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浄化槽の整備事業

村上定瞭(水浄化フォーラム)

1.はじめに

本解説では、水浄化に関わる学生や若い担当者が、浄化槽の整備事業について、その概要の理解を深めることを目的としている(本ページの最後に詳しく説明)。
公文書では正確を期すための同じ文章の繰り返しや長い文言について、ここでは簡潔化省略を行っているため、不適切な記述もある。浄化槽業務の担当者は、公文書の原文に基づいて、それぞれの業務を行っていただきたい。
なお、ここでは特に必要な場合を除き、表記する「浄化槽」とはし尿と生活排水を併せて処理するもの(合併処理浄化槽)で、「みなし浄化槽」とはし尿のみを処理するもの(単独処理浄化槽)を示す

(1)浄化槽の整備事業とは

浄化槽法の成立(昭和58年)・施行(昭和60年)に伴って、浄化槽に係る政府・地方自治体の整備事業が実施され、浄化槽の普及と水域環境の保全に貢献している。
整備事業には、浄化槽の設置主体(浄化槽の管理責任者)の違いにより、「個人設置型」と「市町村設置型」の2種類がある。
個人設置型とは個人(住民)が浄化槽を設置しその管理責任者となることで、市町村設置型とは市町村が浄化槽を設置しその浄化槽の管理責任者となることである。
個人設置型に対しては、浄化槽の設置・改造(変則浄化槽)に対して、その設置費用の一部について補助金が交付される事業(環境省)である。一方、市町村設置型は、戸立住宅等に設置する事業(「浄化槽市町村整備推進事業」:環境省、「個別排水処理施設整備事業」:総務省)、複数の戸立住宅の生活排水をまとめて処理する浄化槽を設置する事業(「小規模集合排水処理施設整備事業」:総務省)と市町村が単独で実施する住宅団地や学校などに設置する事業(市町村独自の浄化槽設置事業)がある。
ここでは、環境省が実施する「浄化槽整備設置整備事業」および「浄化槽市町村整備推進事業」を中心に述べる。
なお、「農(漁・林)業集落排水事業」と「簡易排水施設整備事業」(以下、集落排水事業)によって整備される汚水処理施設は、法律上浄化槽に該当し、市町村が浄化槽の管理者であるが、集落排水処理施設については、別のページで説明する。

(2)浄化槽整備事業と交付金制度

市町村が実施する「浄化槽設置整備事業」(昭和62年創設)および「浄化槽市町村整備推進事業」(平成6年度創設)は、平成16年度までは、国が国庫補助金で市町村を助成してきたが、平成17年度からは交付金制度に移行し、平成18年度から交付金制度に切り替えられた。現在、前記の事業に対し、「循環型社会形成推進交付金」と「地方創生汚水処理整備事業交付金」により、国から市町村に交付金を交付する制度となっている。なお、「地方創生・・交付金」は、平成28年度から地域再生基盤強化により再編されたものである。
住民側の立場からみると、個人が「浄化槽設置整備事業」を活用する場合は、設置費用の一部が市町村から「補助金」として交付される。また、個人が「浄化槽市町村整備推進事業」を活用する場合は、下水道事業や集落排水処理施設事業と同じように設置費用の一部を市町村に「分担金」を支払うこととなる。
ここでは、上記の浄化槽整備事業の内容および上記の交付金の制度について、それぞれの概要を以下に説明する。

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図1 浄化槽整備事業における設置費用と交付金制度

なお、設置費用には基準額が設定されている。また、2.(9)および3.(10)に記載する「環境配慮・防災まちづくり浄化槽整備推進事業」、「低酸素社会対応型浄化槽等集中導入事業(東日本震災復興交付金)」については、個人設置型では補助金は50% となり地方負担分は2/3から1/2に低減され、市町村設置型では国庫助成率1/2となり市町村負担率は17/30から12/30に低減される。また、2.(10)に記載する地方負担に対する特別交付税の措置がなされる。

