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環境技術 2010


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2010年 特集概要
      目 次 総目次-分野別-
 1月号 2010年環境行政展望
 2月号 フィリピンの環境保全と農業・観光・エネルギーの展望
 3月号 日本の特性を生かした自然エネルギーの活用と将来
 4月号 PRTR法成立10年,化学物質管理は前進したのか
 5月号 環境ホルモン研究の到達点
 6月号 改正土壌汚染対策法と技術・社会的諸問題
 7月号 ストリートキャニオン
 8月号 研究論文特集
 9月号 都市・農村の地域連携を基礎とした低炭素社会のエコデザイン
10月号 温室効果ガス25%削減に向けたエネルギー戦略
11月号 下水道における新しい課題と取り組み
12月号 「春の小川」の環境用水を考える」


1月号  2010年環境行政展望



 2月号フィリピンの環境保全と農業・観光・エネルギーの展望
編集: 2010-02-00 三重大学名誉教授・法貴 誠

 日本は少子高齢化が進み、成熟社会への移行に伴う諸問題が顕在化している。また、物づくりと輸出依存の経済は世界同時不況で将来は不透明である。一方アジア地域は世界最大の人口と経済潜在力を有し、ASEAN諸国は同時不況の中でも安定した存在感を示している。
<アジアと日本> 今やアジアに巨大市場が形成され、物の製造やサービスの効率化をいかに行い、食糧やエネルギー分野での経済活動を環境といかに共生させるかが問われている。ここでは日本がアジアで技術移転や価値の共有を通して互恵関係を築くことが重要になる。将来の日本はアジア市場を必要とし、アジア諸国は日本の省エネや環境技術を必要とする。今後は、アジア諸国を隣国として信頼関係を深めることや環境保全とエネルギー資源の共同事業など幅広い協力が求められる。
<フィリピンと日本> フィリピンは地理的にも日本に近く、経済的な結びつきも強いにもかかわらず、人的交流は盛かんとはいえず実情が知られていない。それは、過去の政情不安や一部の反政府組織との抗争が新聞・テレビで報道され、危険情報に対する過剰反応があるのかもしれない。しかし、フィリピンの政情は1990年以降着実に改善され経済成長も4~5%レベルを維持している。また、350年間をスペインに支配され、その後50年間は米国の植民地となり苦難の歴史を歩んだが米国の影響は大きく様々の面で国際基準が普及している。そのため製造技術では後進のフィリピンは観光・サービス法制では先進性に富む。これは日本が製造技術で先進しながらサービスや法制面では国際基準に遠いのと好対照でもある。そこで本特集では東南アジアで英語が自在に通じ、カトリックとレディー・ファーストの国フィリピンをとりあげた。
<特集の内容> フィリピンは概して自然環境に恵まれ、食糧・バイオマスの生産に適すると同時にクリーンな地熱発電でも世界第2位を誇る。これらの資源やバイオマス生産の潜在性は高いが、資源の利活用には効率的なエネルギー技術や環境技術を欠くことはできない。一方フィリピンには環境保全の諸問題が山積し、これらの解決なしに経済発展は望めない。急速な近代化と人口増加による大気汚染、水や土壌の汚染、森林破壊など環境悪化は深刻である。そこで、食糧生産と関わる土壌や水環境、環境保全と技術移転の諸問題、電力や観光産業について展望した。

2010-02-01 フィリピンにおけるコメ生産と環境保全
 コメ増産の戦略と環境保全の現況を水資源・農薬・肥料・籾殻利用などの面から考察し、日本の農業技術の移転について言及している。
2010-02-02 フィリピンにおける土壌資源の特徴と利用・保全
 多様な土壌の種類と特性を考察し、適正利用保全対策について述べられている。
2010-02-03 フィリピンの環境保全に関連するエネルギーおよび電力事情
 環境保全とエネルギー自給率60%を目指すフィリピン政府の戦略を、効率向上や省エネなどの具体的な数値目標とともに示している。
2010-02-04 環境保全における技術移転と人材育成
 フィリピンの環境政策に沿って、(財)国際環境技術移転研究センター(ICETT)が実施してきた日本の支援とそのあり方が論じられている。
2010-02-05 フィリピン稲作研究所における環境管理とバイオマス利用の研究
水田環境の保全や籾殻の熱・エネルギー・有機肥料などへの循環利用を目指した研究と管理活動を紹介している。
2010-02-06 フィリピン国ラグナ湖地域住民の湖沼保全意識調査
 途上国における急速な都市化と湖沼環境の問題が住民参加や環境教育の視点から述べられている。
2010-02-07 フィリピンの環境と観光産業-現状と将来性-
500万人の雇用を生み出す観光産業やエコ観光事業について、観光省の取り組みと行政・民間・地域住民の連携の事例を報告している。
2010-02-08 マニラ湾の汚染とICMによる再生
 マニラ湾の統合的沿岸管理(ICM)を紹介している。

<執筆者> 2010-02-01 (独)農研機構中央農業総合研究センター・椛木 信幸/2010-02-02 元鹿児島大学・浜崎 忠雄/2010-02-03 University of the Philippines:Jessie C. ELAURIA, Marilyn M.ELAURIA, 法貴 誠/2010-02-04 (財)国際環境技術移転研究センター・真下 英人/2010-02-05 Philippine Rice Research Institute:Manuel J. REGALADO, Eulito U.BAUTISTA, 法貴誠/2010-02-06 名古屋大学:Victor S. MUHANDIKI, 山田 淳, 榊原 正剛, 福田 純平/2010-02-07 Philippine Department of Tourism:Valentino. L. CABANSAG/2010-02-08 (財)国際エメックスセンター・古武家 善成

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 3月号日本の特性を生かした自然エネルギーの活用と将来
編集: 2010-03-00 阪南大学(非常勤)・本庄 孝子

