Water & Solutions Forum – Water Science, Processing and Maintenance

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環境技術 2005


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2005年 特集号の概要
       目 次 総目次-分野別-
 1月号 2005年環境行政展望
 2月号 PCB廃棄物処理の現状と課題
 3月号 (1) バイオマスエネルギーへの挑戦
 3月号 (2) 都市再生-水辺の環境整備
 4月号 事業化の進むバイオレメディエーション
 5月号 (1) 水環境における自然再生プロジェクト
 5月号 (2) GISを活用した環境解析
 6月号 (1) 生分解性プラスチック利用技術
 6月号 (2) 事例からリスクコミュニケーションの今後を考える
 7月号 バイオマス系廃棄物のバイオリファイナリー
 8月号 (1) 京都議定書発効と温暖化防止対策の行方
 8月号 (2) 水道水源としての地下水の再評価
 9月号 揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制制度
10月号 SPIRIT 21:合流式下水道改善技術の開発
11月号 (1) 環境技術分野での海外協力
11月号 (2) 化学物質微量分析の最新動向
12月号 (1) 室内環境汚染によるヒトへの影響
12月号 (2) 土壌汚染のない国づくりを求めて


1月号  2005年環境行政展望



 2月号PCB廃棄物処理の現状と課題
編集: 大阪人間科学大学・福永 勲

<PCBとは> PCBは、Poly Chlorinated Biphenylの略であり、ベンゼン環が2個連結したビフェニールに塩素が最高10個ついているポリ塩化ビフェニールである。その塩素数の多様な数と態様で209個の異性体があり、そのうち12種類の異性体は特に毒性が強くダイオキシン類に分類されている。
 PCBは1920年代にアメリカで発明され、水に難溶であり、油溶性で、熱・化学的に極めて安定で、絶縁性・接着性・進展性に優れていて、かつ蒸気圧が小さくて比熱が大きいという特性をもっている。その特性を利用して、アメリカでは 1929年頃から、わが国では1950年頃から工業的に生産され、熱媒体・コンデンサー・トランスの絶縁体、感圧紙、塗料溶剤などに用いられてきた。
<中毒事件と製造禁止> 次に述べるような毒性が検出され、あるいは PCBが食用油に混入し、発症するという中毒事件が発生するにいたって、その製造が1972年禁止された。それまでわが国では約59000トンが、製造されたと言われている。その後 PCBは一部焼却処理されたが、その焼却処理方法に付近住民の同意が得られないなど成功せず、そのまま保管という、放置が継続されてきたのが実情である。
<人・動物への毒性> その毒性とは、ヒトにとっては急性毒性の LD50は250mg/kgとそれほど強くないが、皮膚障害、脳・神経・内分泌障害、呼吸器障害、脂質代謝異常などである。PCBは、すでに述べたように分解され難く、油溶性であるために、肝臓に蓄積しやすく、あるいは動物に蓄積しやすく、慢性毒性が顕著であり、あるいは環境ホルモン物質としても疑われている。環境中では、世界中のPCBが小島の海鳥絶滅事件などを引き起こした例もあり、その後世界中で対策が長期間遅れたために、地球上の大気環境、海洋が汚染されてしまったと言われている。
<PCBの対策> このような事態の中で、世界的には残留性有機汚染物質(POPs)に対して、残留性・生物濃縮性・毒性・長距離移動性をもつ化学物質を指定する国際POPs条約が締結され(2001年)わが国も調印・批准した。その中にPCBも入り、その結果わが国もPCBを本格的に処理する義務を負うことになった。
 「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が制定され、広域処理を目的として、「環境事業団」法が改正されて、その任をまかされた。その後、その事業団からPCB廃棄物処理事業のみを行う機関として、特殊会社「日本環境安全事業株式会社」が設立され、全国を5事業所に分けて公共関与でPCB廃棄物が処理されることになった。昨年(2004年12月)、その第1歩として北九州 PCB廃棄物処理施設が実稼働を開始した。
<特集の内容>上記の事業が環境に影響を与えることなく、付近住民に不安感をあたえることなく、成功裏にわが国からPCBがなくなることを願って、この機会にあらためてPCB問題の現状と課題を整理することとした。

1.PCBによる環境汚染の現状と環境監視等の課題
2.ポリ塩素化ビフェニル(PCBs)とその処理副生物の健康影響
3.廃棄物処理技術の概要
4.わが国におけるPCB廃棄物と広域処理体制

<執筆者>1.環境監視研究所・中地 重晴/2.摂南大学薬学部・中室 克彦/3.京都大学環境保全センター・渡辺 信久/4.日本環境安全事業(株)・立川裕隆・吉本範男・石川 学

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 3月号(1) バイオマスエネルギーへの挑戦
編集: 大阪大学・藤田 正憲

