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活魚水槽−設計と維持管理

活魚水槽-海産魚介類の活魚水槽と浄化装置の設計と維持管理

1.はじめに

魚介類を生きたまま輸送・備蓄して、生魚料理とする活魚ブームが全国各地で普及して久しい。また、活魚の需要の増加により輸入活魚量も年々増加している。
活魚は産地(漁場、養殖場)、漁港、魚市場を経て活魚店あるいは料理店において一般消費者に供せられる。この流通経路で輸送(船舶、車両、航空等)および備蓄が繰り返される。特殊な魚介類を除き、輸送・備蓄いずれにも水槽が必要である。
浄化装置なしで魚を曝気水槽で生かす場合(水量の10%程度収容)、魚の排泄物(二酸化炭素、吐出物、粘液質や糞・尿)により水質が汚濁するので、一般的な魚の生存時間の限界は、酸素の補給が十分であっても、10~20時間である。したがって、魚を生きたまま長時間に渡って備蓄する場合には、浄化装置のついた水槽が必要である。
本ページでは、海産魚介類の活魚水槽および浄化装置の設計と維持管理について、その概要を記載する。海水を取り上げるたのは、次のような理由による。
(1)淡水は水道水等により容易に入手できるが、海水の入手には手間がかかる。
(2)一般的には浄化装置には生物膜法が用いられるが、海水での微生物の活性度が、淡水と比較して低い。
(3)微生物フロックが淡水と比較して柔らかく、微生物担体から剝離して水槽内に浮遊しやすい。
ここでは、漁港、市場、活魚店、料理店などに設置される活魚水槽の浄化装置について、以下の項目に関して解説する。
(1)魚の備蓄環境、(2)活魚水槽の水質と浄化方法、(3)魚介類の種類と水槽の形状、(4)生物膜式浄化装置の設計、(5)維持管理、(6)活魚水槽と浄化装置の具体例。
なお、輸送用の水槽については、水質の浄化以外に、(1)移し替え、(2)震動や揺れ、(3)環境の変化(収容容器のサイズ・形状、水温、溶存酸素、塩分、明暗など)に対する配慮が必要であり、これらについてはダウンサイズの関係上、別の機会に解説する。
また、水浄化の基本となる本サイト内の観賞魚水槽も参考とされたい。さらに、水浄化設備の設計・維持管理に係る生物膜法の解説および水質管理に必要な簡易水質検査も参考とされたい。

2.魚の備蓄環境

魚の備蓄環境の主な因子として、次の項目がある。

2.1 温度

温度は、魚の備蓄環境因子の中で最も重要なものである。最適な生育温度は、魚の種類と季節によって異なる。しかし、一般的な活魚の備蓄では多くの種類の魚を扱うので、それぞれの魚種に最適な温度に調節した数多くの水槽を設置することが困難である。また、多くの種類の健康魚は、水質が良好であれば水槽収容後、6時間程度で摂餌活動を行うが(魚種により大きな差異がある。1~2kgの養殖タイを実験室の水槽へ移した経験では、ペレット状人工飼料の摂餌活動を開始するまで1ヶ月を要した。)、餌を投与すると水質が悪化するので、通常備蓄中餌は与えない。したがって最適生育温度では魚の代謝活性が高く、体力を消耗し備蓄中に痩せたり味が落ちたりする。また、温度が高くなるほど細菌増殖が活発となり、感染症が起こりやすくなる。
以上のことから、気温が20℃以上になる季節では冷却を行って15~20℃のある温度で一定に保つのが一般的である。冬期では温度コントロールは行われていないことが多い。海産に限らす、魚介類は温度変化に弱いので、流通経路内の水槽温度は同じ値に設定されている。

2.2 溶存酸素

溶存酸素も備蓄環境因子の重要なものである。一般的には、飽和溶存酸素濃度近くに維持するように空気曝気や液体酸素の投入が行われている。しかし、最も重要なことは溶存酸素濃度の急減が、魚にとって危険である。水槽内の水流速度が遅く魚の対流遊泳が激しくない場合には、5mg/L以上であれば特に問題はない(飽和溶存酸素濃度は,気圧・水温・溶存塩類濃度などによって異なる。蒸留水における1気圧・20℃での飽和溶存酸素濃度は8.84mg/Lである。)。

2.3 二酸化炭素

二酸化炭素CO2の分圧が上がると水中の酸素との交換が妨げられる。未解離のCO2が30~50mg/Lになると動きが鈍くなり、50mg/Lを超えると魚に触れても反応しなくなる。さらに150mg/L以上になると、酸素が十分存在してもへい死する [山崎, 1982]。このようなCO2分圧の増加は密封型の容器で活魚を輸送する際に起こる現象であり、活魚水槽のような開放型で曝気を行う場合には未解離のCO2は気泡中へ拡散し、気泡とともに大気中へ揮散するので問題となることはない。

2.4 pH

淡水魚はpHの変化に対して順応力があるが、海水魚の順応力は弱いと言われている。これは、海水のpH緩衝力のある電解質が多く、天然海水のpH(海域や深度により異なるが、7.5~8.4)は変動が少ないからである。活魚として扱われる多くの魚はpH6~9の範囲で備蓄可能である。しかし、pH変化は海水内の電解質の電離平衡を変化させ、魚の生理に大きな影響を与えるので、pHの急激な変化は避けるべきである。
pH変化で注意しなければならないのは、アンモニアとの関係である。アンモニアの毒性はNH3に起因しており、NH4+は毒性を示さない [Colt, 1976]。NH3とNH4+の平衡はpHに依存し、pH上昇に伴いNH3濃度が高くなる。微生物によるアンモニアの酸化によりpHが低下し、pH低下とともにこの酸化反応が抑制され [Enrique, 1979; 河合, 1965 ; Richard, 1975]、アンモニアが少しづつ蓄積する [平山, 1970]。特に海水の主なpH緩衝源である炭酸水素イオンがほぼ消費されるpH5.5以下においてはアンモニアの酸化は殆ど進行しない。pHが低いときにはNH3濃度が低いため毒性を示さない。しかし、この水をアルカリで中和してpHが急激に上昇すると、NH3濃度が高くなり魚がへい死することがあるので、注意する。