 現在、我が国は持続可能な低炭素社会実現のために種々の取組がなされている。地域に賦存する自然エネルギーの太陽、風力、水力、バイオマス、雪氷、地熱などを有効利用することは、エネルギー自立と、低炭素社会実現への一翼を担う利点がある。
<日本の特徴> 我が国は中緯度に位置し、火山国であり、国土の2/3が森林で世界一林材を蓄積し、豊富な水資源、面積当たり世界一の海岸線を有し、地域によっては降雪量も多い。多様な自然エネルギーに恵まれた結果、太陽・風力・水力・地熱発電などの日本の技術は海外で大きく貢献している。
 我が国は2002年に2010年の新エネルギー(大型水力発電を除く)導入目標値を示した。それは新エネルギーの割合を全エネルギー需要の1%から3%へ増大させるものであったが、これまで政策が伴わず低迷しており、3%を実現するためにはかなり思い切った政策が必要だ。
<日本の課題> 我が国のGDP当たりCO2排出量は世界最小で、世界一の省エネルギー国であり、技術開発では素晴らしい成果が生まれている。近年、世界的な環境意識の高まりにより、CO2を排出しない自然エネルギーの活用量が急激に増加している。我が国もこの世界の動向をチャンスに変える政策が求められている。
 国民のレベルでは、菜の花プロジェクト等のように、自然エネルギーに関するNPO活動が活発で、潜在的な力は十分に備わっている。各メディアがこれら自然エネルギーに関する情報を取り上げ、意義と趣旨を十分に国民に知らせることも大きな力になる。また、自然エネルギー産業の活発化は雇用を生むことが海外で証明されており、NPO活動を促進する施策が求められている。
<推進法の整備> 我が国は2009年11月から太陽光発電の余剰電力を固定買取り価格48円/kWで導入が決まったが、全ての自然エネルギーに対しての制度「自然エネルギー政策法」が必要である。
<電力網の整備> EUの自然エネルギー普及の陰に、EU全体が太い電力網で繋がっていることがある。自然エネルギーの導入でお互いに融通できるシステムになっているのである。一方、日本の電力網は都市部では太いが、地方は細くて多量の自然エネルギーの導入は電力の安定を欠くと、敬遠されている。自然エネルギーが入ってもびくともしない「太い電力網の整備」は我が国でも必要であり、東日本と西日本で大きな電力網を構築すべきと考える。環境のリーダー国になれる潜在力持つ我が国が、政策やソフト面での弱点を克服して、自然エネルギーの取組の進むべき方向が示されれば幸いである。

2010-03-01 「空想」が「現実」になる時-分散型・自然エネルギーが未来を拓く-
洋上風力や沙漠の太陽熱発電など、少し前までの「空想」を「現実」に変えていくグリーンテック革命が進んでいる。毎年50%を越える成長で、すでに世界で<>12兆円規模に達し、成長するグリーンテックの中心は自然(再生可能)エネルギーであり、気候とエネルギーと経済の危機に対するグリーンニューディールの要でもある。小規模分散型であるがゆえに、普及と技術革新のスピードが著しく早い。
 他方、日本ではこの分散型・自然エネルギー革命で完全に後れを取ってきたが、おりしも再生可能エネルギーの普及を後押しする新政権が誕生し、ようやく日本でも本格的な普及の可能性が見えてきた。
2010-03-02 瀕死の風力発電
欧州を中心とする世界では、風力発電は、再生可能エネルギーの仲間だけではなく、化石燃料・水力・原子力を含む全ての電力資源の中で、トップ・主流となっている。これに反して、わが国では瀬戸際から瀕死の様相に進んだ。日本特有の気象条件は徐々にではあるが技術的に解決できる。一方、風力開発を阻害してきた日本の社会的特質は解決のめどが立たないままに今日に至り、風力開発の障害を一層悪化させている。解決の糸口を一緒に問いかけたい。
2010-03-03 地熱発電
 日本の地熱資源量は、約23.5GWと豊富であり、排出する二酸化炭素量が非常に小さいことから、地熱発電は重要な温暖化対策の一つである。また、天候に左右されない高い設備利用率(70%)が特徴の安定電源である。ところが、日本では、ここ10年、発電出力は535MWに留まっている。この状態を脱するには、(1)コスト低減、(2)自然公園内開発、(3)温泉との共生、の実現が鍵となるが、技術開発によりそれを直接・間接に支援していかねばならない。
2010-03-04 高効率多結晶シリコン太陽電池
 三菱電機では多結晶シリコン太陽電池の高効率化開発を進めている。今回、実用的な15cm角サイズの多結晶シリコン太陽電池において世界最高の変換効率である19.3%を達成した。ここでは、高効率化手法ならびに、新たに裏面側の構造として表面パッシベーションおよび光学的な反射を目的としたポイントコンタクト構造であるPERC構造を適用し高効率化を実現した内容を報告する。
2010-03-05 雪氷冷熱利用の現状と課題
 地球温暖化防止対策として省エネが求められている現在、北海道を中心に雪氷冷熱の利用が進められている。雪氷冷熱の利用はコスト面でまだ割高であり、資源となる雪氷等の収集・製造と保存の問題、熱効率向上の問題など技術的課題も多い。しかし、雪氷冷熱を農産物の低温貯蔵に利用すれば、エネルギー問題、環境問題、食糧問題に貢献できるためその効果は大きい。利用技術の完成と今後の普及が期待される。
2010-03-06 日本のバイオマスエネルギーの活用に当たって
 我が国は森林が2/3の面積を占め、バイオマスの潜在資源量大国である。新たなバイオマスエネルギーの活用はバイオマス・ニッポン総合戦略が閣議決定されてから活性化され、各種の廃棄物系バイオマスが種々検討され活用が進み出した。自動車用燃料のバイオ燃料・バイオエタノール、バイオディーゼルオイル、バイオメタンへの関心は高いが、世界で活用の主流である木質の熱と電気への利用を参考に、自然エネルギーの中で一番期待されるバイオマスはマテリアルの利用とリンクした形で、活用されることを切に願う。
2010-03-07 小水力発電を生かした地域づくり-長野県大町市における“くるくるエコプロジェクト”-
 小水力発電は、再生可能であるとともに、環境負荷が少なく、日本の風土に根ざした潜在的可能性の高い自然エネルギーである。本稿では、とりわけ未開拓な分野となっている10kW未満のミニ水力発電の可能性を追求して、これを地域おこしに生かそうとする長野県大町市における市民活動について事例紹介しながら、小水力発電をめぐる諸課題について話題提供する。

<執筆者> 2010-03-01 NPO環境エネルギー政策研究所 飯田 哲也/2010-03-02 (株)HIKARUWIND.LAB.・松宮 煇/2010-03-03 (独)産業技術総合研究所・野田 徹郎/2010-03-04 三菱電機(株)・森川 浩昭・有本 智・西村 邦彦・松野 繁/2010-03-05 北海道大学・浦野 慎一/2010-03-06 阪南大学(非常勤)・本庄 孝子/2010-03-07 NPO地域づくり工房・傘木 宏夫

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4月号  PRTR法成立10年,化学物質管理は前進したのか



