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漬物製造排水の性状と処理

村上定瞭(水浄化フォーラム)

目次

1.漬物製造工程
2.漬物製造排水の性状
 ・排水源
 ・漬物製法排水の性状
3.漬物製造排水の処理技術
 ・排水処理プロセス
 ・活性汚泥処理事例
 ・生物膜ろ過法の事例
4.漬物製造排水処理における留意点

農産品の保存と漬物

缶詰・びん詰・つぼ詰食品を除く農産品保存には、カンピョウなどの乾燥野菜、野菜や果物の冷凍品、トマト加工品と野菜・果物漬物がある。
漬物とは、野菜・果実を食塩・味噌・こうじ・酒粕・酢・砂糖とその他の調味料を浸漬加工した食品をいう。漬物生産量は約120万tで全体の約84%ともっとも多い(平成2年度)[1]。野菜漬物関係の事業所は全国で約2,000箇所あり、全体の約78%を占めるが[2]、その大部分は日平均排水量50 m3/日の小規模事業所である。本ページでは、もっとも生産量の多い野菜漬物製造業についてその排水の性状や排水処理技術を述べる。

1.漬物製造工程

漬物原料は野菜と調味料などであり、これより漬物は大きく三つに分類される3)。
(1) 野菜主体の漬物(一夜漬など)
単なる香味分の浸透を行い発酵作用を受けないものとして、塩漬・味噌漬・酢漬・砂糖漬などである。一夜漬は食塩の使用量が他の漬物に比べて少なく、脱塩操作を必要としないが、野菜の洗浄を十分に行う。 
 野菜→[食塩漬込み]→[漬あがり野菜と調味液投入]→[密封・冷却]→製品 
(2) 野菜と発酵産物の漬物
微生物作用と香味成分の浸透作用が同時に行われるものとして、たくあん漬・糖味噌漬・キムチなどがある。たくあん漬の製造では大根を塩ぬかに漬した後、脱塩を目的とした洗浄を行い、その後調味液を混入して製品化する。
 たくあん漬:大根→[塩ぬか漬込み]→[アルコ→ル発酵・熟成]→[洗浄]→[調味液浸漬・脱気]→[袋詰]→[殺菌]→製品
 キムチ:野菜→[切断]→[第一塩漬]→[第二塩漬]→[水洗・脱水]→[薬味料注入・混合]→[整列]→[切断]→[商品容器・封入]→[冷蔵熟成]→[製品] 
(3) 調味料主体の漬物
福神漬などにおいて、塩蔵品の完全脱塩や部分脱塩をする原料調整工程と脱塩した半製品を調味液を注入して製品化する。
 野菜→[塩蔵]→[洗浄・切断]→[脱塩・圧搾]→[調味液]→[浸漬]→[袋詰・調味液注入]→[殺菌]→製品
(4) 発酵熟成の漬物
調味料の中に漬け込んでいる間に発酵作用を受けて調味料と共に、その発酵生産物の浸み込んだものとして、こうじ漬・酒粕漬・辛子漬・奈良漬などがある。

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2.漬物製造排水の性状

2.1 排水源

排水源は、原料の洗浄水、脱塩用水、漬物槽・裁断機・ミキサなどの製造工程の容器・機械器具の洗浄水、床洗浄水などが主なものである。
また、圧搾機などの脱水工程・漬込み槽からの搾り水・漬物液などが排出される。酒粕・味噌・糖などの使用後の古くなったものが排出されるが、これらが排水中に混入することもある。

2.2 漬物製造排水の性状

一般に農産品の漬物製造排水は次のような特徴がある。
① 水量と水質の時間変動が大きい。② 原料に地域性や季節性があることから、工場の操業は一定でなく排水にも水量や水質の季節変動が伴う。③ 洗浄排水量の比率が高い。④汚濁は原料や調味料などに由来する有機物である。⑤有機物汚濁負荷量は、洗浄工程排水の有機汚濁物に由来している割合が高い。
表1・表2に野菜漬物製造業からの工程排水の水質事例を示す。
野菜漬物の一夜漬について、1回目の洗浄水は、原料の白菜の洗浄水と、3%食塩で漬込んだ白菜の洗浄水である。その有機物は白菜の漬込み液に起因する。塩化物イオン濃度より推定すると、工程排水中汚濁負荷の高い1回目洗浄水が他排水で25倍程度に希釈されたものが総合排水となる。一方、たくあん漬の総合排水はぬかなどの調味料のほかに、乳酸発酵が進んだ大根の漬込み液を含むため、先の一夜漬総合排水に比べて、その有機物負荷は高い。また総合排水のBODに対する全窒素の割合は約6%、全リンが約0.9%と一夜漬に比べて高く、これらは調味液などに起因する。総合排水の塩化物イオン濃度は数千mg/L程度であるので多少、馴致に時間を要するが、生物処理に支障はない。
キムチ製造工程からの排水の特徴は、乳酸発酵工程があることから、工程排水に乳酸を含む短鎖脂肪酸が多量に含まれており、そのpH 3.8~4.8(年平均 4.4)となっている。短鎖脂肪酸には異臭の原因となるものがあり、さらに、製造原料の一部からの揮発性硫黄有機化合物も含まれ、異臭発生の原因となっている。

