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環境技術 2018


環境技術学会・月刊誌「環境技術」 2018年 特集概要
      目 次 総目次-分野別-
1号 2018年 環境行政展望
2号 生物応答を利用した排水管理法(WET 手法)の現状と展望
3号 人口減少時代の上下水道
4号 人口減少社会における廃棄物処理
5号 21世紀末を見据えたエネルギーのありかた
6号 宇宙の眼と鳥の眼による環境測定技術―人工衛星からドローンまで―
7号 地球温暖化の現状と緩和・適応策の動向



1号    2018年 環境行政展望

<年頭所感> 環境大臣 中川 雅治
(概要)今日の環境問題は、気候変動、廃棄物処理、原子力災害による汚染など、人類の社会経済活動から生じ、多様で複雑なものとなっている。一方で我が国の経済・社会が抱える課題も、地域活性化、少子高齢化社会への対応、国土強靭化など多岐にわたる。環境上の課題と経済・社会における諸課題とを同時に解決していく環境政策が求められる。
将来にわたり、質の高い生活をもたらす「新たな成長」により、持続可能な社会の実現していく決意を軸に、環境省では本年、環境基本計画や循環型社会形成推進基本計画を改定していくととみに、各分野で施策を展開する。
<年頭ずいろん> 環境技術学会会長 竺 文彦(龍谷大学名誉教授)
(KW)グローバル経済と地球環境問題、会員数減少と運営、本誌の発行形態の変更、欧米と日本の環境対策
<地球環境問題> 環境省地球環境局 門倉 一郎
ー脱炭素化に向けて加速化する世界の潮流と我が国の取組ー
(KW)パリ協定、地球温暖化、脱炭素社会、長期戦略、適応
<大気環境行政> 環境省水・大気環境局 高澤 哲也
(KW)PM、光化学オキシダント、アスベスト、水銀、越境汚染対策
<水環境行政> 環境省水・大気環境局 渡邉 康正
ー健全な水循環を支える水環境の実現に向けてー
(KW)水環境、環境基準、琵琶湖保全、放射性物質、国際環境協力
<水道行政> 厚生労働省医薬・生活衛生局 是澤 裕二
ー水道行政の改正に向けてー
(KW)水道事業の基盤強化、広域連携の推進、適切な資産管理の推進、官民連携の推進、指定給水装置工事事業者制度の改善
<下水道行政> 国土交通省水管理・国土保全局 山田 哲也
ー「新下水道ビジョン加速戦略」の実践と発信ー
(KW)下水道、官民連携、汚泥の資源・エネルギー利用、ストックマネジメント、事業広域化
<一般廃棄物行政> 環境省環境再生・資源循環局 瀬川 恵子
(KW)一般廃棄物の適正処理、災害廃棄物対策、循環型社会推進交付金、廃棄物処理施設整備計画、廃棄物の処理及び清掃に関する法律
<放射性物質に汚染された廃棄物の処理の現状> 環境省環境再生・資源循環局 黒川 陽一郎
ー原発事故から7年目を迎えて
(KW)放射性物質、指定廃棄物、放射性物質汚染対処特措法、各都道府県内処理、長期管理施設

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2号    生物応答を利用した排水管理法(WET手法)の現状と展望
編集: 2018-02-00 神戸学院大学・古武家 善成

 化学物質の毒性を、生物(陸・水生物、微生物、細胞・組織、遺伝子など各レベルで)を用いて評価する手法をバイオアッセイという。
 これまでに、環境(ヒトを含む)への毒性を示す物質に対して、個別に評価・規制してきた。これに対して、毒性を示す物質の集合体が環境へ与える毒性(Whole Effect Toxity、WET)を評価・規制する取組が進展している。
WET法の活用には、①手法、②コスト、③規制などの様々な問題が関係してくる。本特集では、水環境へのWET法の適用について、課題と展望、国内外の状況について、各分野の専門家が解説している。

2018-02-01 バイオアッセイとWET法の展望
 バイオアッセイの体系とその有用性を精査する中で、日本版WET 手法の今後を展望している。。
2018-02-02 自主管理のための排水の生物応答評価とその課題
 WET手法の意義と課題について、検討会での議論を踏まえながら詳述している。。
2018-02-03 実試料へのWET法の適用における課題への対応
 自治体の研究機関と共同で実施しているセミナーやテストの結果を踏まえ、WET手法の実試料への適用における課題について詳述している。
2018-02-04 環境省における生物応答を利用した水環境保全に関する検討について
 環境省で実施しているWET 手法検討会の流れを振り返りながら、現在までの議論の到達点を整理している。
2018-02-05 排水の生態毒性試験(生物応答試験)について
 排水中の化学物質の影響評価研究に関する国際的な流れをまとめ、WET 手法の技術的な検討課題の細部を詳述している。


