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沈殿池の基礎

1.固形粒子の沈降特性

(1)自由沈降と干渉沈降

粒子が液体中で沈降するときの状況は、自由沈降と干渉沈降の2つに大別される。
自由沈降は、個々の微粒子がそれぞれ固有の速度で沈降する現象であり、粒子濃度が低いときに観測される。粒子の自由沈降の濃度域は、液体の種類・温度、粒子の密度・サイズ・形状・表面電荷などや共存する電解質などによって異なる。
干渉沈降は、粒子濃度が高いとき、粒子同士が集合したり、干渉したりして、明瞭な界面を形成して沈降することで、界面沈降(または集合沈降)ともいう。界面沈降は、自由沈降に比べてその速度が遅は遅いが、清浄な上澄み液が得られる。代表的な例として、浮遊性生物処理における活性汚泥などがある(図1B1B3)。
どのくらいの濃度から、界面沈降が起こるのか、粒子の種類によって異なる。凝集性のない炭酸カルシウムでは、およそ10,000mg/L以下は自由沈降となる。一方で、活性汚泥では、2,000mg/L以上くらいから界面沈降を示す。
同じ種類・形状で、個々のサイズが若干異なる水より比重の大きい粒子を含む水をシリンダーに入れて、沈下する状況を時間経過に沿って観察すると、①自由沈降→②干渉沈降→③圧縮沈降の現象が観測される(図1A1A3)。の段階では、個々の粒子は自由沈降する。の段階では、粒子同士が接近して、相互に作用を及ぼすようになり、干渉沈降するようになる。の段階では、つぎつぎに沈降した粒子層の重みにより、それらの粒子間の隙に存在する水が抜けて、沈積層が圧縮される。

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図1 シリンダーによる粒子沈降の経時変化の事例:(A)水田などの泥水、(B)活性汚泥の混合液
1:沈降開始時の状況、2:初期沈降の状況、3:終期沈降の状況

現実にある環境水や汚水には、様々な電解質や固形物質が含まれており、また、それらの濃度も異なるので、シンダーに入れて固形物質の沈降状況を観察すると、自由沈降・干渉沈降が混在するもの、自由沈降・干渉沈降・圧縮沈降が明確で短時間で終了するものから、各段階の沈降が極めて遅く圧縮沈降に至るまで数日間を要するものもあるなど、様々な状況が観測される。
土木工事現場の泥水・工場の沈降分離工程・生活排水の沈降分離工程での代表的な固形粒子の沈降特性を表1にまとめて示す。

表1 代表的な固形粒子の沈降特性の分類 
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(2)界面沈降速度

汚泥の初期濃度を変えて、汚泥界面(例えば、図1:B1~B3)の高さを一定時間ごとに測定すると、図2に示すような界面沈降曲線が得られる。沈降の初期においては、界面の沈降速度はほぼ一定で直線に近いので、定速沈降領域という。ある時間を過ぎると、沈降速度が急激に減少するようになり、これを減速(または圧密沈降領域という。定速から減速に変化する時点を境界圧密点(または臨界点)というが、汚泥の濃度や種類によっては、明瞭に認められないこともある。

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図2 汚泥の界面沈降曲線 C1~C3:初期汚泥濃度

2.沈降速度

粒子が流体中で沈降するとき、粒子には重力と流体から受ける抵抗力が働き、やがて、一定の速度で沈降するようになる。この速度を終末沈降速度という。この速度は、流体のレイノルズ数(Re)によって、ストークス(Re≦2)、アレン(2<Re≦500)、ニュートン(500<Re≦105)の各式が提案されているが、汚水処理で扱う沈殿池(槽)の沈降分離の多くはは、Re≦2である。
ストークスの式は、次式で示される。
Vs = g/(18μ)・(ρs – ρ)・d2
Vs:粒子の沈降速度[cm/s]、g:重力の加速度[cm/s2]、μ:水の粘度[g/cm/s]、ρs:粒子の密度[g/cm3]、ρ:水の密度[g/cm3]、d:粒子の直径[cm]