<バイオマスへの期待>第一次、第二次オイルショックによる石油価格の暴騰は、バイオマスエネルギーブームを巻き起こした。石油価格が落ち着くとそのブームも去り、長くバイオマスエネルギーは片隅に追いやられた。ところが、地球温暖化が進行し、各国が競って二酸化炭素排出の削減を行う努力をはじめ、日本でも新エネルギーへの依存度を上げるために、光、風力などとともにバイオマスエネルギーに熱い視線が注がれている。そのような中で再びバイオマスエネルギーブームが起こっているが、今度は地球温暖化の防止という大命題があり、石油価格が下落しても、バイオマスエネルギーへの依存度が大きく下がることはないと思われる。
<バイオマスエネルギーとは>政府は2002年にバイオマス日本総合戦略を策定した。バイオマスとして最大の発生量である畜産廃棄物や下水等の汚泥のみならず、生ごみや賞味期限切れの食品廃棄物、農業・漁業からの廃棄物、さらには建設廃材や林業からの木質系廃棄物などのバイオマス系廃棄物に関する総合的な利・活用を奨励している。本戦略では、マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルの両者が強調されており、前者ではコンポスト、オイル、エタノール、プラスチックなどの生産が例示され、後者ではバイオガスであるメタンと水素に注目している。経済性の観点からは、マテリアル・サーマルともに順調なリサイクルを行うことは容易ではないが、リサイクルのためのエンジンである有効な技術あるいはシステムを活用すれば、積極的にエネルギーや有価物を生産しながら環境を保全することが可能となり、ひいては地球資源の節約と地球環境の保全の両立を図る近道となろう。
 本特集では、リサイクルのためのエンジンである有効な技術の開発に焦点を当てている。

1.バイオマス利・活用の総括
2.バイオジーゼル燃料への挑戦
 今注目を浴びている超音波技術を活用したオイル製造に挑戦し、極めて良質のオイルが製造できることを証明している。
3.建設廃材からのエタノール生産の事業化
 戦後の建築物が建替えの時期を迎え、大量の建設廃材の発生が予想されるなか、これを単に燃焼するだけでなく、木材に含まれるセルロースを加水分解し、得られた6単糖と5単糖を同時に醗酵できる遺伝子組換え微生物でエタノールを生産する新しい試みは、今後の新技術開発に強い刺激を与えるであろう。
4.エネルギー自立型畜産・食品廃棄物処理への挑戦
家畜糞尿のメタン醗酵を主体とする八木町の挑戦では、従来の廃液処理場から一歩進んで、農村におけるエネルギー自立型工場を目指す、斬新な構想であるといえる。
5.バイオマス燃焼とエネルギー利用への挑戦
 マテリアルリサイクルができないケースを考え、各種バイオマス燃焼技術の実用化について、ボイラー内の流動特性など開発におけるノウハウや課題を交えてまとめており、示唆に富む内容となっている。

<執筆者> 1.大阪大学・藤田 正憲/2.大阪府立大学・前田 泰昭・Hoang Duc Hanh・Carmen E. Stavarache・名久井 博之・亀田 貴之/3.月島機械(株)・三輪 浩司/4.(株)大林組・小川 幸正/5.(株)タクマ・芹澤 佳代・片岡 静夫

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 3月号(2) 都市再生-水辺の環境整備
編集: 大阪人間科学大学・福永 勲

<水辺の機能>本来、水辺は心を癒し、和ませる機能を持っている。また、水は飲み水や工業、農業用水のみならず、過去には都市の水運など産業を支える機能も持っていた。しかし、治水・利水を重視するあまり、都市における水辺の癒し機能を発揮させるための整備を怠ってきた時期もあった。
近年、河川法に治水・利水に加えて、環境というキーワードが入ったことをはじめ、市民が身近に感じる水辺が見直されている。その中で、内閣都市再生本部から「都市再生モデル調査」が実施されたのをはじめとして、舟運の魅力、可能性を引き出すなど都市再生・活性化の一環として都市における水辺環境整備が実行、あるいは計画されている。
  <特集の内容>河川水辺の3つの機能-治水・利水・環境-の都市における役割について考えたい。水辺環境の存在価値には多様なものがあり、簡単な評価軸で評価できない。水辺環境の整備は、治水・利水・環境のバランスが重要である。本特集では、都市における水辺環境のあるべき姿、行政の計画と現状、自由な立場の NPOのアイデアを紹介する。

1.都市における水辺環境のあるべき姿
2.大阪府の水辺環境整備の現状と課題
3.兵庫県における水環境整備の現状と課題
4.東横堀川から船場を考える

<執筆者> 1.大阪市立大学・角野 昇八/2.大阪府土木部・福森 一雄/3.兵庫県健康生活部環境局・英保 次郎/4.NPO法人大阪・水かいどう808・田川 洋子

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 4月号事業化の進むバイオレメディエーション
編集: 大阪大学・池 道彦