<執筆者> 2018-02-01 有薗 幸司(熊本県立大学)/2018-02-02 鑪迫 典久・新野 竜・本 裕史(愛媛大学)/2018-02-03 山本 裕史・阿部 良子・渡部 春奈・鑪迫 典久((国研)国立環境研究所)/2018-02-04 甲斐 文祥(環境省)/2018-02-05 新野 竜大・山本 裕史・鑪迫 典久((株)LSIメディエンス)

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3号人口減少時代の上下水道
編集: 2018-03-00 立命館大学・惣田 訓、JFEエンジニアリング(株)・安達  伸光

 人口減少は、社会・経済・産業へ様々で多大な影響を与えている。本特集は、基幹インフラの一つである「上下水道」への人口減少が急速に進行している中小都市や過疎化地域での課題の現状とその解決策の提言が事例ととともに、それぞれの専門家より解説されている。
 各提言の中で共通のキーワードは「連携」である。個人・団体・自治体の連携、地域に対応した個々のインフラ整備・管理とそれらの相互連携である。人口減少時代の社会インフラの維持と再構築のあり方への参考となる特集である。

2018-03-01 人口減少社会における上下水道事業
 応策として、兼業・連携・分散自立を、戦略として集約化・広域化・スポット対応の概念が解説されている。
2018-03-01 小規模水道事業等の現況と施設と管理の再構築に関する一考察
 多くの集落の視察経験に基づいた問題緩和への取り組みと技術開発の事例が紹介されている。
2018-03-01 これからの水道の災害危機管理
 回復力が低下する人口減少時代において、災害レジリエントな水道システムと事業継続マネジメントを確立するための課題が解説されている。
2018-03-01 エネルギー回収をめざした下水処理場インフラの連携と技術選択
 和歌山市における汚泥処理の集約化とごみ焼却場・産業工場との連携による下水処理場のエネルギー回収シナリオが提案されている。
2018-03-01 農村域における汚泥処理・資源化機能の統合―群馬県のケーススタディ―
 群馬県におけるし尿処理場の更新と廃止のシナリオが、農畜産業やごみ焼却場、下水処理場との連携の視点から議論されている。

<執筆者> 2018-03-01 鳥取大学・細井 由彦/2018-03-02 (公財)水道技術研究センター・田中 稔/2018-03-03 名古屋大学・平山 修久/2018-03-04 和歌山大学・中尾 彰文・山本 祐吾・吉田 登/2018-03-05 お茶の水女子大学・中久保 豊彦

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4号    人口減少社会における廃棄物処理
編集: 2018-04-00 元 川嵜環境エンジニアリング(株)・守岡 修一

 わが国は人口減少社会に入り、今後都市構造の変化に伴い、廃棄物量の減少や財政難が予想され、廃棄物処理施設等の更新・維持計画にはそれに対応した施策が求められる。本本号では「人口減少社会における廃棄物処理」について特集を掲載している。

2018-04-01 社会状況の変化に対応した一般廃棄物処理行政について
 人口減少の進展で人材、財政の制約とともに廃棄物の質量の変化に対応したシステムの効率化の追求が必要である。今後の方向性として、処理施設の広域化・集約化と長寿命化、民間活力の活用も視野に入れ、温暖化対策を推進するエネルギー回収の推進と災害に強い施設を推進するとしている。
2018-04-02 人口オーナス時代の廃棄物管理―人・ごみ・施設・財政の観点からー
 人口減少の時代を迎え、社会や人々がその問題の全体像や特定の分野への影響について、具体的に理解されているとは言いがたい。人口減少という一面的な捉え方ではこの問題への対応が危ぶまれ、その全体像を理解しつつ、個別分野への影響として資源循環・廃棄物分野に及ぼす悪影響や懸念事項、さらには対応策とその状況を概説している。
2018-04-03 人口減少を考慮した市町村の廃棄物処理費用に関する一考察
 各市町村のパネルデータを用い、廃棄物処理に関する情報と人口密度や面積等に関する社会データとの関係から得られる経験式による廃棄物処理費用の将来予測モデルを構築し、今後の人口減少や災害発生に対応した廃棄物処理システムの最適化について考察している。
2018-04-04 資源循環の地域マネジメントの展開―一般廃棄物の資源化と持続可能な消費を中心にー
 県レベルの一般廃棄物の処理と循環型社会形成の考え方として、地方での循環ビジョンの策定から約20年が経過し、地方レベルで循環社会の形成でさらに考慮すべきことと資源循環の施設と運営に事業面での革新が試みられる未来に関する事項について述べている。