2.5 汚濁物質

浄化装置がない、または不適切な装置で運転された水槽で、魚を備蓄すると魚の粘液質、剝離した組織片、糞、尿などの排泄物が高濃度となり、次のような現象を引き起こす。
(1) 懸濁性物質は、えらに付着してその有効ガス交換面積を減少させたり、水-血液間距離を大きくして酸素摂取効率を低下させる。
(2) 懸濁性物質により水の透明度が悪くなると、魚の視界が悪くなり、魚同士が接触したり水槽の壁に当たり眼球の白濁や皮膚の損傷が起こり、細菌感染が起こり易くなる。また、ストレスの原因となり、魚が落ち着かず体力の消耗となる。
(3) 懸濁性・溶解性と問わず有機物質濃度の増加は、病原菌やバクテリアの増殖を促進する。また、これらの増殖は溶存酸素を消費する。
(4) アンモニアは毒性が強く、魚の種類によって異なるが、NH3が数mg/Lを超えると数時間で死に至る [Poxton, 1982]。

2.6 塩分

一般海水の塩分濃度は3.3~3.7%である [Nicol, 1967]が、活魚水槽では2.7~4%の範囲であれば問題はないようである。水分の蒸発により、活魚水槽では塩分濃度が高くなるが水道水で希釈すればよい。また、床に設置した水槽において、水道水が混入したケースもある。

2.7 明暗

魚は、照度の急激な変化に対して敏感である。一般に、水槽は屋内に設置され照明が行われる。営業時間終了後、全てを一斉に止めることは魚に動揺を与える。段階的に照明を落とすことに留意する。また、遊泳魚は真っ暗な状態では魚にストレスを与えるので、薄明かりの状態にしておくのがよい。逆に、営業開始の際には、段階的に照明をつける。

3.活魚水槽の水質と浄化方法

3.1 活魚水槽の水質

活魚水槽の水質条件は魚の種類により大きく異なるが、一般的に取り扱われて活魚については、次のような条件が必要であろう。現場での簡易水質検査・測定については、別ページに掲載しているので、参考とされたい。
(1) 有機物濃度は8mg/L以下が望ましい。
(2) アンモニア濃度は海水の補給等によりpHが変動するので、pHに関係なく0.2mgNH3-N/L以下が望ましい。
(3) 懸濁性物質濃度は5mg/L以下が望ましい。
(4) pHは6.5~8.5の範囲が望ましい。
(5) 溶存酸素濃度7mg/L以上が望ましい。
以上の値は、本掲載者が山口県内の活魚店や料理店に設置してある活魚水槽と魚の状況(生存日数や外観的損傷など)の調査により、経験的に求めたものである。活魚水槽は養殖等と異なり短期間、魚を生存させて備蓄するものであるから、水質を厳密に規定することは困難である。なお、魚の生育環境に関しては、Poxtonらの総説 [Poxton,F.S., 1982]がある。

3.2 水処理方式の特徴

活魚水槽の汚濁物質を物理・化学的に処理するには、高度な技術と経費が必要である。一般的な方法は、生物の機能を利用して無害な物質へ変換する。この方法は装置も簡単で維持管理も容易であるが、排水処理等と比較して、その処理方法の大きく異なる事項として次のようなことが挙げられる。
(1) 原水中の汚濁物質濃度が極めて低い。
(2) 排水処理等では、法令基準等に対応し、浄化に利用される微生物機能の面から設計されるが、活魚水槽では魚の生理・生態の視点から設計される。もちろん、食品安全基準を満たすことは言うまでもない。
(3) 排水処理等では、多くの場合、処理水は放流する開放系あるのに対して、活魚水槽では処理水は再び水槽に戻し、系内を循環する閉鎖系である(図1)。
(4) 閉鎖系であるので、少しづつ阻害物質の蓄積とpHの低下が起こり、微生物の活性度が低下する。

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図1 処理システムの比較

3.3 生物膜法の原理と特徴

水槽内の汚濁物質を極めて低い濃度に維持する処理方式としては、経済的にも魚に対しても、生物膜法が最も適しており、従来よりこの方式が採用されている。
生物膜法は、図5に示すように生物担体を充填した槽内(ろ床)に海水を通水し、担体表面に付着および担体間隙に保持されて増殖した好気性微生物群(以下、生物膜と称する)に接触させて汚濁物質を生物学的に酸化分解して無害な物質へ変換する方法である。
この方法では、固形の有機物は溶解性の有機物に分解され微生物群に摂取同化されるとともに、呼吸反応より、二酸化炭素、アンモニアおよびリン酸に変換される。さらに、アンモニアは硝化菌により硝酸イオンに変換される [河合, 1964, 1965]。
この生物膜法の主な特徴を挙げると、次のような項目がある [北尾, 1979]。
(1) 維持管理が容易である。
(2) 低汚濁物質濃度の処理に有効である。
(3) 微細浮遊物質の捕捉能力に優れる。
(4) 負荷変動に対する対応力が高い。
(5) 余剰汚泥量が少ない。すなわち、微生物の増殖率が低い。
一方、次のような欠点がある。
(1) 生物膜が過大となると、ろ床が閉塞する。
(2) 装置が大きくなると、過大な生物膜を取り除くための再生が容易ではない。
今日では、連続気孔性多孔質セラミックス担体や多孔質炭素系担体など、水の比重に近い生物担体が開発され、再生操作が容易な曝気再生法が普及している。