<バイオレメディエーションとは> 2003年2月15日の土壌汚染対策法の施行を契機として、我が国でも有害物質によって汚染された土壌・地下水の浄化事業が現実的なマーケットとなってから、すでに2年以上が経過した。これまでに、汚染浄化を目的としてさまざまな技術が開発されてきているが、生物機能を利用して汚染を浄化し、土壌・地下水を元の状態にまで修復する技術をバイオレメディエーション(Bioremediation)と呼ぶ。
<バイオレメディエーションの特徴と課題> 本技術は土壌の固化や洗浄、地下水の揚水曝気や吸着・酸化処理などの物理化学的修復技術と比較して、一般的には安価で省エネルギーの技術であり、安全性が高く、土壌・地下水の損壊を最小限に食い止められるなどのメリットがある有望な選択肢として、その技術開発は長年注目を集めてきた。
 一方で、毒性の高い物質には適用できない、浄化速度が遅いなど、適応範囲に制限があるうえ、科学的に複雑なプロセスであるために制御が容易ではなく、試行においてしばしば効果が上がらないこともあった。そのため、実用技術とみなされるようになるまでにはかなりの時間を要した。
 今日、多くの特徴ある技術が基礎研究という域から脱し、確かに実用技術となっている。また、近い将来の実用化を見据えて、ラボや実地での研究が行われている新技術も少なからずあり、まだまだ魅力的な技術開発のフィールドでもある。
<バイオレメディエーション技術> 本技術は、浄化の位置、生物の種類工学的手法導入の有無など、多様な視点において極めてバラエティーに富むオプションを有するオーダーメードの技術である。
 汚染物質を移動させず土中などでそのまま浄化するか、そうでないかによって、それぞれ in situ法(原位置修復; in)とex situ法(原位置外修復; ex)に大別され、後者はさらに掘り出した土壌などを汚染現場内に設置したリアクターなどで浄化するon site法(ex-on)と、外部の処理工場等へ搬出して処理するoff site法(ex-off)に区分される。また、微生物として汚染現場の土着性微生物を活性化して利用する場合をバイオスティミュレーション(Biostimulation)、ラボなどで分離(ときには育種)した外来の微生物を導入する場合をバイオオーグメンテーション(Bioaugmentation)と呼び区別する。最近ではバイオスティミュレーションから派生したより経済的な浄化法として、土着性微生物の活性化も行わず、いわゆる自浄作用に浄化を任せるナチュラルアテニュエーション(Natural Attenuation)といわれる新しい概念が提案、実施されるようになってきた。積極的に浄化促進を図る能動的修復(Active Remediation)に対比して受動的修復(Passive Remediation)と呼ばれる。また、浄化生物として植物を利用する手法はファイトレメディエーション(Phyto-remediation)として新たな技術分野となっている。
<特集内容>本特集は、研究のレベルにとどまらず、一線で環境修復事業に参画している企業の技術者が、各種のバイオレメディエーション技術を紹介するとともに、その将来を展望することを狙いとして企画している。実用的バイオレメディエーション技術の現状を理解し、今後のさらなる展開の方向性を探るための材料となっている。

1.石油汚染土壌のバイオレメディエーションにおける現状と今後の展開
2.バイオレメディエーションによるトリクロロエチレン浄化の現状と展望
3.嫌気性バイオレメディエーションによる塩素化エチレン汚染地下水の浄化
4.バイオオーグメンテーション事業化に向けて
5.植物を用いた浄化手法(ファイトレメディエーション)実用化の展望
6.廃棄物埋立処分場再生のためのバイオレメディエーション

<執筆者> 1.大成建設(株)・高畑 陽・瀧 寛則・帆秋 利洋/2.(株)荏原製作所・北川政美/3.栗田工業(株)・石田 浩昭・上野 俊洋・中村 寛治/4.(株)大林組・石川洋二・辻 博和・峠 和男・藤井 研介・織田 泰・木邑 敏章/5.清水建設(株)・浅田 素之・海見 悦子/6.東和科学(株)・川原 恵一郎

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 5月号(1) 水環境における自然再生プロジェクト
編集: 徳島大学・上月康 則

<自然再生推進法> 自然再生推進法が施行された当時(2003年)、各方面からこの法律に期待する声が聞かれた。また“20世紀の負の遺産である劣化した自然環境を再生し、次の世代に引き渡すことは現世世代の責務であること”への異論も少ないし、いま地球上で6回目の生物種大量絶滅の時代にあることを考えると、「もっと自然再生事業が活発となっていても良いはず」と考えるのは私だけであろうか?
<自然再生プロジェクトの要件と課題>
(1)「その地域に望ましい自然とは何か?」の問いに答えることは簡単ではない。例えば、生物多様性保護の観点から示されたものと、地域住民の望むものが相反することがしばしばある。また、自然再生によって不利益を被る人がいる場合や各々の自然観が異なる場合には、その地域の社会特性を考慮し、合意可能な目標を適切に設定する必要がある。
(2)自然再生の技術開発が遅れている。技術化にあたっては、現地実験で小さな失敗を繰り返しながら少しづつ完成度を高めていく必要がある。失敗例が公開されないために、同じ失敗を繰り返している場合がある。実験の仮説が明確にされた上での失敗は成功へのプロセスとみなし、その失敗例を共有化し、活かされなければ、技術の進歩はない。
(3)自然再生の運営組織づくりにも課題がある。環境劣化の悪循環を自然生態系による自律的な好循環とするためには、環境のモニタリング維持管理、時には事業内容の修正などきめ細かな作業を長期間続けていくことが必要となる。時間と手間を要する一方で、費用対効果の発現が明確でない自然再生事業は、従来の公共事業の性格には馴染まない。事業推進のためには、地域住民が中心となり、行政専門家が支援するといった連携が必要となる。上記3者の関係を維持、運営していくためには信頼のおけるコーディネーター事務局が欠かせない。
(4)事業の社会的受容性を向上させることを怠ってはいけない。「生き物の好きな人達だけでやっている」という声が地域の中で聞かれないように、“無関心層”に向けても絶えず情報発信や啓発活動を行い、地域全体が取り組む参加型事業となるように、努めなければならない。
<特集の内容>本特集では、このような状況の中でも着々と推進されてきた自然再生事例を紹介する。自然再生という言葉が生まれる前から着手されてきたものもある。
1.尼崎港2.沖縄県・サンゴ再生の2件の事例は主に技術についての報告で、3.英虞湾・干潟造成4.霞ヶ浦・アサザ再生の事例は参加型の自然事業へと発展させることに成功した事例である。5.フロリダ州キシミー川再蛇行化事業は有名な事例であるが、土地買収に関する法制度などの社会環境整備の観点から紹介されている。

