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回分型活性汚泥法

1.はじめに

微生物を用いた水の浄化方法には、培養形式によって水中に微生物を懸濁状態で維持する浮遊型と担体(様々な形状とサイズがある)に付着状態で維持する付着型がある。浮遊型には、次のような特徴がある。
①単位容積あたりの微生物濃度を高く保持できるとともに、汚濁物質と微生物の接触が効果的で、高い処理能力が期待できる。
②プロセスの設計や維持管理において、微生物濃度や汚濁負荷などを正確に制御できる。
ここでは、バケツを用いた回分式の活性汚泥法の実験方法を記載する。好気性微生物を用いた代表的な浄化方法である活性汚泥プロセスの基本設計と維持管理の項目について、初心者が実践的に理解することが目的である。
この方法は運転が簡便であることに加え、現場で稼働している活性汚泥プロセスの改善や問題点の解決の上でも、この実験手法はとても参考となる。曝気槽内の生物反応の経時変化を測定できるので、様々な研究実験にも活用されている。
本ページでは、実験に係る事項のみ記載するので、初心者は活性汚泥法に係る用語や運転・操作因子は他のページを参照されたい。

2.実験方法

(1)実験装置

準備する器具類を次に示す。
30~40Lのバケツ(2個):実験用バケツの容量は処理する排水液量(1/d)の3/2以上とする。他に実験排水の調整用に一つ必要である。
曝気器一式(エアポンプ、散気器、送気チューブ):エアポンプは長期間使用できる業務用小型(1万円前後で入手可能)を用い、送気用チューブの途中に三方分岐を取り付け送気量を調節する。チューブは内径4mmでよい。散気器は大きめの球形エアストーンが適切である(棒状や板状は、攪拌羽に接触する危険性が高い)。三方分岐・チューブ・エアストーンは観賞魚水槽の付属品でよい。
注意事項として、チューブ・エアストーンが回転羽根に触れないように固定すること。一つの方法として、内径13mmの硬質塩化ビニル管(バケツ深さより5cm程度長いもので、最下端から3cm程度の位置にチューブを通す穴を空けたもの)にチューブを通して散気器を取り付ける。この塩化ビニル管を、電気工事用電線(単線)を巻き付け・フックを作るなどして、バケツの上端に掛け固定するとよい(図3を参照)。
攪拌機一式(回転数制御モーター、攪拌棒、攪拌羽根、スタンド):回転数が制御できる理化学用攪拌機が適切である。
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図1 回分式活性汚泥法の操作手順

写真1 回分式活性汚泥法の実験風景

(2)供試排水

実験に用いる排水は、生物分解性の汚濁物質を含むものであれば特に限定はない。本実験の目的は活性汚泥法の基本原理と運転操作を理解することにあるので、簡便に入手・利用できることが望ましい。そこで、安価で長期保存が可能であるスキムミルクを主成分とする模擬排水を用いる。この排水の組成と汚濁成分を表1に示す。BOD濃度を800mg/Lとした理由は、運転管理と操作条件で述べる。
この模擬排水には炭酸水素ナトリウムを多量に添加している。この量は、排水中の窒素全量硝酸イオンに酸化(硝化反応)するに必要なアルカリ量に対応している。この組成の排水では、生物反応で消費されるアルカリを外部より添加する必要はない。
他の生活・産業排水を実験に供する場合には、有機物濃度が高い場合にBOD濃度が800mg/L程度になるよう水道水等で希釈すること、特殊な工業排水では不足する無機塩類などを添加することに留意する。詳細は別ページを参照されたい。