 5月号環境ホルモン研究の到達点
編集: 2010-05-00 神戸学院大学・古武家 善成

<社会の意識変遷> 1990年代後半、日本国内は環境ホルモンの話題で沸いた。「環境ホルモン」とは内分泌撹乱化学物質の通称であり、日本の研究者によって使われ始めた。「天然ホルモンの一種との誤解を生む」と批判もあるが、言い得て妙で広く使用されており、海外でも“Environmental Hormone”という英語表記が通用する。
 日本での関心の高まりは、この問題の“火付け役”である米生物学者の T. Colbornら著による Our Stolen Future(1996)が、『奪われし未来』(1997)として邦訳・出版されたことによるところが大きい。しかし、世論の高まりは2000年以降急速に沈静化した。その理由として、研究が進み“緊急の脅威 ”的な捉え方が減ったことが挙げられるが、化学工業会を中心とした反論キャンペーンが浸透してきたことも見逃せない。
<研究の着実な進展> 今日、新聞やテレビのニュースで環境ホルモンが報道されることは滅多になくなった。それでは、環境ホルモンの健康リスクや生態リスクは本当に大きな問題ではなくなったのだろうか。マスコミの報道の流れとは逆に、内分泌撹乱作用を有する化学物質の研究は着実に進んでおり、内分泌系のみならず、免疫系、脳神経系への影響を一体として捉える必要性が益々高まっている。
<特集の内容> 本特集では、このような環境ホルモン研究の到達点について、この分野の先端の先生方が執筆している。特集の執筆に際し、一般向けの簡略な記述ではなく、主題の本質が明らかになるような記述をお願いしたので、分野外の読者には専門性が高い内容も含まれている。しかし、各論文を読んでいただけばおわかりのように、例えば、「低用量反応は本当にあるのか?」、「精子への影響は?」など、環境ホルモン問題に対して湧き起こった数々の疑問に真摯に答えていただいており、“目からうろこ ”の事実が展開される。読者諸氏には、多少の難解さを乗り一気に読んでいただけるのではないだろうか。

2010-05-01 環境ホルモン問題の本質-長期晩発影響とエピジェネティク変異と小児コホート-
 日本における化学物質の胎児曝露状況、つぎに、その胎児曝露や次世代曝露の影響、特に長期晩発影響(Delayed long term effect)とエピジェネティク(後天的遺伝子)変異による毒性影響、さらには、環境省が今年から始め我々も参加する「子供の健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」について紹介する。
2010-05-02 内分泌撹乱化学物質の低用量問題とストカスティックな生体反応
 低用量問題は、独立した3つの要素から成る複合問題であった。すなわち、第1は、毒性学が危害徴候を高用量作用から推定する方法で成り立ってきたこと、従って低用量影響についてはデータが少ないこと。第2は、これが生体のホメオステーシスに関わる調節機構の障害というこれまでの毒性学で未開拓の問題であったこと、そして第3に、それがストカスティック(確率論的)な生体反応を対象とした、文字通りの低用量科学としての毒性学の問題であったこと、の3点に基づいている。いずれも未経験の新しい事柄であったため解明に時間を要したが、いまその本態が明らかになろうとしている。
2010-05-03 最近の精子数の動向と環境ホルモンによる影響
 1992年に精子数が半減したとの論文が発表され、原因として外的因子(内分泌かく乱化学物質)が想定された。その後内分泌かく乱物質の男性生殖機能への影響に関する研究が行われ早18年が経過した。未だ精子数が減少しているとの確証はないものの地域差があることは確からしい。精子数だけでなく、精巣腫瘍先天異常との関連も視野にいれ、同一プロトコールでの継続的な前向きの国際調査が必要である。
2010-05-04 環境ホルモンの脳神経系への影響-遺伝子発現かく乱による脳機能発達の障害-
 環境ホルモンは主に遺伝子発現のかく乱を通じて低濃度で毒性を示す。ヒト脳の発達には、甲状腺ホルモンや神経伝達物質など多数の情報化学物質により調節される、数万の遺伝子の複雑精緻な発現を必要とする。ホルモンなどに類似する環境化学物質がシナプス(神経回路)形成を妨げ、子どもたちの脳の機能発達に異常が生じ、近年増加している発達障害やさまざまな行動異常を起こしている証拠が集まりつつある。
2010-05-05 内分泌かく乱化学物質に関するリスク研究の経緯と動向
 化学物質が内分泌のかく乱を介してヒトと野生生物の健康に悪影響を及ぼすことについて、過去十数年にわたり広範で多種多様な試験研究がなされてきた。社会的にこの問題が沈静化した今日、これらの知見をリスク評価の観点から顧みて、今後の研究のあり方について冷静に検討する時期に来ている。本稿では、内分泌かく乱化学物質として俎上に上がった代表例としてビスフェノールAを取り上げ、リスク研究の経緯と動向を概説する。

<執筆者> 2010-05-01 千葉大学・森 千里/2010-05-02 日本大学・井上 達/2010-05-03 国際医療福祉大学病院・岩本 晃明/2010-05-04 東京都神経科学総合研究所・黒田 洋一郎・木村 -・黒田 純子/2010-05-05 東京大学・遠山 千春

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 6月号改正土壌汚染対策法と技術・社会的諸問題
編集: 2010-06-00 元 大阪人間科学大学・福永 勲

 土壌汚染に関わる法律「土壌汚染対策法」が2003年に施行されて、早くも7年あまりが経過した。その間、土壌的にも持続的発展が可能な社会の構築に取り組まれてきた。すなわち、次世代社会の人々、我々の子ども、孫、ひ孫が、健全、健康に暮らすために、土壌汚染のリスク軽減に取り組まれてきた。もっと卑近に言えば事件や係争も発生して、そのたびに具体的な土壌汚染リスクは、どこにあり、どのような処理処分をすれば、その健康リスクはなくなるのか、あるいは安全・安心なレベルになるのか、その判定方法は、などが問題となってきた。このような背景の下に、昨年4月には、「土壌汚染対策法」が改正され、この4月1日政省令が改正・施行された。
 本学会誌では、「土壌汚染のない国づくりを求めて」(2005, vol.34, No12)、「土壌汚染とリスク評価」(2007, vol.36, No.3)、という内容で特集を掲載した。今回の特集では、その改正法施行の結果、法令とともに、何が変ったのか、土壌汚染状況調査の位置づけはどうなったのか、そのために技術的にどう強化しなければならないか、社会的にはどのような影響をもたらすか、などに関心のある読者のために、政省令も含めた法律改正の詳報を技術・社会諸問題を含めて特集を組むこととした。