この式に示されているように、粒子は水より重いほど、また、粒径の2乗に比例して速く沈降することとなる。粒径が10倍になれば、沈降速度は100倍となる。凝集法は、微細な粒子を、それらの凝集体に形成させて、その粒径を大きくして沈降分離効率の向上を目的とする手法である。

<レイノルズ数Re>

流体力学では、流体の慣性力粘性力との比で定義される無次元量で示される。レイノルズ数は、層流や乱流のような流れの異なる流域を特徴づけるためにも利用される。層流においては、低いレイノルズ数において発生し、粘性力が支配的で、滑らかで安定した流れが特徴である。乱流については、高いレイノルズ数において発生し、そこでは慣性力が支配的となり、無秩序な渦や不安定な流れが特徴である。流体の流れは、一般的には無秩序であり、通過する水路の形状(円・矩)や表面積の粗さなどの非常に小さな変化が異なる流れの発生原因となる。

2.沈降速度分布

汚水中の固形粒子群では、様々な形状・密度・粒径が異なるので、前段でスクリーンや沈砂池などにより、ある程度、同一な種類の粒子群に分別される。それでも、形状・密度・粒径が異なるので、沈降速度に分布が認められる。例えば、同じ形状・密度の粒子群でも、その粒径が異なれば沈降速度に分布が生じ、また、粒径が同じでも、形状・密度が異なれば沈降速度に分布が生じる。沈降分離操作において、分布の幅が狭いほど、その分離効率が向上する。

3.沈殿池と水面負荷

以下に記載する原理・方式は、沈殿池の仕組みを理解する上で極めて重要なものであるが、自由沈降する粒子に適用する理想的な条件下で成立するのものであって、具体的に沈殿池を設計する場合には、個々の目的に応じて、実験的に設計値を求めることとなる。沈殿池には、上昇流式あるいは横流式(水平流式)が採用される。

(1)上昇流式

上昇式沈殿池(図2(A))において、粒子の沈降速度Vsが汚水の上昇速度Vよりも大きければ、粒子は沈降し、小さければ汚水とともに流出する。汚水の上昇速度V[m/d]は次式で示される。
V = Q/A    (1)
Q:汚水の流入量[m3/d]、A:沈殿池の面積[m2]

沈殿池の設計では、Vs > V となるように、沈殿池の面積Aを設定する。Vは流速であるが、これを水面積負荷または表面積負荷という。流入量Qで、粒子の沈降速度Vsの沈殿池の必要面積Aは、(1)式より、A > Q/Vs となる。
例えば、流入水量10,000m3/d、粒子の沈降分離速度15mm/minのとき沈殿池の必要面積Aは、次のようになる。
A > 10,000[m3/d]/15[mm/min]/60[min/hr]/24[hr/d]*1,000[mm/m]
= 463[m2]

(2)横流式

横流式(図2(B))(または、水平流式)では、汚水が流入してから流出するまでの時間(汚水の滞留時間)T[d]内に、沈殿池の底部までに沈降する必要がある。沈降速度Vs[m/d]とすると、粒子の沈降する水深Hs[m]は、次式で示される。
Hs = Vs・T

一方、深さH[m]、面積A[m2]の沈殿槽に、流入量Q[m3/d]の汚水が流入すると、その滞留時間Tとの関係は、次式で示される。
T = A・H/Q → H = Q・T/A

Hs>Hであれば、汚水が流出する前に、粒子が底部まで沈降するので、次式が成立する。
Vs・T > Q・T/A → Vs > Q/A(= V)   (2)

以上のことから、上昇流式でも横流式でも、同一の種類の粒子に対しては、設計条件は同一の表面積の沈殿池となる。
ただし、図2(B)に示す整流壁P1のH’の位置から流入した粒子の沈降速度はV’s<Vであっても、整流壁P2に達する前に沈殿池の底面に達する沈降速度であれば分離できるので、上昇流式よりも効率がよいこととなる。

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図3 代表的な沈殿池:(A)上昇流式、(B)横流式
F1:流入原水、F2:処理水、P1 & P2:整流壁

