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浄化槽のあゆみ

略称:単独処理浄化槽→単独浄化槽 合併処理浄化槽→合併浄化槽

1.建築基準法の制定 -汚物処理槽から屎尿浄化槽へ-

昭和25年に建築基準法が制定され、便所・汚物浄化槽の構造基準は同法施行令で定められた。その後、建築基準法の一部改正により、汚物浄化槽は「屎尿浄化槽」とされ、その構造は「腐敗槽+酸化槽+消毒槽」で構成され、慣例的に基準型浄化槽と呼ばれた。また、これと以上の性能を有するものと認められたものは特殊型浄化槽とよばれ、建設費も廉価なため基準型よりも多く普及し、その種類も200以上となったものの、その認定や取り締まり方法は各都道府県によりまちまちであった。

2.共同浄化槽の出現

 一方で、戦後復興に向け、H25年から自治体による公営住宅の建設や住宅金融公庫による融資が始まった。このような中で、大都市圏においては都道府県または保健所設置市への届出だけで設置できる水洗便所・炊事・風呂・洗濯などの排水を処理できる施設を「共同浄化槽」(コミュニティプラント)と称して独立的に扱われていた。
この共同浄化槽は、昭和30年年代に日本住宅公団が住宅供給不足を補うために造成した住宅団地に設置されるようになった。

3.清掃法の制定 -単独浄化槽および合併浄化槽の区分の明記-

 浄化槽は建築基準法および汚物掃除法によって規制されていたが、昭和29年に汚物掃除法は廃止され、「清掃法」が制定された。これを機に水槽便所取締規則も廃止され、新たに浄化槽の維持管理基準が定められた.その後、昭和40年に清掃法は一部改正され、政省令の全面的な改正が行われた。特に浄化槽に関する部分は根本的な改正であり、水洗便所汚水と生活雑排水との合併処理を採り上げていること、地下浸透による汚水処理法の導入、新しい活性汚泥法を見込んでいること、放流先の条件により段階的に放流水の水質基準を設け、
その基準値としてBODを採用したこと、維持管理には専門技術者による委託管理を組織的に行うことなどが示された。
さらに、昭和41年、公害審議会から厚生大臣に対し屎尿処理施設および関する基準が答申された。これに沿って、公共下水道を軸とし、さらにこれを捕捉するコミュニティプラントおよび浄化槽を将来の地域開発を展望し長期総合開発に基づく促進が記された。ここに初めて浄化槽の位置づけが国の施策として確立した。

4.FRP製単独浄化槽の急増

 昭和30年ごろまでの浄化槽は現場打ち・コンクリート組立がほとんであったが、成型が容易で軽量であるガラス繊維強化プラスチック(FRP)を素材としたばっ気型浄化槽が工場で大量生産されるようになると、住宅ブームに乗ってFRP製単独浄化槽が普及するようになった。昭和44年には浄化槽利用人口と下水道利用人口はほぼ同数であり、昭和58年まで拮抗した状況であった(参照)。単独浄化槽は下水道とともに人々の便所の水洗化への要望をかなえる有力な手段であった。
昭和44、建築基準法施行令が改正され屎尿浄化槽の性能基準が示され、これに基づく「浄化槽の構造基準、放流水の水質基準が整合し、性能、構造基準と維持管理基準の一体化が図られた。

5.合併浄化槽の構造基準

昭和44年建設省告示において初めて合併浄化槽の構造基準が定められた。
これにより浄化槽への考え方も根本的に変わり、合併浄化槽の採用、生活排水処理システムとしての位置づけ、浄化槽とコミュニティ・プラントのそれぞれの性能に見合う構造機ジョンが確立された。浄化槽が単なるし尿の衛生的処理という目的から、環境計画の一環としての性格に大きく飛躍した。
昭和45年建築基準法施行令第32条第3項が追加された。指定水域に浄化槽の放流水を放流するときは、その水域において建築基準施行令第32条第1項に規定する放流水のBOD基準より厳しい基準が定められ、あるいはBOD以外の項目について基準が定められているときには、浄化槽の放流水は同項の規定にかかわらず、当該水質に適合するようし尿を処理する性能を有する構造のもので処理しなければならないとされた。
昭和55年には浄化槽の構造基準が全面改正となり、処理対象人員51人以上の浄化槽は合併浄化槽にすることとされた。
一方、農林水産省は農林水産業地域の生産基盤と生活環境の一体的な整備を図るため、生活排水を処理するための農業集落排水事業(対象人口はおおむね1,000人以下)を昭和48年から開始し、公共水域の水質保全に寄与することとなった。同様なものとして、漁業集落排水事業(同5,000人以下)、林業集落排水事業(同1,000人以下)がある。
これらの集落排水事業の処理施設は浄化槽法に基づく合併浄化槽として位置づけられている。