<執筆者> 2018-04-01 桒村 亮広(環境省)/2018-04-02 田崎 智宏・稲葉 陸太・河井 紘輔(国開法・国立環境研究所)/2018-04-03 島岡 隆行・中山 裕文・木村 恭子(九州大学)/2018-04-04 盛岡 通(関西大学名誉教授)

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5号21世紀末を見据えたエネルギーのありかた
編集: 2018-05-00 本庄 孝子・元(国研)産業技術総合研究所

 わが国では大型水力発電以外の自然エネルギーである太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマス等を再生可能エネルギー(再エネ)の中でも特に新エネルギー(新エネ)と分類している。1970年代の2度のオイルショック後、新エネの導入が進んだが、政府は1977年に原子力発電を主電源と設定し、1993年に太陽のみ重点化して以降、新エネ導入は下火になっていた。
 2012年7月に再エネによる発電を固定価格で買取る制度(FIT 制度)が開始されて以降、太陽光発電の導入が大きく進んだ。2015年のパリ協定で、わが国は温室効果ガスの排出量を、2030年に2013年比で26%削減との中間目標を示した。そして同年「長期エネルギー需給見通し」では、2030年の電源構成における再エネの占める割合を総電力量の22~24%、原子力を20~22%とした。世界では再エネの設備価格は低下して、化石燃料と同レベルの域に達してきた。2015年の世界の新規発電設備の50%以上が再エネであった。
 全エネルギーを再エネで供給することを目指す「RE100」が、世界の国、世界的な企業、世界及び日本の自治体などに急速に広がっている。わが国でも2018年5月に「エネルギー基本計画」(案)が出された。今後、一次エネルギー供給構造を低炭素化するための再エネ導入とともに、原子力発電の利用について国内での議論が進むと予想する。

2018-05-01 日本のエネルギーの現状
 日本のエネルギーの現状について、政府の統計を使って、部門別最終エネルギー消費の推移、電力の電源構成や非電力と電力の一次エネルギー消費の推移等の基礎的事項を紹介している。
2018-05-02 再エネ大量導入と電力系統の維持・運用、電力市場整備の方向性
 電力系統への再エネ大量導入が予見される中、送配電設備の維持・運用などを紹介している。電力系統の再エネへの適応能力を高めることも必要で、託送料金の制度設計に関して、発電側基本料金、送配電網の効率的利用、ノンファーム型接続への料金措置、送配電網の固定費回収について述べている。再エネ導入拡大により、電源投資の予見性が低下するため、容量市場や、需給調整市場、連系線利用ルールの見直しが必要なことについても論じている。
2018-05-03 世界の再生可能エネルギー最新動向と日本の課題
 これまでにも世界の再エネ動向について論じてきたが、ここでは最新データに基づいて急速に普及が進む再エネ発電の現状とその特徴について述べる。一方、日本は再エネ普及の遅れが際立つが、その現状と課題についても論じる。
2018-05-04 我が国における大規模太陽光発電の現状と課題―導入拡大に向けた今後の問題点と環境影響―
 再エネの歴史について述べ、最近の世界の再エネ動向の特徴は市民・自治体主導の取り組みが拡大しているとともに、再エネ発電は経済的にも有利だが、わが国のバイオマス発電では大半が輸入資源に依存する大規模発電であるなど、多くの課題に触れた。
2018-05-05 太陽光エネルギーの多様な利用―二酸化炭素再資源化と海水淡水化―
 太陽光を用いて二酸化炭素からブタン合成で高い収率が得られる。また、約20nm の細孔を持つ浸水アルミナ膜の表面を修飾したのを用いて、紫外線と可視光照射で3.5%塩化ナトリウム水溶液から、塩濃度0.01%未満の水を得たなど、海水淡水化が可能になるとしている。

<執筆者> 2018-05-01 藤川 陽子(京都大学)/2018-05-02 小宮山 涼一(東京大学)/2018-05-03 和田 武(和歌山大学客員教授)/2018-05-04 増田 啓子(龍谷大学名誉教授)/2018-05-05 藤原 正浩((国研法)産業技術総合研究所)