2010-06-01 土壌汚染対策法の改正点
 土壌汚染対策法は、2003年2月15日に施行され、以来7年が経過した。この間、法の施行を通じて明らかとなった課題などに対処するために、土壌汚染対策法の一部を改正する法律を国会において成立させるとともに、環境省として、これを施行するために政省令などの整備に取り組んできた。本稿では、法改正により新たに創設された主な制度について省令に触れつつ解説する。
2010-06-02 大阪府における土壌汚染対策制度改正の取組み
 大阪府では、土壌汚染対策法及び大阪府生活環境の保全等に関する条例により土壌汚染対策を推進してきたが、これまでの運用上の課題の解消及び改正法と条例との整合性の確保のため、条例改正など制度の改正を行った。主な改正点は、(1) 土地の履歴調査制度の充実、(2) 自主調査等の実施に関する指針の作成、(3) 土地所有者の責務の追加、(4) 汚染土壌の搬出規制の追加、(5) 汚染区域の指定の二区分化、(6) 府の指定調査機関の廃止(以上、条例の改正で対応)、(7) 汚染土壌処理業の許可に関する事前指導指針の策定である。
32010-06-03 土壌・地下水汚染調査技術の現状と課題
 土壌汚染対策法の改正にともなう土壌・地下水汚染調査方法の変更を踏まえ、原位置浄化を含むオンサイト処理およびリスク評価のための調査手法の現状と課題について言及した。オンサイト処理やリスク評価では、法令や条例により行われる土壌・地下水汚染調査で得られる画一的な情報だけでなく、サイト特有の場の条件や汚染物質の分布状況についてのより多くの情報を目的に応じて詳細に把握していることが必要となる。
2010-06-04 改正土壌汚染対策法で望まれるこれからの土壌・地下水汚染対策
 改正土壌汚染対策法における土壌・地下水汚染対策の概要を説明し、事業者にとって法改正により何がどのように変わるのか、また、何が問題なのかなどについて説明する。今後どのように土壌・地下水汚染に対応していくべきかについて、その考え方を、土地売買の場合、土地の形質の変更の場合、それ以外の場合に分けて説明する。
2010-06-05 土壌汚染に関する判例と法律
 土壌汚染に関して唯一公刊された裁判例(東京地裁平成18年9月5日判決)の事例と判決をもとに、土壌汚染土地の売買に関する売主の法的責任について紹介する。錯誤による売買契約の無効、売主の瑕疵担保責任、売主の債務不履行責任として、汚染のない土地を引き渡すべき義務の違反、信義則上の調査・除去義務違反及び説明義務違反、が争われたが、判決では売主の説明義務違反が認められ、浄化費用とそのための3次調査費用が損害とされ、6割の過失相殺がなされた。
2010-06-06 土壌汚染のない社会を求めて-NPO法人による普及啓発
 土壌汚染は環境への影響、人の健康への影響に加えて、土地汚染という観点から資産価値、土地売買にも影響するようになってきた。企業の社会的責任として、情報公開、リスクコミュニケーション、CSRといった取組みが重要性を増す中で、見落とされがちな中小企業者や一般の人々に土壌汚染の内容を知って頂き、健全な事業活動や土壌環境保全の推進を実行して頂くための、NPOとしての、ひとつの普及啓発手法を紹介する。
2010-06-07 土壌汚染に関するリスクコミュニケーションガイドライン
 土壌汚染に関するリスクコミュニケーションでは、事業者は、土壌汚染による健康影響を防ぐために、適切な土壌汚染対策を実施する必要がある。その土壌汚染対策を実施する過程においては、周辺住民へ適切に情報を伝えることが必要となる。『土壌汚染に関するリスクコミュニケーションガイドライン』では、リスクコミュニケーションを行うための基本的な考え方等、参考となる内容について取りまとめている。

<執筆者> 2010-06-01 環境省・今野 憲太郎/2010-06-02 大阪府・奥田 孝史/2010-06-03 (社)土壌環境センター・中島 誠/2010-06-04 (社)土壌環境センター・橋本 正憲/2010-06-05 弁護士・赤津 加奈美/2010-06-06 NPO土壌汚染対策コンソーシアム・飯田 哲也/2010-06-07 (財)日本環境協会・堀河 淳子

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 7月号ストリートキャニオン
編集: 2010-07-00 兵庫県立大学・河野 仁

<ストリートキャニオンとは> ストリートキャニオンはビルの谷間にある道路の意味である。これまで、ストリートキャニオンは自動車排ガス拡散予測の研究対象とされ、風洞実験による知見の集積があり、数多くの自動車排ガスの拡散モデルが開発された。また最近では、新たに、都市のヒートアイランドの視点からストリートキャニオンが注目されており、自動車からの排熱が街路空間の気温へ与える影響や「風の通り道」としてのストリートキャニオンの研究が行われている。
都市空間の通風性に関する研究は、ドイツのシュツットガルトを対象にして行われている。シュツットガルトは風の弱い内陸の都市であり、冬季の大気汚染対策として、都市の換気を高める必要があった。日本においてはシュツットガルトとは目的が異なり、夏場のヒートアイランド対策として、街路空間に風を入れる研究が行われている。
<ヒートアイランド対策> これは道路からの排ガスの拡散とは異なった視点からのアプローチであり、都市空間における拡散についての新たな糸口を与えることが期待される。さらに、ビルや道路面による日射の反射や日射により過熱された道路からの熱放射の研究も行われている。日射の反射や熱放射は、都市全体の気温に影響するだけでなく、直接人の体感温度に影響するので重要である。
<都市設計の多様性> ヒートアイランド対策の一つとして、街路樹によって日射遮断することが、都市においてクールスポットの面積を広げる手段として有効であると考えられるところから、道路面を街路樹で日射遮蔽することにより街路の気温低減を図る研究が行われている。さらに、街路樹が通風を遮蔽すると、道路からの自動車排ガスの拡散が妨げられるので、通風遮蔽の起こらないように街路樹の密集度や配置を設計する研究も行われている。都市建築物の高層化が進む中で、こういった、環境の複数の視点からのストリートキャニオンのデザイン設計を行うことは建築学においても新しいテーマになっている。
<生活空間の設計> 一般に都市では道路面積の割合が高く、例えば大阪市では2008年時点で、市域面積の17%が道路面積(高速道路は含まない)である。また、都市で働く人や都市に住居を持つ人にとって、ストリートキャニオンは生活空間の一部である。それゆえ、ストリートキャニオンのデザインは都市のアメニティーを高める上で非常に重要であると考えられている。
<計算技術の向上> また、計算技術の面でも新しい動きがある。これまで、計算機のメモリー制限や計算時間がかかりすぎるという理由で技術的に困難であった都市における流れや乱流の計算を CFD(Computational Fluid Dynamics)を使って計算する技術の実用化の研究も、最近かなり進められてきている。これはパソコンのメモリー容量や演算速度の急速な向上に負うものである。本特集においても CFDに関していくつか触れている。
<特集の内容> ストリートキャニオンからの自動車排気ガスの拡散について、これまでの研究をレビューし、解説するとともに、新しくヒートアイランド対策の視点から、道路の熱環境や通風性について現在のトピックスを含め、いくつかの視点から論じる。