(3)浄化槽整備事業の実績

浄化槽設置整備事業および浄化槽市町村設置推進事業は生活排水対策への要望の高まりを背景に、同事業に取り組む市町村数および国庫補助事業の予算ともに急速に増加してきた。表1に同事業の推移を示す。なお、浄化槽関連予算は、前述したように循環型社会形成推進交付金および地方創生汚水処理整備事業交付金へ再編されたが、浄化槽整備事業に必要な予算額が確保されている。

表1 浄化槽整備事業の推移
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2.浄化槽設置整備事業

昭和60年に浄化槽法が施行され、トイレを水洗化するとき、下水道未整備地域では、浄化槽またはみなし浄化槽の設置が法律上義務づけられた。しかし、浄化槽設置者にとって、みなし浄化槽でも事足り、し尿と生活雑排水を処理する「費用が高く、容積の大きい浄化槽」を設置する必要はなかった。しかし、以前から、生活排水による水道水源や公共用水域の水質悪化が社会問題となっており、浄化槽の普及促進のため、昭和62年に環境省(当時は旧厚生省)は国庫補助事業として「浄化槽設置整備事業」(実施要項の取扱について)を創設した。この国庫補助金は、浄化槽の設置者に直接交付されるものではなくて、市町村がその設置者を助成する場合に、国がその市町村に対して助成する仕組みである。
<助成に係る公的負担の根拠>
生活雑排水の環境負荷のうち、個人の努力により削減可能な部分を除いた社会的便益に相当する部分について公費負担を行うという考え方である。公的負担は人槽区分にかかわらず定率(4割)として、人槽ごとの国庫補助基準額を算定している。

個人の努力による削減可能な環境負荷とは、し尿(33%)・生活雑排水(67%)の一部(台所の三角コーナーや食用油の紙による拭き取り・固形化による除去など、20%)・浄化槽で除去できない放流分(5%)の合計で、原水負荷量から努力削減量を差し引いた残分(約40%)を社会的便益に相当するものとしている。

(1)目的

市町村が浄化槽の計画的な整備を図り、し尿と雑排水を併せて処理することにより、生活環境の向上および公衆衛生の向上を目的としている。

(2)対象事業

市町村が雑排水対策を促進する必要がある地域において、浄化槽の計画的な整備を図るため、その設置・改築を行う者に対し、これに要する費用を助成する事業である。この事業には、みなし浄化槽の撤去に必要な工事も含まれる。

(3)対象となる地域

助成対象となる地域は、雑排水対策を促進する必要がある以下ののいずれかに該当するもの。
下水道事業計画区域以外の地域のうち、以下の(ア)~(キ)のいずれかに該当する地域
(ア)湖沼水質保全特別措置法第3条2項に規定する指定地域
(イ)水質汚濁防止法第14条の8第1項に規定する生活排水対策重点地域
(ウ)水道水源の流域
(エ)水質汚濁の著しい閉鎖性水域の流域
(オ)水質汚濁の著しい都市内中小河川の流域
(カ)自然公園法第2条第1項に規定する自然公園等すぐれた自然環境を有する地域
(キ)その他人口増加が著しいなど上記の地域と同等以上に雑排水対策を推進する必要がると認められる地域
下水道の整備が当分の間(原則として7年以上)見込まれない下水道事業計画区域内の地域のうち、
上記の(ア)または(イ)に該当する地域
水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律第5条の規定に基づく都道府県計画に定められた浄化槽の整備区域
*)上記の事業要件は、原則として全体計画において、その地域内の全戸に浄化槽が整備され、かつ、地域住民等による組織的な維持管理体制が整っていること。