4.連続沈殿濃縮池

化学工業での析出沈殿物(工業原料の生産)の濃縮や大型浄化槽・下水道処理施設での汚泥の濃縮などに、連続沈殿濃縮池が利用される。この操作により、汚泥容積は1/2~1/4程度までに減容される。濃縮池では、上澄み層沈降層圧縮層が形成され、一定の流量で原汚泥が供給される条件では、池内の各層は定常状態に保たれる。
連続沈殿濃縮のモデルを図4に示す。物質収支は次式で示され、上澄み液が清浄(Cs≫Co)であれば、式(3)で近似される。
Ci・Qi = Cs・Qs + Co・Qo 
Ci・Qi・ = Cs・Qs  (3)

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図4 連続沈殿濃縮のモデル
Q、C:流量、汚泥濃度; i:供給原汚泥、o:流出上澄み液、s:排出濃縮汚泥

<質量沈降速度>

汚泥濃度C[kg/m3]、その沈降速度Vs[m/d]としたとき、
Gs = C・Vs   (4)

Gs[]kg/m2/d]は、質量沈降速度といわれる。1.固形粒子の沈降特性で述べたように、Cが低くて、自由沈降に近い領域では、濃度が多少変化してもVsはあまり影響を受けないので、Gsの値はCとともに増大する。Cがさらに高くなると粒子同士の干渉が激しくなって、Vsは次第に小さくなり、ついにはゼロに漸近するので、Gsもゼロに近づいていく。この状況を、汚泥濃度Cに対して質量沈降速度Gsをプロットすると図5②(緑線)のような挙動を示す。
 ところで、シックナー内部では、濃縮汚泥の排出量Qsによって下向きの流れが生じ、表面積A[m2]とすると、その速度はQs/Aとなるので、この効果による質量沈降速度Gt[kg/m2/d]は、次式のようになる。
Gt = C・Qs/A   (5)

シックナーでは、QiとQsは一定に保たれているので、汚泥濃度Cと質量沈降速度Gtの関係は図5①(青線)のように直線関係にある。

<連続シックナーの表面積>

シックナー内での、総質量沈降速度Gは、汚泥自身の沈降によるものGsと汚泥排出の流れによるもの合計Gtとなり、式(4)および(5)から次式が得られる。
G= Gs + Gt = C(Vs + Qs/A)   (6)

汚泥濃度CとGの関係を図示すると、図5③(赤線)のようになる。このことから、供給汚泥濃度Ciから排出汚泥濃度Csに至るまでのある濃度Cmにおいて(Ci<Cm<Cs)、総質量沈降速度Gは極小値Gmを示すこととなる。この沈降速度Gmに対応する濃度Cmの汚泥層が汚泥処理能力を決定することとなる。
図4の点線で示すように、Cm値は③の極小値、または②の変曲点から求める。Gm値は、③の極小値を通る水平線か、あるいは、②の変曲点とCs点を結ぶ直線と、G軸との交点のいずれかによっても求めることができる。
定常状態では、式(7)が成立するので、式(8)が得られ、供給汚泥のCi、Qi、Gmの各値を用いて式(8)より、必要な表面積Aが決定できる。
Gm = Ci・Qi / A = Cs・Qs / A   (7)
A = Ci・Qi / Gm    (8)

具体的には、図2に示す方法により、汚泥濃度Cを変えて界面沈降速度Vsを測定し、式(2)(4)より、図4のC-G曲線を作成し、Gm値を作図法により求める。

<シックナーの設計と運転>

排泥量Qsを増減すれば、図5の直線①の傾斜が増減し、それに応じてG曲線③が上下し、GmおよびCsの値が変化して物質収支の平衡が保たれる。排泥濃度を高くするには、排泥量を絞り直線①の傾きを小さくすればよいが、それに伴ってGmも小さくなるので、給泥量Qiを減らすか、シックナーの面積Aを大きくしなければならない。限界値Gm以上の汚泥が供給されると、シックナー内に汚泥が次第に蓄積し、ついには汚泥が越流することとなる。

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図5 汚泥の濃度Cと質量沈積速度Gの関係
Gs = C・Vs、 Gt = C・Qs/A、 G = Gs + Gt
Vs:汚泥界面の沈降速度[m/d]、Qs:濃縮汚泥の排出量[m3/d]、A:シックナーの表面積[m2]


掲載日:2017年12月12日
更新日:2017年12月14日

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