米では義務づけをしているところや自由選択も含めて普及している国や州も少なくない。ただし、分流式の下水道において、ディスポーザが採用されているところが多い。
わが国では、年間5000万トンにのぼる一般廃棄物の中で、各家庭から排出されるゴミの約1/3は生ごみであると言われる。廃棄物の減量化対策面から、ディスポーザ処理は、収集・運搬、分別の問題も含めてもその解決策の一つと考えられる。また、破砕物除去装置からの汚泥は、バイオガスなどの形でリサイクルされることも期待される。
<導入への経緯> 下水道にとってディスポーザは、浮遊物質、BODなどの増大による下水処理場の負荷増大、堆積物の増加や閉塞、硫化水素の発生によるコンクリートの劣化など管渠の維持管理に支障をきたす恐れがあって、わが国では今日まで基本的には許可されてこなかった。とくに、わが国の下水道は都市部においては合流式が多く、雨水越流時に水域環境汚染を増大するなどの問題が多かった。あるいは、合併浄化槽では、今日まで生ごみ処理まで想定していないので、ディスポーザは付けられなかった。
 近年、集合住宅及び個人住宅に一定の基準に合格すればディスポーザの取り付けが許可されることになった。最近のマンションなどではそれを「売り」にして販売し、結構好評を博していると言われている。その一定の基準に合格したディスポーザとは、従来の生ゴミ破砕のみのディスポーザでなく、一定の破砕物除去と水処理機能を併せ持ち、(社)日本下水道協会が決めた放流水質基準などの「性能基準案」を満たすと第三者評価機関が認定したものでなければならない。
<導入への背景と課題> 近年までディスポーザの設置が許可されていなかったのに、なぜ許可されるようになったのか。そもそもディスポーザはわが国の水循環や廃棄物対策など環境問題で役割を果たせるのか。各家庭や共同住宅での正しい維持管理の保証はあるのか、その時代背景とともに技術的課題は解決されたのか。従来からの課題であった下水道や下水処理場での負荷影響あるいはごみ処理分野との棲み分けなどの疑問が残っている。あるいは、「性能基準案」に適合する認証には課題はないのか、など問題点もある。
<本特集の内容> ディスポーザ導入への技術的課題の解決に苦労されてきた内容、性能評価実験についての現状と課題、下水道行政の設置される立場としての考え方や苦労話、ディスポーザを実際にマンションなどに設置し、管理している立場で快適性と課題に関連して、賛否両論あるわが国でのディスポーザについて、今後どのような課題を解決しながら普及を進めていくべきかを論じる立場で特集した。

1.ディスポーザー問題と下水道
2.ディスポーザ排水処理システムと第三者評価
3.ディスポーザ肯定論の七つの問題点
4.ディスポーザ設置における行政的諸問題
5.ディスポーザ排水処理システムの適合評価における課題
6.ディスポーザ排水処理システムの社会,環境への影響

<執筆者> 1.(社)全国上下水道コンサルタント・宮原 茂/2.(社)日本上下水道協会・落合 博和/3.大阪経済大学・稲場 紀久雄/4.大阪市・中井 明正/5.(財)関西環境管理技術センター・村下 淳子・木村 早苗・武甕 孝雄/6.NPO生ごみ処理システム協会・清水 康利・小川 正晃

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 7月号(1) バイオマスの技術と活用
編集: (独)産業技術総合研究所・本庄 孝子

 <バイオマスエネの経緯> 近年、地球温暖化問題を契機にバイオマスエネルギーは再生可能エネルギーとして注目され、北欧を初めとする各国では広く取り組まれている。日本においては2002年12月、「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されて、本格的にバイオマスエネルギーに取り組むことが宣言された。
 バイオマスエネルギーは古くて新しい燃料といえる。50年ほど前までは家庭用燃料のほとんどはバイオマスエネルギーの薪炭でまかなわれていた。1970年代、2度のオイルショックを期に、木質燃料が見直されて、廃材を原料としたペレットの製造工場は当時30社を越えるに至ったが、その後の石油価格の低下で数年前には3社に激減していた。
 2002年には、バイオマス発電・熱利用・燃料製造は雪氷冷熱利用とともに新エネルギーに格付けされ、従来の新エネルギーに追加された。また、2003年には、電力会社はバイオマス等の新エネルギーからの発電電力を一定割合購入する「RPS制度」が全面施行された。さらに環境省は2004年から自動車ガソリンに「バイオエタノール5%程度混合」を一部地域での供給を打ち出すことにし、2010年には10%とするスケジュール例を報告した。現在、バイオマスエネルギーをはじめとする新エネルギー活用のための環境条件は整えられつつある。
<バイオマス・ニッポン> バイオマス・ニッポンを提案した農林水産省、経済産業省、環境省、国土交通省、文部科学省、および関連団体の NEDOなどは、毎年バイオマス関連技術や利活用システム等についての各種の提案公募制度を行っている。このような中、多くの先進的な自治体や企業はバイオマスエネルギーの取り組みを強め、バイオマスエネルギーのNPOや研究会が全国各地で生まれ、地域での活発な活動が行われている。
 我が国は国土の2/3を森林が占める世界有数の森林国である。木質バイオマスの潜在資源量は、温帯地域のバイオマス純生産量、ほぼ10dry-t/ha・年から試算すると、1次エネルギーの供給量の約19%に相当する。この有効利用がはかれればCO2削減に大きく寄与できるだろう。また、バイオマスはCDM(クリーン開発メカニズム)制度や排出権取引などに関連して、国際的な取引を視野に入れたものになっていくであろう。
<新しいバイオマス> 新しいバイオマスは大きく分けて木質に代表されるドライバイオマスと家畜糞尿、汚泥等のウェットバイオマスがある。ドライバイオマスはペレット化、炭化、ガス化、液化などしてストーブやボイラー、発電の燃料になるとともに、糖質のエタノール発酵、ガス化から燃料電池用の水素の製造、廃油からバイオディーゼルの合成など石油化学と同様に種々の合成化学への道がある。ウェットバイオマスは主にメタン発酵があり、最近は超臨界処理ガス化も試みられている。
<特集の内容> バイオマスの技術と活用に活発に取り組んでいる自治体と企業の紹介をした。