1.閉鎖性海域における最適環境修復技術のパッケージ化-環境修復技術のベストミックスによる物質循環構造の修復-
2.沖縄の港湾整備におけるサンゴ群集再生事業
3.三重・英虞湾の干潟再生プロジェクト
4.社会システムの再構築によって進める自然再生事業-霞ヶ浦・アサザプロジェクト-
5.ロリダ・キシミー川の再蛇行化事業の成立過程とその取り組みについて
6.

<執筆者> 1.広島工業大学・上嶋 英機・中西 敬/2.内閣府沖縄総合事務局・花城 盛三・山本 秀一/3.大成建設(株)・上野 成三/4.NPOアサザ基金・飯島 博/5.徳島大学・上月 康則・笹川 斉宏・村上 仁士

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 6月号(1) 生分解性プラスチック利用技術
編集: (独)産業技術総合研究所・本庄 孝子

<生分解性プラスチック> 微生物により水と二酸化炭素まで分解され、環境負荷が小さく、処分の過程が必要なく、生ゴミとのコンポスト化により、堆肥や土壌改良材にすることもでき、分解菌の発見からケミカルリサイクルの可能性など多くの利点を持つ。
 1997年の京都議定書締結、2005年2月の同発効、2002年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」の閣議決定を受けて、最近は、バイオマス由来の生分解性プラスチック素材が注目されている。バイオマスを利用したプラスチックは二酸化炭素増大には関与しない(カーボンニュートラル)利点があり、バイオマス由来のプラスチックは生分解しなくても地球環境に優しい。
<実用化製品>現在は、さまざまな製品が実用に供されており、緩衝材、生ゴミ回収袋、農業用マルチフィルム、食器類などで、愛知万博ではレストランやファーストフード店の食器類及び長久手日本館の外壁に用いられている。
<今後の展望> 生分解性プラスチックを業界では愛称「グリーンプラ」と呼んでいる。世紀は枯渇資源である石油資源に代わって、再生可能なバイオ資源が用いられることが予想され、バイオベースプラスチックの利用がさらに広がると考えられる。
<今後の課題> 今後、グリーンポリマーの使用が普及するためには、これらのデータの公表、および安全性のデータの整備などを進めていく必要がある。また市民レベルの理解を深める工夫や、行政上の優遇措置などが特に普及段階で望まれる。現在はコストが高い面があり、コストダウンの促進も必要である。
 新たな問題としては、生分解性プラスチックに遺伝子組み換え技術を利用した作物や微生物の取り扱いの問題がある。自然界や生物体内で循環し、意図しなかった機能が発現しないかとの危惧があり、生活者がどのように選択するか注視していく必要がある。

1.バイオマスから作られる生分解性プラスチック
2.ポリ乳酸(PLA)生分解性プラスチック-生分解機構と発酵生産の最前線-
3.ポリブチレンサクシネート(PBS)系グリーンプラの特徴と最新情報
4.澱粉を原料とした環境調和型プラスチック-グリーンインダストリーを目指して-

<執筆者> 1.(独)産業技術総合研究所・相羽 誠一・中山 敦好/2.(独)産業技術総合研究所・常盤 豊・楽 隆生/3.昭和高分子(株)・沖野 義郎/4.三和澱粉工業(株)・工藤 謙一・高原 純一

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 7月号バイオマス系廃棄物のバイオリファイナリー
編集: 岐阜大学・高見澤 一裕

アメリカでは、クリントン政権の時に、バイオマス有効利用を政策とした。そして、バイオマスエネルギー、バイオフーエル、バイオプロダクツの3Bを掲げた。
ブッシュ政権になると、バイオマスを電力・エネルギー資源から工業資源として位置づけるように政策変換し、バイオフーエルとバイオリファイナリーに重点化した。バイオフーエルトウモロコシをエネルギー作物としてエタノールを生産することを目的とした。バイオリファイナリーは、トウモロコシ残渣をC5源・C6源・リグニン源として有効利用するもので、当面は乳酸を生産して、乳酸からポリ乳酸の生分解性プラスチックスを生産することに重点を置いている。
日本は、バイオマス・ニッポン総合戦略を掲げた。その中で、バイオマスのさまざまな利用が提案されているが、現状では、エネルギー源としての研究開発にシフトしているように感じる。これでよいのか?少し考えてみたい。
<特集の内容> 「バイオマス系廃棄物」のバイオリファイナリーを取り上げた。バイオマス系廃棄物は、し尿・家畜糞尿・食品工場残渣・下水汚泥・生ごみなど、動植物系廃棄物一般を意味する。これらを資源としてみた場合、性状の不均一性収集運搬の困難さなどから、ヴァージンの未利用バイオマスと比べると極めて利用しにくいものである。しかし、バイオマス系廃棄物の有効利用なくして循環型社会の構築はあり得ない。この命題に対する果敢な取り組みを紹介し、バイオマス中心の社会の在り方を皆で考えることにしたい。