表1 野菜漬物製造工程排水の水質事例 [4]
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表2 キムチ製造工程排水の水質(年間)事例
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塩分濃度0.5~0.7%

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3.漬物製造排水の処理技術

3.1 排水処理プロセス

野菜漬物製造排水は有機物主体の汚濁物質であるのでスクリーンなどで野菜くずなどの夾雑物を除いた後、生物処理するのが一般的である。生物処理法には、活性汚泥法や生物膜法などがある。図1に活性汚泥法を用いた排水処理施設の事例を示す。
活性汚泥法には排水を連続的に曝気槽に供給する連続式と、同一槽内で曝気気と固液分離などの操作を時間ごとに行う回分式がある。活性汚泥の固液分離手段は重力式であるが、MF膜を用いる膜分離法も導入されている。
漬物製造排水中の有機物質は生物易分解性であり、窒素・リンも少量であるので、活性汚泥法として標準型(BOD負荷:0.2~0.4kg-BOD/kg-MLSS/d、0.3~0.8kg/m3/d)が適用できる。また、曝気槽の効率化を目的として、流動担体を導入するケースも多数見受けられる。流動担体の代表的なものとして、球状スポンジ(空隙細密)、キューブ状スポンジ(空隙やや細密)、球形・円筒形格子(空隙粗大)がある。また、流動担体(充填率10~20%)を導入すると、通常の活性汚泥法に比べて、数倍程度処理能力があると言われている。
生物処理法の場合は水量負荷、有機物負荷量の平均化と塩類濃度の均一化を目的に、流量調整槽の設置が不可欠である。排水の窒素、リンが不足する場合、それぞれBOD濃度の 5%、1% を目安に添加する。

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図1 活性汚泥法による漬物製造工場排水処理施設の事例

3.2 活性汚泥処理事例

野菜漬物を中心に製造しているA工場の排水処理設備は計画処理水量350 m3/日であり、そのフロ→はスクリ→ン、約8時間滞留の調整槽、BOD容積負荷0.60 kg/m3/日の曝気槽、水面積負荷16 m3/m2/日の沈殿池、脱水機で構成されている。排水処理設備の運転時間は、製造ラインが稼働する日中と、作業終了時に排出される排水の処理を含めた約18時間である。それ以外の時間帯は曝気槽および沈殿池への流入水はない。
表3に本設備の処理結果を示す[5]。低BOD負荷運転であるが、適切な運転管理によって河川への放流基準であるCODMn・BODがともに25 mg/L以下、SS 70mg/L以下を十分に満足する結果が得られている。

表3 活性汚泥処理設備の処理水質の事例
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3.3 生物膜ろ過法の事例

前記A工場の排水について生物膜ろ過法を検討した事例[5]を示す。
本法は、① 高濃度の微生物を三次元網目状構造の充填材に保持し、生物膜処理とろ過を同時に行う。② SS捕捉量が大きいので高SS、高BOD排水に適用可能。③ BOD容積負荷が大きく設定できて省スペース。④ 活性汚泥法のような固液分離障害がない。⑤ 全自動運転が可能で維持管理が容易、などの特徴を有する。
この方式は充填材0.29 m3を充填し、原水を充填層上部から、空気を装置下部から供給して、充填層内に生息する微生物によって原水中のBODとSSを除去するものである。
平均BOD容積負荷4.0 kg/m3/日で運転した結果を表4に示す。原水のBOD平均 671 mg/L に対してSSを含むBOD除去率が96%となり、高BOD負荷においても高い処理性能が得られている。また、CODMn除去率についても91%と高く、これは原水のBODとCODMnの比率か1.8であることから、原水中の有機物は生物的に易分解性である。
この処理水のSSは平均で33.5mg/Lであるが、このSSを浮上ろ過などによって除けば、さらにCODMnが23.7 mg/L、BODが14.0 mg/Lまで低減できることが生物処理水の溶解性CODMnやBOD値から示唆される。

表4 生物膜ろ過法の処理水質事例
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4.漬物製造排水処理における留意点