1.木質バイオマスエネルギーと地域の取り組み(岩手の場合)
2.山梨県地域における木質バイオマスエネルギーの普及に向けた取り組み
3.京都市におけるバイオディーゼル燃料化事業の取り組み
4.大阪府の森林バイオマス利用推進の取組み
5.乾式メタン発酵による有機系廃棄物のバイオガス化
6.移動式小型バイオマスガス化発電
7.木質バイオマスのガス化発電

<執筆者> 1.岩手・木質バイオマス研究会・金沢 滋/2.山梨木質バイオマス利用研究会・小澤 雅之/3.京都市・中村 一夫/4.大阪府・早川 昌宏/5.(株)タクマ・藤田 雅人/6.(株)シーテック・西山明雄・下島英俊/7.中外炉工業(株)・笹内 謙一

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 7月号(2) 水道水質基準改定後の動向
編集: 立命館大学・金子 光美

<水道水質基準の改正> 水道法に基づく水道水質基準が2003年に改正され、2004年4月1日から施行された。今回の基準改正は1992年以来のもので、近年はおよそ10年ごとに見直されている。改正のたびに基準の項目と基準のフレームが大幅に変更されている。科学的知見の蓄積と分析技術の向上に合わせて基準を見直すのは、柔軟性があり合理的と思われる。しかし、完全に合理性に則って提示されているのか、基準改正前の水は何を保証していたのかよくわからない面もある。また、水質管理における検査水量と頻度が安全性保証の上で持つ意味は、水質基準値がどれほどの安全性を保証しているかということとは異なる。
<水質基準の透明性> 水質管理とは製品である送り出す水の品質保証のためのものである。安全の程度を、検討過程をホームページで載せて済ますのではなくて、基準提示の中で表示すべきであると考える。そのような数字が出てきた根拠を、文献を調べるような作業しなくてもすぐわかるようにするということである。今回の改正では基準値の公表と需要者の意見の取り入れを謳っていて、水質基準の内容と結果とに関する透明性は高まった。そのような透明性をもう一歩進めて欲しい。さらに、説明責任を果たすなら、改正以前の水はどれほどの安全性を保証していたのかも示すべきではないだろうか。さもないといままでの基準はおかしかった、だから良くない水を送っていた可能性もあると指摘されても仕方がない。
<水質管理業務> 水道の民営化の議論が高まる中、水質業務だけに限っても、検査業務の民間委託が容易になった。とくに小規模事業体ではその方向に進むと思われる。大規模事業体でも検査項目の事業体間の分散などが考えられる。また、分析精度の向上と責任のあり方が明示された。分析をするということにだけに視点が当てられると、事業体の水質部門の弱体化、それによるシステムとしての水質管理の弱体化に繋がりかねない。生産工場で工程管理を外部に委託して果たして大丈夫か。水質管理が水質検査だけでなく工程管理に直結しなければ、水質の変化に対応できない。
<水道の安全確保> 水道水が安心して飲めるためには、合理的な水質基準の設定と遵守のほか、水源保全、適正な処理システムの計画と設計、適正な維持管理、供給水の品質管理とその体制の完備、給配水システムの適正化、検査技術の改良、監査体制の充実(ハードとソフト)、職員の自覚が必要であり、システムを水質の安全のために管理するのが水質管理であるが、安心して飲めるかどうかの最終確認は、水質を分析して行う。また、水質基準は水道水水質を規定し、システム全体の運転目標にもなる。しかし、法的基準を遵守していても水質による事故が起きた場合、製造者責任が問われる時代である。基準が隠れ蓑にはならない。「技術者は公衆の安全、健康、福利を最優先する」ということを明記すべきである。
<特集の内容> 新しい水質基準を理解してもらうために、行政水道事業体民間の方々から、それぞれの立場から新しい基準についての考えやフレーム、基準のもたらす影響と対応について執筆いただいた。

1.水道水質基準の改定と新しい水道のあり方
2.大阪市における水道水質基準改定への対応
3.水質基準改定と今後の民間検査機関のあり方
4.水質検査計画策定のあり方

<執筆者> 1.厚生労働省・柳橋 泰生/2.大阪市・塩出 貞光・林 広宣・小笹 泰/3.(株)日水コン・篠原 哲夫/4.横浜市・相澤 貴子

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 8月号(1) 電解法を用いる新しい排水処理
編集: 大阪産業大学・尾崎 博明