(4)対象となる浄化槽

次のまたはに該当する浄化槽が対象となる。
浄化槽法の規定による構造基準に適合する浄化槽または高度処理型の変則型の浄化槽であって、かつ、BOD除去率90%以上、放流水のBOD20mg/L(日平均)以下の機能を有するとともに、平成4年10月30日付け衛浄第34号厚生省浄化槽対策室長通知に定める「合併処理浄化槽設置整備事業における国庫補助指針」が適用される浄化槽にあっては、同指針に適合するものであること。
浄化槽法の規定による構造基準に適合する既設の浄化槽であって、次の(ア)~(ウ)の全てに該当するもの。
(ア)処理対象人員が501人以上であって、原則として設置後7年以上経過したもの。
(イ)老朽化により周辺環境に著しい影響を及ぼしているもの。
(ウ)改築後、BOD除去率90%以上、放流水のBOD20mg/L(日間平均)以下の機能を有するもの。
*)変則浄化槽とは、し尿のみを処理するみなし浄化槽と変則合併処理装置(みなし浄化槽の処理水と雑排水を処理する装置)とを組み合わせたものであり、設置については建築基準法第31条第2項の規定に基づく国土交通大臣の認定が必要である。

(5)事業の要件

次の全ての事項を満足することが要件である。
・交付金の交付に際しては、浄化法第7条、第11条に基づく検査依頼書の添付を求めるなど、法定検査の実施の確保につとめること。
・やむを得ない場合を除き、設置完了後1年以内に便所、台所、風呂等と浄化槽の間および浄化槽と放流先を管渠で接続し、使用を開始すること。
・日本工業規格「建物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302-2000)2に定めるただし書きに基づき、市町村は、浄化槽人員は住宅の延べ面積のみで決定されるものでないことを浄化槽設置者に対して理解させること(事例:大阪府)。
・市町村は、設置する浄化槽の使用予定人員を可能な限り把握し、事業を実施すること。

(6)高度処理型浄化槽の設置への助成

本助成は、次ののいずれかに該当するものに対して助成される。
窒素又はリン除去能力を有する高度処理型の浄化槽(変則浄化槽を含む、以下、同様)に該当する浄化槽は、放流水の総窒素濃度20mg/L以下または総リン濃度1mg/L以下の機能を有するものであって、上記「(3)対象となる地域」に該当する地域のうち、次の(ア)〜(ウ)のいずれかに該当する地域へ適用される。
(ア)「窒素含有量又はリン含有量についての排水基準に係る湖沼」(昭和60年環境省告示第27号)により指定された湖沼に生活排水が排出される地域
(イ)「窒素含有量又はリン含有量についての排水基準に係る海域」(平成5年環境省告示第67号)により指定された海域に生活排水が排出される地域
(ウ)上水道の取水口より上流に位置する地域でかつ水源地域対策特別措置法(昭和48年法律第118号)第2条2項で指定するダムの周辺地域
窒素およびリン除去能力を有する高度処理型の浄化槽は、放流水の総窒素濃度20mg/L以下および総リン濃度1mg/L以下の機能を有するものにあっては、上記「(3)対象となる地域」に該当する地域のうち、上記の(ア)~(ウ)のいずれかに該当する地域へ適用される。
BOD除去能力を有する高度処理型の浄化槽は、BOD除去率97%以上、放流水BOD濃度5mg/L(日間平均)以下の機能を有するものにあっては、上記「(3)対象となる地域」に該当する地域のうち、生活環境の保全や公共水域の水質保全のための水質汚濁防止法第3条第1項の排水基準にかえてBOD、CODについて、同項の排水基準で定めた許容限度よりも厳しい許容限度を定められている地域に適用される。
<高度処理型浄化槽設置の助成額>
通常型浄化槽(図1の個人設置型)の補助金に加えて、高度処理型浄化槽(上限基準額以内)と普通型浄化槽(設定基準額)との設備費用の差額を公費で負担し、公費負担は地方2/3、国庫1/3となっている。