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6号宇宙の眼と鳥の眼による環境測定技術―人工衛星からドローンまで―
編集: 2018-06-00 大阪工業大学・駒井 幸雄

<リモートセンシングの状況と意義>
人工衛星に積載の各種センサーを用いた、地球表面付近の状態を広範囲に宇宙から観測するリモートセンシング(Remote Sensing)は、1972年に米国NASAが打ち上げたLandsat1号に始まって以来、その進歩と成果はめざましいものがある。
航空機からの写真撮影は、古くから、地形図の作成や森林調査に欠かすことができない地上情報を提供しており、最近の航空機に搭載されたレーザーを用いた測距法では地盤高の分布や変化を高精度で得ることを可能にしている。
ドローンは、例えば地上100~200mの低高度で観測ができ、鳥の視点から地上を見ることができる。人工衛星・航空機による観測とは質的に異なる多彩な情報を、低価格で入手でき、特別な操作技術が不要なドローンを使えば、誰もが容易に情報を得ることができ、ここ数年にドローンを活用した調査や研究は急速に進展している。
<特集の内容>
宇宙から地上付近までの様々の高さから地球表面の状態を観測できるリモートセンシングは、地上での調査では得られない広範囲の多種多様な情報を、同時性をもって取得できる大きなメリットがある。その対象も、自然環境に加えて社会環境を含めた分野にも広がっており、環境測定技術としての有用性・可能性や、さらなる発展が期待されている。本特集では、地上の調査では得られない空からの情報を提供するリモートセンシングによる環境測定技術について、各分野の専門家が紹介するとともに課題や将来の展望を取りまとめている。
 人工衛星・航空機・ドローンという異なったプラットフォームによるリモートセンシングは、環境を視覚的に把握できる優れた技術である。本特集はその一端の紹介ではあるが、その理解と今後のさらなる活用が期待できる。

2018-06-01 人工衛星リモートセンシングによる最新の環境測定技術と展望
 気象衛星ひまわりとかインターネットの衛星地図(Google Earth)などは多くの人が知っている。リモートセンシングは今や我々の身近になくてはならないツールである。リモートセンシングとは、英語Remote Sensing(RS)に由来し、日本語で言えば「非接触で計測する」という意味である。人工衛星からの情報だけではなく、センサ搭載の飛行体による様々な高さからの観測は、すべてRSといえる。最近注目されているドローンは、最先端技術を象徴するような機器となっている。衛星と異なり、雲の下から撮影できることから、近年環境計測にも積極的に使われている。
 本論では、衛星RSから得られる基本的な環境測定技術の説明と将来展望について、筆者が実際に行った研究事例も含めて紹介する。
2018-06-02 高解像度人工衛星リモートセンシングによる大阪湾の赤潮動態解析
大阪湾・東京湾・伊勢湾などの半閉鎖性海域においては、赤潮や貧酸素などの問題が現在においても解消していない。人為・経済活動の盛んな沿岸海域においては、発生する赤潮が広範囲であるとともにその時間変化が激しいため、現場観測によるクロロフィルa(Chl-a)濃度等の水質定点情報のみでは、赤潮の時空間スケールを把握することには限界がある。
 2010年に、海色センサGOCIを搭載した静止衛星COMSの運用が開始され、この海色データから、植物プランクトン現存量の指標となるChl-a濃度を推定し、半閉鎖性海域に発生する赤潮の動態解析に活用できるようになった。
人工衛星によるリモートセンシングは、広い海域を高解像度・高頻度に捉えるために適した手法であるが、沿岸海域では、陸水由来の有色溶存有機物質(CDOM)や懸濁物質(SS)等の影響を顕著に受けるため、衛星観測によるChl-a 濃度の推定誤差が大きい。現場観測された定点・定線観測Chl-a 濃度データに加えて、現場での採水や観測から得られたChl-aの濃度等を用いて、人工衛星から得られるChl-a 濃度データの推定誤差を緩和するための補正式を、海域特性に応じて作成する必要がある。
 本研究では、各波長におけるリモートセンシング反射率を現場海域において測定し、静止衛星によって得られた衛星Chl-aの最適化を行い、このデータと他の人工衛星から得られる水温場・光学特性データを総合的に解析し、大阪湾の赤潮動態を調べた結果の一部を述べる。
2018-06-03 航空レーザー測距法による熱帯泥炭湿地林の環境変化の評価
熱帯泥炭湿地は特殊な環境に生息・生育する動植物で構成される貴重な生態系で、とりわけ土壌には、数千年にわたって莫大な量の炭素が蓄積されてできた泥炭が存在する。その生態系に、ここ数十年の間に森林伐採や排水といった開発に晒され、温室効果ガスの排出源に転じた地域がある。
 本稿では、航空機搭載のレーザー測距機を使った反射物までの距離、航空機の位置・姿勢情報と組み合わせて三次元的位置を計測する航空レーザー測距法の紹介と、熱帯泥炭湿地林の植生、地下の土壌を含めた生態系全体の炭素収支の推定における航空レーザー測距法の優位性を論じた。
2018-06-04 ドローンによる環境測定技術の可能性―農村地域での活用事例から―
ドローンの利点を活用したフィールドの一つとして、農村地域での環境モニタリングが挙げられる。農村地域においては、過疎・高齢化の中で地域の生業や資源をどのように守り引き継いでいくかは非常に重要な課題である。2017年に入ると、農薬散布ドローンの利用を後押しする施策が進み、また、民間企業においては農作物の成育モニタリングサービスも始まるなど、農村地域におけるドローン利活用の拡大の兆しが見られる。
 本稿では、筆者が実施している農村地域におけるドローン近接リモートセンシングとして水稲生産及び害獣のモリタリングについて紹介しながら、ドローンによる環境測定技術の特徴と将来的な可能性について述べる。
2018-06-05 人工衛星とドローンの組み合わせによる環境測定と評価
 ドローン空撮の活用により、これまで簡単に行えなかった“鳥の目”による地上観測を比較的容易に行えるようになった。また、人工衛星により取得された情報との関連を解析することにより、これを“宇宙からの視点”に拡張することが期待できる。さらに、過去に取得された人工衛星画像はアーカイブ化されているので、時系列の環境評価を行うことも可能である。本稿ではドローンとLandsat シリーズを活用して、鳥取砂丘インドネシアの熱帯泥炭湿地林の二つの事例を取り上げ、人工衛星とドローンという異なるプラットフォームで得られたリモートセンシングデータをGIS上で統合することにより、環境の空間的・時系列的な解析を行った結果が紹介する。