<従来の電解法> 電解法は電極を用いる酸化・還元反応を利用する方法であり、水処理分野においても従来から、重金属イオンの還元や電解により生成させた次亜塩素酸による有機物分解などに適用されてきた。しかし、実際には、電極材料の劣化、電気利用効率や処理効率の限界などの問題があり、排水処理に適用するための基礎研究や応用が進展しない時期があった。
 排水中の窒素除去法としては各種あるが、最終的には脱窒により窒素ガスとして処理する方法が望ましい。これを満足する方法として生物学的硝化・脱窒法が一般的によく用いられるものの、脱窒のため水素供与体(メタノール等)が必要であり、また、生成汚泥の処理が近年の重要な問題である。物理化学方法も膜分離法やストリッピング法にみられるように必ずしも窒素ガスへと変換できない。従来の電解法も、生成させた次亜塩素酸をアンモニアと反応させる電解法がよく知られているが、通常は硝酸性窒素の残存がみられる。
<新たな電解法> 電極の改良やたくみな反応槽構成による生成次亜塩素酸と塩化物イオンの有効利用とにより、希薄な塩化物イオン溶液中でのアンモニア性窒素と硝酸性窒素の同時除去が可能となった。また、低濃度電解質溶液に適用できる電解槽も開発された。電解法は通常、低濃度電解質中ではエネルギー損失が大きくなるため不利である。新しい電解槽はこれを克服し、低濃度の有機物質(環境ホルモン)をオゾン法以上のエネルギー効率で直接酸化するにいたっている。
 電解法は原理的にはそれほど複雑ではないため、前述のような微量有害有機物を対象として他の物理化学方法との併用処理も進められている。一般的な促進酸化法などとの併用による分解能力の増強はごく自然な方向であろうし、超音波法との併用なども新しい方法として模索されている。電極材料がかなり改良された現在、電流効率が最重要課題とするならば、電力消費が削減できる強力な触媒酸化との併用も実際的である。
電解凝集を利用した排水処理もまた新たな展開をみせている。よく知られている鉄電解では生成した鉄イオンが凝集剤となり、リンが存在する場合はリン酸鉄が生じる。このことは上述のような窒素除去をうまく組合せれば窒素とリンの同時除去が可能であることを示している。生成したリン酸鉄や凝集した水酸化鉄(有機物含有)を重力沈殿により分離することには困難をともなう場合も多いが、現在では、たとえ粒子が微細で磁化が小さくとも強力な磁気分離により容易に分離することが可能である。電解、電解凝集、磁気分離を組合せた排水処理は、技術的には埋立地排水のような総合排水に適用されうる段階に達している。
<本特集の内容>電解法による微量有害有機物の直接酸化や触媒併用による分解、アンモニア性窒素と硝酸性窒素の同時除去さらには窒素とリンの同時除去、電解凝集や磁気分離を組合せた排水処理等を取上げ、新たな展開をみせている電解法の現状、今後の展望と課題を紹介していただいた。従来技術を基礎にしながらも極めて新しい内容を含んでいるため今後の課題となることも多々あるが、十分に応用を意識した内容となっていることから、水処理に関わる多くの方々の参考になることを願っている。

1.3次元電解槽を用いた酸化処理に関する基礎的研究
2.電気分解と磁気分離を組み合わせた廃水処理法の開発
3.電解窒素除去装置の開発
4.電解法と触媒酸化分解法をシステム化した排水処理技術

<執筆者> 1.早稲田大学・榊原 豊/2.東京都立大学・井原 一高・渡辺 恒雄/3.三洋電機(株)・広 直樹/4.栗田工業(株)・中原 敏次

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 8月号(2) 景観保全と良好な景観づくり
編集: 大阪産業大学・若井 郁次郎

<景観への国の政策> これまでの景観への取組は、法的に規制された特定地域・地区での限定的景観保全で、国内各地に継承され、親しまれてきた自然景観や都市景観がしだいに損なわれてきた。その景観についてやっと中央政府が動き出し、2003年7月、国土交通省が取りまとめた「美しい国づくり政策大綱」を受け、2004年6月に景観法などのいわゆる景観緑三法が制定された。
<かっての景観事情> 浮世絵や錦絵に描かれたように、たくさんのすばらしい景色や景観が自然や生活のなかに溶け込み、幕末や明治初期に訪れた多くの外国人をして絶賛せしめたほどであった。
<景観消滅の背景>なぜ、かくも美しくあった景色や景観が、われわれの目の前から消え、あるいは見苦しくなったのか。大きな要因としては、あこがれた欧米諸国をめざし、開国後の殖産興業や富国強兵、戦後の経済復興のための国づくりを一途に進めてきたところにあるといえよう。特に、高度経済成長のリズムに乗って、全国のすみずみまで都市化と工業化が急速に進められる過程において無秩序な土地開発や自然環境の破壊が行われ、また、既成の都市や農山漁村でも効率性追求のため前近代的な建物や空間が取り壊されることになった。
輸送の利便を高める幹線道路網が全国縦横に張り巡らされ、治水や利水に重きをおいた河川整備が進められることになった。都市では土地の高効率化のため立体的利用が行われ、農村などでは田園や里山が産業団地に変貌することになった。このままでは、古来の変化に富む自然美や継承されてきた風雅な人工美が消滅するおそれが十分に予想される。
<特集のねらい>景観法の制定を機会に、これからは景観の保全だけでなく、景観を創造していくという積極的な姿勢が国・地方公共団体・事業者・住民に要求される。美しく風格のある国土づくりを行い、うるおいのある豊かな文化生活を享受できるようにすることによって、次世代へ継承できる持続可能な風土が醸成されることになろう。そのためには、わが国の自然・歴史・文化などの固有の特性を発揮できる良好な景観づくりの基本的な考え方や、都市計画や農産漁村計画における景観哲学が確立されること、日々、現地において実践的に良好な景観づくりに取り組むことも重要になる。
 ここでは良好な景観について再考していただき、一人ひとりがまちやむらの身近な生活空間から雄大な自然空間まで美を追求し、配慮する心に芽生え、文化豊かな国づくりへ歩みだすことを祈念し、この特集を組んだしだいである。