4.魚介類の種類と水槽の形状

魚介類を備蓄水槽の構造および形状の観点から大きく分けると、(1)遊泳魚類、(2)底生魚類、(3)甲殻類、(4)貝類、および(5)イカ・タコ類に分類できる。また、それぞれの魚介類はそのサイズの大小によって分ける必要がある。

4.1 遊泳魚

タイ、ブリなどの大型の遊泳魚は、大きな水槽が必要となる。動きが活発であるため、適正量(3~6%程度)を超える魚を収容すると相互の擦れにより、皮膚や鱗を傷つけやすい。また、曝気や循環流による水流速度が大きいと激しい対流遊泳のため体力を消耗して、備蓄中に魚が痩せる。水槽内に水流がないと、魚が無秩序に遊泳して魚同士の接触が起こるので、遊泳方向を整えるため、適度な整流(図2)が必要である。
特に、アジやサバなどの皮膚が薄い魚(一般に青魚と言われる)は、皮膚に損傷を受けると、海水の浸透圧により長時間の生息が困難となり、商品価値が低下する。一般的には、専用の水槽で備蓄する事例が多い。

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図2 遊泳方向を揃えるための整流

4.2 底生魚

ヒラメなどの底生魚は、動きが鈍く、また接触による皮膚の損傷に対して強い。したがって、水槽容積対する魚の収容率を高くすることができる。底の浅い水槽でよく、効率よくするためには図10に示すような多段の水槽を用いてもよい。また、遊泳魚と共存させても特に問題はない。

4.3 甲殻類

エビ・カニなどの甲殻類は、他の魚介類と分離して備蓄する。カニは、ハサミで他の魚介類を傷つける。また、小型のエビ類は魚の食餌になるので混合収容はできない。エビ・カニ類は、図11に示すような水深の浅い矩形型槽を幾つかに分割した各槽に同じ種類で同じサイズのものを収容するとよい。

4.4 貝類

貝類は動きが少なく、擦れなどによる損傷が少ないので重ねて収容でき、水槽容積あたりの収容率を大きくすることができる。しかし、多量の貝類を遊泳魚用水槽で備蓄する場合には、底面での水循環が悪く、酸素の供給が不十分となり酸素欠乏を起こしやすい。そこで、図3Aに示すように、水の循環を上昇流式あるいは下降流式にするとよい。また、多量の貝類を備蓄し大量の酸素補給が必要な場合には、図3BまたはCのようにして酸素を供給してもよい。
サザエは殻が厚く強化な構造であるが、アサリは殻が壊れやすいので、移し換えや詰め替えの際には、注意が必要である。

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図3 貝類の大量備蓄水槽例

4.5 タコ・イカ類

タコおよびイカは次のような方法で備蓄するとよい。
タコは蓋付きの籠、多数の小穴が開いた箱、細めのネットに収納して遊漁用水槽に浸ける事例が多い。マダコは水質の僅かな汚濁に対して敏感で、長時間の備蓄が困難であり、特にpHの低下や硝酸イオンの蓄積に注意する [平山,1966]。
イカも魚介類の備蓄の中で最も困難なものの一つである。この理由は、備蓄環境に対して敏感であり、①厳しい水質が要求され、②水槽構造に特別な留意が必要で、③強い刺激を与えない安静な条件での備蓄が必要である。イカは前方(頭の方向)にも後方にも遊泳することができる。対流遊泳などにおいては前方に泳ぎ、この場合には視界があるので物体に衝突することはない。刺激等を与えると後方に高速で逃避遊泳し、視界がないので水槽の壁に衝突し、体尾・軟骨を損傷する。備蓄水槽では、出し入れ・明暗・音・振動等の刺激が常に与えられ、体尾の破損による死亡が頻繁に起こる。
これを防ぐ水槽構造として、図4に示すような長方体型や円柱型、環状溝型などの水槽とし、重要なことは水流を水平方向へ整えることである。また、静寂な環境を保ち、強い刺激を避ける。消音法としては、中小水槽では床面に直接設置しないで、音域(数十~数十kHZ)の防振材(ゴムなど)の上に設置するなど、大型水槽では砂利層等の上にコンクリート製の水槽を施工するなど、工夫をする。イカの取扱いに熟知した流通業者業者や料理店などでは、その水槽環境に配慮がなされイカの損傷を防いでいる。

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図4 イカ専用水槽の構造例

5.生物膜式浄化装置の設計

5.1 装置の材質

海水は塩分濃度が高く、腐食性が極めて強い。したがって、水槽や浄化装置の材質は耐腐食性のものを使用する。
5m3以上の大型水槽はコンクリート製、1~5m3の中型水槽はFPR製で全面のみアクリルやPVC製、1m3以下の小型水槽はアクリル・PVC製あるいはガラス製の水槽がよく用いられる。
浄化装置ではFRP製やPVC製が多い。
循環ポンプは、通常の金属製ポンプが多く用いられているが定期的に交換が必要である。ポンプ部分がプラスチック製であるマグネットドライブポンプは、海水用として優れている。
配管はPVC製パイプが用いられる。バルブ類はプラスチック製のものがよい。時々、金属製のバルブが用いられているが好ましくない。
冷却用の熱交換器は、チタン製のものがよい。銅製のものは、腐食により銅(Ⅱ)イオンが溶出し、魚に対して有害であるとともに、食材としても、不適当である。

