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環境技術 2016


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2016年 特集号の題目
       目 次 総目次-分野別-
 1月号  2016年環境行政の展望
 2月号  2016年・環境技術の最前線へ
 3月号  持続可能な沿岸海域管理
 4月号  温室効果ガスの新たな削減目標と実現に向けた対策技術
 5月号  新たなバイオマス利用開発の現状と将来
 6月号  廃棄物処理が目指す方向
 7月号  ノンポイントソースと水質保全
 8月号  下水汚泥の資源・エネルギー化
 9月号  湖沼内沈水植物(水草)の生態系における役割と課題
10月号  持続可能社会の実現に向けたメゾ領域研究―将来ビジョンとシーズをつなぐ―
11月号  大気中の超微小粒子(ナノ粒子)
12月号  風力発電普及のために―風車騒音の特性とその評価について―



1月号  2016年環境行政の展望
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2月号    2016年・環境技術の最前線へ
編集:神戸学院大学・古武家 善成

 今回の特集では、企業、大学、公的研究所等が開発・所有する“一押し”の技術に焦点を当てた。“一押し”の技術の中には活躍中の技術も当然存在すると思われるが、それとともに発展性のある新しい技術の紹介も十分期待できる。
 本誌編集委員推薦によって6本の技術論文を取り上げた。内訳は、処理技術、廃棄物処理技術、計測技術の各2編で、いずれも民間企業からの技術紹介となった。
 (1)植生浄化による排水処理と貴金属回収 [DOWAテクノロジー(株)・櫻井 康祐]: ビオパレットは、植物と根圏微生物の水質浄化作用を工場排水の仕上げ処理に応用したものである。当初は、有機物の分解を目的としていたが、その後、アンモニア性窒素の硝化が主な目的として運用されている。近年では、重金属類の吸収効果を利用した貴金属類の回収システムとしての機能も確認され成果を上げている。また、動植物を育む能力による生態系の維持と緑化効果を有していることは言うに及ばない。
 (2)上水向け生物接触繊維担体ろ過装置’こまり’ [日立造船(株)・竹中 美佳子]: 繊維担体を用いた上水向け生物接触ろ過技術において、実績ある従来ろ材(繊維担体)と同等の処理性を持つ、新しいろ材を開発した。ろ材層高を小さくすることによる装置のコンパクト化に加え、装置の構造と洗浄方法を見直すことで洗浄の効率化を実現した。近年、環境に配慮した地球に優しい浄水技術として、生物処理が再評価されている。
 (3)ストーカ炉におけるNOx低減技術―排ガス再循環と無触媒脱硝の併用によるNOx 濃度の低減― [日立造船(株)・古林 通孝、臼谷 彰浩、山背 康平]: ストーカ炉におけるNOx 低減技術として、一次燃焼室後壁から再循環排ガスを高速で吹き込む排ガス再循環システム、ならびに脱硝性能を65%まで高めた高効率無触媒脱硝を実用化した。これら2つの技術を併用することにより、触媒脱硝を使用しなくても安定的にNOx排出濃度30ppm以下を満足でき、リークNH3濃度は白煙発生の目安とされる5ppm を下回ることができる。
 (4)下水道バイオマスからの電力創造システムに関する技術実証研究 [(株)タクマ・水野 孝昭、株丹 直樹、宍田 健一]: 国土交通省・下水道革新的技術実証事業にて、3つの革新的技術を組み合わせた焼却量35t―wet/日発電量100kW 下水汚泥焼却発電システムの実規模実証施設を用い、下水汚泥焼却熱からの発電を実証した。消費電力の低い焼却炉および補助燃料を使用しない自燃運転による、省エネ効果、発電による創エネ効果のほか、コスト縮減ならびに温室効果ガス排出量削減効果について報告する。
 (5)水処理における顕微鏡式ゼータ電位計の利用 [(株)マイクロテック・ニチオン・伊東康平、瀧 和夫]: 液相中の微粒子に対するゼータ電位測定は個々の粒子の静電的な中和によるフロック形成の指標として認識されている。凝集剤投入量の検討や工程でのトラブル解決に用いられることが多い。顕微鏡電気泳動方式を採用したゼータ電位測定装置ZEECOMナノ粒子から粗大粒子まで幅広い対応が可能で、凝集現象の観察沈降速度粒径分布も同時に得ることができる。
 (6)藻類を用いた簡便な排水等の生態影響評価システム「藻類発光阻害試験法」の開発  [浜松ホトニクス(株)・勝又 政和、竹内 彩乃、幾島 祐子、佐藤 由紀子]: 排水等に含まれる化学物質の水生態系への影響を評価する生物応答試験の効率化のために、藻類の遅延発光に注目した迅速、簡便、小容量の試験法である「藻類発光阻害試験法」を開発した。

