Q0001: なぜ、水処理メーカーは湖沼等の水質浄化に手を出さないのでしょう?


湖沼等の閉鎖性水域の水質浄化は、水域の規模や周辺地域の状況にもよるが、水処理メーカーが営利目的を除外して取り組んだとしても、とても困難な課題です。
編集者も、30年前の数年間、農業用溜池の浄化に取り組んだ経験がある。様々な浄化法(生物膜法、曝気循環法、植生法、底質改善剤、ヘドロ浚渫など)を試みたが、周辺住宅からの排水流入で根本的な水質改善は困難であった。当時の池水は黒く、悪臭が発生していた。その池の水質は現在かなり改善されており、上部周辺住宅地区の下水道や浄化槽など環境保全の基盤整備によるものと思われる。

一般的に、湖沼等の水質汚濁は、家庭(最も大きい)や事業所からの排水、農地(園芸・畜産なども含む)・街路・道路からの雨水などの流入が主な原因であろう。今日、家庭排水は公共下水道、集落排水施設、個別の浄化槽などにより浄化されているが、それでも、有機物や窒素・リンなどの栄養塩類が湖沼等へ流入している。

かっては、森林・農地(特に水田)が大きな水質浄化の役割を果たしていた。
(森林)森林は手入れされ、間伐材は燃料とし、その灰は農地の肥料として利用していた。間伐・伐採・植林により、森林の水・空気の浄化作用が機能していた。今日、多くの森林入れもなく放置され、その機能が弱体化している。
(農地)農薬が開発・普及する以前には、し尿・家畜糞・食品破棄物は熟成して肥料として用いた。畑地の微生物に加え、水田には、微生物・ミジンコからドジョウ・カエル・鳥までの豊かな生態系が存在し、水の浄化作用が大きく機能していた。
(溜池と農業水路)
昔は、多数の溜池と河川から水を引くための用水路が張り巡らされていた。
溜池は、秋の収穫が終わると、集落住民の総出で、溜池の水を放流するとともに池の清掃や周辺の草刈り(野辺焼きを含む)を行った。楽しみは、凹みのある池底に集まった大型の魚「コイ、フナ、ナマズなど」を網や手掴みで採ることで、みんなで分配して食卓に上がった。小魚はそのまま残した。その後、池底の天日干し(残った小魚がいる箇所を除く)により、その底泥を浄化した。水路は、異物や泥・砂・石の除去土手の草刈りなど定期的な管理が行われ、その草は牛馬の餌とした。

昔の地産地消に比べて、食料(輸入品や世界海域の魚)・飼料(多くは輸入)・肥料(原料の多くは輸入)が、狭い国土で消費されている。昔のような広大で強力な森林・農地・河川・水路などの面的浄化作用の機能は低下している上に、海外からの様々な資源が国内に蓄積(元素として)していることも事実である。しかしながら、国民の理解と官民の努力(下水道・浄化槽などの整備)により、湖沼・河川・閉鎖海域の水質は、少しづつではあるが、全体的には改善されつつある。

昔のような生活様式や社会システムへ戻ることは、不可能でしょう。豊かな社会と自然との共生を人々(国民・政府・民間を含む)が、様々な視点から考え、できることから行動に移すことが大切と考えます。


溜池の実験風景

lgpond1
写真1 循環曝気装置2台
(中央、右上)
lgpond2
写真2 植生(池周辺の1事例)
(ホテイアオイ)
lgpond3
写真3 浄化装置2台
(生物膜法)
lgpond4
写真4 浄化装置
(上部外観)
循環曝気法) 降雨のたびに周辺から大量の水が流入、池水がリセット(流入水・流出水の水質分析による物質収支のこと)され、定量的な効果は確認できなかった。
生物膜法) 処理水は透明できれいであったが、池水総量に対してその規模が小さいため、池水全体の浄化効果は小さかった。
ホテイアオイ) 風に吹かれて浅い岸辺で根を張り、目的である池に広がることはなかった。ボートを用いて、何度も抜き取ってネットなどで囲っても、強風などで失敗に終わった。低温期には、枯れて汚濁源となるので、秋季に除去した。
その他) カモなどの渡り鳥が多数飛来し、周辺住民が喜んでいた。
学生たちの感想) 天候(警報時を除く)に関わらず、週の2〜3日間隔での維持管理(ホテイアオイの管理、浄化装置の肥大化生物膜の剥離とその汚泥の引抜き・運搬・処理、試料の採取(ボートで多数箇所)と分析(当時は手分析がほとんど)」で、「しんどかった!」。
-定量的な詳細は、別途、記載予定です。-

掲載日:2017年8月30日