(7)みなし浄化槽撤去に関する助成

既存のみなし浄化槽から浄化槽への転換を進めるため、浄化槽の設置に伴いみなし浄化槽の撤去が必要となる場合において、基準額の特例が適用される。
対象となる地域は、市町村が進める浄化槽整備区域
基準額の特例の内容は、浄化槽の設置とこれに伴い必要となるみなし浄化槽の撤去に要する費用が、現行の基準額を超えるとき、環境大臣が必要と認めた基準額とする。
<みなし浄化槽撤去分の助成額>
現行の基準額(図1の個人設置型の補助金)に加えて、最大9万円を加えた金額を基準額(地方負担2/3、国庫助成1/2)している。

(8)計画策定調査費

平成19年度より、浄化槽整備に係る計画策定調査費が助成対策に追加され、計画策定に要する費用として初年度の事業費(基準額)に3.5%を乗じた額の範囲内で助成されることとなった。
平成21年度からは、その用途に、地域の浄化槽の設置状況等を整理した「浄化槽整備台帳の作成」が追加された。また、汚水処理施設整備を浄化槽事業のみで実施している市町村については、その算定方法を「事業費の3.5%」から「直接必要な額」に拡充された。

(9)その他の事業

「環境配慮・防災まちづくり浄化槽整備事業」、「低酸素社会対応型浄化槽等集中導入事業(東日本震災復興交付金)」については、説明を省略する。

(10)地方負担額に対する交付税措置

平成元年度から国費を除いた地方負担額(図1の個人設置型の県・市町村負担)については、その8割(平成6年度以降は表2に示す乗率(以下、同様)を乗じた額)を特別交付税で措置している。
平成3年度からは、国の補助を受けずに行う浄化槽設置整備事業(以下、本節では、整備事業と略称)についても、地方負担額(国庫補助事業基準により算定した額を上限とする)に2/3を乗じた額の8割(平成6年度以降は、これに乗率を乗じた額)を同じく特別交付税により措置している。
平成4年度からは、国の補助を受けずに行う整備事業の地方負担部分を対象として、過疎対策事業債および辺地対策事業費が充当できることとなった。この過疎債・辺地債の元利償還金については、普通交付税で過疎債の7割、辺地債8割が措置されることとなっている。

表2 浄化槽設置整備事業に係る国庫補助の乗率
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3.浄化槽市町村整備推進事業

水源地域をはじめとした生活排水対策を緊急とする地域においては、地域全体を面的に整備する必要がある。しかしながら、個人が設置主体となる浄化槽整備事業では、個人的負担が大きく、さらに個人の意向に左右されるため、その整備には限界がある。環境省(当時、旧厚生省)は平成6年に市町村自らが設置主体となる浄化槽設置に対して国庫補助事業として「浄化槽市町村整備推進事業」(実施要項の取扱について)を創設した。この制度は、浄化槽設置全体に助成を行い、さらに国庫補助の残りの部分についても、起債充当およびその元利償還金についての交付税措置といった地方財政措置がなされている。

(1)目的

市町村が設置主体となって浄化槽を特定地域を単位として整備し、生活環境の保全および公衆衛生の向上に寄与することを目的とする。

(2)対象事業

生活排水を緊急に促進する必要がある地域において、地域を単位として浄化槽の計画的な整備を図るため、市町村が設置主体となって浄化槽の整備を行う事業に必要な費用を助成する。