1.景観の保全とデザインの歩み
2.良好な田園景観の保全
3.公共事業における良好な景観づくり-公共事業の経緯と高速道路景観の事例から-
4.京町家の再生による都市景観づくり
5.市民による歴史的景観の保全・再生

<執筆者> 1.京都大学・川﨑 雅史/2.鳥取環境大学・吉村 元男/3.大阪産業大学・榊原 和彦/4.NPO法人京町家再生研究会・大谷 孝彦/5.京都市・平家 直美

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 9月号家庭用小型浄化槽の技術動向
編集: 龍谷大学・竺 文彦

  <浄化槽の経緯>これまで浄化槽はし尿を処理する設備として発達してきたが、2000年にし尿のみを処理する単独浄化槽が禁止され、雑排水も含めた家庭排水すべてを処理する合併処理浄化槽のみとなり、下水道と同様に環境水域の水質を保全するための施設として位置づけられるようになってきた。さらに合併処理浄化槽においては、近年、膜分離技術を利用した浄化槽、リン・窒素を除去するための浄化槽、ディスポーザーの使用に耐えうるような浄化槽など、さまざまな技術開発が行われてきており、さらに小容量の浄化槽の開発が進んでいる。そこで、ここでは家庭用小型(合併処理)浄化槽(以下、小型浄化槽)の最近の技術動向について特集を組み、その状況について報告する。
<小型浄化槽の特徴>浄化槽は、各家庭用の数人規模のものから集合住宅や団地など数千人規模のものまでその大きさはさまざまであるが、数千人規模のものはむしろ小規模の下水道に類するものであり、浄化槽として特徴的なものとしては、小型浄化槽である。
 小型浄化槽の処理方法としては、下水道で用いられている活性汚泥法とは異なった接触ばっ気法が主に用いられている。接触ばっ気法は、生物膜法の一種でプラスチックの担体に微生物を付着させて処理を行うものであり、この技術は小型浄化槽によって発達してきたと言っても過言ではない。また、有機物を分解したり、窒素の処理を行うために、嫌気性接触ろ床法も開発された。
<浄化槽の環境的意義>これまで浄化槽は下水道の補完施設として位置づけられ、下水道が建設されれば廃棄されてきたが、性能の優れた小型浄化槽は十分に下水道と同等の処理性能を有し環境保全の役割を果たすため、下水道に代わる施設として、浄化槽を活用した地域的整備を行うところも出てきている。
下水道は都市部の基幹設備として欠くことができないが、下水道を建設すると地上部から水が消えて、潤いがなくなり、水性生物の棲み家もなくなることになる。また、現在、琵琶湖において問題になっているCODの上昇は、水と土の接触がなくなっていることがその原因ではないかと推測されており、下水道が普及するにしたがいこれらの課題の解決が求められてきている。
浄化槽の場合には、地域に分散したオンサイトの施設であり、地域の水路・小川に水を返すために、豊かな水環境を維持することが可能であり、微量汚濁源の水質改善の効果も期待できる。
<浄化槽の財政的意義>下水道は管渠を埋設するための膨大な経費が必要であり、これを税金で賄っている。起債によって建設してきた下水道の費用は、今後、小さな市町村にとっては大きな財政的な負担になっていくものと考えられる。一方、浄化槽は税金ではなく、個人の負担によって賄われているため、起債の返済による市町村の財政問題は起こらない。
 試算によると、滋賀県のこれまでの下水道建設費用で小型浄化槽を設置したとすると、優に現在の滋賀県の人口を超えることとなった。現在、滋賀県の下水道普及率は75%を越えているが、小型合併浄化槽で家庭排水対策が終わってしまっていれば、琵琶湖の汚濁対策を次の農業排水や初期雨水対策に移すことが可能になっていたことになる。財政的な面からも浄化槽を見直す必要があるのではないだろうか。

1.浄化槽の制度と現状
2.コンパクト型浄化槽
3.膜を利用した小型浄化槽
4.窒素・リン除去型浄化槽
5.ディスポーザー排水対応浄化槽
6.浄化槽の技術動向と維持管理

<執筆者>1.環境省・名倉 良雄/2.ニッコー(株)・中橋 隆夫/3.(株)クボタ・本田 和之/4.フジクリーン工業(株)・井村 正博・鈴木 栄一・手塚 圭治・水野 真一/5.(株)日立ハウステック・石垣 力・山下 宏/6.(財)日本環境整備教育センター・渡辺 孝

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10月号(1) 子どもの健康と公共室内空気汚染
編集: (株)日吉・広瀬 恢