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3月号    持続可能な沿岸海域管理
編集:立命館大学・仲上 健一

日本の沿岸海域を巡る自然的・社会的環境は大きくかわり,漁業従業者はこの間減少傾向が継続し,20万人を下回る状況となっている。海洋基本法(H19年)第二十五条で、「国は、・・・・・、自然的社会的条件からみて、・・・・・・、諸活動に対する規制その他の措置が総合的に講ぜられ、・・・・・、適切に管理されるよう必要な措置を講ずるものとする.」と,沿岸域の総合的管理の重要性が明記されている。沿岸海域の管理方法を構築するためには,理論的フレームワークの検討のみならず,数量的経済的評価に基づいた管理モデルの構築が必要である.一方,管理モデルが実装されるためには,それぞれの段階ごとの適切なモデルが必要であり,かつ地域の特性に応じた管理モデルが求められる.
 本特集では,「沿岸海域の生態系サービスの経済評価・統合沿岸管理モデルの提示」に焦点をあて,社会科学・人文科学・政策科学の視点で、管理のあり方を考究している。
 (1)「人手が加わることで生物多様性生産性が高くなった沿岸海域」である“里海”を創生する現代的な意義は,人々と自然の関係を構築し直し,人々にとって持続可能な沿岸海域を創出することにある.そのためには何をどのように行うことが必要なのか。
 (2)瀬戸内海を中心に,生態系サービスやそれを支える生態系の経済的価値を推定し,瀬戸内海の藻場や干潟,砂浜の経済価値が,この20年間でどのように変化したかを明らかにした.望ましい里海の実現,維持を目的とした統合的沿岸域管理に資する地域サステイナビリティ評価フレームワークを提示.
 (3) 沿岸域を一体的・総合的に管理するためには,都道府県によるトップダウン型の全政府あげてのアプローチ,市町村と地域住民の協働によるボトムアップ型の地域あげてのアプローチ,それらを連携させる支援型アプローチが有効である.このような異なるアプローチを組み合わせた多段階管理方式の可能性を提案。
 (4)ハゼ(マハゼ)は,身近な里海に生息する,日本人の子供から大人まで,古くから親しまれてきた魚である.内湾に面した地域では,正月の雑煮やお節に欠かせない魚でもあった.秋になると、焼きハゼにして保存した。東瀬戸内海でハゼツボを使って土用ハゼをとっていたが、ついに消えてしまった.里海と市民をつないだ美味しいハゼの文化を再評価し,継承したいものである.
 (5)海洋保護区MPA は,海の生物多様性の保全,持続可能な自然資源の利用を目指す区域である.対馬暖流の流域での対馬・五島でのMPA 設定・管理の検討では,既存の漁村の活動を尊重し,地域知の科学化,多様な主体による合意形成の方法論の開発を進めている.MPA では生物や水,物質が移動するため,区域の管理はそれを前提とした仕組みが必要である.MPA は持続可能な沿岸地域の運営手法としてももっと活用が望まれる.