(3)対象となる地域

次のまたはの地域に適用される。
水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律第5条の規定に基づく都道府県計画に定められた浄化槽の整備区域
下水道法に基づき策定された事業計画に定められた予定処理区域以外の地域であって、以下の(ア)〜(サ)のいずれかに該当する地域であること。
(ア)湖沼水質保全特別措置法第3条2項に規定する指定地域であって、汚水衛生処理率が85%未満の地域
(イ)水質汚濁防止法第4条の2により指定された地域(第6次水質総量規制指定地域)であって、汚水衛生処理率が85%未満の地域
(ウ)水質汚濁防止法第14条の8第1項に規定する生活排水対策重点地域であって、汚水衛生処理率が85%未満の地域
(エ)山村振興法第7条第1項に規定する振興山村であって、汚水衛生処理率が65%未満の地域
(オ)過疎地域自立促進特別措置法第2条に規定する過疎地域であって、汚水衛生処理率が65%未満の地域
(カ)農業振興地域の整備に関する法律第6条第1項に基づき指定された農業振興地域内で、農業集落排水施設の処理区域周辺地域として環境大臣が適当と認める地域
(キ)漁港漁場整備法第6条の規定により指定された漁港の背後の漁業集落およびその周辺地域等であって、環境大臣が適当と認める地域
(ク)自然公園法第2条1項に規定する自然公園地域
(ケ)有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律第2条第1項に定める有明海および同条第2項に定める八代海の流域
(コ)浄化槽による汚水処理が経済的・効率的な地域であって、環境大臣が適当と認める地域
(サ)既に事業を実施している地域

(4)対象となる浄化槽

2.(4)を参照。

(5)対象となる範囲

浄化槽(変則浄化槽を含む、以下、同様)の整備に直接必要な次に示すの範囲に対して適用される。
浄化槽本体費用および本体設置に必要な工事費(流入、放流に係る管渠およびますに係る費用を除く)
浄化槽本体に係る積雪荷重対策および凍結防止に必要な工事費
みなし浄化槽の撤去に必要な工事費
高度処理型浄化槽と通常型浄化槽の整備に必要な費用の差額

(6)事業の要件

以下~⑦の全ての要件を満たすこと。
なお、浄化槽の人槽は、日本工業規格「建物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302-2000)の2に定めるただし書きに基づき、検討することとされている。市町村は、設置する浄化槽の使用予定人員を可能な限り把握し、事業を実施すること。
事業の実施地域は、将来的に浄化槽(変則浄化槽を含む)の整備が妥当と判断される地域内において設定されること。
浄化槽の工事着手までに当該工事係る住民から浄化槽の設置および便所等との接続について文書で承諾を得ていること。
原則として、計画全体において、事業実施区域内の全戸に戸別の浄化槽を整備する事業であること。ただし、地形等の特殊状況により複数戸に1基の浄化槽を設置してもよい。
当該年度内に20戸以上の住宅等に戸別の浄化槽を整備すること。
ただし、事業が3年以上継続した場合、または累積50戸以上の整備した場合には、事業年度内に整備する戸数を10戸以上とする。また、離島振興法、奄美群島振興開発特別措置法、小笠原諸島振興開発特別措置法、過疎地域自立促進特別措置法、山村振興法、北海道開発法、沖縄振興開発特別措置法、有明海および八代海を再生するための特別措置法、湖沼水質保全特別措置法に定める地域にあっては、事業年度内に整備する戸数を10戸以上とする。
ただし、次の(ア)~(ウ)のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
(ア)事業が7年以上継続した場合であって事業整備区域における浄化槽処理人口普及率が70%以上である場合
(イ)累積100戸以上整備した場合であって事業整備区域における浄化槽処理人口普及率が70%以上である場合
(ウ)下記「(10)その他」に記載する環境配慮・防災まちづくり浄化槽整備事業を実施する場合
本事業により整備された浄化槽については、やむを得ない場合を除き、設置完了後1年以内に便所、台所、風呂等と浄化槽の間および浄化槽と放流先を管渠で接続し、使用を開始すること。
設置後の浄化槽の適正な維持管理を実施するための住民等の協力体制が整っていること。また、市町村がの状況を把握し、未接続の場合にあっては、住民に対し文書で接続を指導する等、その解消に努めること。
市町村の公営企業として実施し、本事業により整備された浄化槽の維持管理については、当別会計により経理し、適正な料金の徴収が確実と見込まれるものであること。