5.2 微生物担体

微生物担体の選定は、活魚水槽の浄化成績の良否に係わる要素の中で最も重要で、水質はこの担体の性能に依存するといっても過言ではない。微生物担体については、生物膜法のページに記載しているので、参考とされたい。
浄化装置に充填する微生物担体には、多くのものがある。砂、砂利、砕石、石灰石、貝類、サンゴ(石灰石・貝類・サンゴはpH中和能力がある)、ゼオライト、石炭、粒状活性炭、プラスチック製担体(様々な形状がある)、セラミック製担体など、各種のものが利用されている。要するに微生物を付着し水との接触面積が大きいものであれば、どのような担体でもよい。ただし、微生物担体の選定に当たって、次のような事項に留意すべきである。
(1) 微生物を付着する表面積が大きいこと。
(2) 微細な懸濁性物質を捕捉できること。
(3) 再生が容易であること。
下水や事業所排水等の生物膜法と比較して、ろ床に対する水量の容積負荷が極めて高い(ろ床内の海水の水理学的滞留時間が一般の排水処理と比較して極めて短い)ので、生物膜の剝離が起こりやすく、さらに、海水では淡水と比較して生物膜が柔らかく脱落しやすい。このため、透明度が悪化しやすい。しかし、このような海水における生物膜の特性は、ろ床の閉塞が起こりぬくい長所でもあり、再生においても淡水と比較して装置構造や維持管理が容易なものとなる。
以上のことから、海水用としては次のような担体が適切である。
(1) 担体サイズは小さいもの。
(2) 表面に凹凸があり生物膜の剝離が起こりにくいもの。
担体として砂や砕石(サイズ1cm以下)が優れているが、装置が大きくなると逆洗や機械攪拌等による再生が困難となる。見掛け比重が水よりも僅かに大きく、曝気攪拌や上昇流速度の増加(逆洗)等により、担体が流動状態となるような担体が望ましい。

5.3 ろ床容積

ろ床容積(充填した生物担体の見掛けの総容積)は、水槽の容積と魚の収容能力を決定するする重要な設計因子である。
生物担体の性能により、同じ負荷量であってもろ床容積が大きく異なる。担体サイズの大きなものは、ろ床内での海水の滞留時間を長くする必要があり、ろ床容積は大きくなる。海水用のろ床容積は水槽の1/2~1/20のものが多い。ろ床容積は、充填材(担体)の性能にもよるが、再生までの稼働日数に影響する。設置場所の面積や空間、ユーザー自身よる管理または外部委託管理(海水交換を含む)、初期投資など、総合的に勘案して設計する。
また、濁度を指標とした収容量は、タイやブリなどの遊泳魚に対して、本掲載者の実験では多孔質担体は260kg-魚/m3-ろ床の能力があるが、サンゴでは60kg-魚/m3-ろ床が限度である。循環式飼育水槽(養殖や水族館など)ではあるが、砂や砂利を用いたろ床の設計法において、アンモニア濃度を指標する方法 [佐伯,1958]や、ろ床の酸素消費量を指標とする方法 [平山,1966,1974]などが提案されている。

5.4 浄化装置の形状

一般的に用いられている浄化装置の形状は、図5に示すような開放型と密封型に分類され、それらはさらに上昇流式と下降流式に分けられる。
排水の浄化装置と比較して水の滞留時間が短いので、特殊なケースを除いて浄化装置内での曝気は不要である。密封型は、コンパクトで循環水量を高く設定できる特徴がある。ただし、圧力損失を点検するための圧力計を取り付け、定格圧力に達したとき、手動操作または自動制御により再生操作を行う必要がある。
次に、ろ床内の生物量の分布は通水方向の距離が長くなるほど減少する [平山,1965; 河合,1965]。したがって、同じ容量の担体を用いた場合には、ろ床面積が大きく厚さが小さいほど微生物の保持容量が大きくなり浄化能力が増加する。
一方、運転日数の経過とともに、微生物が増殖して担体の表面や間隙に付着・保持された生物膜は通水方向に成長する。この飽和に達した生物膜がろ床の上端(上向流式)または下端(下向流式)に達すると、ろ床内の生物保持量が限界となり、生物膜が剝離して水槽内に流入するようになる。このように微生物の保持量が限界に達すると再生が必要となる。また、ろ床内に保持されている微生物量が過大となると、ろ床の圧力損失が増大し開放型では海水が仕切り板を越流するようになると、再生が必要となる。密封型では目視による点検が困難であるので、上記の通り、定格圧力に達したとき、再生が必要となる。再生までの稼働日数を長くするには、ろ床の水槽に対する容積比を大きくする必要がある。
以上のことから、浄化装置の管理が十分で再生を頻繁に行うことができる場合には、ろ床面積を広くして厚さを小さくする構造が効果的である。しかし、一般的に末端店を含めて流通経路内の活魚水槽について、専門的な管理要員は殆ど配置されていないので、半年か1年に1回程度再生すればよいようなろ床容積が必要であろう。
タイ・ブリ・メジなどの大型遊泳魚を、1週間の平均的備蓄・販売量400kg、すなわち、1日平均60kg扱う活魚店での実験では、炭素系担体(石炭を原材料とし、実験用コークス炉で乾留・焼成し、揮発性成分が揮散した多孔質炭素担体で、粒径数cmの楕円体状担体)を用いた面積1m2のろ床では、生物膜の成長速度は1年間で1.7mであった。

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図5 浄化装置の形式

5.5 循環時間

一般的にシステム内の海水循環時間は15分~2時間内の範囲に設定され、30分程度の循環時間が最も多く採用されている。また、循環時間が30分程度であれば、新しい魚の投入や海水の一部交換などにより懸濁物質が著しく増加しても、数時間以内で懸濁物質がろ床内の生物膜に捕捉される。しかし、循環時間を余り短くすると、生物膜の剝離が起こるので、一般的には15分以上にとる必要がある。ただし、循環時間と生物膜の剝離は生物担体の形状に大きく依存するので、実験的に求めるとよい。