(執筆者):(公財)国際エメックスセンター・柳 哲雄/立命館大学・仲上 健一,小幡 範雄、高尾 克樹、上原 拓郎、太田 貴大、桜井 良、吉岡 泰亮、牛 佳、陳 暁晨、峰尾 恵人/近畿大学・日高 健/愛知大学・印南 敏秀/立命館大学・仲上 健一

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4月号    温室効果ガスの新たな削減目標と実現に向けた対策技術
編集:藤田環境技術士事務所・藤田 眞一

  昨年11月、パリにおいて、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催された。すべての締結国(196ヵ国)が参加するという画期的な内容を含む合意(パリ協定)がなされた。その内容をまとめると、次のとおりである。
 ①世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑えること、②すべての国は、排出量削減目標を含め、2020年以降、5年ごとに目標を提出・更新していくこと、③長期目標として、21世紀後半には、世界全体の温室効果ガス排出量を森林・土壌・海洋が自然に吸収できる量にまで収めること、④二国間クレジットも含む市場メカニズムの活用の位置づけ、⑤森林等の吸収源の保全・強化の重要性、途上国の森林減少・劣化を抑制する仕組の位置づけ、⑥支援を必要とする国への資金支援については、先進国が引き続き資金を提供することと並んで、途上国も自主的に資金提供を行っていくこと、⑦議定書発効は、世界の温室効果ガス排出量の55%以上を占める55ヵ国以上の批准が必要であること。
 日本の約束草案として2030年度に2013年度比26.0%減(2005年度比25.4%減)の水準(約10億4、200万t―CO2)を提出したところである。今回のCO2排出量はかなり厳しい削減目標である。長期的には2050年に向けたさらなる大幅な削減が必要となる。
 本特集においては、温室効果ガス削減に向けた対策技術のうち、
 (1)太陽光、風力、中小水力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーについての我が国の取組み、
 (2)再生産されている生物により固定された炭素に由来するため燃焼してもCO2を出さないバイオマスのうち今後の発展が期待される藻類によるバイオ燃料、また、
 (3)都市構造そのものの低炭素化を目指した都市づくりにおける未利用エネルギーの活用や省エネルギー化を目指した都市のエネルギーシステムの構築、さらに、
 (4)温室効果ガス削減対策の重要な選択肢の一つである化石燃料の燃焼によって生成されるCO2を分離回収して貯蔵するCO2固定化技術を取り上げ、これら対策技術の現状とさらなる温室効果ガス削減に向けての課題について、解説している。

(執筆者):(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構・山家 美歩/東京大学・岡田 茂/横浜国立大学・佐土原 聡/(公財)地球環境産業技術研究機構・薛 自求

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5月号    新たなバイオマス利用開発の現状と将来
編集:(国研)産業技術総合研究所・河田 悦和

  1972年、ローマクラブは、石油等の資源の枯渇人口増加環境破壊が続けば、100年以内の人類成長の限界を指摘した。これから、40年以上を経過した現在、化石燃料依存は続き、化石燃料の効率的開発や非在来型化石燃料であるシェールオイル・シェールガスの開発がなされ、現在、アメリカが世界最大の燃料産出国となっている。これに対抗する在来型産油国により原油の増産がなされ、世界的な経済停滞も伴って、一時は1バレルあたり100ドルを超えた原油価格が、2016年初頭では30ドル以下に下落している。一方で、環境問題の観点からは、人間の活動によるCO2等温暖化ガス濃度の上昇による地球平均気温の上昇が明確になってきたことから、2015年にパリで第21回締約国会議が開催、合意され、全体目標として「世界の平均気温上昇を2度未満に抑える」に向けて、世界全体で今世紀後半には、人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしていく方向が打ち出された。
 日本では、東日本大震災による福島原発事故を経て、今後、原発に完全に依存したエネルギー政策、温暖化対策の継続は表面上難しく、安全基準を満たした一部の原発の稼働を想定する減原発の状況下で、経済性と温暖化対策のバランスを取るエネルギー政策の妥協点の模索が続いている。このような背景から、製品革新や工程革新・製法革新により、小さな進歩ではあるが、個々の現在技術が改良され、推進、評価される状況となっている。例えば、自動車の分野ではハイブリッド車は普及しているが、今後、プラグインハイブリッド車、さらに電気自動車燃料電池車などインフラ投資を必要とする車が普及するかは未知数である。一方、家庭エネルギーでは、創エネルギーである太陽電池などの自然エネルギーの利用に加え、エネルギー利用の効率化を目指したガス発電給湯システムやガス家庭用燃料電池システムなどの効率的エネルギー利用も想定される。
 このような背景の中で、日本のバイオマス利用技術については、より高付加価値のエネルギー、化成品としての利用が求められ、今は、将来の事業化に向けた着実な研究開発が実施される雌伏期を迎えている。本特集では、環境省補助金により実施した研究を中心に、バイオマス利用の上流(糖化技術)から下流(化成品生産)にわたり、現状の認識と、将来に向けた取組について紹介している。
 (1)セルロース系バイオマス原料からの糖液製造技術「CaCCOプロセス」、
 (2)国産スギを使ったバイオエタノール製造、
 (3)微生物によるキノコ廃菌床からの化学工業原料生産システム開発、
 (4)微生物によるバイオディーゼル廃グリセロールからの有用物質生産、
 (5)ハロモナス菌による3-ヒドロキシ酪酸の生産技術
 これらのバイオマス利用技術は、現状では経済的に引き合わない状況ではあるが、今後、持続可能型社会への転換に向けた礎の素過程として重要な技術であり、これらの素技術が、社会の他の技術、施策と融合発展して、経済性も満たした上で、実用化へと進むことが期待されている。

(執筆者): (国研)農業・食品産業技術総合研究機構・池 正和、徳安 健/(国研)森林総合研究所・野尻 昌信/新潟薬科大学・高久 洋暁、山崎 晴丈、志田 洋介、小笠原 渉/筑波大学・中島 敏明/(国研)産業技術総合研究所・河田 悦和

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6月号    廃棄物処理が目指す方向
編集:元 川重環境エンジニアリング㈱・守岡 修一

  わが国の廃棄物処理は減量化衛生的な中間処理として、また、最終処分場での減容化を目指して焼却処理に重点が置かれてきた。今日、廃棄物量は減量傾向にあるものの、多様化に伴って焼却処理重点指向から、発生抑制とともに、再利用・資源化による廃棄物減量化を第一とする施策へ転換されつつある。
 は、第三次循環型社会形成推進基本計画(H25年)を閣議決定し、①3Rはもとより、②循環資源の高度利用・資源確保として、使用済み製品からの有用金属・レアメタルの高度なリサイクル推進、③安全・安心の確保のため東日本大震災の反省点を踏まえた新たな災害廃棄物対策指針策定、④地球規模での循環型社会形成を図る国際的取り組みの推進など、様々な方向性が示されている。特に廃棄物分野の地球温暖化対策の強化、災害時の廃棄物処理システムの強靭化には国としての支援の充実を図っている。一方、廃棄物処理の主体である自治体では安全・安心とともに経済性の面から廃棄物処理施設の計画・建設・維持運営管理を一括で発注する方式も目立ってきている。
 本特集では、このような施策に対し、これまでの実績データに基づき、「今後の廃棄物処理はどのように対応し目指していくのか」、関西のプラントメーカー各社が、海外展開も含め、今後の廃棄物処理のシステム技術・運営等について紹介している。
 (1)廃棄物をエネルギー供給事業として捉え、国内外の廃棄物とエネルギー事情を紹介し、特に国内では地方型事業モデル都市型事業モデルを提案し、その廃棄物処理の進め方とその方向性を示している。
 (2)ごみ焼却施設のボイラ高温高圧化による発電量の増加過熱器管の耐久性の向上、および蒸気安定性制御機能による発電の安定化により、ライフサイクルコストの低減を示し、廃棄物系バイオマス資源の有効活用の実績を紹介している。
 (3)脱硝技術の組み合わせや飛灰循環、水銀吸着活性炭投入に工夫したプロセスにより発電量増加と薬剤低減による維持管理費低減を提案している。
 (4)流動床式ガス化溶融炉の特性を生かし、埋立てごみを掘り起こして混焼することによる最終処分場の再生の実績を紹介し、ごみ焼却施設のボイラ過熱器管での腐食環境を実証試験で解析し、ボイラ高温高圧化による発電量増加が期待できるとしている。
 (5)回転式表面溶融炉による不法投棄産業廃棄物の豊島廃棄物等処理事業での溶融生成物の資源化技術の実績を紹介し、その溶融技術のブラッシュアップによるリン等有価元素放射性廃棄物のセシウム分離を紹介している。
 各社ともコア技術を基軸として、技術のブラッシュアップを図っている状況である。特に廃棄物エネルギーをできるだけ多く回収するため、ボイラの高温高圧化による発電と、所内エネルギー使用量をできる限り少なくするための簡素な排ガス処理システムを構築し、発電量の増加を目指している。また、燃焼制御技術による安定化とともに排ガス損失熱を少なくしてエネルギーロスを少なくする燃焼技術も必要である。溶融による廃棄物からの有価物資源回収も、資源確保の観点から今後注目されてくる。特に廃棄物処理の維持管理を含めた一括発注方式が多く採用されてきている現状では、経営上の観点からも長期安定性信頼性が要求される。

(執筆者): 日立造船㈱・佐藤 英夫、中村 紀之、中野 憲一、薄木 航/川崎重工業㈱・竹田 航哉/㈱タクマ・飯田 哲士/㈱神鋼環境ソリューション・木下 民法/クボタ環境サービス㈱・後藤 謙治、他

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7月号  ノンポイントソースと水質保全
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8月号    下水汚泥の資源・エネルギー化
編集:大阪大学・惣田 訓

 下水汚泥は、量・質ともに安定した都市型バイオマス資源である。しかし、下水汚泥中の有機物をバイオガスや固形燃料等として利用する「下水汚泥エネルギー化率」は、いまだに低い状況にある。2012年に閣議決定された第3次「社会資本整備重点計画」では、下水汚泥エネルギー化率を2010年の約14%から2016年度には約29%に、下水道における温室効果ガス排出削減量を2009年度の約129万トン- CO2/年から2016年度には約246万トン-CO2/年とする目標が設定された。2014年に発表された「新下水道ビジョン」では、水・資源・エネルギーの集約・自立・供給拠点化が目標となっている。
 今日、下水汚泥を資源・エネルギーとして有効利用する必要性は広く認識され、特に政令指定都市では、その計画や施設更新が進みつつある。一方、中規模都市の自治体の多くは、下水汚泥の施設更新の時期を迎えながらも、省庁支援による新技術の実証試験などを除いては、財政や人材などの問題から、下水汚泥の有効利用は計画途上の段階であり、多様な選択肢から最適解を選ぶことは容易ではない。
 本特集では、中規模都市の汚泥処理の現状と課題を示し、汚泥の肥料利用、建設資材利用、エネルギー利用に取り組む先端企業を紹介するとともに、各自治体の状況を考慮した「下水汚泥の有効利用促進マニュアル」を紹介している。
 (1)大阪府北部に位置する中規模都市である吹田市では、下水汚泥施設の更新時期を迎えており、厳しい財政状況の中で多様な選択肢から汚泥処理の今後の方向性を検討している。
 (2)下水汚泥の肥料化は歴史ある技術であるが、超高温好気性細菌の導入により、90~100℃で汚泥を速やかに分解し、安全・安心な肥料を生産する新規技術が開発されており、堺市石津下水処理場で実施設が稼働している。
 (3)セメント産業は、下水汚泥を含む廃棄物のリサイクル率の向上に大貢献している国内最大級のリサイクル産業でもある。セメント製造工程の解説に加え、下水汚泥をバイオマス燃料として利用する将来展望を論じている。
 (4)日本では下水汚泥の大半が焼却処理されているが、現状ではその廃熱を利用した発電は一部の大規模処理場に限られている。下水汚泥エネルギー化率の増加には、中小規模の汚泥焼却設備への焼却発電技術を導入を可能とする技術開発が必要で、その事例と課題を解説している。
 (5)肥料利用、建設資材利用、エネルギー利用の3分野の技術を統合し、地域ニーズに適合した総合的な活用手法を提供するための「下水汚泥有効利用促進マニュアル」(日本下水道協会)を解説している。

(執筆者): 吹田市・真壁 賢治/共和化工(株)・倉地 利幸/太平洋セメント(株)・鈴木 涼/タクマ(株)・水野 孝昭/(社)日本下水道協会・前田 明徳

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9月号    湖沼内沈水植物(水草)の生態系における役割と課題
編集:千葉工業大学名誉教授・瀧 和夫