表1 模擬排水の組成と汚濁成分
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(3)測定機器

温度計に加えて、携帯用のpHメーターおよび溶存酸素メーターがあるとよい。

(4)運転・操作方法

下水処理場の返送汚泥を10L 程度採取し、30分~1時間程度静置する。上澄み液を排出して、沈降汚泥3Lを実験バケツに移し、模擬排水10L、水道水2L加えて、実験を開始する。
①模擬排水と汚泥の混合液を攪拌しながら曝気する。攪拌は汚泥が均一に懸濁状になる回転速度とする。過度な攪拌は汚泥フロックを破壊するので注意すること。
②1日1回、所定の時刻に、下記に記載する所定量の混合液を抜き取る。攪拌・曝気を停止して、30分~1時間程度、静置して浮遊汚泥を沈降させて、汚泥を濃縮する。抜き取った混合液は、汚泥濃度の測定用に供する。
③バケツを傾けて、バケツ内の残量が10Lになるまで上澄み液を排出する。18Lポリタンク用電動給油ポンプまたは小型水中ポンプを用いて上澄み液を排出してもよい。このとき、排出液中に汚泥が混入しないよう注意する。排出液の一部をポリ容器(500mL程度)に移して、水質分析に供する。後日、分析する場合には、冷凍庫に保管する。
④新たな模擬排水10Lをバケツに投入する。模擬排水を調整せず、水道水10Lをバケツに投入し、表1の組成の混合粉末を直接添加してもよい。なお、バケツの内壁に10Lと20Lのレベルにマークを付けておくと操作が迅速にできる。
⑤適宜、攪拌・曝気中の混合液の温度、pHおよびDO(溶存酸素濃度)を測定する。

3.運転管理と操作条件

初心者にとっては、少々、煩雑に感じるかもしれないが、浮遊型生物処理プロセスの設計・管理の基本であるので、しっかりと理解することが大切である。活性汚泥法に係る用語や計算式については、他ページに記載の解説を参考にされたい。

(1)負荷量の決定

一般的に、汚水量と汚濁物質濃度から汚水の処理設備の設計を行う。ここでは、実験条件(曝気槽容積:20L、流入量10L、汚水対流時間HRT=48h)が決まっているので、先ず、運転に適切な原水中の汚濁物質の濃度を決定する。
曝気槽内の汚泥濃度Sa=2,500mg/L(仮定)に対して、異なるBOD濃度C iに対する各操作項目の推定値を表2に、汚泥生成量に係る各推定値を表3に示す。
①BOD汚泥負荷Γsが大きくなると(約0.2kgBOD/kgSS以上)と、糸状細菌が増殖しやすい。このことからC iは800mg/L以下が望ましい。
表3に示すように、C iが400mgBOD/L以下では、汚泥の細胞合成量より自己酸化量が大きくなり、汚泥の減少・解体が予想される。
③①および②より、適正なC iは600~800mgBOD/Lが適切と推定される。

(2)活性汚泥濃度の決定

次に、適切な汚泥濃度を決定する。
④バケツ内の混合液20Lを静置して、10L(混合液の50%)の上澄液を適正に排出する(汚泥の流出を防ぐ)には、沈降汚泥のSV30を30%程度以下にすることが望ましい。
ここで、SV30=30%(仮定)として各汚泥濃度Saに対する汚泥に係る各項目の推定値を表4に示す。
⑤正常な活性汚泥のSVIは50~150のの範囲にあり、200を超えると汚泥界面が明確でなくなる。Saが4,000mgSS/L以上では自己酸化量が大きく、汚泥の維持が困難になる。以上のことから、適正な汚泥濃度Saは2,000~3,000mgSS/Lが適切である。
以上の理由により、本実験では流入水のBOD=800mg/L、曝気槽の汚泥濃度Sa=2,500mg/Lとする。なお、この汚泥濃度を維持するために、余剰汚泥として混合液を、毎日1回700mL程度、抜き取る。このとき、汚泥滞留日数SRTは28日となる。

表2 運転管理項目(1)-BOD負荷と操作条件
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表3 運転管理項目(2)-汚泥生成と操作条件
bucket_parameter(2)
 
表4 運転管理項目(3)-汚泥濃度と操作条件
bucket_parameter(3)