<住まいと健康> 住まいは厳しい寒さや風雨から、外敵から人を守る安全なシェルターであり、一家団欒の一時を提供する憩いの場でもあった。病気を癒し、体力を回復させ、健康を保持する場所として機能するものと信じられてきた。ところが、近年その確信が揺らいできた。住まいの空気が原因で発症する疾病、シックハウス症候群が社会問題になってきたのである。
<シックハウス症候群> シックハウス症候群は新築や改装に伴い建材や壁クロスの接着剤などから発生するホルムアルデヒド等の化学物質によって汚染された室内空気を摂取することにより発症するといわれている。シックハウス症候群の診断基準はまだ作成されていないが、いくつかの定義が提案されている。その定義によって差異はあるが、シックハウス症候群の罹患率は数%以上と推定されている。室内空間の化学物質の濃度は建材・家具など発生源の発散強度、換気などによる濃度の低減対策の程度、室温、化学物質の物理的・化学的性質等によって左右され、空間分布も変化する。人の健康への影響は化学物質の摂取量とその空気に暴露される人の化学物質に対する耐性に関係するため、室内空気中化学物質の健康影響評価は施設や部屋の用途、利用する人に対応したものでなければならない。
<子どもの健康> 子どもは大人に比べて体重あたりの呼吸量が多いために化学物質の負荷は相対的に大きく、免疫系、代謝系が十分には発達していないため化学物質による影響を受けやすい。その上、化学物質への暴露空間が大人と同じではないために子どもが利用する保育園、幼稚園、児童館などの施設における空気質の管理には特別に注意を払う必要がある。
<特集の内容>まずこれまでのシックハウス対策の経過を分析して現状と課題を整理した。つづいて、化学物質から子どもの健康を守るために子どもの行動パターン、子どもの特徴を考えた測定方法、保育所や学校において配慮すべき点を解説し、的確な診断や環境の改善対策の基本となる室内空気中化学物質の測定方法とその分析精度の検討事例を紹介するとともに、室内空気中の化学物質低減対策を発生源の一分野である建材・家具対策の面から展望した。そして、化学物質過敏症の患者の立場から発症、診療の経過、日常の生活状態について報告した。シックハウス症候群は公害病の室内版ともいえ、20世紀の化学物質文明の負の部分であるが、現在の関連する各分野での取り組みをさらに連携して発展させることにより必ずや克服できるものと確信している。

1.室内空気中化学物質対策の現状と課題
2.子どもの健康と室内空気中化学物質対策
3.室内空気中における化学物質の測定方法とその評価
4.室内空気中化学物質低減対策と建材・家具
5.多種類化学物質過敏症患者の生活
6.

<執筆者>1.(株)日吉・広瀬 恢/2.京都大学・内山 巌雄/3.大阪府環境情報センター・今村 清/4.ナショナル建材工業(株)・藤田 清臣/5.画家(新槐樹社所属)・山内 稚恵

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10月号(2) 低周波音問題への新たな対応
編集: 中央復建コンサルタンツ(株)・藤森 茂之

<経緯> 固定発生源からの低レベルの低周波音に関する苦情は、2000年度に急増し、ここ数年苦情件数の多い状態で推移している。これらの苦情の多くは暗騒音が小さい静かな地域の家屋内で発生しており、すでに公表されている「低周波音の測定方法に関するマニュアル」(2000年10月、環境庁大気保全局)や「低周波音防止対策事例集」(2002年3月、環境省環境管理局大気生活環境室)に記されている方法では対応できないケースが増えている。主な発生源は、工場、作業場、店舗、近隣の家屋などに設置されている設備機器等であり、家屋内で測定される低周波音及び騒音は20~200Hz程度の周波数域に主要周波数成分を持つものが多い。
<国の対策> 環境省は、このような苦情に対する的確な対応を検討するため、日本騒音制御工学会に委託(2002年8月、学識経験者等からなる低周波音対策検討調査委員会を設置)し、同学会において本件の検討が行われた。その結果は、固定発生源の低周波音問題対応のための「手引」、「評価指針」、「評価指針の解説」として報告され、このなかで問題対応にあたっては判断の基準となる値が求められていることから、苦情申立者を含む被験者による聴感特性実験を実施し、従来の手法では対応の難しかった低レベルの低周波音苦情に対処するための参照値が提案されている。
 低周波音については、その感じ方に個人差が大きく、参照値以下であっても低周波音を知覚する可能性があるので、個人の聴感特性を考慮して適切に対応することが極めて重要である。参照値を示すだけでは苦情解決が難しいこと、低周波音問題に従事している地方公共団体において低周波音に関する情報が不足していることを踏まえ、「低周波音問題対応の手引書」として、2004年6月22日に環境省より公表された。
<特集の内容>政府、地方自治体、関係団体による低周波音問題への新たな対応について報告する。低周波音に関する調査、研究が行われてそれらの情報が充実し、専門家の協力体制のもとに、低周波音問題に対して適切な対応が図られることを期待したい。

1.「低周波音問題対応の手引書」の概要
 環境省における低周波音問題の取り組みの経緯、手引書策定の背景、手引書の概要、諸外国の基準、今後の課題等について紹介している。
2.低周波音問題の対応と行政
 地方公共団体における騒音・振動の測定業務の実態、低周波音の苦情の実態と低周波音問題の背景、「低周波音問題対応の手引書」について解説し、低周波音問題の解決に至る行政上の対応について述べている。
3.低周波音の測定
 「低周波音の測定」と題して参照値と比較検討するための低周波音の測定計画及び測定方法、低周波音による苦情か否かの評価方法等について詳述している。
4.低周波音の調査・診断と防止対策
 低周波音の発生機構と発生源の種類、問題発生時の低周波音の調査・診断方法、低周波音の防止対策の基本的考え方、防止技術、送風機、空気圧縮機等から発生する低周波音の防止対策事例について詳述している。