5.6 曝気

酸素供給のため、曝気を行う。酸素消費量は、魚類よりも浄化装置内の好気性バクテリアの方が大きい。システムフロー内の曝気位置は図6に示すようような3種類に分けられるが、水槽内曝気を採用している事例が殆どである。
水槽内曝気の短所は、①曝気により過大な水流が生じること、②微細な気泡が透明度を低下させること、③微細な気泡がエラの酸素交換効率を低下させたり、目の角膜や皮膚の損傷が起こりやすくなること、④水槽内での微生物の繁殖や魚類皮膚の粘液などを原因とする水面での泡切れが悪くなり外観的によくないことである。
海水は淡水と比べて粘度が高いので、②~④の現象が起こりやすい。したがって、活魚水槽システムの循環水量が多く水槽内の溶存酸素が適切に保たれている場合には、図6Bまたは6Cの方式が良いように思われる。水槽内曝気を行う場合には、粗大気泡による曝気が望ましい。
酸素の供給方法は、①落下法、②エアーポンプとディフュザーによる曝気法、③ジェットエアレーション法、④落差による開放したパイプ内空気接触法が主なものであり、これらのいずれかを併用したものが多い。
なお、50m3以上の大型水槽に多量の魚を収容する場合には、空気曝気では酸素供給が不十分となるので、純酸素曝気や液体酸素を使用するとよい。特に、魚を大量に投入・収容した直後には、魚の呼吸量も増加し、溶存酸素が急激に減少する。液体酸素は地方によっては入手困難な所もあるが、魚市場なに設置されている100m3以上の大型水槽では、液体酸素を投入しているところが多い。

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図6 システムフロー内の曝気位置

6.維持管理

6.1 生物膜の植種と熟成

新しい浄化装置を設置したとき、生物膜の成長には日数を要するので直ちに浄化機能は期待できない。所定の収容量で浄化能力を正常に作動するまでに、1~2ヶ月の期間が必要である。一般に微生物の付着していない新しい浄化装置を稼働したとき、有機物酸化菌の増殖は速いが、アンモニア酸化菌は増殖が遅くこの菌が熟成するのに2~3週間程度要し、この後亜硝酸酸化菌が増殖してこの菌が熟成するのに1~2ヶ月必要である [河合, 1964; Hirayama, 1974; Liao, 1979]。硝化反応のページの図に示すように、稼働初期にはアンモニアが蓄積して、10日ごろ最大値を示して減少し、その後亜硝酸が増加して30日ごろ最大値を示して減少する [Hirayama, 1974]。システム稼働後、10日~1ヶ月ごろ活魚の死亡事故がよく見受けられる。これは、アンモニアや亜硝酸イオンの濃度が高くなるからである。
以上のことから、通常、少しずつ魚の収容量を増加して浄化装置を熟成した後、正常運転に入る。または、スキムミルクなどを添加してもよい。この場合、活魚収容能力100kgの水槽では、投与量5g/日程度から初めて最終的に30g/日になるように、3~5日間隔で1ヶ月程度スキムミルクを投与するとよい。
一方、適当量の植種をすれば、浄化装置が早く機能する。植種は、正常に稼働している浄化装置の担体の一部を取り出して、海水中で攪拌して生物膜を剝離し、この懸濁液を採取する。剝離生物膜は沈降性がよいので、10~30分程度静置して上澄み液を除くことにより濃縮できる。この濃縮液(5~20g/L)をろ床容積の1/10~1/100程度投入する。最初海水は著しく懸濁しているが、数時間から半日程度で担体に捕捉されて透明になる。生物膜を培養して、これを植種している装置メーカーもある。

6.2 魚の収容量

魚の収容量は、浄化装置の能力により決定される。浄化能力以上の魚を収容すると、水質が悪化する。水質が悪い状態で運転すると、魚の生存期間が短縮したり、病原菌が増殖したり、異臭を放つカビ類が発生しやすい。
さらに、淡水魚と比較して、海水魚は濁りに弱い。簡単な収容能力の判断は濁りによって行う。すなわち、一度に大量の魚を投入して直後は海水が懸濁するが、半日~1日以上経過しても濁りが消失しない場合には、収容能力を超えているといると判定する。ただし、濁りが生じるからと言っても、可溶性の有機物やアンモニア等の有害物質が必ずしも高いことを意味しない。浄化装置の能力以上の負荷により、水槽内で微生物が増殖していることを意味する。
遊泳魚用の水槽は、一般的に水量の3~6%程度の収容能力になるように設計されている。この収容能力以内で懸濁するならば、浄化装置の設計または運転管理のいずれかが不適当であろう。

6.3 水質分析

多くの活魚店・生け簀料理店では、水質分析は実施されていない。しかし、水質は魚の生存期間に著しく影響を与えるので水質分析は適正管理上、重要である。主な水質項目は次の通りである。なお、現場での簡易水質検査・測定については、別ページに掲載しているので、参考とされたい。
(1)温度、(2)溶存酸素、(3)pH、(4)透明度、(5)色度、(6)懸濁物質、(7)有機物濃度、(8)アンモニア、(9)亜硝酸イオン、(10)硝酸イオン、(11)リン酸イオン、(12)塩分濃度
上記の項目の中で、(1)温度、(2)溶存酸素、(3)pH、(6)懸濁物質、(8)アンモニア、(12)塩分は特に重要である。溶存酸素計やpHメーターは携帯用が便利である。pHは万能試験紙を用いれば簡単な測定ができ、アンモニアについては比色法による簡易分析キットは発売されている。塩分は比重計でチェックする。なお、pHメーターは、原理上、取扱いには注意が必要である。