2010-07-01 ストリートキャニオンにおける自動車排ガス拡散モデル
 ストリートキャニオン内では自動車排ガスが滞留しやすく、深刻な大気汚染につながりかねない。そこで、ストリートキャニオンに特化した拡散予測モデルが、欧米を中心に多く開発されてきた。これらのモデルは、ストリートキャニオン内の気流の特徴を考慮し、迅速な予測を可能にしている。ここでは検証事例が多く、ソフトウェア化が進んだものをいくつか紹介した。
2010-07-02 風洞可視化実験に見るストリートキャニオン内の流れと渦-自動車排ガスの輸送拡散について-
 風洞実験で線香の煙を使ってストリートキャニオン内の流れと渦を可視化した。ストリートキャニオン内に生じる垂直断面渦と水平面渦に着目し、建物高さ、道路幅、交差点間の距離、道路に対する風向によって、これらの渦がどのように変化するか調べ、ストリートキャニオンからの自動車排ガスの拡散について考察した。
2010-07-03 街路形態が街路空間の風通し環境に及ぼす影響に関する検討
ヒートアイランド対策の一つとして、上空を吹く海風を街路空間内に積極的に誘導することが検討されている。本研究では、CFDによる地上付近の風速分布の計算結果をGISデータと重ね合わせて解析することで、道路方向、道路幅、建物高さなどの街路形態と街路空間内の風通し環境の関係を分析し、風通しを促進し得る街路形態について検討を行った。
2010-07-04 気温分布でみる都心の中の風の道
 大阪の都心部での気温の実測調査をもとに、都市の中の風の道の現状について考察する。2009年の8月に河川上の気温と街区公園内の気温を計測し、気温分布図を作成した結果、木津川がヒートアイランドを分断する風の道になっていることがわかった。また、2008年8月に行った道路上の気温と街区公園内の気温実測の結果からは、交通排熱の影響が顕著になる時間帯が日没後20時前後であり、アスペクト比(H/D)の大きい断面形状の街路で気温が高くなる傾向を明らかにした。夏期の主風向に平行な東西道路では、風の道のポテンシャルが高いが、路面温度上昇交通排熱の影響で熱風の道になる危険性があることを指摘した。
2010-07-05 ストリートキャニオンの放射熱環境
 ヒートアイランド現象を抑制する対策技術として、都市表面の高反射化を進める動きがあるが、キャニオン内では、高反射化に伴い反射日射が増加する副作用が生じることに留意しなければならない。本稿では、夏季の暑熱環境を助長する可能性のある日射反射の問題として、道路舗装の高反射化に伴う問題と、近年流行し増加しつつあるガラス張り建物における反射の問題を取り上げ、キャニオン内で生じる反射・吸収現象の事例について述べる。

<執筆者> 2010-07-01 (独)国立環境研究所・神田 勲/2010-07-02 兵庫県立大学・河野 仁・楠 貴美代/2010-07-03 神戸大学・竹林 英樹/2010-07-04 大阪市立大学・鍋島 美奈子/2010-07-05 大阪市立大学・西岡 真稔

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8月号  研究論文特集



 9月号都市・農村の地域連携を基礎とした低炭素社会のエコデザイン
編集: 2010-09-00 立命館大学・仲上 健一

 低炭素社会構築の議論のなかで、都市・農村の地域連携が有するであろう可能性が改めて注目されつつある。都市問題・農村問題が深刻化する中で、それぞれ個別に議論されることはあっても、共通の目標である低炭素社会構築のための連携をキーワードにした考察はこれまで多くはなかった。
環境省地球環境特別研究総合推進費「都市・農村の地域連携を基礎とした低炭素社会のエコデザイン(FY2008-FY2010)(代表 梅田靖 大阪大学教授)」では、「都市・農村の地域連携」を基本コンセプトとして、低炭素社会の下での日本・アジアにおける都市・農村連携のあり方を具体的な事例を通じて追求し、あるべきエネルギー・物質の資源循環システムを基盤とした将来シナリオを描くことを目的とし、その意義について理論的・実証的・政策的に取り組んできた。低炭素社会の構築に向けた施策として、自然資源の維持・管理及び地域循環利用を推進するための都市・農村の地域連携が期待されている。
<特集の内容> 上記の研究成果を都市・農村の地域連携を基礎とした地域社会モデルを提示することとした。本研究では、低炭素社会の実現と地域発展・格差是正を両立するモデル、低炭素社会の実現と食糧・エネルギーの資源循環を両立するモデル、そして、アジアの地域性を考慮に入れた国内地域間および日中間の低炭素化に向けたシナリオの提示が行われた。これらの研究成果の一端を紹介し、環境政策、環境技術という視点で、「低炭素社会のエコデザイン」の意義を世に問うものである。

