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酸と塩基

村上定瞭(水浄化フォーラム)

酸、塩基およびこれらの塩は電解質とよばれ、その水溶液は酸性や塩基(アルカリ)性を示し、この強さは電解質の電離(解離)している割合による。電離状態を電離(解離)平衡といい、これを定量的に表す数値を電離(解離)定数という。このページでは、天然水や生活・産業排水に含まれているまたは浄化に用いられている代表的な酸・塩基・塩について、記載する。また、天然水・排水のpH挙動や中和に係る必要事項については、他のページに記載した。

強酸・強塩基

強酸・強塩基と呼ばれる物質は、水に溶けるとほぼ完全に電離し、強い酸性あるいは塩基性を示す。

強酸

塩酸 HCl

HCl → H+ + Cl

硫酸 H2SO4

H2SO4 → 2H+ + SO42-

 

強塩基

水酸化ナトリウム NaOH

NaOH → Na+ + OH

水酸化カリウム KOH

KOH → K+ + OH

弱酸・弱塩基

弱酸

酢酸 CH3COOH

CH3COOH ⇄ CH3COO + H+ pKa = 4.76

炭酸 CO2

CO2(g) + H2O ⇄ H2CO3
① H2CO3 ⇄ HCO3 + H+ pKa2 = 6.34
② HCO3  ⇄ CO32- + H+ pKa1 = 10.25

リン酸 H3PO4

① H3PO4 ⇄ H2PO4 + H+  pKa3 = 2.13
② H2PO4 ⇄ HPO42- + H+ pKa2 = 7.21
③ H3PO42- ⇄ PO43- + H+ pKa1 = 12.32

弱塩基

アンモニア NH3

NH3 + H2O ⇄ NH4+ + OH pKb = 4.75

<留意事項-酸解離定数の表記
本サイトでの酸解離定数Kaiの表記法については、別ページの説明に留意されたい。

酸と塩の水溶液を等量混ぜて中和しても、中性になるとは限らない。酸と塩基の組合わせにより、①強酸と強塩基、②強酸と弱塩基、③弱酸と強塩基、④弱酸と弱塩基の4つに分けられる。

強酸と強塩基

NaCl、Na2SO4
KCl、K2SO4
水溶液は中性である。
NaCl → Na+ + Cl

強酸と弱塩基

NH4Cl、(NH4)2SO4
水溶液は酸性である。
NH4Cl → NH4+ + Cl
NH4+ + H2O ⇄ NH4 + H3O+

弱酸と強塩基

Na2CO3、K2CO3
水溶液はアルカリ性である。
Na2CO3 → 2Na+ + CO32-
CO32- + H2O ⇄ HCO + OH

弱酸と弱塩基

(NH4)3PO4
電離度の大小により、異なる。リン酸アンモニウムは弱アルカリ性を示す。下記に示すように、解離度は共役酸NH3よりも共役塩基PO43-が大きい。
(NH4)3PO4 ⇄ 3NH4+ + PO43-
NH4+ + H2O ⇄ NH3 + H3O+ pKb = 4.75
PO43- + H2O ⇄ HPO42- + OH pKb1 = 1.68

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解離定数

塩基の水溶液は酸性あるい塩基(アルカリ)性となる。これは、(1)式に示すように酸分子HAが水分子に水素イオンH+を与えてヒドロニウムイオン3Oを生じるからである。一方、(3)式に示すように塩基Bは水分子から水素イオンを受け取り水酸化物イオンOHを生じる。
ところで、酸・塩基の強さはオキソニウムイオンあるいは水酸化物イオンを生じる度合いにより、これらは(2)/(4)式で示す平衡定数で表す。

HA(酸) + H2O ⇄ H3O+ + A (共役塩基)・・・ (1)
K’a= [H3O+][A]/[HA][H2O] ・・・ (2)

B(塩基)+ H2O ⇄ BH+(共役酸) + OH ・・・ (3)
K’b = [BH+][OH-]/[B][H2O] ・・・ (4)

上記の表現は複雑で、慣例上、(5)/(7)に示すように、酸や塩基の水溶液では、酸や塩基の分子が電離して水素イオンH+あるいは水酸化物イオンOHを放出すると表現される。また、H2Oの濃度はほとんど変化しないので一定とし、H3O+をH+で表すと、(2)/(4)で示す平衡定数K’aK’bは(6)/(8)で示すKaKbとなり、それぞれ酸解離定数または塩基解離定数という。

HA(酸) ⇄ H+ + A ・・・ (5)
Ka= [H+][A]/[HA] ・・・ (6)

B(塩基) ⇄ BH+ + OH ・・・ (7)
Kb = [BH+][OH]/[B] ・・・ (8)

弱酸/弱塩基のkaKbの値は小さく化合物によって大きく異なるので、その逆数の対数値pK(=-logK)で示すのが一般的である。KaKbは温度、酸/塩基の濃度、共存する電解質の濃度により異なる。一般には、25℃、無限希釈の値が示されている。
ところで、酸・塩基反応は平衡反応であって、水素イオン/水酸化物イオンの濃度により変化する。例えば、(1)式に示す平衡では、塩基を加えて水素イオン濃度が減少(pHが上昇)すると平衡は右に移動する。反対に、酸を加えて水素イオン濃度が増加(pHが低下)すると左側へ平衡が移動する。このときA塩基として働きこれを酸HA共役塩基といい、この平衡反応は次式で表される。

A(共役塩基) + H2O ⇄ HA(酸) + OH ・・・ (9)
Kb = [HA][OH]/[A] ・・・ (10)

ここで、(6)と(10)の積は次式になる。

KaKb = [H+][OH] = Kw(= 10-14)(25℃)・・・ (11)

ここでKwは水のイオン積で温度によって決まる定数で、常に一定に保たれる。したがって、(12)が得られ、KaまたはKbのいずれかから、他方の値が求められる。

pKa + pKb = 14 ・・・ (12)

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掲載日:2017年05月06日
更新日:2019年05月10日 H2CO3:pKa1 ⇄ pKa2、H3PO4:pKa1 ⇄ pKa3、にそれぞれ変更した。

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