<執筆者> 1.環境省・由衛 純一/2.元神戸市・瀬林 伝/3.(財)小林理学研究所・落合 博明/4.(株)アイ・エヌ・シー・エンジニアリング・井上 保雄

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11月号(1) 酸性雨長期モニタリングの現状と課題
編集: (財)ひょうご環境創造協会・玉置 元則

<酸性雨の状況> 環境省が実施してきた第1次から第4次までの酸性雨対策調査など1983~2002年の20年間の調査結果が今年6月にとりまとめられた。ここで得られた主な知見は、(1)全国的に欧米なみの酸性雨が観測されており、また、日本海側の地域では大陸に由来した汚染物質の流入が示唆された、(2)現時点では、酸性雨による植生衰退等の生態系被害土壌の酸性化は認められなかった、(3)岐阜県伊自良湖等への流入河川や周辺土壌において、pHの低下等酸性雨の影響が疑われる理化学性の変化が認められた。ただし、これらの変化はいずれもただちに人の健康ならびに流域の植物及び水生生物等の生態に何らかの影響を及ぼすレベルにはない等である。しかし、この20年のモニタリングでは測定手法が何度も変えられ、測定地点も移されるなど、評価に際しての欠点も指摘されている。
<対策の経緯> 典型的な大気汚染物質である硫黄酸化物や窒素酸化物等のモニタリングと法的規制の間には次の関係がある。1967年8月に公害対策基本法が、1968年6月には大気汚染防止法が制定され、この2つの法律による、大気汚染の常時監視と緊急時措置の業務が都道府県に義務付けられることになった。常時監視とは、公害対策基本法を受けて1969年に設定された環境基準にその地域の汚染状況が適合しているかどうかを監視することであり、緊急時措置とは、大気汚染濃度が緊急時の基準を超えたときに指定工場に連絡して良質の燃料に切り替える等の指令をすることであった。
<特集の内容> 酸性雨の場合には、国内的には、国際的な規制の法的根拠がないことがモニタリングの基盤を脆弱にしている。本特集では、法的根拠のないなかで国ならびに自治体はどのように酸性雨モニタリングを継続・発展さていくのか、また、モニタリングの成果が行政施策や技術的対策に具体的にどのように反映されてきたか、また湿性沈着や乾性沈着のモニタリングデータが生態系影響や文化財影響調査研究にどのように活用されているのか、さらにはどのようなデータが蓄積されればより高度な活用がされるのか、等を整理した。

1.酸性雨モニタリング成果の行政的・技術的対策への活用
 国レベルでの活用、自治体レベルでの活用の現状と課題を整理した。これは、法的根拠が不十分な状況下で、自治体研究者や行政担当者の不安感をも反映している。
2.一地方自治体における酸性雨モニタリングの現状と今後の課題
 得られたモニタリングデータの自治体レベルでの活用を説明している。モニタリングにおいては、湖沼、土壌、建造物および森林生態系等の専門分野の機関とのネットワークを構築することが重要であるとしている。
3.秋田の酸性降水・霧の長期フィールド調査結果と今後の展望
 長期間にわたって、秋田県で酸性雨や酸性霧調査を行ってきた成果とその活用方法を示している。成果の向上のためには個別項目の測定から総合的な研究の構築が必要であることを述べている。
4.酸性雨モニタリングデータの植物影響研究への活用と行政施策への反映
 研究成果をまとめそれらがどのように活用されてきたかを具体例で示している。そして、酸性雨モニタリングで得られたデータを植物影響研究で活用し、最終的にはみどりのための環境基準値の制定などの行政施策に反映させる考えを示しており、「継続は力なり」という言葉は、まさしく酸性雨モニタリングにも当てはまると力強く結んでいる。

<執筆者>1.(財)ひょうご環境創造協会・玉置 元則/2.宮城県保健環境センター・北村 洋子/3.秋田大学・小川 信明・尾関 徹/4.東京農工大学・伊豆田 猛

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11月号(2) オゾン促進酸化法の技術展開と適用
編集: 龍谷大学・宗宮 功