2010-09-01 低炭素社会における都市・農村連携の概念整理
 文献調査により、都市と農村の概念整理と定義、および、日本の都市・農村論の系譜を概観した上で、持続可能な社会における都市・農村連携を検討した。「都市・農村間の格差是正(低格差状態)、互いの特徴を活かした共益状態、都市機能と農村機能の近接享受状態、農村の土台である生態系サービスシステムの協働保全の状態になるような、都市・農村間のマテリアル・エネルギー・お金・情報・人の循環ネットワーク」として再定義した。
2010-09-02 都市・農村連携モデルの広域展開の枠組み
 低炭素社会の構築に向けた施策として、自然資源の維持・管理および地域循環利用を推進するための都市・農村の地域連携が期待されている。本稿では、離散事象シミュレーションを用いてエネルギー・物質循環バランスを定式化し、現在構想されている地域施策を基に分析モデルを作成した。また、この分析モデルを用いて都市・農村連携施策の特性を分析し、広域展開の適用可能性、および、温室効果ガス削減効果についての考察を行った。
2010-09-03 農工連携による農村低炭素化産業の創出
 ローカルなバイオマス資源を活用する農村バイオマス産業の創出によって、農工が連携した低炭素化を目指している。中国の退耕還林政策によるトチュウバイオマス事業を対象とし、低炭素効果を評価した。生態系炭素固定、化石資源代替のふたつの低炭素化効果を示した。退耕還林は持続可能メカニズムを欠くが、農村バイオマス産業による雇用創出・農民収入増など社会・経済的効果が加わるなら、環境改善は持続可能となるだろう。
2010-09-04 「サトヤマ工学」をめざして
 里山・里海は、その地域の生業と密接な関係を保ち、自然環境・生態系の循環に即した循環型・持続型社会を構築してきた。持続的低炭素社会の構築が叫ばれているなか、里山・里海での人間と生態系の共生関係が見直されてきている。本稿では、生態系サービスの向上と維持・六次産業化・福利厚生の充実などを要素とし、人間と自然が共生する技術とそれらを評価して最適化する技術を統合した新たな分野として「サトヤマ工学」を提案する。
2010-09-05 「東アジア低炭素共同体」構想の政策フレームと評価モデルの開発
 本研究は、「東アジア低炭素共同体」構想の政策フレームを提起し、同構想を実現するための将来シナリオ構築に関するエネルギー・経済統合評価モデル(G-CEEP)の開発と炭素税と硫黄税など政策の導入効果に関するケーススタディを行い、同構想を具現化する広域低炭素社会の実現のための国際政策提言を行うものである。
2010-09-06 都市農村連携による分散型エネルギーシステムと国際資源循環
 本研究は、エネルギーと資源の地域内循環を生む都市・農村の有機的連携による地域の低炭素エネルギーシステムを構築・提案した。また、中国浙江省湖州市を対象とした解析を行い、結果として、都市・農村協働型連携に基づいたエネルギーシステムがローカル地域に最適なエネルギーシステムであることを明らかにした。さらに、国際資源循環によるCO2排出の増減などに関する適正評価行い、国際資源循環型CDMのフレームワークを提案した。

<執筆者> 2010-09-01 大阪大学・津田 和俊・梅田 靖/2010-09-02 大阪大学・Law Bi Hong, 高橋勇人, 津田和俊, 梅田 靖/2010-09-03 大阪大学・町村 尚・佐田忠行・小林昭雄/2010-09-04 北海道大学・佐藤寿樹・辻 宣行・田中教幸・大崎 満/2010-09-05 立命館大学・周 ●生・仲上健一・蘇 宣銘・任 洪波/2010-09-06 立命館グローバル・イノベーション研究機構:任 洪波・小泉國茂・加藤久明・周 ●生・仲上健一

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10月号温室効果ガス25%削減に向けたエネルギー戦略
編集: 2010-10-00 筑波大学名誉教授・本間 琢也

<25%削減の経緯> 「温室効果ガス25%削減に向けたエネルギー利用のあるべき姿」とは、前鳩山首相が、国連気候変動サミット(2009年)において「我が国は全ての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築および意欲的な目標の合意を前提に、2020年までに1990年比で温室効果ガスを25%削減する」と表明したことに基づいている。
 その後の世論調査の結果や経済界を始めとする各界の反応において、「非現実的である」や「GDPを最大で5%引き下げる」という意見や試算が表明され、現政権によってもどの程度この方針が踏襲されるのか、この行く末は不透明になっている。
 しかし他方、このような意欲的な目標こそが、新しいビジネスを立ち上げ、技術開発でそれを発展させることによって、雇用が促進され地域や国の経済を活性化させる原動力になるとして、この方針を支持する意見も寄せられている。近年の気温上昇や異常気象が頻発する現状をみると、これらの現象が温室効果ガスの排出に起因しており、CO2を始めとする温暖化ガスの排出削減を積極的に進めていかなければならないとの認識は、世界の人々に広く受け入れられているというべきであろう。
<特集の内容> 本特集は、(1) CO2排出削減に有効な太陽光や風力発電、バイオマス、太陽熱利用などの再生可能エネルギーの導入を図るための技術と問題点の考察から始まり、ついで、(2) それを大量に導入するために必要なエネルギーインフラ、すなわちスマートグリッドやスマートエネルギーシステムの在り方の議論から組み立てられている。
スマートグリッドを構成するための要素技術は、二次電池と情報技術であるが、又二次電池は環境対応車と云われる電気自動車プラグインハイブリッド車の主要な要素技術でもある。電力のみならず熱を含めたスマートエネルギーシステムは、家庭における省エネルギー ・低炭素化を実現するための有効な手段であり、そしてこれは燃料電池や燃料電池自動車を核とする水素エネルギー社会を実現させる技術体系に繋がるパスでもある。

2010-10-01 環境エネルギーの産業分野における将来の動向
 温室効果ガス25%削減の方針を受けて、政府は「エネルギー基本計画」を決定した。本計画は、エネルギーの安定供給環境への適合経済効率性の3項目を基本的視点として挙げている。我が国では、家庭部門からのCO2排出量はなお増加の傾向にあり、また輸送・交通部門におけるそれは高水準に留まっていることが、統計によって示されている。本項では特にこれらの分野においてキーとなる環境エネルギー技術について考察する。
2010-10-02 バイオ燃料で持続可能な社会は実現できるか
 2020年までに温室効果ガスの1990年比25%削減を実現するため、バイオマスや太陽光などの再生可能エネルギー利活用の技術開発が喫緊の課題となっている。そのような状況の中、太陽光発電や風力発電を利用しながら、バイオマス資源を、バイオ燃料としてのみならずバイオケミカルスやバイオプラスチックなどのバイオリファイナリーとして循環利用することが、持続可能な社会の実現に重要である。その可能性と展望について考える。
2010-10-03 エネルギーを効率的に蓄える―蓄電池技術を中心に―
 温室効果ガスの削減や化石エネルギー資源の効率的な利用のため、電気自動車をはじめとする環境調和型車両や太陽光発電、風力発電などの新エネルギーについて関心が高まっている。これらの技術おいて、エネルギー(電気)を蓄える蓄電池が重要な役割を果たそうとしている。自動車用途および電力貯蔵用途について、蓄電池技術の現状を概説する。
2010-10-04 「エコ燃料実用化地域システム実証事業」について
バイオエタノール3%混合ガソリン(E3)を大都市圏で大規模に供給しているが、品質管理や給油設備の管理においてレギュラーガソリンと同じ取扱いで支障がなく、利用者も定着していると考えられる。バイオエタノール10%混合ガソリン(E10)についてはE10対応車両による公道走行試験を行っているが、品質管理等においてE3と同様にレギュラーガソリンと同じ取扱いで支障がないと考えられ、車両に不具合は見られなかった

<執筆者> 2010-10-01 筑波大学名誉教授・本間 琢也/2010-10-02 京都大学・坂 志朗/2010-10-03 (独)産業技術総合研究所・小林哲 彦/2010-10-04 大阪府・南 隆雄