1.そば殻成分が有する生理活性の検索とその構造
2.油脂系廃棄物からのリボフラビン生産
3.大麦糠からのアントシアニン系色素の生産
4.オカラの高度酵素分解と機能性探索
5.植物系廃棄物からのキシロースとキシリトールの生産

<執筆者> 1.関西大学・河原 秀久・長岡 康夫・小幡 斉/2.静岡大学・朴 龍洙/3.崇城大学・大庭 理一郎・出口 智昭/4.大阪府立大学・笠井 尚哉/5.岐阜大学・河合 啓一・高見澤 一裕・鈴木 徹

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8月号  京都議定書発効と温暖化防止対策の行方、水道水源としての地下水の再評価



 9月号揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制制度
編集: (財)ひょうご環境創造協会・玉置 元則

 現在の大気汚染の主要な課題は地球温暖化などの地球規模の環境問題に重心が移っている感がある。しかし、道路周辺を中心とした大気中浮遊粒子状物質(SPM)および都市部周辺の光化学オキシダントの状況は改善されていない。とりわけ後者の達成率は惨憺たるものがある。
<VOC法律の改正> SPMおよび光化学オキシダントの原因物質の一つである揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制を図るため、大気汚染防止法の一部を改正する法律(2004年に成立、2004年5月に公布)が2004年6月に一部施行された。改正法に基づく関係政省令が5月および6月に公布された。これを受けて環境省では、改正法の運用に当っての解釈を示す文書を作成し、都道府県知事等あてに通知している。
<改正法の内容> 法規制と自主的取り組みのベストミックスを基本としつつ、法規制については、VOC排出事業者に対して、VOC排出施設の都道府県知事への届出義務や排出基準の遵守義務等を課すことになる。
 VOC排出施設の類型については、一施設当りのVOC排出量が多く、大気環境への影響も大きい施設は社会的責任も重いことから、法規制で排出抑制を進めるのが適当とされている。具体的には、(1)塗装関係、(2)接着<関係、(3)印刷関係、(4)化学製品製造関係、(5)工業用洗浄関係および(6)VOC貯蔵関係の6つの施設類型のうち、VOC排出量の多い主要な施設を規制対象施設としている。

1.VOC排出抑制制度のめざすものとその効果
 今回のVOC排出抑制の背景と経緯を説明している。また、規制対象施設の指定、排出基準の設定、適用猶予、除外物質など政省令の内容に加えて、自主的取り組みの促進と排出削減の効果についても記載している。
2.SPM、光化学オキシダントとVOCの関係
 「SPM、光化学オキシダントとVOCの関係」を説明している。SPMや光化学オキシダントの大気汚染状況の改善のために、VOC排出の抑制される。なぜ、VOC抑制でそのことが可能になるのかの理論的背景を平易に記載している。特にVOCのオゾン生成能評価、シミュレーションモデルに加えて、現在の光化学大気汚染の特徴を説明している。
3.VOC排出抑制のための測定方法
 VOC排出抑制のための測定方法を説明している。これは個々のVOCを単体として測定するのではなく、包括的に測定する。試料採取はバッグによる方法が採用されている。分析はFID法(水素炎イオン化形分析計)とNDIR法(触媒酸化-非分散形赤外線分析計)の両方法が使用しうる。なお、光化学オキシダントの生成に関与しないとされる8物質は除外物質としている。
4.VOC削減に向けたドラム缶工業会の取組み
 その排出事業者の一例として、塗装関連の「VOC削減に向けたドラム缶工業会の取組み」を説明している。ドラム缶工業会はVOC排出抑制総量の改善目標達成について、喫緊の課題として取り組むことを確認しており、溶剤使用量の削減、使用方法の改善、付帯設備の導入といった諸課題について総合的に評価し、これを自主行動計画の中におりこみ、さらに削減を推進する計画を持っている。

<執筆者> 1.環境省・関 荘一郎/2.(独)国立環境研究所・若松 伸司・大原 利眞・安富 聡・華山 伸一/3.(社)におい・かおり環境協会・岩崎 好陽/4.ドラム缶工業会・JFEコンテイナー㈱・清野 芳一

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10月号SPIRIT21:合流式下水道改善技術の開発
編集: 国土交通省・岡久 宏史