<執筆者> 2018-06-01 作野 裕司(広島大学)/2018-06-02 小林 志保・中田 聡史(京都大学)/2018-06-03 都築 勇人・末田 達彦(愛媛大学)/2018-06-04 渡辺 一生(京都大学)/2018-06-05 高山 成(大阪工業大学)

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 7号地球温暖化の現状と緩和・適応策の最新動向
編集: 2008-07-00 兵庫県環境研究センター・中坪良平

 近年、地球温暖化の影響により世界各地で異常気象による災害が発生している。日本でも記録的な猛暑集中豪雨による甚大な被害が生じたことは記憶に新しい。また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書では、人間活動で排出される温室効果ガスに起因する気温や海面水温の上昇、海洋酸性化等により、自然生態系及び人間社会への様々な将来的リスクが指摘されている。
 地球温暖化のリスクを低減させるため、温室効果ガス排出抑制等の「緩和策」を進展させる技術開発は喫緊の課題である。一方、温室効果ガスの排出量がどのようなシナリオをとったとしても世界の平均気温は上昇し、気候変動のリスクは高まると予測されている。そのため、避けられない影響に対する「適応策」の推進も同時になされる必要がある。本特集では、地球温暖化がもたらす極端な気象・気候現象と、気候変動に対する緩和・適応策の最新動向について各分野の専門家が解説し、将来を展望している。