(7)財政措置

本事業に要する経費のうち、浄化槽の整備に直接必要な浄化槽本体および本体の設置に必要な工事(流入、放流に係る管渠およびますに係る費用を除く)について、財政措置を講じることとされている(図1の市町村設置型、参照)。また、平成18年度に浄化槽設置に伴うみなし浄化槽の撤去に必要な工事費の補助(上記2.(7)を参照)、平成20年度に高度処理型浄化槽の普及促進のための基準額の特例(上記2.(6)を参照)が、それぞれ追加された。
(国費)事業費の1/3が国費(交付金)により助成される。
(地方債)事業費に下水道事業債を充当し、その元利償還の49%は地方交付税措置される。
(分担金)事業費から国庫助成額および下水道債充当額の合算額を控除した部分に係る財源について、地方自治法第224条の規定に基づく分担金として、本事業の受益者から徴収することが望ましいとされている。

(8)公的施設単独処理浄化槽集中転換事業

市町村設置型の浄化槽整備を行っている市町村が、公的施設の単独処理浄化槽を集中的に撤去し、合併処理浄化槽へ転換する費用について助成を行う。
① 事業内容: 浄化槽市町村整備推進事業における市町村が公的施設の単独処理浄化槽を集中的に撤去、合併処理浄化槽へ転換するための助成。
② 実施要件: 市町村が所有する公的施設の単独処理浄化槽について、整備期間中に計画的に合併処理浄化槽に転換する事業を定めて実施する事業であること。
③ 助成率: 助成率1/3
④ 実施期間: 平成28年度~

(9)浄化槽整備に係る調査費等への助成

平成12年度より、浄化槽整備に係る事務費についても助成対象となり、浄化槽整備事業に直接必要な事務費として、事業費(基準額)に3.5%を乗じた額の範囲内で助成されることとなった。
平成16年度より、浄化槽整備に係る計画策定調査費が助成対象に追加され、計画策定に必要な費用として、初年度の事業費(基準額)に3.5%を乗じた額の範囲内で助成されることとなった。
平成21年度からは、その用途に、地域の浄化槽の設置状況等を整理した「浄化槽整備台帳の作成」が追加された。また、汚水処理施設整備を浄化槽事業のみで実施している市町村については、その算定方法を「事業費の3.5%」から「直接必要な額」に拡充された。

(10)他の関連事業

「環境配慮・防災まちづくり浄化槽整備事業」、「低酸素社会対応型浄化槽等集中導入事業(東日本震災復興交付金)」については、説明を省略する。

(11)実 績

表3 浄化槽市町村整備推進事業の都道府県別の実施市町村数(平成28年度現在)
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4.循環型社会形成推進交付金

(1)目的

廃棄物の3R(リデュース・リユース・リサイクル)を総合的に推進し循環型社会の形成を図るため、国と地方が協議し、市町村が自主性と創意工夫を活かしながら、広域的・総合的に廃棄物・リサイクル施設の整備を推進する「循環型社会形成推進交付金」制度が平成17年に創設された。

(2)概要

市町村(事務組合を含む)が広域的な地域について作成する「循環社会形成推進地域計画」(以下、本節では地域計画と略称)(概ね5カ年)に基づき実施される事業の費用について交付する。
同事業の特徴は、(a) 地方の自主性・裁量性が高く、地域の特性に応じた循環型社会形成推進計画を策定すること、(b) 戦略的な目標設定と事後評価が重視され、廃棄物の発生抑制とリサイクルの推進、最終処分量の抑制などに関する目標を設定しその達成状況を評価・公表すること、(c) 国と地方が構想段階から協議し、地方の独自性・自立性も発揮しつつ循環型社会の形成を推進すること、などが上げられる。

地域計画の作成

計画対象地域の市町村が、国および都道府県とともに「循環型社会形成推進協議会」を設け、構想段階から協議を行い、3R推進のための目標と。それを実現するために必要な事業等を記載した地域計画を作成し、策定された地域計画は環境大臣へ提出することとなっている。浄化槽設置整備のみの計画については、当面、従来からの生活排水処理基本計画をもって、地域計画に代わるものとして取り扱っている。