4.実験の自動化

図1の操作を模式化したものが図2である。①排水の投入、②攪拌・曝気、③停止・静置、④上澄液の排出の操作を1日に数回行う場合には、管理が大変であるので、図3に示す自動化装置にすると便利である。
この実験では、1日分の投入液を回数ごとに分割して投入する。
また、投入液のBOD濃度を低くし、1回の投入量を増加(最大10Lまで)することもできる。4回であれば、BOD濃度200mg/Lとして、40Lの原排水が処理できる(HRT:12時間)。
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図2 回分法の操作
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図3 回分法の自動化

5.DO・BOD・窒素の挙動

(1)曝気槽内の組成変化

図4に曝気速度を一定としたときの曝気槽内のDO、BOD、Kj-NおよびNO3の濃度変化を示す。なお、図4は代表的な一つの事例であって、投入排水の組成および曝気速度によって様々な挙動を示すことに留意する。
BODは曝気開始とともに減少している。DOは”ゼロ”の状態である。これは、BOD酸化(汚泥の自己呼吸も含む)が酸素の供給速度に依存している状態である。BODが減少して酸素供給速度がBOD酸化速度を超えるようになると、酸素は余剰状態となり飽和状態になる。
Kj-N(有機態窒素およびアンモニアの合計)は、曝気を開始してからしばらくの間、変化は見られない。BODが減少しておよそ30mg/L以下になると、硝化反応が進むようになり、NO3の濃度が増加する。

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図4 曝気速度一定条件下での回分実験における時間経過と組成変化の事例

(2)曝気速度

図4から分かるように、BOD除去のみを目的とするならば、曝気量は次回の曝気停止・静置までにDOが上昇する程度でよい。しかし、硝化反応を十分に行うためには適正な曝気量が必要となる。このためには、処理液の窒素分析を行い実験的に設定する。

(3)SRT

硝化反応に係る細菌の増殖速度、BOD酸化菌に比べておよそ1/10といわれる。硝化菌を曝気槽内に保持するためには、一般的にSRTを7~10日以上とする。本実験条件では、3.(2)に記載したように、SRTを28日としているので十分なものである。

(4)水温

有機物を酸化分解する好気性微生物には、大きく分けて①低温細菌(16~20℃)、②中温細菌(25~37℃)および③高温細菌(50~55℃)に分類される。季節の変わり目に低温細菌と中温細菌の変化が起こる。この時期にはバルキングや汚泥フロックの減少・解体など、活性汚泥の働きが不調となる。冬期において15℃以下の低温時には、活性汚泥の機能が低下する。特に、硝化細菌への影響が大きい。加温や負荷量を低減するなどの注意が必要である。このように季節によって状況が変わるので、年間を通した実験により様々な体験をすることは、将来、実務を担うときの課題解決の参考となろう。
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写真2 活性汚泥法(連続法)における糸状細菌によるバルキング

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有機性排水の浄化に関する分析項目

(1)測定項目

実排水に対する研究開発や課題解決を目的するときには、測定する水質項目として、原排水および処理水のSS、VSS、BOD、COD、TOC、形態別窒素(有機態、アンモニア態、亜硝酸態、硝酸態の各窒素)、りんなどが望ましい。曝気槽の混合液については、pH、DO、水温、SV30、SS濃度およびVSS濃度などを測定する。図4に示すような曝気槽内の組成変化を測定する場合には、所定時間ごとのサンプリングと分析作業に対して、相当な要員、試薬、機器などの準備と経費が必要である。また、特殊な排水などの処理では、生物種の特定や場合によっては遺伝子解析などが必要となる。

(2)測定液の保管

採取した測定液は、直ちに水質測定することが望ましい。保管・後日に測定する場合に、プラスチック容器に密封して冷凍庫に保存し、測定日に解凍・測定してもよい。

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掲載日:2017/05/07
更新日:2017/12/17(写真2を追加、他に更新なし)

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