2008-07-01 過去と将来の気候変動
 人間活動によるCO2など温室効果ガスの排出によって、大気や海洋などの気候システムの温暖化が進んでいる。今後も現在のペースで温室効果ガスの排出が続けば、世界平均地上気温は4℃上昇し、甚大な被害が生じると考えられている。このような被害を避けるために、2015年12月に国際社会は「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」という目標を掲げたパリ協定に合意した(発効は2016年11月)。
 本稿では「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change,IPCC)第5次評価報告書(IPCC AR5)」などを引用しながら、過去にどれだけの温暖化が進んできたのか、今後どれだけ温暖化するのかに関して解説を行っている。
2008-07-02 CO2分離回収・貯留(CCS)技術の現状と展望
 排出CO2の分離回収・貯留(CCS: Carbon Capture and Storgae)とは、火力発電所・製鉄所・セメント工場・化学工場等の大規模排出源からCO2を分離回収して、地下深くの安定地層へ貯留する技術で、地球温暖化の緩和技術の一つとして期待されている。
 2100年に2℃に抑える代表濃度経路シナリオ(RCP 2.6)では、2050年の温室効果ガス(GHG)排出量は2010年と比べ40~70%の削減が必要で、2100年に許容されるGHG排出量は、ほぼゼロまたはゼロ以下となる。また、国際エネルギー機関(IEA)エネルギー技術展望(ETP)2017での2100年までに世界の気温上昇を2℃以内とするシナリオ(2DS)では、再生可能エネルギー、エネルギー効率向上、燃料転換などに加えて、CCSによるCO2削減量は2060年時点で4.9Gt-CO2/年で全体削減量30.8Gt-CO2/年の約16%を担うものと期待されている。
 2018年8月現在、世界で操業中の大規模CCSプロジェクトは、グローバルCCS インスティテュートの集計によると18件、建設中は5件、これら23件のCO2回収可能量の合計は約38Mt-CO2/年である。シナリオ2DSでは、2040年時点のCCSによるCO2削減量は3.8Gt-CO2/年であり、今後、約20年の間に現在の100倍程度までCCSの導入規模を急拡大する必要がある。また、貯留地点の開発には5年から10年以上の長いリードタイムが必要と言われており、CCSの導入への取組を加速しなければならないが、現在のところ、CCSの広範な導入には至っていない。
 CSSコストは、CO2回収が全体の半分以上を占める試算例もあり、その低エネルギー化が課題である。CO2の地中貯留では長期間の安全性が課題で、地質の調査・選択、CO2の圧入安全管理、モニタリング等の技術開発が必要となる。さらに、制度の枠組み、資金計画、実施体制の構築などの議論と検討が必要である。
2008-07-03 省エネルギー技術開発に関する最近の取組
 2016年11月に発効したパリ協定では、「地球の平均気温の上昇を2℃より十分下方に抑える」という具体的な目標が示され、世界的にエネルギー供給・利用をめぐる大きな変革の波が起きている。これらの実現には、風力や太陽光のような再生可能エネルギー由来の電気の大量導入とその貯蔵を行うとともに、エネルギーを利用する側での更なる効率化・高度化も不可欠である。我が国は、2018年7月に閣議決定されたエネルギー基本計画に示されるように、「徹底した省エネルギー社会の実現」を世界に先駆けて目指しており、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はその技術開発の一翼を担っている。
2008-07-04 気候変動影響への適応
 2018年の夏は、7月23日に埼玉県の熊谷市で国内の観測史上最高となる41。1℃を記録したのをはじめ、東・西日本において記録的な高温となった。また、西日本を中心に全国の広い範囲で記録的な大雨となった「平成30年7月豪雨」が発生した。近年のこうした記録的な豪雨や高温に対し、国内では、将来の気候変動への影響に対する適応の取組が本格化している。2015年には「気候変動の影響への適応計画」が2015年に閣議決定した。さらに2018年6月には、「気候変動適応法」が全会一致で可決され、同年末に施行予定である。本稿では、気候変動による影響と適応に関する取組の現状について取り上げる。
2008-07-05 地方自治体が取り組む気候変動影響への適応策
 今年6月に気候変動の影響による被害を回避・軽減する適応策を推進するための「気候変動適応法(平成30年法律第50号)」が成立し、地方自治体に地域適応計画の策定や、地域における気候変動影響や適応に関する情報収集・整理・分析・提供等が行えるような体制づくりが求められるようになった。
 兵庫県では、平成26年度から気候変動影響に関する庁内連携体制の構築、既存施策の体系化、情報発信、適応基本方針の策定(農林水産業、自然生態系、自然災害、健康、都市生活などへの影響に対する適応策)など進めている。

<執筆者> 2008-07-01 塩竈 秀夫(国立環境研究所・地球環境研究センター)/2008-07-02 清水 淳一(地球環境産業技術研究機構)/2008-07-03 髙橋 ひとみ、今田 俊也、小笠原 有香、舘田 開(新エネルギー・産業技術総合開発機構)/2008-07-04 肱岡 靖明(国立環境研究所)/2008-07-05 星野 美佳(兵庫県農政環境部)

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掲載日:2018年01月25日
更新日:2018年12月28日

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