<水処理の高度化> 水処理工程の高度化は待ったなしになりつつある。汚水も処理して投棄するものから、資源として再生利用するものへと変化してきている。その意味で、汚水の処理は高級処理でとどまることなく、高度処理が求められ、残存微量有機物量色・臭気の除去だけでなく、病原性ウイルス・細菌・原生動物、あるいは難分解性微量有害物質の除去が求められるようになっている。
 従来の都市下水処理にあっては、有機物除去のために活性汚泥法などの微生物処理が中心施設として建設されたが、今では富栄養化防止のために、窒素・リンを微生物で除去する方向へと、処理施設の改造が進められる段階へ来ている。ただ、微生物処理にはそれぞれ処理限界があることは周知の事実であり、処理水の再利用となると、処理のような物理処理や、あるいはオゾン酸化処理などの化学処理との併用処理が欠かせない。
<オゾン処理の特徴と課題> オゾン処理法も第1義的には、オゾンの酸化力を活用した脱臭・脱色対策として活用され、今日に至っているが、有機物を無機化し、除去する機能は低く、限界があることがわかっている。
 オゾン処理を有機物処理に使う目的は、残存有機物の質を変えて、親水化し、微生物分解性を向上させるためで、これらの除去にはまた微生物処理がいる。したがって、有機物として微量に残存する難分解性汚染物質を直接無機化処理するには、促進酸化処理法の適用がいる。
 促進酸化法では、反応器内にいかにOHラジカルなど反応性酸化種(ROS)を効率的に発生させ、保持し、対象物と反応させるかが技術開発の主眼となる。現実には、オゾンやUVを過酸化水素水酸イオンTiO2(触媒)などと共存させ、有機物と反応させる方式が多く取られる。問題は、OHラジカルの寿命が極端に短いことであり、また、直接制御管理に使える測定手段がまだ開発されていない。オゾン処理やUV照射は、単独では十分なOHラジカルを確保できないため、オゾン+UVやオゾン+過酸化水素などのように複数操作の組合せが必要なことである。

1.溶存有機物共存下におけるオゾン/過酸化水素処理による微量汚染物質の分解
 オゾンと過酸化水素の併用法の機能について検討したもので、微量物質としてフタル酸ジ-n-ブチルをターゲットとし、その酸化分解における共存有機物の妨害効果を実験的に検討している。
2.AOP併用型オゾン接触池の基礎的検討
 反応を効率的に進めるために過酸化水素の添加位置を実験的に検討し、オゾン単独処理+過酸化水素添加後のオゾン処理の2段処理で、THMFPの低減、臭素酸イオンの生成抑制、オゾン難分解性物質の低減が可能になることを示している。
3.オゾン電解併用法による排水処理
 新たなOHラジカルの発生法として、オゾン電解併用処理法を取り上げ、実験的検討を進めたもので、電気さえあれば外部から薬品類を持ち込むことなく処理が可能となり、オゾン単独処理よりはるかに効果的になることを示している。
4.りん除去工程を組み込んだオゾンによる汚泥減容化技術
 汚水の栄養塩を嫌気―無酸素―好気法で処理する際、好気槽からの循環液の一部をオゾンで処理し、汚泥を溶解して発生量をほとんどなくし、リンをHAP晶析槽で低減する方式を提示している。
5.高濃度オゾンガスを用いたプリント配線板デスミア処理技術
 特異なオゾン処理技術の開発例で、プリント配線板上に作業後に残る有機物残渣を高濃度オゾンガスで処理する方式を確立するもので、氷酢酸液にオゾンガスを潜らせて反応させることにより処理効率を高めうることができたとするものである。

<執筆者>1.国立保健医療科学院・小坂 浩司・山田 春美・津野 洋・清水 芳久・松井 三郎/2.富士電機アドバンストテクノロジー(株)・岩本 卓治・加藤 康弘・森岡 崇行・岡田 光正・茂庭 竹生/3.龍谷大学・岸本 直之/4.(株)荏原製作所・荒川 清美・田中 俊博/5.三菱電機(株)・齊藤 禎司

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12月号(1) ビオトープづくりと自然再生
編集: 龍谷大学・竺 文彦

<ビオトープとは> ビオトープという言葉は、かなり一般の人々にも知られるようになった。一般には学校ビオトープとして、小学校の池を改造して自然な池にする事業が各地で取り組まれており、特に教育の分野でビオトープという言葉が知られるようになった。しかし、もともとビオトープとは池に限らず、川も道路も建物も市街地も含めた都市的な地域において、生物が棲むことのできる場を創り出すことを意味している。
 ビオトープという言葉は、学校の小さな池から広大な森林にまで幅広く使用され、また、自然再生という意味からもともとの自然の状況に対しても用いられることがあり、厳密な用い方はされていない。本特集では、自然再生の意味でビオトープという言葉を用いることとする。
 ビオトープの考え方が出てきた背景には、地球環境問題がある。人類のみが地球上で繁栄し、人口を爆発的に増やしており、他の生物を絶滅に瀕する状況に追いやっている。このままで良いのだろうか。他の生物と人間とはどのようにつきあわねばならないのであろうか。
<海外の状況>1970年代から80年代にかけて、ヨーロッパでは人間と他の動物との関係についてさまざまな議論が繰り広げられた。その結果、イルカやクジラは優秀な知能を有しており、人間の友達であるとか、牛を牛舎に閉じこめて飼うのは良くなくて、牧場で自由に歩かせるべきであるとか、ダムは魚の遡上を阻み好ましくないというような動物の生きる権利を認めるべきであるという考え方が社会的に認知されるようになってきた。
 都市部や河川ではコンクリートで固められた所に土を盛り、草を生やし、生物の棲める空間を創り出していく事業が始められた。河川においては、周囲の土地を買い取って、蛇行した自然な河川がつくられている。砂防ダムや高い落差工は魚の遡上を阻害するため好ましくない、として砂防ダムを迂回する水路や魚道がつくられ、落差工は石を用いた自然な落差工に変えられ、魚の生存を保障しようとしている。街の中にも緑地や樹林帯がつくられ、屋上の緑化や駐車場の緑化が行われている。
<国内の状況>日本では、コンクリート化された河川を徐々に自然な河川に戻そうとしており、屋上緑化や駐車場の緑化が進められつつあるが、その考え方は広く理解されているであろうか。
 日本においては、人間と動物がどう付き合うべきかという議論がほとんどなされてきていない。これはヨーロッパとは動物に対する考え方に違いがあり、生産様式にも違いがあること(農耕と牧畜)などによるものかと思われる。また、仏教とキリスト教との動物に対する考え方の違いがあるのかもしれない。
<特集の内容とねらい> 河川、湖沼、親水公園、屋上緑化など最近のビオトープの施工例を紹介したが、数多くのビオトープ事業が行われるようになってきた。人間と生物の共存の問題を社会的な課題として捉え、ビオトープの今後の方向性についても議論していく必要があるのではなかろうか。