<課題の背景と経緯> 昭和40年代前半までに、下水道事業に着手した都市では、汚水と雨水を同じ一本の管で流す「合流式下水道」で整備を進めた。これは、より少ない投資で普及拡大と浸水対策を進める上で成果があった。全国 191都市(2003年度末)で採用され、わが国人口の約2割の人が合流式下水道を利用している。
 環境への関心が高まった今日、一定の雨が降ると未処理の汚水が雨水と一緒に、全国の市街地に約3000個所ある吐き口(雨水吐き)から川や海に流れ出てしまう衛生面・水質面の問題がクローズアップされ、2001年には全国紙の一面で報道されるなど社会問題となった。
<下水道事業への新技術の開発> ところで、下水道事業の全国的な大課題を新たな技術で解決するための技術開発を産学官の連携で集中的に行なう下水道技術開発プロジェクト“SPIRIT 21(Sewage Project Integrated and Revolutionary Technology for 21 century)”を2002年に創設し、その推進体制としてSPIRIT 21委員会を下水道新技術推進機構に設置した。
 上記の状況下で、2001年、SPIRIT 21の最初のテーマとして「合流式下水道改善技術」を3年間で実用化することが決定された。大量の汚れた水を高速で処理する技術など23の新技術が民間から提案されて、参加13自治体のフィールドで実地試験が精力的に進められた。2005年3月までに、23技術すべてが所定の性能を達成したと認められた。
 この間、大学、国、地方公共団体、関係研究機関、民間企業などから8つの委員会でのべ100名を越える委員が検討・審査に参加され、各技術毎の評価書・技術資料などが作成された。
<新技術の内容> 従来、合流式下水道の改善には、短時間に大量に発生し、かつ、大きなゴミまで含んで水量、水質ともめまぐるしく変動する汚水を、限られたスペースで対応しなければいけないことが、大きな技術的課題として横たわっていた。今回、これらの技術によって、大規模な貯留施設によらずに大量の雨天時汚水を狭いスペースで処理したり、短時間に大量の汚水を消毒したりすることができるようになった。これらの成果は、海外の国際会議でも発表され、大きな関心を呼んでいる。
<今後の対応> 合流式下水道については、これを改善するための補助制度がすでに創設されており、2004年4月には新たな下水道法施行令によって、今後、原則10年以内に対策を完了することが地方公共団体に義務付けられた。こうして、規制補助制度新技術がセットになって改善をすすめる環境が揃ったことになり、全国の自治体で新たに策定された合流式下水道改善緊急計画に基づいて、積極的な改善が期待される。

SPIRIT 21による合流式下水道改善技術の開発評価
   (財)下水道新技術推進機構・堀江 信之
 1. きょう雑物除去技術(スクリーン)―「ブラシスクリーン」
   (株)クボタ・永江 信也
 2. きょう雑物除去技術(スクリーン)―「雨天時越流水スクリーン」
   (株)西原環境テクノロジー・田中 宏樹
 3. きょう雑物除去技術(スクリーン)―「CSOスクリーン」
   日立プラント建設(株)・関根康記
 4. きょう雑物除去技術(スクリーン)―「ディスクスクリーン」
   日立機電工業(株)・古舞 邦博
 5. きょう雑物除去技術(スクリーン)―「ストームスクリーン」
   日立機電工業(株)・古舞 邦博
 6. きょう雑物除去技術(スクリーン)―「The Copa Raked Bar Screen」
    三菱化工機(株)・北田 和正
 7. きょう雑物除去技術(スクリーン)―「ロータリースクリーン」
   (株)石垣・犬塚充志
 8. 高速ろ過―「雨天時高速下水処理システム(簡易処理の高度化・未処理下水の簡易処理)」
   日本ガイシ(株)・宮田 篤
 9. 高速ろ過―「高速ろ過装置(繊維ろ過)」
   三井造船(株)・佐藤 大士
10. 高速ろ過―「特殊スクリーン付きスワールおよび沈降性繊維ろ材を用いた上下向流可変式高速ろ過法」
   ユニチカ(株)・千種 健理
11. 高速ろ過―「雨天時未処理放流水等の超高速維ろ過技術」
   (株)石垣・宮脇 將温
12. 高速ろ過―「高速ろ過プロセス」
   日立プラント建設(株)・関根 康記
13. 凝集分離―「高速凝集沈殿処理(アクティフロプロセス)に関する研究」
   (株)西原環境テクノロジー・大浦 正美
14. 凝集分離―「特殊スクリーン付きスワールによる高速凝集分離システム」
   月島機械(株)・越智 崇
15. 消毒―「二酸化塩素を用いた高効率消毒技術」
   (株)クボタ・大塚 裕司
16. 消毒―「スワールによる高速凝集を組み合わせた中圧紫外線による消毒」
   月島機械(株) 越智 崇
17. 消毒―「二酸化塩素を用いた消毒の高速化技術」
   JFEエンジニアリング(株) 杉浦 鋭一
18. 消毒―「高濃度オゾンを応用した高速消毒技術」
   三菱電機(株)・石田 稔郎
19. 消毒―「臭素系消毒剤を用いた消毒技術」
   (株)荏原製作所 渡辺 昌次郎
20. 消毒―「オゾンによる効率的消毒技術」
   昭和エンジニアリング(株) 坂田 芳治
21. 消毒―「紫外線消毒装置(UVシステム)」
   (株)西原環境テクノロジー・永松 真一
22. 計測・制御―「浸漬タイプ紫外線吸光度計」
   (株)明電舎・福岡 正芳
23. 計測・制御―「大腸菌自動測定装置」
   (株)明電舎・福岡 正芳

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11月号(1) 環境技術分野での海外協力
編集: 厚生労働省・日置 潤一

