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ミクロ世界の基礎知識(2)

目次


 (注)「ミクロ世界」の内容は複数ページに分割されいるが、目次は共通となっている。


 水浄化技術の中には、「ミクロ世界ー素粒子」に係る基礎知識が必要な事項もある。本サイトの他ページにおいて、リンク説明が必要なミクロ世界の現象について、適宜、加筆する更新年月日に留意)。本サイトの編集者は物理学分野の知識が浅いので、不適切あるいは誤った記述もある。閲覧者から、ご指摘を賜れば、幸いである。
 なお、本ページの目的は、ミクロ粒子(電子、原子、分子、光子など)の挙動に関する数理学な手法や解析の解説ではなくて、(境界)条件下における解(結果)定性的な意味を理解し、関係する水浄化技術(浄化装置の原理・設計やその運転管理、水質分析の原理・装置・方法など)の理解を深めることにある。詳しい数理学的な解析や手法は、それぞれの分野の専門書を参考とされたい。

フェルミ・エネルギー

(1)箱に閉じ込められた電子

 今、電子を一辺L立方体の箱の中に閉じ込めたとき、3次元空間における時間に依存しない電子の波動関数は、一般に、つぎのように示される。
  ψ(x, y, z) = (1/√V)exp(iκr)
  κ = (2π/L)(nx, ny, nz)   (F-1)
  E(κ) = (ħ2/2m)(2π/L)2(nx2 + ny2 + nz2)
     = (ħ2/2m)κ2
   ni = 0, ±1, ±2,・・・
   κ:波数ベクトル
   E(κ):量子化されたκに対する固有エネルギー

(2)フェルミ球

 式(F-1)で示される3次元κ空間において、電子のエネルギー状態は量子数の組(nx, ny, nz)で示される。パウリの原理によれば、これにスピン量子数 s(= ±1/2)を加えた量子数の組(nx, ny, nz, s) に2つ以上の電子が占めることはできない。一般に外部磁場がないときには、sで示されるエネルギーは、ni (i = x, y, z) で示されるエネルギーに比べて無視できる程度であるので、上記κ空間での各エネルギー状態にスピン±1/2の電子2個が入ることができる。
 T = 0 Kでは、エネルギー状態の組(nx, ny, nz) に対し、エネルギーの最も低い量子状態から順に、スピン ±1/2(↑,↓)の電子2個ずつを詰めていく。具体的には、(0, 0, 0)、(1, 0, 0)、(0, 1, 0)、(0, 0, 1)、(-1, 0, 0)、(0, -1, 0)、(0, 0, -1)、(2, 0, 0)、・・・と詰めていく様子を図F1に示す。
 ここで、1モルの1価金属を例にとれば、NA = 6 ×1023個の電子をκ空間(逆格子空間ともいう:長さの単位が実空間の逆数)に詰めていくこととなり、電子を詰めた半径κFの球を形成する。これをフェルミ球という。ここで、留意すべきこととして逆格子空間が一辺 2π/Lの立方格子を単位とする不連続な“量子点”から成り立っていることである。。
一例を上げると、Cu 1モルの重量は63.55 gで、密度8.93 g/cm3であるので、実空間の立方体塊の一辺は、L = 1.92 [cm = 108Å] 、である。一方、κ空間の逆格子の1辺は、2π/L = 3.37-8[Å-1]、となる。

