Microalgae and Oil Production – Culture Area
大沼みお・岸 拓真(広島商船高専)、山﨑博人(宇部高専)、村上定瞭(水浄化フォールラム)
なお、本解説では、生産モデルプロセスにおける物質の流れのみを示し、システム運転に必要なエネルギー量および生産されるエネルギー量は示していない。「生産エネルギー収支」については、別ページで記載する予定である。適宜、内容を更新するので、ページボトムの更新日時に留意されたい。
微細藻を活用した物質生産モデル
図1 微細藻による物質生産プロセス
上記データは、培養温度は20~25℃に保つものとする。
バイオマス 375t(12.5t/d)の生成には、CO2 550t(18.3t/d)が必要となる。
物質生産モデル
微細藻を活用したエネルギー生産プロセスを表1に示す。本モデルでは、太陽光受光面積を1(km)2を基本ユニットとする。このエネルギー生産プロセスの概要は、微細藻を食種して30日培養して収穫する。収穫方法は重力沈降の後、2次濃縮を行い、培養液を1/100に濃縮する。この濃縮液を水熱反応により、オイルを浮上分離するとともに、微細藻類の炭水化物(細胞膜・細胞壁成分など)の細胞構成固形物を可溶化する。この可溶化液をメタン発酵して、CH4として回収するモデルである。
モデル微細藻の性状
モデル微細藻の細胞組成は、水分70%、細胞構成固形物およびオイルの総量をバイオマスとする。バイオマス中のオイル含有量を30%(ケース1)、40%(ケース2)、50%(ケース3)とする。
なお、、モデル微細藻の細胞中のタンパク質や灰分は無視している。また、解説1で示す陸上植物に見られる非同化器官はないものとしている。
モデル微細藻の培養条件
本生産モデルでは、培養液の厚さ25cmとして、培養日数30日でバイオマス濃度1,500mg/Lとして、年間12回の収穫を行うこととする。このシステムは1(km)2の培養面積を30区画に分け、毎日、1区画ごとに微細藻を回収するシステムとしている。したがって、図1に示す「濃縮」から「メタン発酵」までの各工程は、1日あたりの運転量で示している。なお、本モデルでは培養日数を30日としているが、2週間(15日)とすると、以下に示す各工程の生産性は2倍で示される。もし、培養日数6日、バイオマス濃度3,000mg/Lとすれば(増殖速度の速い細菌類では可能であるが、微細藻類においては現実的には難しい)、生産性は一桁(10倍)向上することとなる(下記に記載する微細藻の培養面積は1/10に縮小される)。
解説1-生態系別の生産量
陸上で、最も高い生産力(年間純生産量)は、熱帯多雨林と耕作地で見られる。陸上では、一般に高緯度ほど生産力が低いが、これは温度と光が物質生産に大きく依存することによる。砂漠では水不足のため生産力が低い。本モデル藻の純生産力は熱帯多雨林よりも大きい。
水中で生育する微細藻類の特徴は、図2に示すように、陸上植物に見られる自らを支える非同化器官を必要としないことにある。細胞学的に見ると生物学的に難分解性成分が少なく、エネルギー生産にとって有利な点でもある。しかし、水中で浮遊状態で生育することが求められ、攪拌や収穫に多量のエネルギーが必要である。以上のことから純生産量の比較のみで、エネルギー生産性を比較することはできない。
図2 陸上植物の生産後続図
https://www.youtube.com/watch?v=2zkAv7B2Omk
濃縮工程
球体をランダムに充填した時の空隙率は36%となる。表1より、70%の水分を含む微細藻を球形とすると、空隙水分36%に細胞内水分66%×70% = 46%を加えると82%の水分量となるので、スラリー状態を保持するための限界濃度は、18%または180kg-biomass/m3となる。そこで、水熱反応工程へ圧送する微細藻スラリーの濃度を150kg-biomass/m3(150,000mg/L)に設定することとする。表2に示す培養条件から、濃縮液量について表4に示す数値が得られる。
水熱反応工程
気固液分離工程
図1に示す微細藻生産プロセスにおいて、表2に示す条件で培養を行ったときの1日あたりの水熱反応液の性状を表5に示す。これより、表1に示す「ケース3」(オイル含有量50%)ついては、1日当たりのオイル生産量は8.1kLとなる。
メタン発酵工程
表1に示す性状の微細藻を培養面積1(km)2で生産したときのメタン発酵の状況を表6に示す。残念なことは、同量のCO2が生成することにある。CO2を削減するためには、微細藻細胞内のオイル生産率を向上させるとよいことがわかる。
CO2排出量と微細藻の培養面積
一般炭 1t/dの消費により、CO2 2.2t/dが発生する。表2より、0.12(km)2の培養面積が必要となる。また、逆に、1(km)2の培養面積では、一般炭 8.3t/dの消費量に対応できることとなるので、エネルギー収支を別途考えることとしても、膨大な培養面積が必要となる。
2022年における日本のCO2排出量は、1,044百万トン(2.86百万トン/d)であった。表2より試算すると、必要な培養面積は156,000(km)2となる。なお、国土面積 378,000(km)2、EEZ 4470,000(km)2となっている。先ずは、1% のCO2削減を目指すべきであろう。
本モデルの課題
培養水
本モデルでは、培養水について触れていない。培養水として、天然の淡水・海水が挙げられるが、これらには他藻類や捕食者が混在している。天然水を用いる場合には、これらを除去する工程が必要となる。
気象現象
国内に限定すると、陸地では地域によって年間(季節変化)の大雑把な値は、最高温度30~40℃、最低温度-20~10℃、平均温度10~23℃の大きな幅を持っている。日変化は季節・天候によって異なるが、平均的な昼夜の温度差は8℃である。内陸ほど、緯度が高いほど、季節・昼夜ともに最高と最低の温度差が大きい。日照時間は、1800~2300時間/年の幅があり、日本海側、緯度が高い地域で日照時間が減少する傾向にある。現実の気象現象と本モデルの解離が問題となる。
各プロセスの効率
本モデルでは、図3に示す生物反応に沿って数値を計算しているが、実反応は化学量論的に進行しないことが多いので、各プロセスごとに検証して反応効率を求める必要がある。
解説2-生物化学反応
図3 生物化学反応
上記の表1~6に示す数値の算定に用いた生物化学反応式を図3に示す。
公開日:2022年08月20日
更新日: