古来より、日本社会は清潔を旨とする社会文化があった。し尿は有価物として農地還元され、町も村も清潔が保たれてきた。明治以後の都市化により、汚水を原因とする感染病が問題となり、東京など一部の大都市で下水道が整備された。
第二次世界大戦後、我が国では工業の発達と生活水準の向上に伴い河川・湖沼・閉鎖性海域の汚濁が進行したため、国・自治体・住民・業界の取組により、産業・生活に伴う排水処理システムが整備されてきた。この結果、過去には汚濁の進行した水域の水質は改善されつつあり、人の健康と環境の保全に大きな貢献をなしている。
今日・将来において、財政の逼迫と少子高齢化、大都市の人口集中と地方の過疎化は、生活排水に係る社会インフラの整備・更新と維持管理に様々な課題を抱えることとなった。生活排水に係る法令・所管省・都道府県・市町村の仕組みが複雑であることに加え、国民は人の健康と環境保護の大切さは理解できているものの、具体的な取組(経費の負担、地域住民の合意など)になると様々な問題が生じてくる。生活排水に係る施設設備の計画・設置・維持管理に係る行政・業界の人材育成も望まれている。
本ページでは、国・自治体(法令や整備事業)、住民、業界(技術開発・施工・維持管理サービス)、地域組織の視点から生活排水に係る浄化技術と維持管理について解説する。