<海外協力の意義>地球温暖化などに代表される地球環境問題は、その規模の大きさから、ある一国の努力だけで解決することは困難である。したがって関係各国が協調して課題に取り組まなければならず、技術分野での海外協力が必要とされることは理解しやすいと思う。
 我が国の技術分野の海外協力は、大別していわゆる「マルチ」と「バイ」の二通りある。ある課題に対し、多数の国が加盟する国際機関などへの関与を通じて実施するものをマルチ、対象とする国を決め、その国に対して個別に実施するものをバイといって区別している。地球温暖化などの課題に対しては、現時点ではマルチでの海外協力の色合いが強いが、開発途上国への水道・廃棄物分野での海外協力などに関してはバイの色合いが強く、どちらも我が国の国際貢献の観点から非常に重要な取組みである。
<特集の内容>「環境技術分野での海外協力」と題し、大きく分けて、地球環境問題への取組みと水道・排水・衛生分野の環境衛生問題への取組みについて紹介することとした。なお、環境衛生問題については、一般的にヒューマンベーシックニーズの問題として取り上げられることも多いが、開発途上国における効率的な水道システムの構築は、新たな水資源の開発を抑制し、適切な排水・し尿処理システムの確立は地域住民の居住環境のみならず、周辺、あるいは国境を越えた自然環境の保全に資することなどから、環境技術分野の一部として捉えることとした。
 本特集は、特に、これから海外協力分野での活躍を志す学生の方々等、若手の方々に是非一度お読み頂ければと考えている。執筆者各位が様々な立場から、海外協力における中心的な役割を果たされていること、言い換えれば、海外協力には様々な観点・立場からの取組みが必要とされていることを理解頂き、読者それぞれの立場・専門性を活かした海外協力の可能性など、その目指す将来についての考えを一層深める一助となれば幸いである。

1.アジア太平洋地域における地球環境の課題とAPNの対応
2.環境分野での国際技術協力
3.水道分野の国際技術協力-水源から給水栓まで-
4.排水処理技術分野の国際協力-インドネシア・中国-
5.NGOによる国際技術協力-バングラデシュ農村における衛生改善事業-

<執筆者> 1.アジア太平洋地球変動研究ネットワーク・橋詰 博樹/2.(社)海外環境協力センター・片山 徹/3.(社)国際厚生事業団・菅原 繁/4.(財)北九州国際技術協力協会・川﨑淳司/5.流通科学大学・酒井 彰

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11月号(2) 化学物質微量分析の最新動向
編集: 兵庫県立健康環境科学研究センター・中野 武

<極微量への取組>ダイオキシン、PCBなど、極微量で環境や生体に影響を及ぼす化学物質のモニタリング技術は、この数年大きく発展している。分析装置の開発、分析技術の最新情報交換、前処理法の改良、コンピュータの小型化と高速化、データ処理速度の飛躍的向上、標準物質安定同位体の合成など、多くの新技術が結合して、日々、高感度、高分離を実現している。
 一方、「ダイオキシン特別措置法」、「PCB特別措置法」「POPs条約」「PRTR制度」、環境ホルモン戦略、計画「SPEED’98」から、化学物質の内分泌かく乱作用に関する「ExTEND2005」と、法整備新制度導入により、環境中の微量汚染物質を低減していこうとする取り組みが進められている。
<特集の内容>化学物質のリスクを評価し、対策をたて、リスクを低減させていく第一ステップとして、環境汚染の実態把握や経年的な濃度レベルの推移をモニタリングしていく必要がある。今回、「化学物質微量分析の最新動向」を特集として企画した。
 化学物質の「分離技術と測定技術」の最近の進歩と「環境分析への応用」について、“発展めざましい”質量分析(MS、TOF-MS)機器(高分解能、高感度、高選択性)や“改良により進化を続ける”化学物質分離(LC/GC)技術(高分離能、分析時間短縮、高感度、高選択性)の両面から報告する。本特集では化学物質微量分析技術の活用に先駆的に取り組んでいる各分野の専門家が執筆している。
 注) TOF-MS:m/z値が小さい(軽い)イオンほど高速でドリフト空間を飛行し、検出器に到着する。質量電荷比m/z値の違いでイオンの飛行時間が異なることを利用して質量分析(MS)を行う方法を「飛行時間型質量分析法」(Time of Flight Mass Spectrometry、TOF-MS)と呼ぶ。 GC:ガスクロマトグラフィー LC:液体クロマトグラフィー

1.MS分析の最新動向
 環境分野における動向をはじめ、生体試料、食品、RoHS指令、危険物探知への利用など、その他の分野における最近の動向の概要を報告している。
2.GC/TOF-MSの特長と環境中の微量化合物分析への応用
 常に高分解能状態で動作するTOF-MSは、高感度なスペクトル測定が可能であるため、GC/TOF-MSの精密質量による組成推定や、精密質量を用いた選択性の向上が実現できること、環境汚染物質のモニタリングから2DGCなどの高分離技術との結合により、目的の微量環境汚染物質と他の化合物の相互関係をスペクトル上で展開する環境プロファイリングへと展開できることを報告している。
3.LC/TOF-MSによる環境汚染物質の分析
 急速にその技術が発展している飛行時間型MS(TOF-MS)は、分解能が高く、精密質量分析が可能なことから、選択性・精度ともに高い分析が可能であり、LC/TOF-MSを水道規制農薬や河川水中尿素系農薬へ応用し、S/N比の向上を実現している。LC/TOF-MSは、近年技術革新の著しい装置で、現在では分解能 60000以上の装置も試作されていることを報告している。
4.包括的2次元ガスクロマトグラフィー(GC x GC)の原理と環境分析への応用
 (GC × GC)の高分離能、グループタイプ分析、高感度化と環境分析への応用について報告している。
5.LC/MS/MS測定におけるハイスループット化について
 高い線速度で分析時間の短縮(30分から5分へ)を実現したUPLCTMについて、また、UPLCTMとMSを組み合わせることで、迅速で信頼性の高い分析法の構築が期待されることを報告している。