交付金の交付

地域計画に位置づけられた施設整備に交付金を交付する。

事後評価

市町村は、計画期間終了後、地域計画の目標の達成状況に関する事後評価を行い、公表するとともに環境大臣へ報告する。

(3)交付対象

対象地域

人口5万人以上または面積400km2以上の計画対象地域を構成する市町村に限る。
特例として、環境大臣が特に浄化槽が必要と認めた地域を含む市町村および次の地域を含む市町村は、人口または面積の要件に該当しない場合でも交付対象となる。
沖縄県、離島地域、過疎地域、山村地域、半島地域、豪雪地域

対象施設

交付金の対象施設は、循環型社会形成を推進するための幅広い施設を対象し、マテリアリサイクル施設、エネルギー回収型廃棄物処理施設、廃棄物リサイクル施設、浄化槽、最終処分場等が対象となり、複数の施設のみでなく、1施設のみでも対象となっている。平成28年度では、以下の施設が交付対象となっている。
マテリアルリサイクル推進施設、エネルギー回収推進施設、エネルギー回収型廃棄物処理施設、高効率原燃料回収施設、高効率ごみ発電施設、最終処分場(可燃性廃棄物の直接埋立施設を除く)、有機性廃棄物リサイクル推進施設、エネルギー回収能力増強事業、最終処分場再生事業、コミュニティ・プラント、漂流・漂着ごみ処理施設、浄化槽市町村整備推進事業、浄化槽設置整備事業、可燃性廃棄物直接埋立施設、廃棄物処理施設の基幹的設備改良事業、施設整備に関する計画支援事業、焼却施設、廃棄物処理施設基幹的設備改造、廃棄物処理施設の長寿命化総合計画策定支援事業

(4)交付金の額算定

対象事業費の1/3を市町村に交付

上記に記載の事業に適用される。

対象事業費の1/2を市町村に交付

循環型社会を形成をリードする先進的なモデル施設および浄化槽市町村整備推進事業、浄化槽設置整備事業のうちの循環配慮・防災まちづくり型浄化槽整備推進事業について適用される。

(5)実 績

表4 循環型社会形成推進交付金の予算額推移
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5.地方創生汚水処理施設整備推進交付金

(1)経緯

小子高齢化・産業構造などの社会経済情勢の急激な変化に対応し、地域の経済活性化・雇用創出・活力再生を図るためには、地域における地理的・自然的特性、文化的所産、多様な人材の創造力を生かし、官民の連携による創意工夫による自主的・自立的な取組を進めることが重要である。
平成15年の政府閣議決定により「地域再生本部」が設置され、地域再生のための「基本方針」・「今後の方向と戦略」が策定された。「国から地方へ」・「官から民へ」の考えのもと、地方の権限と責任を拡大するなど、各種政策手段を組み合わせた取組を推進し、府省横断的なものも含め補助金改革を行い、持続的な地域再生につなげることとした。
このような経緯を経て、「地域再生法」が制定され、平成17年より施行された。この法律の概要は、政府が「地域再生基本方針」を定め、地方公共団体が「地域再生計画」を作成して、内閣総理大臣の認定を申請し、内閣総理大臣は、関係省庁の長の合意を得て、計画を認定することとなっている。
地域再生計画には、「特別の措置」として、課税の特例、地域再生基盤強化交付金、補助対象財産の有効活用に関する事項を記載することができる。このうち、地域再生基盤強化交付金には、(a)道整備交付金(道路、農道、林道)、(b)汚水処理施設整備交付金(下水道、集落排水施設、浄化槽)、(c)港整備交付金(港湾施設、漁港施設)の3種類がある。
平成17年に「汚水処理施設整備交付金」が創設され、地域再生法の施行に伴い、平成28年に「地方創生汚水処理施設整備交付金」に再編された。