6.4 pHの管理と海水の交換

<pHの管理>
活魚水槽は閉鎖系であるので、難生物分解性有機物や酸化分解生成物である二酸化炭素、硝酸イオン、リン酸イオン等が蓄積するとともに、pHが低下する。また、ろ床内の微生物の代謝物である色素が蓄積する [Hirayama, 1988] 。
養殖系におけるこれらの汚濁物質の魚に対する影響は詳しく調べられている [Poxton, 1982] が、備蓄系においては研究例が少ない。二酸化炭素は曝気により除去される。硝酸イオンやリン酸イオンは急性毒性を示さないが、何らかの影響を与える。養殖系では化学的ストレスの原因となり成長率に影響するが、備蓄系では実験データが極めて少なく、経験的ノウハウによる管理が行われているので、科学的に不明なことが多い。pHについても、どの程度の影響があるのか、数値的な知見は少ない。タイ・ブリ・ヒラメなどは、pH6程度まで低下しても、余り問題はないようである。しかし、海水を交換しないで長期間に渡って運転すると、浄化微生物への阻害物質が蓄積して、その浄化能力に低下する。特に、pHの低下とともに硝酸菌の活性が低下し、pH6以下になるとアンモニアの蓄積が顕著となる [河合, 1965; Richard, 1975; Enrique, 1979]。
現場調査の結果では、pH6.5以上または硝酸イオン100mg/L以内に維持される程度に海水交換を行えば、特に問題は生じないようである。
また、Ca(OH)2、CaO、Mg(OH)2、MgOあるいはNaHCO3などを定期的に添加してpH7.5~8になるように中和してもよい。さらに、pHコントローラーを用いてpH制御を行う場合には、一般の活魚水槽ではpH6.5~7に設定するとよい。pH制御の設定値が高くなるほど、魚や浄化微生物の呼吸反応により排泄される炭酸ガスの中和に要する割合が高くなる。pH7以上では、pHの設定値が高くなるほど、アルカリ消費量が急激に増加し、薬品経費が高くなる。アルカリ添加はアンモニア酸化で消費されるアルカリの補充が主な目的であることに留意する。
養殖系ではpHが低下すると魚の摂餌活動が不活発となるが、活魚水槽では魚も衰弱しているので観察のみによる判定は困難である。
<海水の交換>
海水の交換時に留意すべきことは、温度の急変である。同じ温度の海水を交換するか、温度が異なる場合には、全水量の1/5程度を交換する。いずれにしても、海水交換は全水量の1/3程度を超えない範囲が適切であろう。海水交換の頻度は、水槽の管理状況により異なるので、一般化が困難である。

(追記)

活魚水槽を長期間に渡って運転すると、色素・阻害物質の蓄積やpH低下などが起こるので海水交換や中和剤添加が必要となる。しかし、(1)pHと(2)塩分濃度の管理に加えて、(3)紫外線照射を併用すれば、特殊な魚類を除いて、半年~1年程度、海水交換が不要となる。
(1)pHの管理
pHの管理には、炭酸水素ナトリウム(重曹)を用いると便利である。天然海水のアルカリ度は約2meq.であるので、pH試験紙を用いて検査し、pH6~6.5以下になったら、炭酸水素ナトリウム海水1m3当たり170~340g程度投与する(2~4meq.に相当し、pHは7.5~8程度となる。)。炭酸水素ナトリウムは加えすぎてもpHの急激な上昇がないので、簡便なpH管理には優れている。
また、焼成した酸化マグネシウムの球体状または楕円体状ペレット(粒径数cm)を用いれば、海水pH程度の範囲内で値が自然的に制御される。浄化槽ろ床上部に投入すれば、pH低下に伴い酸化マグネシウムが溶出して、海水を自然に中和する。ペレットが消失するまで中和機能が継続するので、消失する前にペレットを補充する。極めて便利な方法であるが、水槽や浄化槽の内壁(水面付近)に白色スケールが形成される欠点がある。ただし、魚に対して無害なものである。
(2)塩分濃度の管理
塩分濃度の管理は比重計を用い、水温15~20℃の場合には、1.024~1.026程度に維持されるようにする。水道水等の混入がない場合には、水分の蒸発により塩分濃度は増加するので、上記値を大きく上回るようであれば、水道水を補給して調整する。
注意すべきことは、水槽内の海水量が減少するごとに、海水のみを補給しているケースがある。この場合、塩分濃度が異常に増加して、魚介類が短時間で弱体化する。比重計で測定して、水道水と海水の補給により、上記の適正な値に調整する。

(3)紫外線照射
色素や阻害物質の除去には紫外線照射が効果的である。この理由は、難分解性物質や色素が紫外線によって、分解性物質へ変換されることによる。また、浮遊性微生物の殺傷により海水の透明度が向上するとともに、病原性細菌・ウイルス等の殺菌にも効果的である。
紫外線照射用ランプは、通常型と浸漬型がある。ただし、活魚水槽内への設置は避ける。
浸漬型は、浄化装置内または循環経路のパイプ内のいずれにも設置可能である。析出付着したスケールを定期的に除去(塩酸・硝酸の希釈液に30分程度浸漬、または、食酢の希釈液に半日程度浸漬)する必要がある。
通常型は、開放型浄化槽の上部に設置し、循環水の水面に照射する。紫外線は、人体、特に、目に対して極めて有害であるので、ランプ上部に覆いを付けて紫外線が外部へ漏れないように留意する。
1~2m3の水量に対して、15W程度の殺菌灯(紫外線ランプ)で十分である。