 湖沼の沈水植物(水草)の役割は、古く湖沼周辺の農民や漁民によって認識され、「モク採り」などとして、活用されてきた。戦後の経済・産業の急激な発展とともに、多くの湖沼は水草を中心とする生物多様性を失い、人々の生活や産業に必要な水瓶へと変貌してきた。化学肥料の登場とともに、湖沼水草の回収(「モク採り」)・堆肥として利用するという行為は忘れ去ってしまった。栄養塩の回収・再利用のないまま湖沼流域の都市化が進んだ結果、栄養塩の循環が途絶え、流域内の林地・農耕地・牧畜産地や市街地からの栄養塩の流入堆積は止むことがなく、都市近郊の湖沼は貧弱な生態系へと変貌しつつある。
 本特集では、水草について、水環境において果たしてきた役割、資源循環型社会での資源循環としての取り組み、それらの抱えている課題と方向性について解説している。
 (1)湖沼の水環境・生態系の保全に関して、水生植物、中でも沈水植物の役割に注目が集まっている。沈水植物が有する機能の中で湖底堆積物の巻上げ抑制効果についての調査、研究事例のまとめと有用性。
 (2)水域に生息する魚類・動物に影響を与えていると言われる内分泌かく乱物質について、河川や湖沼に生息する水生植物の吸収能の評価と環境修復改善技術への適用の可能性。
 (3)原子力発電所事故により放出・拡散された放射性環境汚染核種の除去技術の開発は環境修復の重要課題である。約200株の水草・水生植物・藻類株の中から、放射性セシウムの高度除去能を示す新種の藻類株の発見。放射性ストロンチウムとヨウ素の除去能を有する生物種の紹介と水草・藻類を活用した環境修復技術の有効性。
 (4)沈水植物は、様々な生き物の隠れ処・住み処・産卵場所や幼生・仔稚魚の生育場を提供し、種多様性をもたらす。生態系複雑化は系の調和と安定を生み、撹乱への緩衝能を高める。生きものたちの捕食・被食と羽化・陸生化は、窒素・リンを水中から系外へ排除する浄化経路としての機能。
 (5)沈水植物は、かつての供給サービスの担い手としての価値は低下したものの、調整・基盤サービスを支える役割を果たす。沈水植物の群落は、全国の湖沼で減少・単純化している。沈水植物群落を湖沼に再生させる手法として、土壌シードバンクを植物の供給源として活用する手法は、遺伝的多様性、個体群の安定性、種の多様性の面で長所をもつ。しかし、土壌シードバンクからの植物の再生可能性は時間経過ともに低下する。水質改善などの対策の推進と並行し、土壌シードバンクの保全策を進め、再生可能性を将来につなぐ取組の有効性。
 (6)水草は、かつて肥料として刈り取られ、農作物として循環利用されていた。現在、水草は厄介者でしかなく、多大な公金によって除去・廃棄されている。新たな利活用方法としてメタン発酵処理微細藻類培養を用いた、現代版「里湖(さとうみ)循環型社会」形成の可能性。

(執筆者): 山梨県衛生環境研究所・吉澤 一家/神奈川工科大学・齋藤 貴/筑波大学・岩本 浩二、白岩 善博/千葉県立中央博物館・林 紀男/東邦大学・西廣 淳/滋賀県立大学・伴 修平、戸田 龍樹、石川 可奈子、高津 文人

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10月号  持続可能社会の実現に向けたメゾ領域研究―将来ビジョンとシーズをつなぐ―
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11月号    大気中の超微小粒子(ナノ粒子)
編集:藤田環境技術士事務所・藤田 眞一 