fermi-sphere
図F1 フェルミ球の構築
1辺が2π/Lの逆単位格子の中に、2個ずつ価電子を内部格子から順に詰めていく。

(3)フェルミ・エネルギー

 Cuの1モル・フェルミ球(半径κF)にはNA個の電子が存在し、体積(2π/L)3あたり2(= g)個の電子を詰めるので、つぎの関係が成り立つ。
  (2π/L)3 : 2 = (4πκF3) : NA
 L3 = V とおくと、フェルミ球の半径κF
  κF = [3π2(NA/V)]1/3  (F-2)
を得る。V = 63.55[g]/8.93[g/cm3] = 7.12[(108Å)3]を式(F-2)に代入すると、κF = 1.36[Å-1]となる。κF ≫ 2π/Lであるので、逆格子空間はほど連続した量子点の集合とみることができ、フェルミ面は滑らかな球面とみることができる。
 フェルミ半径に等しい波数をもつ電子エネルギーは、式(F-1)に式(F-2)を代入して、
  EF = (ħ2/2m)kF2 = (ħ2/2m) = [3π2(NA/V)]2/3  (F-3)
  =36.46(NA/V)2/3 [eV] (Vの単位をÅ3で示すとき)
 EFとNAの添え字を取り去ると、この式は体積VあたりN個の価電子をエネルギーの低い順に詰めたとき、その最大エネルギーEを示している。式(F-3)を変形して、次式を得る。
  N(E) = dN/dE = [V/(2π)2](2m/ħ2)3/2√E  (F-4)
 N(E)は電子の状態密度といわれ、N(E)ΔEはE~E+ΔEにある電子数を表す。図F2にEとN(E)の関係を示す。したがって、エネルギーが0~EFまでの電子の総数は次式で示される。
  N = ∫N(E)dE (0~EFの範囲で積分)  (F-5)

electron-density-states
図F2 金属結晶の価電子の状態密度分布 (T = 0 K)
T = 0 K において、結晶中の価電子は全てフェルミ・エネルギー EF 以下の状態を占めている。

 代表的な金属について、式(F-3)を用いてフェルミエネルギーを計算した値を表F1に示す。なお、Ωは1原子あたりの体積Vを示す。例えば、bcc金属Naの格子定数は4.22Åであるので、Ω = (4.22)3/2 = 37.7Å3となる(結晶構造 bcc の単位格子に2個の原子が存在する。)。Naは1価原子であるので、1原子あたりN = 1 となる。これらの定数を式(F-3)に代入すると、EF = 3.2 eVが得られる。

表F1 金属のフェルミ・エネルギー EF (T = 0 K) の計算事例
typical-metal-fermi-energies
文献[水谷, 1995]より転記

(以下、執筆中)
fermi-sphere-cross-section
図F3 有限温度(T ≠ 0 K)におけるフェルミ球の1/4断面
●:電子が占有しているフェルミ格子、○:電子が空席のフェルミ格子
フェルミ球(薄青色の領域)内の空席○数とフェルミ球外の占有席●数は等しい

electron-density-states-2
図F4 有限温度における金属結晶の価電子の状態密度分布(T ≠ 0 K)

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金属電子

フェルミ粒子の気体として縮退を示す重要な例として金属内部の電子がある。金属が電気をよく伝えることや熱すると表面から電子が飛び出す事実は、金属内で電子がかなり自由に運動していることを暗示する。金属をつくる原子は、その最外殻電子がその結晶中を運動するものとするとその特性がよく説明できる。ちょうどその金属の中に閉じ込められた気体のようなものである。
 ここでは、金属電子の挙動について、量子力学と統計力学の視点から、数例を解説する。

(以下、執筆中)
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参考文献

E. Merzbacher, 1970: Quantum Mechanics, John Wiley & Sons.
K.S. Pitzer, 1963: Quantum Chemistry, Prentice-Hall.
C.A. Wert & R.M. Thomson, 1970: Physics of Solids, McGraw-Hill.
安達 健五 監修、1969: 金属の電子論 1、アグネ.
市村 浩、1968: 統計力学、裳華房.
久保 亮吾、1934: 統計力学、共立全書.
為近 和彦、2008: 熱・統計力学、北森出版.
沼居 貴陽、2007: 固体物性入門、森北出版.
広江 克彦、2015: 趣味で量子力学、理工図書.
水谷 宇一郎、1995: 金属電子論(上)、内田老鶴圃.
渡辺 正・中林誠一郎、1996: 電子移動の化学―電気化学入門、朝倉書店.
渡辺 正義・米屋 勝利、2002: 物質科学入門、化学同人.


掲載日:2018年5月26日
更新日:2018年6月24日

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