1.ビオトープづくりの経緯と展望
2.森づくりとビオトープ
3.湖沼のビオトープ-小中の湖地区の水質保全-
4.親水公園の地域住民による植栽と管理-田瀬湖親水公園-
5.河川における植生復元の手法について-愛知県,岐阜県の事例から-
6.人工地盤・屋上のビオトープ
7.事例報告:ハイウェーIC(インターチェンジ)におけるビオトープ関連工事-高知自動車道土佐IC-

<執筆者>1.富士常葉大学・杉山 惠一/2(株)岐阜造園・山口 昌宏./3.キタイ設計(株)・小山 孝次・西川 勝/4.小岩井農牧(株)・澤田 一憲/5.エスペックミック(株)・水沼 薫/6.(株)静岡グリーンサービス・櫻井 淳/7.(株)双葉造園・島崎 雅哉

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12月号(2) 企業の社会的責任(CSR)の動向
編集: 大阪産業大学・花田 眞理子

<国内のCSRの経緯> 近年、企業活動において「企業の社会的責任(CSR : Corporate Social Responsibility)」が重視されるようになってきた。
 実は1970年代にも、反公害運動を背景として「企業の社会的責任」が叫ばれた時代があった。しかし、その教訓を機に産業社会のあり方そのものが問い直されたヨーロッパや、宗教的文化的背景を持つ米国と異なり、日本の社会的責任論は、景気後退とともにいつしか経済効率性の追求の前に影が薄くなっていった。そして、「企業の社会的責任」というと、法律を遵守し、事業活動を通じて豊かな社会の実現に寄与すること、というごく当たり前の内容や、フィランソロピー等のいわゆる社会貢献活動を、企業活動の余裕の範囲内で行うことという浅い理解にとどまることが多かったのである。
 ところが経済のグローバル化に伴って、生産販売や資金調達のグローバル化も進み、日本企業としても欧米型CSRを基本的な要求項目として考えていかざるを得なくなってきた。さらに国内でも、企業を取り巻くステークホルダーの意識が変化し、企業は財務のみならず、環境配慮社会倫理的配慮に関しても、社会に対する説明責任を負うと考えられるようになった。また、NGOなど市民組織の監視・政策提言能力が向上するにつれて、企業活動に対する影響力も増してきた。このような経済社会的な変化のうねりを受けて、社会が企業に求める責任の内容も変化してきたのである。
<今日のCSR> 近年、トリプルボトムライン(経済的繁栄、環境の質、社会的公正という3側面)や、持続可能な発展をめざすうえで、企業に求められる役割や責任を意味する言葉として、あえて「CSR」という略語を用いることが多くなっている。従来発行していた「環境報告書」の内容を、社会的側面にまで広げて「CSR報告書」とする企業も年々増加している。
 2003年に経済同友会が発表した「企業白書」ではCSRが中心テーマとして取り上げられ、経団連は、「企業行動憲章」の2004年の改定にあたって、特にCSRの観点を強調している。さらに行政主体においても、2003年以降、経済産業省、厚生労働省、環境省がそれぞれ CSRに関する委員会や懇談会を相次いで設置している。
国際標準化機構(ISO)において、環境マネジメントやエコラベルと同様に、CSRの規格化が議決されるなど、国際的なCSRのガイドライン作りもスタートした。
<特集の内容> このようにCSRに対する関心や取り組みは近年急速に高まってきている。本特集では、企業が経済活動を行ううえでCSRがどのように理解され、取り組みが進められているか、現状や課題を解説し、今後の動向を整理する。

1.CSRとは何か-日本と欧米の比較をまじえて-
 CSRの概念に関して、基本的な定義ならびに欧米との比較を簡単に解説している。この中で、日本のCSR経営は草創期を脱し、グローバル社会や多様な主体からの圧力が本格的なCSR経営を進めているという指摘がある。
2.投資が後押しして広がるCSR
 CSR推進力の一つが投資市場からの圧力である。社会的責任投資(SRI)がCSRを発展させてきた経緯と、今後の展開の方向について、まとめている。
3.日本の企業におけるCSR
 CSR経営推進の現場から見えてきた問題点を整理している。輸入された感のある現在のCSRブームのはるか昔から、日本にはCSRに則った経営が行われていたとの指摘は、CSRの今後の動向に新しい視点を提供するものである。

<執筆者>1.(株)ニッセイ基礎研究所・川村 雅彦/2.(株)創コンサルティング・海野 みづえ/3.E-square Inc.・ピーター D. ピーダーセン

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掲載日:2018年01月26日(題目を掲載)
更新日:2018年08月02日(概要を掲載)

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