(2)目的

地域が自主性・裁量性の高い資金として活用できるよう国庫補助負担金制度の改革を行い、農林水産省・国土交通省・環境省所管の汚水処理施設の整備を相互に事業進度を調整しながら整備することによって、効率的な汚水処理施設の普及促進を図る。

(3)概要

「地方創生汚水処理施設整備推進交付金」は、各省所管の汚水処理施設の整備を効果的に実施するため、地域再生計画に基づいて市町村が実施する汚水処理施設の整備事業に対して、事業間で融通や年度内での事業量の変更が可能な交付金制度で、事業完了後に評価を行う制度である。
市町村において、浄化槽整備事業と公共下水道、農業集落排水処理施設および漁業集落排水処理施設のいづれかの事業を連携して複数の事業を実施することが、事業要件となっているのみで、これ以外特段の要件は設定されていない。
この事業を実施するにあたり地域再生計画を市町村が作成し、内閣府に提出し、当該計画を内閣総理大臣が認定する仕組みとなっている。
交付金の交付については、市町村は各事業官庁へ(浄化槽は環境省、以下、同様)へ交付申請し、事業官庁(環境省)は内閣府から予算の移し換えを受け、事業官庁(環境省)から市町村へ交付される仕組みとなっている。
本制度を適用を受けるに当たっての具体的要件は、次の(4)(6)のとおりである。

(4)対象となる市町村

市町村が、地域再生計画を策定し、地域再生計画の目標を達成するために必要な事業として、以下に示す「汚水処理施設」の整備に関する事項を位置づけていること。

(5)制度の要件

同一の市町村で所管を跨がった2種以上の施設を計画中期間中(5カ年程度)に実施するもので、施設整備により汚水処理の普及促進をはかるもであること。
対象区域は、地域再生計画の区域内でであり、かつ、対象区域の境界および整備手法が明確になっていること。
事業実施による効果が明確であること。

(6)対象施設

対象とする汚水処理施設は、農業集落排水施設・漁業集落排水施設(農林水産省)、公共下水道(国土交通省)、浄化槽(環境省)となっている。

(7)交付金の交付

市町村が、下水道、集落排水施設、浄化槽のうち2種類以上の事業を行う場合に地域再生計画を作成し、内閣総理大臣の認定が受けられれば、その計画に基づいて、予算の範囲内で年度ごとに各事業を所管する省庁から交付金が交付される。なお、計画期間内の交付金限度額は従来の補助事業における補助率、補助範囲内の規定に基づいて計算された額として算定される。

(8)実 績

平成17年度に汚水処理施設整備交付金が創設されて以来、すでに10年を超え、地域再生計画の申請件数が順調に伸びている。各年度の交付金予算額と申請実績の推移を表3に示す。
平成28年8月現在、地方創生汚水処理施設整備推進交付金を含む実施中の地域再生計画数94件であり、この内公共下水道を含むものが77件、集落排水施設を含むものが28件、浄化槽を含むものが88件となっている。

表5 地域再生基盤強化交付金の予算額と認定件数
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<国・地方財政および本ページの意図>

国の財政は、その収入の大部分は租税収入である。しかし、地方公共団体では地方公共団体が自ら徴収する地方税、使用料、手数料、分担金、負担金などのほか、国の基準によって交付される地方交付税や地方譲与税、国の裁量によって交付される国庫補助金など、様々な種類にわたり、その性質の違い、制度の仕組みや収入手続きの違いなどによって、地方公共団体の財政運営は非常に複雑なものとなっている。
環境保全については、科学技術のみでなく、住民をはじめ、国・自治体・業界の努力・協力・連携なくして、その目的達成はできない。
本ページは、浄化槽整備に係る国の助成制度や地方財政について理解することが目的ではなく、社会基盤の整備について様々な仕組み・制度があることの理解を深めることを意図している。

参考文献

日本環境整備教育センター:浄化槽2016-整備事業の手引き
(各表の数値は、同文献より抜粋・転記した。)


掲載日:2017年9月2日
更新日:2017年9月5日

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