(1) 製造工程を見直し水量負荷や汚濁負荷量を削減する。
(2) 塩分濃度の管理
塩分濃度が高くなると、細菌類の細胞が浸透圧で脱水症状を起こして死滅する。できるだけ大きな調整槽を設けて原水の塩分濃度を希釈・均一化する。塩分濃度は海水 3.5g/L(Clとして1.86g/L)以下であれば、生物処理が可能となるが、塩分濃度の変動は好ましくない。
(2) 流量調整槽による負荷の均一化
漬物工程排水は、排水量の時間変動が大きく、BOD負荷や塩分濃度の変動は微生物機能へ大きな悪影響を与えるとともに、活性汚泥解体の解体や糸状菌の異常発生の原因となる(図3参照)。流量調整槽は水量・濃度の変動を緩衝し、生物処理設備への負荷の時間的変動を一定・均一にする効果を持つ。流量調整槽には、排水の腐敗防止と混合を兼ねて独立したブロワーで空気を送る。最も留意すべき事項は24時間一定の流量で生物処理装置へ流入させる容量が必須である。
(3) 発酵と有機酸
漬物製造において発酵を伴う工程排水には、低級有機酸が多量に含まれて低 pH を示す(表2参照)。これらの有機酸は、生物酸化されると炭酸へ変換され、これが揮散して pH 上昇が起こり処理水は中性となる。しかし、高濃度有機酸と無酸素状態は異臭の発生や糸状性の細菌・カビの異常発生が起こりやすいので、曝気槽・沈殿槽・配管系に長時間の嫌気性ゾーンが生じない配慮が必要である。曝気槽は完全混合型が望ましい。(5)・(6)に示す事項に留意するとともに、ゆとりのある設備とすることが望ましい。
(4) 複数の曝気槽
曝気槽の数は、水の短絡を防止するため2槽以上の複数とする。
(5) 季節変動に対して余裕のある処理設備
農産品の漬物製造量は季節変動が大きい。最大生産量における排水量に対応した設備とし、調整槽・曝気槽・沈殿槽の工程は複数の系列でそれぞれ独立に稼働させ、排水量が少ない季節には一部系列の運転を休止するなどして、年間を通して、生物処理設備への負荷を一定に維持することが大切である。
(6) 設備の増設
生産量の増加に伴い、処理設備の増設が必要となる。増設の際の留意すべき事項として、既設・増設の設備を連結することは避ける。
原水槽の後段に分配設備を設けて、例えば、図1に示す流量調整槽~沈殿槽は、それぞれ、独立に稼働することが望ましい。トラブル発生に対して、個別に対応できる。特に、糸状菌の異常発生など汚泥性状悪化の感染・拡大への防止対策となる。また、図1に示す汚泥濃縮槽の越流水(*印で示す)は、曝気槽へ返送することなく、別途に処理することが望ましい。
また、既設と増設の設備において設計・施工者が異なる場合に、不具合が生じたときに、その責任の所在が不明確で、その対応にトラブルが生じるケースも少なくない。
(7) 排水中の塩分・有機酸に対する腐食対策
調味料の塩分・発酵による有機酸などによる腐食性の高い排水の場合には、配管・その他、十分な腐食対策を行う。
(8) 用水の有効利用
汚染が少ない冷却水などの再利用やカスケード使用が望ましい。

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図2 慢性的に糸状菌が発生している漬物製造工程の処理水の事例
夕刻~夜間での過大な排水量に対して流量調整槽の容量が不足で、活性汚泥槽への負荷変動が著しい。慢性的な糸状菌の異常発生による膨化汚泥が沈殿分離槽から流出し、流失SSに比例してBODが増加し、処理水質の悪化が生じている。

引用文献

1) 食品産業センタ:平成三年度版食品産業統計年報、p.63(1991)
2) 通商産業大臣官房調査統計部:平成元年工業統計表品目編(平成3年)、p.3
3) 総合食品安全事典編集委員会:「総合食品安全事典」、産業調査会事典出版センタ、p.599(1994)
4) 環境庁水質保全局:「第三次総量規制対応版改定・小規模業場徘水処理対策全科」、公害対策技同友会東京、p.176(1991)
5) (株)荏原製作所:社内報告書

参考文献

1) 片岡克之:荏原インフルコ時報、第111号(1994)
2) 荒川清美・矢出乃大・唯木嘉行:日本工業用水協会第29回研究発表会講演要旨pp.67~70(1994)
3) 和田 洋六:「用水・排水の産業別処理技術」、東京電機大学出版、pp.238-241(2011)
4) 水処理管理便覧編集委員会:「水処理管理便覧」、丸善、pp.705-707(1997)
5) 用水廃水便覧編集委員会:「用水廃水便覧」、丸善、pp.750-752(1973)


掲載日:2020年05月07日
更新日:

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