6.5 微生物担体の再生

再生の時期は魚の収容量と浄化装置の能力によって異なる。図5に示す開放式の浄化装置では、ろ床の仕切り板をオーバーフローするようになると、再生が必要である。密封式(圧力計が必要)では、圧力損失が定格値に達したらとき、再生が必要となる。また、5.4で述べたように、ろ床内の微生物保持量が飽和に達し、海水が懸濁状になれば、再生を行う。通常、魚を投入する際に海水も補給されるので、魚の収容量と海水補給が適切であれば、ろ床内の微生物の自己分解と増殖とのバランスにより、半年~1年間に1回程度の再生となるように設計・施工するとよい。ただし、水槽管理に熟知したユーザーでは、その限りでない。また、事例1・事例2で述べるように、再生装置(手動あるいは自動)を有するものであれば、その仕様に沿って再生すればよいので、その簡素化が可能となる。

6.6 カビや病原菌の発生

装置の設計や担体の選定あるいは維持管理が不適切で、水質が悪い状態で運転するとカビ類や腐敗菌が発生して魚が異臭を放つようになる。この臭いは魚の中身まで及び商品とならない。さらに、病原菌が繁殖して魚が感染しやすくなる。運転しながらカビ類や病原菌の駆除は困難である。このような状態になったら、水槽・浄化装置を滅菌後、水洗して再稼働する方法が最も効果的である。しかし、予備水槽がない場合が多く、実際にはには滅菌・洗浄・植種・再稼働の処置は営業上極めて大きな損失となる。
漁港や市場などの大規模水槽には多くの魚が集積され、季節の変わり目(春先や秋口)には感染魚が混入しやすい。病原菌は流通ルートを通じて、各地に伝染するので水槽の病原菌対策は特に注意を払う必要がある。取引している市場などの水槽が病原菌で汚染されるいる時、流通末端の鮮魚店や料理店等の水槽の管理をいくら適正に管理しても、次々に感鮮魚が入ってくれば手の打ちようがない。病原菌対策は流通経路の元からその対策を講じる必要がある。

7.活魚水槽と浄化装置の具体例

7.1 遊泳魚用大型水槽

大型のタイ、メジ、ブリなどの遊泳魚および大型のヒラメの備蓄には5~10m3程度の水槽が多く用いられている。図7および図8に、その事例を示す。なお、以下に示す容積は有効容積を示す。
<事例1 -活魚店->
図7は、山口県内のある鮮魚店に設置してあるもので、コンクリート製6m3の水槽とアクリル製1m3の水槽から構成されている。6m3の水槽には、1kg以上のタイ、2.5kg前後のメジ、1kg以上のヒラメ、1kg以上の石ダイなどの大型の魚を備蓄している。通常、1週間の平均的備蓄・販売量は400kg前後で、連休、盆や暮には、800kgである。具体的には、1週間に2回搬入し、3~4日程度で販売されている。1m3の水槽には、フグ、アジ、カワハギ、1kg以下のタイ類など、中型・小型の遊泳魚や伊勢エビを備蓄している。
浄化装置は2階に設置、FRP製3槽で構成され、第1槽は貯留槽、第2槽および第3槽がろ床を有し、上向流式である。海水の循環時間は70分である。装置容積3m3の内、ろ床の総容積は1.6m3で水槽容積の1/4.5である。生物担体は、2槽ともサイズの異なる玉砂利(下層よりそれぞれの平均径3cm、1cm、3mm)を3層に分けて充填してあった。
水質は著しく悪化して、海水は懸濁し、水槽表面にはスカムが多量に存在していた。この水質悪化の原因は、浄化装置を設置後、一度も再生が行われていなかったことにある。再生装置がないので、再生操作は浄化槽内の玉砂利を取り出して洗浄する方法しかない状況であった。この操作には、各槽につき学生5人で8時間程度を要する作業量(用具等の準備は別)であった。
そこで、ろ床底面に散気装置を取り付け、比重が水よりも僅かに大きい炭素系・連続性多孔質担体(粒径数cm)を充填し、空気曝気により担体を流動・攪拌して生物膜の剝離・洗浄が可能な浄化装置へ仕様変更した。なお、本来の浄化装置は2槽の担体充填槽を有しているので、交互に再生を行うことにより、海水の浄化機能を連続して維持することが可能なものである。この仕様変更により、写真1A写真1Bに示すように水質が著しく改善された。
この活魚店では浄化装置の再生に関する知識がなく、再生に要する労力と経費に係わる維持管理上の課題を示す代表的な事例である。

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図7 鮮魚店における活魚水槽

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写真1A 仕様変更前の6m3水槽
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写真1B 仕様変更後の6m3水槽
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写真1C 仕様変更後の1m3水槽
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写真1D 仕様変更後の浄化装置
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写真1E 仕様変更直後の浄化装置(第2ろ床)
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写真1F 炭素系充填材
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写真1G 炭素系充填材・断面の電子顕微鏡写真
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写真1H 作業中の学生
<事例2 -活魚料理店->
図8は、山口県のある活魚料理店に設置してある大型・中型遊泳魚用水槽を示す。この水槽は10m3および2m3の容積を有する2槽よりなり、いずれもコンクリート製である。
10m3の水槽にはタイ、ヒラメ、メジ、ブリ、小型フカ、クエなど、1kg以上の大型魚を備蓄し、2m3には1kg以下の中型・小型の遊泳魚を備蓄している。
この水槽・浄化装置のフローは、まず水槽の海水を槽底およびオーバーフローパイプより集水槽に導く。この海水は曝気槽を通過した後、循環ポンプにより密封型の浄化装置内を経由して、冷却用熱交換器を経て備蓄水槽へ返送している。海水の循環時間は60分である。曝気槽の目的は、酸素供給のみでなく、曝気により微細な懸濁物質を気泡に付着凝集させて、浄化装置内の生物膜への捕捉効率を向上させることにある。
この曝気槽には、図9Aに示すものと同じ形状の担体(写真2G)を充填してある。この充填剤により槽内の気泡が垂直に上昇せず複雑な経路を経て上昇し、気泡の槽内での滞留時間を長くして気液接触の効率を上げている。
浄化装置内のろ床容積は0.66m3で、水槽容積の1/18である。水槽に対するろ床の容積比が小さいのは密封式の特徴である。この浄化装置には連続性多孔質セラミック担体(写真2F)を充填している。この浄化装置には、曝気式再生法を採用しており、5分程度で再生が可能である。この水槽の水質の一例を表1No2に示す。
なお、本料理店7には、イカ専用水槽や淡水魚専用水槽も設置されており、いずれも、水槽・浄化装置の設計・施工および維持管理が適正に行われている事例(設計の段階から、ユーザー・メーカー・本掲載者が連携)として紹介した。