 微小粒子状物質(PM2.5)は、2009年に環境基準が定められ、現在、地方自治体において常時監視がなされ、環境省の指針に基づく注意喚起の有無についての情報提供等が行われている。また、PM2.5低減に向けた各種の取り組みがなされている。しかし、さらに微小な粒径100nm 以下あるいは50nm 以下の超微小粒子(ナノ粒子)については、その実態や低減対策、あるいはヒトへの健康影響について調査・研究が行われているのが現状である。
 本特集では、大気環境中のナノ粒子を中心に、測定技術やその動態、ヒトの健康に及ぼす影響、また、大阪府を中心としたその現状、主たる排出源である自動車の低減対策技術の現況と課題、さらには、労働環境における空気中のナノ粒子(ナノマテリアル)の問題について紹介している。
 (1)大気中のナノ粒子の測定技術、およびナノ粒子について自動車からの排出や交差点近傍大気環境中の挙動等について解説。
 (2)ナノ粒子は非常に微小であるため、体内の深部まで侵入し、呼吸器系だけでなく、循環器系やさらには胎盤までも通過するという特性があり、その生体影響が懸念される。ナノ粒子の生体影響のメカニズム、マウスへの曝露研究、ヒト胎盤組織実験系での研究に基づき、ナノ粒子の妊娠期曝露が次世代の雄性生殖系中枢神経系に及ぼす影響についての紹介と、ナノ粒子による健康影響の分子生物学的な理解について解説。
 (3)大気中のナノ粒子の測定・調査を行っている地方自治体は非常に少ない。大阪府においては、2014年度から大阪市内の一般環境測定局と同一の場所においてナノ粒子の濃度測定と構成成分の分析を行っている。この調査結果と国内外の都市の測定結果との比較など、一般環境におけるナノ粒子の現状について紹介。
 (4)現在、自動車NOx・PM 法の車種規制により、粒子状物質の排出規制があるが、ナノ粒子排出の低減には克服すべき課題も多い。ディーゼル車について、PM補集フィルターの劣化メカニズムと今後の開発課題について解説。
 (5)ナノ粒子については、労働環境におけるナノ粒子が及ぼす影響も重要である。窒素酸化物等の他の大気汚染物質と同様、ナノ粒子についても労働環境における空気中の濃度は一般環境中の濃度より遥かに大きい。特に、近年目覚ましい普及が進むナノテクノロジー関連の労働環境における問題がある。労働環境においてナノマテリアルが及ぼす健康への影響、その管理基準や規制の現状や方向性について解説。

(執筆者):(国研)国立環境研究所・藤谷 雄二/ 東京理科大学・梅澤 雅和・小野田 淳人・武田  健、日本薬科大学・立花 研/(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所・西村 理恵/東京工業大学・花村 克悟・讃井 涼子/(独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所・三浦 伸彦

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12月号    風力発電普及のために―風車騒音の特性とその評価について―
編集:兵庫県立大学・河野 仁、松井 敏彦

 自然エネルギー導入が盛んなヨーロッパでは、風力発電は最も有力視されており、バイオマス、太陽光よりも多い。大型風車の1kWh 当たりの発電価格は、2013年、日本でも,石炭火力と大差ない10円/kWh である。環境省の調査によると、日本の風力発電の導入ポテンシャル(設備容量)は、陸上だけで現在の電力会社の発電設備容量の1.4倍、海上を入れると9倍もある。しかし、風車の最大の問題は風車騒音にある。風車建設反対の住民運動も生じている。本特集では、この騒音問題について、調査・分析・評価・アセスメントについて解説している。
 (1)風力発電施設からの発生騒音の実態を調べるために、H22~24年度にわたって全国規模の実測調査が実施された。この結果に基づいて、風車騒音の低周波数成分の影響(可聴性)、周波数スペクトル特性、時間変動特性などの分析結果を紹介。また、風車騒音の特性を考慮した定量的評価方法並びに環境アセスメントにおけるガイドラインを設定する際に必要な検討事項を考察。
 (2)風車騒音のうるささ、苦情について、戦略指定研究を中心に検討した。①風車騒音のうるささはLAeq、Lden などA 特性音圧レベルとよい対応を示すこと、②風車騒音は、交通騒音と比べて、同じ物理量でも、よりうるさく受け止められ、レベルが低くても、また距離が遠くても、うるさく感じ、苦情を生じること、③うるささや苦情には、風車騒音の騒音レベルだけではなく、視覚的影響、周辺環境が静かな所が多いことなど他の要因の影響も関与していることが示唆された。
 (3)環境省では、風力発電施設から発生する騒音等の調査・予測・評価について検討するため、H25年に様々な分野の専門家による検討会を設置した。これまでの4年にわたる議論を取りまとめた検討会による報告書「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」が公表された。報告書の概要を紹介。
(執筆者):東京大学名誉教授・橘 秀樹/大阪大学名誉教授・桑野 園子/環境省水・大気環境局・行木 美弥、他

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掲載日:2018年01月26日
更新日:2018年07月28日

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