水は特徴ある性質と機能を有し、様々な物質を溶かし込んでいる。生活や産業において水を利用するときに、人の健康や自然環境にとって有害なものだけでなく、利用目的を阻害するものなど、種々な物質が様々な状態で水中に存在している。これらの物質はもともと天然水に含まれているものと生活・産業活動により排出されたもがある。
溶解性有機物質については物理・化学・生物の手法により無害な無機物質へ変換するが、無機物質に対しては難溶性物質へ変換し水中から取り除く方法が一般的である。ここでは、用水・排水を問わず、水に溶けている無機物質を難溶性物質に変換、沈殿・析出させて除去する方法について紹介する。
なお、溶解物質の除去には、電気化学的析出分離、膜分離、吸着分離、イオン交換分離などもあるが、これらの方法については他のページで別途紹介する。
難溶性物質生成による分離除去の適用にあたっては、下記に示す沈殿操作上の要件や分離した難溶性物質(スラッジ)上の要件も含めて、処理方法の設計・施工・運転しなければならない。
ここでは、難溶性物質の生成と分離について一般的な共通事項を紹介し、個別の物質については別途ページで記載する。
(1)沈殿操作上の要件
目的とする溶解物質は、その物質の種類、水のpH・温度、共存する物質によって、難溶性物質の生成条件や生成した沈殿の性状が大きく異なる。
例えば、溶解度積から想定される操作条件で難溶性塩の沈殿が生成しない(安定な錯体形成)、想定されるpH値以下で水酸化物沈殿が生成する(共沈)などである。
また、生成した沈殿の性状も、粒子が粗大で沈降分離特性の優れるものやコロイドル粒子として分散し分離操作が困難なものなど様々である。
さらに、処理後に残存する目的物質の濃度も、安全基準や利用目的によって大きく異なる。
(2)スラッジ上の要件
処理によって有害・阻害物質が消失するのではなく、スラッジが発生する。このスラッジは再利用するか埋め立て処分される。
再利用には資源化技術の開発が必要となり、埋立処分には減容化と安定化(再溶出の防止)が必要となる。