6.浄化槽法制定への経緯

住宅ブームに乗って単独浄化槽は設置基数は大幅に伸びた。しかし、普及だけが先行し、法的・行政的に対応できず、業界も自主的な対応力に欠けていたため、公共用水域の水質汚濁源となり、また、悪臭・騒音などの問題を引き起こし地域住民間のトラブルの原因ともなった。
この頃は、設置は無届けであることも知らず、設置後の保守点検や清掃も未実施のことが多く、浄化槽機能が維持されず近隣への迷惑や水質汚濁の原因となった。
各省庁は、従来の法律を活用して浄化槽の機能確保に対応していたが、下水道には下水道法があり国において十分な予算措置がなされていた。浄化槽については、法体系も未整備で国の予算も皆無に近い状況であった。このような状況を背景に関係者の努力により、国会議員による立法化が検討された。
浄化槽法は昭和58年に成立・公布、昭和60年より全面施行となった。この浄化法では、浄化槽の構造、設置、保守点検および清掃について規制が強化され、浄化槽の設置者の責任と義務が明らかにされるとともに、浄化槽の整備士や管理士の身分資格が確立し、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図る一元的な法制度が築かれた。

7.浄化槽法制定後の行政のあゆみ

昭和62年に厚生省生活衛生局水道環境部環境課に浄化槽対策室が誕生し、昭和62年度から合併浄化槽の普及を図るための国庫補助事業が実施された。
今日、浄化槽の設置主体によって、「個人設置型」と「市町村設置型」との国庫補助事業がある。当初、個人が合併浄化槽を設置する場合には、単独浄化槽を設置する場合との差額を補助対象とする「合併浄化槽設置補助事業(平成15年度から「浄化槽設置整備事業」と変更)」として補助事業を行っており、市町村が補助を行っている場合に国がその市町村へ補助する間接補助の形で行ってきた。ところが、下水道・その他の施設には地方財政措置が講じられているのに、合併浄化槽にはないことから、平成2年から特別地方交付金税が導入され、都道府県・市町村の財政負担が軽減された。平成10年には生活雑排水の汚濁負荷軽減の寄与分を基に、合併浄化槽の設置費用の約4割を補助対象の基準とすることとなった。
一方、市町村設置型は、平成6年度から「特定地域生活排水処理事業(平成15年度から「浄化槽市町村整備事業」と変更)」が創設された。この事業では、下水道事業債の適用、事業施行事務費に対する補助なども加え、下水道の公共事業と同様な財政措置を行っている。
平成18年度以降は、地域再生の観点から市町村の自主性・裁量性を高めるため、浄化槽、公共下水道、農業集落排水施設の効率的な整備を行うため、「地域再生基盤強化交付金」が創設された。また、同年度には国と地方が総合的に廃棄物リサイクル施設を整備するため「循環型社会形成推進交付金」が創設され、この交付金による浄化槽の整備も同時に進められている。

8.単独浄化槽の廃止

単独浄化槽を利用している家庭では、合併浄化槽と比べて、処理性能が劣り、生活雑排水の未処理放流などからBODの総量でも約8倍の汚濁物質を環境へ排出しており、単独浄化槽の合併処置浄化槽への転換は生活排水対策の中でも重要な課題となっている。
国土交通省は、平成12年12月以降は改正前の例示仕様に示されていた単独浄化槽の設置を禁止し、この単独浄化槽の形式認定を取り消した。平成13年に「浄化槽法の一部を改正する法律」が施行され、単独浄化槽の新設を原則禁止とする法的措置が講ぜられた。平成18年度より、合併浄化槽の工事費用と単独浄化槽の撤去費用が現行の基準額を超える場合には、最大9万円を加算した額を基準額として助成している。

<参考文献>

1)浄化槽読本〜変化する時代の生活排水処理の切り札〜/H25/日本環境整備教育センター
2)楠本正康:「第2章第1節ー生活系排水処理の沿革と体制」生活系排水処理ハンドブック、pp.12-19、環境技術学会(昭和56年)


掲載日:2017/08/18
更新日:

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