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11月号下水道における新しい課題と取り組み
編集: 2010-11-00 東北大学・李 玉友

<下水道の現状>下水道法(2005年6月22日改正)によれば、下水道の目的は都市の健全な発達、公衆衛生の向上及び公共用水域の水質保全を図ることにあるとされている。2009年度末の下水道整備状況として下水道整備人口は約9,360万人、処理人口普及率は73.7%に達し、全国で2,120箇所の下水処理場が稼働(2008年度末現在)するなど、膨大な施設が全国に展開されるようになった。
<下水道の役割> 下水道設置の基本的な目的は、トイレの水洗化や汚水の円滑な排除など生活の利便性の向上、管路の設置による地域の生活環境の改善、雨水排除による浸水の防除、そして排出先の公共用水域の水質保全となっている。街の環境衛生や都市河川の水質変化に関する歴史的変遷を見れば下水道の整備は生活環境の改善水環境の保全に大きく貢献してきたことは明らかである。
<下水道整備の地域格差> 2009年度末の都道府県別の下水道整備状況に見てみると、普及率80%以上は8都道府県(東京都99.2%、神奈川県95.6%、大阪府92.5%、兵庫県91.1%、京都府90.6%、北海道89.1%、滋賀県85.4%)、60~80%は19県、40~60%は16県、40%未満は4県(鹿児島県38.9%、高知県31.7%、和歌山県19.5%、徳島県13.9%)となっており、大都市地域と地方の格差がかなり大きい。
 一方、未普及地域は人口が分散した地域が多く、整備効果の低い地域といわれ、農業集落排水事業浄化槽などの代替施設と比較のうえ整備していく施策が採られてきた。最近では単純に建設経費から見て「下水道より浄化槽」という考え方が増えているが、「水質汚濁防止に貢献する」観点から下水道の効果が大きいのも事実である。
<今後の下水道のあり方と特集の内容> 現在、国民の約3/4は下水道が提供するサービスを享受している。一方、昨今の社会情勢の変化により、下水道の量的整備の他に、循環型社会低炭素社会、新しい環境リスク人口減少社会への対応、国際貢献など、様々な新しい課題がクローズアップされている。
 下水道を都市・地域における収集・循環システムとして捕らえると、水・バイオマス・リン・廃熱などを広く集めているので、それらを効率よく回収して資源として循環利用できるのが下水道の付加的機能である(特集1・2)。
 下水道は水処理、汚泥処理の各過程において多くのエネルギー・薬品を消費し、温室効果ガス(主にCO2、CH4、N2O)を発生している。今後下水処理場を省エネルギー的かつCH4・N2O発生量が少ないシステムに変えていかなければならない(特集5~7)。
 下水処理過程における新たな環境リスク、医薬品(特集4)などの微量汚染物質、ウイルスなど、が注目され、「健全な水循環」の新たな課題に取り組む必要がある。
 下水道を都市・地域の基礎的インフラとして持続させていくために、維持管理・経営の問題も避けて通れない。特に地方の人口減少地域では切実な課題となっている(特集3)。

2010-11-01 循環の道:下水道による資源とエネルギーの回収利用
 地球規模の環境問題と資源の枯渇問題は、資源循環型社会の構築により同時に解決するほかはない。下水道は、分散している資源を収集するシステムで、その中には種々の資源が含まれていることなどから、資源循環型社会の核となりうる施設である。ここでは、水・汚泥由来エネルギー・リンについて論じた。実現には、国民の理解と、技術開発者、製品製造・使用者、技術採用者(下水道担当者)の協働が不可欠である。
2010-11-02 下水道システムの発展と資源循環
 都市の生活環境の改善、近隣の水環境の保全を目的として発展してきた下水道は、最近ではより広域的な水域保全に寄与するため窒素・リンの除去機能も付帯することとなった。下水道に大量に集約される窒素・リン負荷についてはこれを単に除去するだけではなく、回収し資源利用に向けることが重要である。21世紀の下水道システムの課題として、これらの物質の資源循環に寄与し、地球環境問題の解決の一端を担う姿を提示した。
2010-11-03 小規模地方自治体における下水道の経営
 小規模地方自治体では厳しい財政状況にあるうえ、人口減少や高齢化が顕著で、自治体経営は今後ますます厳しくなると予想される。一方、汚水処理の整備率は低く、今後も整備を進めていく必要がある。下水道事業の経営は一般会計の負担になっている場合が多く、今後の事業経営は自治体財政全体をみわたした総合的な視点が必要である。小規模自治体が抱える下水道経営上の課題を示すとともに、それに対する検討例を紹介する。
2010-11-04 下水処理過程における医薬品の挙動
 新たに関心が高まっている残留医薬品の水環境汚染に対し、下水道が大きな役割を果たすことが期待されている。下水処理過程における医薬品の存在実態・除去機能・挙動解明に向けた研究が国内外で精力的に進められている。本稿では、研究状況をレビューするとともに、下水汚泥での存在実態や汚泥処理での挙動を含め、これまでの研究の知見をまとめるとともに、今後の下水道での残留医薬品への対策の動きについても論じている。
2010-11-05 下水汚泥の再生利用技術の新しい展開
 下水汚泥の有効利用技術の開発と普及は、国内の公的部門における排出対策抑制や、近年需要が低下傾向にある建築資材利用の代替等の観点から依然として重要な課題である。これらの技術開発は国土交通省等が先導してきたLOTUSプロジェクト以降も継続して進められており、本稿では、特に温室効果ガス排出抑制に資するエネルギー利用技術として、メタン発酵(高効率化、混合発酵)・炭化・燃料化技術などの技術開発動向を紹介する。
2010-11-06 下水処理場における温室効果ガスの発生と削減対策
 我が国における下水処理場由来の温室効果ガス発生量削減に向けた取り組みを整理した。その結果、過去の取り組みは一定の成果を上げているものの、処理システムや季節変動を考慮した水処理・汚泥処理プロセスにおける排出係数の精緻化、処理水に含まれるN2Oの適切な評価が重要な課題であると考えられた。さらに、現在提案されているいくつかの削減対策は、その優先順位が必ずしも明確ではなく、処理システムに応じた最適な削減対策を選択するための、基礎的知見の収集が急務であると考えられた。
2010-11-07 下水処理場における省エネルギー機器の導入例
 下水処理場において省エネルギー機器の導入が進められている。反応タンクでは高効率な散気装置とともに嫌気槽や無酸素槽の低動力撹拌機が注目されている。汚泥処理工程では焼却や脱水工程での省エネルギー化とともに濃縮工程でも消費電力の大きい従来の遠心濃縮機に代わる省エネ型機械濃縮機が普及しつつある。本稿では(株)タクマの省エネ機器である嫌気・無酸素槽向けの低動力竪型撹拌機と回転ドラム型汚泥濃縮機の導入例を報告する。