<執筆者> 1.(財)日本品質保証機構・浅田 正三/2.日本電子(株)・田中 一夫・草井 明彦/3.横河アナリティカルシステムズ(株)・滝埜 昌彦/4.ゲステル㈱・落合 伸夫/5.日本ウォーターズ㈱・佐藤 太・佐々木 秀輝

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12月号(1) 室内環境汚染によるヒトへの影響
編集: (財)ひょうご環境創造協会・玉置 元則

 近年、住宅などの室内空気が原因となって引き起こされるシックハウス症候群が社会問題となっている。この定義は難しいが、一般的には居住者の健康へ何らかの影響を与える住居に起因する健康障害であり、住居が高気密化したり建材などに種々の化学物質を使用することにより、居住者に体調不良を生じさせている現象である。しかし、その原因は単にホルムアルデヒドやトルエンなどといった化学物質に限らず、細菌ウイルスカビなどの生物的要因や低周波振動電磁波などの物理的要因も考えられる。
<本特集の内容>ごく平凡なヒトの健康、とりわけ公衆衛生(家庭衛生)を中心とした内容とし、家具建材等から放出される化学物質に係わる問題に多面的に視点をあてたものである。

1.室内環境汚染物質による人体への影響・公衆衛生/医学的観点から
 公衆衛生・医学的観点から、人体への影響を整理している。室内汚染物質の種々の発生源ならびにシックハウス症候群の概要を歴史的な経緯を踏まえて詳述されている。室内環境汚染物質の発生源の測定例、室内環境汚染物質の健康影響の具体例ならびにこのことに基づく今後の課題にも触れられている。
2.シックハウス症候群の発症機構
 シックハウス症候群を誘発する化学物質が人の体内でどのように変化し影響を与えるのかという発症機構を医学的な立場から記述している。特に個人差要因、アレルギー・免疫学的側面と心療内科的側面から解説している。
3.室内化学物質空気汚染に対する建築分野における対策
 建築分野での発生源対策として、建材に関する対策、吸着建材、吸着分解建材による放散速度の減衰、空気清浄機による浄化、安定した換気量の確保、工程管理による放散速度の減衰などに分けて最新の知見を整理している。
4.室内空気微量汚染化学物質についての行政対応と事例解決
 行政の対応ならびに事例解決を紹介している。各機関連携の構築ならびに症状の解消を目的に共同研究を重ね、発症原因の追究、除染工事法の検討を行ない、事象解決に努められた事例が詳述されている。
5.室内環境汚染化学物質の測定方法の現状と今後の動向
 室内環境汚染物質の測定方法の現状を解説している。パッシブ法とアクティブ法による試料採取、ホルムアルデヒドやトルエンなどの分析方法の概要を示されるとともに、国立医薬品食品衛生研究所と地方衛生研究所で組織的に行なった実態調査の結果も示されている。
6.室内環境汚染に関する行政対応の現状
 本課題に関する行政対応について、厚生労働省など各省庁別の取組みならびに自治体での対応を示している。

<執筆者> 1.麻布大学名誉教授・中明 賢二/2.北里大学・坂部 貢/3.千葉工業大学・小峯 裕己/4.(独)国立健康栄養研究所・大道 正義/5.神奈川県衛生研究所・伏脇裕一/6.(株)環境管理センター・土屋 悦輝

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12月号(2) 土壌汚染のない国づくりを求めて
編集: 大阪人間科学大学・福永 勲

 「土壌汚染対策法」ができて早くも3年が経過し、各地、とくに大阪をはじめとした都市部の土壌汚染問題が明らかになっている例も少なくない。その場合、住民・行政・企業・研究者が協力してあたらないと解決できない課題が多くなっている。しかし、その具体的な経過や対策事例が今ひとつ明らかにされていないことが多いことも周知のとおりである。さらに、法令的な課題や資産価値の問題、土地履歴のデータベースがないなどという課題がより問題を複雑にしている。そこで、土壌汚染対策技術は言うに及ばず、こういったあらゆる課題・解決策を持ち寄り、議論を積み上げることで、循環型社会への一歩を踏み出したいと思い企画した。

1.土壌汚染対策法の施行と修復技術開発の動向
 土壌汚染問題とは何か、これは土地汚染問題ではないか、さらにその解決を困難にしている根本的な要因は何であるか、社会的な点にあるのか、技術的な課題にあるのか、歴史的経過を含めて総合的に考察している。
2.自治体における土壌汚染対策事例
 具体的な土壌汚染問題の解決事例として、その中でとくにリスクコミュニケーションをどのようにはかっていったのか、住民と行政の協力した解決事例を紹介している。
3.土壌・地下水汚染対策技術の現状と今後の展望・課題
 土壌汚染対策の技術的な到達点がどのようなレベルにあって、残された課題は何であるかを明らかにするために、土壌汚染対策技術を総合的に紹介し、その特徴と限界、適応性、アメリカと日本の比較、今後の課題などを整理している。
4.不動産価値や社会問題としての土壌汚染
 わが国における不動産市場の現状から来る土壌汚染問題の本質、その複雑性、不動産の価値と金融機関との関係、企業会計との関係などの視点からの土壌汚染問題を話している。

<執筆者> 1.和歌山大学・平田 健正/2.大阪市・副島 忠男/3.国際航業(株)・中島 誠/4.(財)日本不動産研究所・山本 忠

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掲載日:2018年01月26日
更新日:2018年08年05日

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