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図8 活魚料理店における活魚水槽
各槽の溶存酸素濃度DO [mg/L, 15℃]: ① 8.8; ② 8.4; ③ 8.0; ④ 12.4; ⑤ 12.3; ⑥ 11.3; ⑦ 9.1

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写真2A 大・中水槽全景
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写真2B 10m3水槽
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写真2C 10m3水槽
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写真2E 浄化装置全景
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写真2F セラミック系充填剤
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写真2G 曝気槽充填剤
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写真2H 淡水魚(ヤマメ)用水槽
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写真2D 2m3水槽
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写真2I イカ専用水槽
<追記>
図7および図8に示す水槽いずれも、槽底およびオーバーフローパイプから海水を引き出している。槽底はテーパを設け、吐き出し物、糞などの沈降性物質を引き出している。一方、水槽で曝気を行うと気泡に懸濁物質が付着する。この気泡をオーバーフローパイプにより取り出す。水槽内で曝気を行う場合には、オーバーフローパイプは欠かせないものである。また、オーバーフローパイプは、水槽の水位を所定の高さに維持する機能も有する。

7.2 遊泳魚用小型水槽

図9に、0.5m3の小型水槽の一例を示す。この水槽は、図8に示す水槽をコンパクト化したもので、その背面に曝気槽を付設している。水槽内の海水はこの曝気槽を経て、ろ床内の微生物により処理された後、循環ポンプ、冷却用熱交換器を経て、水槽へ返送している。曝気槽内には図9に示すような気泡上昇を乱流させる充填材(直径14cmの玉型、写真2G)を設置し、浄化槽ろ床には図8に使用しているセラミックス系担体(写真2F)を充填している。海水の循環時間は30分である。この水槽の鮮魚店等での中小型の遊泳魚(アジ、カワハギなど)に適している。また、これは図3Aと同じタイプの水槽であり、大量の貝類の備蓄にも適している。
なお、この図の各槽の溶存酸素を示すように、フロー内で酸素を最も消費するのは、水槽内の魚ではなく、ろ床内の微生物である。

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図9 遊泳魚用小型水槽
各槽の溶存酸素濃度DO [mg/L, 20℃]: ① 8.2; ② 10.5; ③ 9.6; ④ 7.3

7.3 底生魚・貝類・カニ・エビ用水槽

図10および図11に鮮魚店等に設置されている大中型以外の魚介類に用いられる水槽の事例を示す。図10は多段式の水槽である。
これらの水槽は水深が浅く(20~25cm)、多数の小穴を有する仕切り板により多槽に分割されているので、中小型底魚、貝類、カニ、エビ等の魚介類の種別ごと、サイズごとに分けて備蓄できる。
また、この浄化装置の特徴は、ろ床が浅い(30~40cm)ので、担体を取り出して再生できる。この浄化装置には砂(平均粒径2mm)が充填してあり、ろ床容積は水槽容積に対して、図10では1/3.5、図11では1/2と大きく設定されている。貝類や底魚は、遊泳魚と比較して、水槽内の収容比率が高いのでろ床の容積を大きくする必要がある。この水槽の水質の一例を表1No.4およびNo.5に示す。担体の粒径が小さく、懸濁物質の除去率も極めて良好である。曝気は、ディフーザーを分割した各水槽へ入れて、曝気を行っている。

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図10 底生魚・貝類用多段式水槽
 

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図11 カニ・エビ用水槽
 

表1 各活魚水槽の水質分析例
aqua_water_qualities
 

表2 各活魚水槽および浄化装置の仕様例
aqua_specifications

8.おわりに

活魚料理がブームとなって久しい。昔は、生造りなどは高価なものであった。今日、活魚の販売ルートおよび活魚の輸送・備蓄技術の開発により一般消費者の手に届くようになった。
本執筆者の幼少・学生時代には、沿岸から離れた地域では、魚と言えば、干物や燻製品であった。冷凍輸送の手段もなく、魚の刺身などは、春・秋のお祭りや慶事の時以外に食する機会はなかった。
さて、産地から一般消費者に届くまでには、魚の体力も消耗する。また、天然活魚は天候等により安定した供給が困難である。一方、活魚店や料理店等では活魚を毎日販売しなければならない。
したがって、活魚を一定期間備蓄する必要がある。長時間の備蓄には、水質を清浄に保つ必要がある。従来、水槽、装置、水質等について基礎的研究が少なく、経験的に技術開発が行われていた。現在、備蓄水槽の問題点の多くは、状況に応じた生物担体の選定にあるようである。
魚の収容量と水槽容積・ろ床容積などの設計は、担体の性能に係わらず同じような設計条件で行われており、運転成績が悪い場合の多くは、適正な担体の選定と維持管理にあるように思われる。
次に、水槽のユーザーが水浄化の原理や運転管理の知識に欠けることが多い。したがって、水槽・装置の設計・施工が適切であっても、運転管理が不十分で、魚が短時間で死んだり、摺れによる商品価値を低下させている事例も見られる。ユーザーに対する浄化の原理や運転管理についての教育も必要であると感じる。本解説がこれらの一助になれば幸いである。

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参考文献

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