<執筆者> 2010-11-01 京都大学・津野 洋・楠田 育成/2010-11-02 日本上下水道設計(株)・佐藤 和明/2010-11-03 鳥取大学・細井 由彦/2010-11-04 京都大学・田中 宏明・成宮 正倫/2010-11-05 (独)土木研究所・岡本 誠一郎/2010-11-06 秋田工業高等専門学校・増田 周平/2010-11-07 (株)タクマ・福沢 正伸・土井 和之・宍田 健一

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12月号春の小川」の環境用水を考える
編集: 2010-12-00 国土工営コンサルタンツ(株)・足立 考之

<環境用水とは> 近年、身近な水環境に対する関心が高まる中、「春の小川」を再生するための新たな試みが始まった。都市の小河川・排水路・農業水路など地域の水路網に流水を引き入れて、環境用水を創出する取り組みがそれであり、この取り組みを発端として住民の関心が水辺の自然・街づくり、さらに地域環境全般へ広がることが期待されている。
<環境用水の役割> 環境用水は景観の保全や水質の改善、生物の生息環境の確保、熱環境の緩和、環境学習や自然体験、親水、防災等のさまざまな環境目的に利用される公共的な用水であり、主に都市的土地利用と農業的土地利用が競合する地域において高度成長期に水なし川よごれ川となった水路・小川の清流を取り戻すための新しいタイプの流水である。
<環境用水の動向> 環境用水をめぐるこれまでの動向を通観すると、まず「六郷堀・七郷堀」(仙台市、2005年)が、広瀬川からの冬期取水(環境水利の暫定的な取得)に成功した。ついで国交省が環境用水を導入する場合の制度を策定(「環境用水に係る水利使用許可の取り扱い基準」、2006年)し、全国初の環境水利権を「亀田郷」(新潟市、2006年)が取得している。
 この制度とは別の試みとして、農業用水の一部を環境利用に切り替えた「小牧川」((山形県酒井市、2007年)の事例などがある。環境省大気水環境局は、全国47箇所の取り組みについて地方自治体やNPOの担当者を対象としたヒアリング調査を実施し、「環境用水導入事例~魅力ある身近な水辺づくりにむけて~」(2007年3月)を発表した。この報告では、流水確保は河川水取水だけでなく、地下水、湧き水、工業用水、農業用水、下水処理水、農村集落排水、雨水貯留水などの地域の未利用水の利用となっていて、環境用水の水源は河川に限らず多彩であることを物語っている。
<水利権の配分> 環境用水創出をめぐって、利用目的が競合する場合の水配分の仕組み、水利権を有する関係者との調整メカニズム、環境用水を受け入れる場合の合意形成や水管理を地域で支えるシステムづくりなどの、新たな課題が浮き彫りとなっている。
<環境用水の意義> 環境用水の考えには、水源や水量・水質、生物保護という自然科学的な知見だけでなく、水と人とのかかわりや環境史といった地域によって異なる判断が含まれなければならず、社会科学の視点での地域ガバナンスや制度設計のあり方が問われていて、いま、環境用水をめぐる諸相は転換期を迎えたといえる。かつて、わが国には大小さまざまな小川やクリーク、ため池が存在し、かんがい、雑用、防火などの多様な環境便益を地域にもたらしてきた。
<特集の内容> 身近な川の流水(環境用水)について多角的に考えるため、環境科学・河川計画・政策科学・法制度など各分野4件の特集を企画した。環境用水のあり方と意義、地域住民の役割と流域連携、流水の配分に関する海外での取り組み、わが国の法制度のしくみ等について、わたしたちは多くの知見を得た。環境用水をテーマとした特集は2007年2月、2008年10月についで3回目となるが、多様なアプローチの求めに応じるあらたな動きを俯瞰する機会を得たことの意義を深くかみしめたい。

2010-12-01 環境用水と地域空間の編成
 2006年3月以後、環境用水をめぐる制度設計は進んできた。制度化以後、環境用水の水利権を取得したのは2事例であるが、各地で環境用水としての機能をもった水路・水辺の整備が進んでいる。制度のなかでは、流域ないし流域圏のなかに環境用水が位置づけられつつあるが、ここでは流域や流域圏、水循環など主要な用語の関連を整理しつつ、環境用水が展開する場である地域空間に焦点をあて、その編成をめぐる課題を考察した。
2010-12-02 環境用水の創出に向けた地域的な取り組み-淀川左岸地域における取り組みの検証-
 大阪府寝屋川市において2001年に始まった寝屋川再生ワークショップは、その後も継続し、2005年の駅前せせらぎ公園、2007年の茨田樋遺跡水辺公園、2009年の幸町公園に引き続き、2010年には川勝町公園の整備に向けたワークショップへと展開されている。市内の農業水路を活用した学校ビオトープの整備も着々と進められ、淀川左岸の近隣都市にも拡大しつつある。今後、それらへの適切な水量の配分が必要となろう。
2010-12-03 生態系保護に向けた水配分と政府の役割-環境用水口座(Environmental Water Account)を例に-
 動植物生態系に対する関心の高まりは、水管理の分野に「人と人」ではなく「人と動植物」の水争いという新たな課題を生み出しつつある。米国カリフォルニア州はこの問題が他に先駆けて顕在化している地域であり、近年、その解決策として環境用水口座という制度が考案された。本論では同制度内における政府の役割に焦点を当てつつ、その仕組み・長所・短所・他の関連政策との関係を明らかにする。
2010-12-04 環境用水と水利使用許可制度
 環境用水の主要な特質について、伝統的な用水と比較して、利水目的の達成に向けた引水のプロセスをも包摂した形で水利権の内容を構成していると分析し、地域用水との関係性について言及する。灌漑用水から独立して存在する地域用水には独自の水利権の取得が必要な場合があるとする見解は、地域用水と水利使用許可制度を接合するものではあるが、この射程が地域用水概念の要否の問題にまで及ぶとは言い難いと考察する。

<執筆者> 2010-12-01 滋賀県立大学・秋山 道雄/2010-12-02 摂南大学・澤井 健二・石田 裕子/2010-12-03 筑波大学・遠藤 崇浩/2010-12-04 創価大学・宮﨑 淳

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掲載日:2018年01月26日
更新日:2018年08月11日

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